常日頃から予知をケルベロスに伝える際には真摯な心持ちで臨む静生・久穏だが、今日は面持ちにまで真剣さが表れている。
「散発していました飢餓状態のローカストの事件を解決した大勢のケルベロスの皆さんの調査によって、太陽神アポロンとローカストの残存勢力の拠点が発見されました」
それは直接飢餓ローカストと遭遇した者のみならず、多くのケルベロスが待ち望んでいた情報であった。
判明したローカスト勢力の拠点は、太陽神アポロンが住まう急造りの神殿を中心に、有力なローカスト氏族が取り囲むような布陣となっている。
グラビティ・チェインの不足が原因なのか、周囲への警戒は疎かなもので、アポロンの神殿に直接襲撃を仕掛け暗殺することは充分に可能という見通しが立っている。
「太陽神アポロンを討伐することが出来れば、ローカスト・ウォーの効果も消滅しローカストという組織は崩壊していくでしょう」
ただし、神殿内部には有力なローカストが護衛として配置されている。さらに神殿が襲撃されたとなれば、周囲のローカスト氏族からも援軍が駆け付けることは必至だ。
「主目的となる太陽神アポロン討伐を目的とする部隊を編成。そしてその作戦支援のために神殿内の護衛を排除する部隊、周辺からの有力なローカストを攻撃し援軍を喰い止める部隊。これらの複数部隊が協力することで、作戦を成すことができるはずです」
当然ながら、いずれの場合でも強力な敵との戦闘に勝利することが必要であり、一カ所が失敗すれば他の負担が大きくなり、最終的にはアポロンを仕留め損なうという事態に至る可能性がある。
それでも、これはケルベロスにしか成し得ない。そしてケルベロスならば成し得るのだと、久穏は全幅の信頼を寄せて作戦の概要を説明する。
「ここに集まった皆さんには、アポロン神殿内部を守護する強力な衛兵であるイクソス・カーネルと、その配下であるイクソス・アーミーの排除を担当して頂きます」
アポロンがローカスト達に重労働を強いて建造した、アポロン神殿。切り出した石を積み上げ構築されたこの神殿の内部を守る衛兵部隊が、イクソス・カーネル率いるイクソス・アーミー達である。
「神殿内部に突入すれば、イクソス・アーミー達が襲って来るはずです。アポロンを討伐するメンバーが力を温存するため、これらを撃破してください」
イクソス・アーミーは数が多いため幾度もの襲撃に対処する必要がある。一度の戦闘で決着しないため、相応の準備と作戦が求められるということだ。
「イクソス・カーネルを撃破できればイクソス・アーミーからの襲撃は無くなるでしょう」
イクソス・アーミーが襲撃を仕掛けて来る際には、その後方からイクソス・カーネルが指示を出していることがあるはずだ。状況次第ではあるが、イクソス・カーネルの撃破を狙う好機となるかも知れない。
当然ながらイクソス・カーネルの撃破に固執するあまりイクソス・アーミーへの対処が疎かになっては、元も子もない。最悪、アポロン撃破の成功率が下がってしまうだろう。
的確な状況判断と事前相談が必要になることは、間違いない。
「イクソス・アーミーの攻撃手段は、標準的なローカストと同じで、これといった特異性はありません。イクソス・カーネルは、アーミーを一回り強くした指揮官だと認識してください」
これまでの戦いを勝ち抜いて来たケルベロス達であれば、個々のイクソス・アーミーに遅れを取ることはそうそうないだろう。
だが、今回の作戦では神殿内を探索しながらいつ襲ってくるか分からないイクソス・アーミーとその指揮を執るイクソス・カーネルを撃退しなければならない。何体のイクソス・アーミーが控えているかも、不明だ。
探索と応戦。先の見えない状況に対処し続けなければならない難事だが、アポロン討伐を成功に導く重要な役割である。
「皆さんもご存じの通り、ローカストはこれまで幾度も無謀な作戦を展開して来ました。それは、太陽神アポロンを討たない限り終わりません」
或は、アポロン以外のローカストが全滅するまで続くだろう。
「これ以上の犠牲と被害を生み出さないためにも、この作戦で元凶である太陽神アポロンを討ち取ってください。皆さんなら、それが出来ます」
この作戦が成功すれば、ローカストとの戦いは決着を迎えるだろう。それは、久穏のみならず多くの人々の願いだ。
その期待を担い、ケルベロス達は戦地へと赴く。
参加者 | |
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ミオリ・ノウムカストゥルム(銀のテスタメント・e00629) |
葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093) |
ローザマリア・クライツァール(双裁劒姫・e02948) |
柊・おるすてっど(ダークハーフ・e03260) |
リディア・リズリーン(希望を謡う明星・e11588) |
ソル・ログナー(黒き禍津星・e14612) |
カジミェシュ・タルノフスキー(機巧之翼・e17834) |
ゼラニウム・シュミット(決意の華・e24975) |
●突入
アポロン神殿内部の敵衛兵を排除する役割を担ったチームが、神殿内部への突入を敢行する。
「私達が侵攻ルートを確保します。本体の皆さん、阻害要因の排除は任せてください」
神殿内部に先行し内部の敵を撃破するチームの柊・おるすてっど(ダークハーフ・e03260)は、気合いも十分に一歩を踏み出す。
「アポロンと戦う皆さんが余裕を持って挑めるよう努めるのが私達の役割でぃす! ……行くよ、ナノちゃん!」
リディア・リズリーン(希望を謡う明星・e11588)は、少しだけ思いを巡らし僅かに遅れたものの、テレビウムと共に神殿内部へ踏み込んだ。
「ま、肩肘張らずに行こうや。……いつも通りに、だ」
「ああ。夏に逃がしてから半年近く。いい加減、ケリを付けるとしようではないか」
仲間である以前に友人としての親交もあるソル・ログナー(黒き禍津星・e14612)とカジミェシュ・タルノフスキー(機巧之翼・e17834)は、互いを激励し平常心で戦場へと挑む。
「サーチアンドデストロイ。状況開始」
先行チーム8人全員が、神殿内部に侵入した。ミオリ・ノウムカストゥルム(銀のテスタメント・e00629)は作戦の開始を宣言することで、意識を平素から戦時へと切り替える。
石を切り出し積み上げた古代の遺跡を思わせる神殿内部は外とは異なった雰囲気を発しており、ケルベロス達に緊張を強いる。
もっとも、戦場での適度な緊張感は勝利を得る上では必須のものであり、過度な緊張で実力を発揮できなくなる未熟な者はこの場にいない。
「討ち入りってやつかしら? この時期こういうのJponiaでは流行ってるんでしょ?」
などと、冗談を言う余裕すらある。その発言をしたローザマリア・クライツァール(双裁劒姫・e02948)の口調は冷静そのもので、無理に場を和ませようとしてなどいないことが頼もしさすら感じさせる。
「敵は何処から襲って来るか分かりません。やや距離を空けて包囲される状況は避けつつ全周囲の警戒を行いましょう」
チームの中で、1人だけやや気負いが見て取れるゼラニウム・シュミット(決意の華・e24975)だが、それは個人的な事情に依るもので止むを得ない。むしろ、この後に遭遇する敵との戦いには必要な感情なのかも知れない。
「……んー。他のチームと携帯繋がらないね。圏外だからかな?」
作戦全体の円滑化を図って通信連絡を用いようとした葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)だが、どうやら通信自体が不可能だったようだ。
ミオリやローザマリアはここがデウスエクスの拠点であることが不通の原因かとも疑ったが、確証がなく検証も行える状況ではない。
少々予定が狂ったが、出来なくとも作戦の遂行に重大な支障が生じるということはない。
8人は気を落とすことなく、むしろ一層に意気強く神殿内部を進んで行く。
●戦闘
ケルベロス達が神殿内部へと入り込み、さして進む間も無くそれは現れた。
前方から、側面から。通路の先からも壁の隙間からも、複数の蟻型ローカストがケルベロスを迎え撃とうと襲い来る。
この神殿内部の防衛役である、衛兵イクソス・アーミーだ。
「敵地ってこともあるし、緊迫感がある――なッ!」
側面から挑んで来たアーミーに対し、ソルはドラゴニックハンマーに破壊力に変えたグラビティ・チェインを乗せて叩き付ける。言葉とは裏腹な、豪快そのものと言える行動だ。
「Dobra.カミル、仕掛けるわよ――Naprzob!」
「ああ。こちらの被害は抑えつつ、確実に敵戦力を減らしておかなければな」
心と刃を一体化し自身を強化するローザマリアと、守護星座を地面に描き仲間を護るカジミェシュ。堅実な戦法であった。
そうして仲間達が攻撃を仕掛け、少しの傷を負ったものの、ケルベロスはごく軽微な被害でアーミー群を撃破した。
さらに歩を進めるケルベロス達だが、気を緩めることはできない。敵地の真っただ中であるという理由もあるが、常に敵の気配を感じているからだ。
案の定、すぐに次のアーミー群が現れケルベロス達の行く手を阻む。
ここでも、ケルベロス達は予め打ち合わせた各々の役割を全うし戦いを切り抜ける。
「兵隊蟻だか何だか知らねぇが、おめぇら如きにオレが崩せるか」
アーミーの攻撃を受けたおるすてっどだが、間髪入れず反撃に転じる。戦闘中の荒々しい口調そのままにグラビティ・チェインをぶつける様は雄々しくすらあった。
「生憎でぃすが、あなた達では私達を止めることはできないでぃす!」
リディアの奏でる、立ち止まらず戦い続ける者達の歌が、ケルベロス達を奮起させる。これによって、軽微な傷は癒え、損害も抑えられる。
今のところは深い負傷に至ってはいないが、そうなれば、ゼラニウムやカジミェシュの使役するボクスドラゴンのボハテルが治療する。
まだ治療はボハテルで追い付いているので、ゼラニウムも攻撃に加わり半透明の御業がアーミーを鷲掴みにする。
二度目の戦闘も、ケルベロス達は危なげなく勝ち進んだ。
堅実な戦術が功を奏し、ケルベロス達はアーミー群を撃破し続け、快進撃とまではいかないものの、着実に神殿内を攻略して行く。
「俺の相手をしようってんなら、もっと腕を磨いてきな!」
アーミーを前に、唯奈は棒付きの飴を口に咥えたまま、特に意味なく拳銃でガンスピンを披露する。右手でフォワード・スピン、左手はリバース・スピンを同時にという器用さだ。
それを隙と襲い掛かったアーミーだが、唯奈は目にも止まらぬ早撃ちで敵の爪を砕く。
攻撃を浴びせるつもりが逆に撃たれ狼狽したアーミーは、まずは間合いを空けようと後方へ下がった。
「逃がしません」
けれど、ミオリの放った死角からの跳弾によって射抜かれるのだった。
これでもう数度目の敵襲を退けたケルベロスだが、むしろ危機感が募る。ここまでは、所詮小手調べでしかないと分かっているからだ。
そして遂に、神殿内部の敵を掃討するという任務を果たす上での最大の障害と遭遇する時が訪れた。
「行きなさい、兵達よ。……おや、何処かで見た顔が混ざっていマスネ」
またも現れたアーミー群の後方に、一体だけ異なるローカストの姿があった。
「お久し振りですカーネル。先の戦争以来……ですかね?」
カーネルの視線を受け止め、ゼラニウムは複雑な感情を込めその名を口にする。
イクソス・カーネル。先のローカストウォーを生き延び、アーミーの指揮官としてこの神殿内部の守りの要となったローカストだ。そして、ゼラニウムとは因縁浅からぬ相手でもある。
「命は犠牲の上に成り立つという言葉、今でも真理と思っています。だから、私達は今此処に居る。地球に住む人々を救う為に、貴方達を犠牲とするべく」
宿敵同士の邂逅。これが神殿内部でのケルベロス対ローカストの、本当の戦いの始まりであった。
●焦燥
厄介な事に、カーネルは極めて冷静であった。
ケルベロス達にアーミーをけし掛けはするものの、アーミー群が劣勢と見るや即座に踵を返し撤退してしまう。
「やはり、強いデスネ。ひとまず出直すとしまショウ」
そうはさせまいと奮戦するケルベロス達だったが、カーネルの指揮を受けるアーミーはこれまでのように軽くいなせはしない。
結果として、アーミーを突破したもののカーネルには逃げられてしまった。
「手配書を作ろうかと思ったけど、必要なさそうだな」
先刻までカーネルの居た位置に向かって銃を撃つ仕草をしながら、唯奈は呟いた。
当初は逃走したカーネルの位置を把握するために手配書を作成する案を考慮していたが、カーネルを倒すべき状況でそのために一手を費やす有用性に疑問を抱いたのだ。
手配書の作成は戦場内の敵に対してしか行えない。それならば、戦闘行為に専念する方が有効だろう。
「前方に敵です。オープンコンバット」
さらに出現したアーミー群を視認し、ミオリは焼夷弾をばら撒いた。
「カーネルは必ず私達を狙って来ます。その時に、迎え撃ちましょう」
ゼラニウムの言う通り、神殿内部を進む限りアーミーは襲って来る。そして、カーネルはその指揮を執っている。詳細な所在地を把握できずとも問題ないだろう。
目の前のアーミー群を退けたケルベロス達は、やや警戒の濃くなった歩調で進む。
これで何度目の戦闘になるだろうか。ケルベロス達はまたもアーミー群と遭遇した。
だが、辟易することもなく即座に戦闘へと突入する。
「いたぜ、奴さんがよ! ――――どけやおらァ!」
敵の中にカーネルの姿を捉えたソルは、心を貫くエネルギーの矢を放つ。その攻撃はカーネルに命中したものの、この一撃で致命傷を与えられるはずもない。
「いい判断デスネ。しかし、正義の味方のケルベロスともあろう者達が、押し入って巣荒らしとは、少々品格に欠けるのデハ?」
余裕の表れなのか、自分を狙った事を称賛しつつ軽口を叩くカーネル。そこに、ローザマリアが撃った物質の時間を凍結する弾丸が命中した。
「暗殺が正道であろうとなかろうと、無辜の民を守る為なら刃を振るう事に躊躇いはないわ――Wybacz mi」
ここで、カーネルがアーミーに自身の防衛を命じるようであれば事は簡単だったのかも知れない。しかし、カーネルの指示はそれとは逆であった。
「兵達、個々で戦わず戦力を集中するのデス!」
その命令に従い、アーミーはケルベロスの1人に攻撃を集中する。
「……流石は精鋭だけはある。黙示録騎行の連中とはくらべもんにならん」
その対象となったカジミェシュは、何とか踏み留まったものの、深い傷を負わされてしまった。
「それ以上はやらせないでぃす! 合わせて、ナノちゃん!」
今にもカジミェシュを攻めようとしていたアーミーに、リディアの流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りが強かに炸裂した。さらに、主の意思に従いナノビィが凶器で殴打する。
これによって、カーネルへ近接での攻撃が届く状況が生じた。
おるすてっどはカーネルの注意を自身へと向けるため、尻を突き出して見せる。
「受けてみますか! さきがけ! あるてぃめっとー!」
それは彼女が知る過去のケルベロスが行った挑発行為の再現である。
「挑戦ということデスネ。いいでショウ」
カーネルの手にした凶刃が、おるすてっどに突き刺さる。
その間にゼラニウムとボハテルがカジミェシュを治療し、危機を脱したのだった。
けれど、戦いはケルベロス達の目論見通りにはならなかった。
またもカーネルは撤退し、その後に新手のアーミーを引き連れ表れる。その繰り返しであった。
着実にケルベロス達は神殿内部を進んではいるが、遅々としたものでしかない。何より、カーネルを撃破しなければ、後続部隊の安全は確保できないのだ。
戦いを重ねるにつれ、ケルベロス達の負傷は重なり少しずつ不利な状況に追い詰められていた。それを自覚してはいるものの、状況を一気に好転させる術はなく、焦りが募るのだった。
●決着
卓越した技量からなるおるすてっどの一撃が、アーミーの1体を沈める。
「後から後からゾロゾロと。面倒な虫共だ」
おるすてっどが吐き捨てた悪態は、ケルベロス達全員に共通する思いだった。
「いい加減、てめぇもケリを着けに来たらどうだ。ローカストの中でもそれなりにやれるんだろ?」
目の前のアーミーに電光石火の蹴りを見舞いつつ、ソルはカーネルのプライドを刺激し前線へ引き摺り出そうとする。
「私の役目はアポロン様へケルベロスを近づけないことデス。貴方達と遊んで己の武勇を誇ることではありマセン」
しかし、カーネルは徹頭徹尾その戦術を変えようとはしない。
「部下を使い捨てにしてチマチマと……。恥を知りな!」
口の中の飴を噛み砕き、棒を吐き捨てながら、唯奈はカーネルを非難する。それでも意識はアーミーに向いており、地形を利用した跳弾が死角からアーミーを襲う。
「何とでも言ってくだサイ。所詮は敗者の弁ですガネ」
カーネルの指揮に従って、アーミー達が連携を取った攻撃を繰り出して来る。
「我が名はカジミェシュ。星月なるレリヴァの裔、タルノフスキーに連なる者なり! 誇りを持たぬ獣に等しい輩に、この首は獲れぬ!」
先刻から、カーネルは隙あらばケルベロスの中で味方を支える役割を担う者を標的にしていた。それによってボハテルが倒れており、これ以上を許しては戦線の崩壊に繋がってしまう。
名乗りを上げカーネルの意識を引くカジミェシュや、おるすてっど、リディアがギリギリのところで支えているのが実情だ。
「もう少し……もう少しで届きます! まだやられません!」
濃縮した快楽エネルギーで自身を癒し、リディアは持ち堪えている。独特な口調の癖が無くなるほどに真剣になっているが、このままではじり貧でしかない。
(「まずいわね。どうしても、押し切れる戦力がないわ」)
冷静に彼我の戦力を分析するローザマリアは、絶望的な結論に至らざるを得なかった。
ケルベロス達は神殿内部を進む際の方策や敵襲への対策などを練ってはいたが、肝心のカーネルを如何に追い詰めるかという点については作戦が浅かった。
結果としてカーネルを倒すという意識ばかりが先行し、アーミーに翻弄され消耗してしまったのだった。
敗北の二文字がケルベロス達の脳裏を過ったその時、状況は劇的な変化を迎えた。
「敵の新手? いえ、違いますね。あれは……」
最初にそれに気付いたミオリは、咄嗟に警戒したものの、すぐに理解した。後続の暗殺部隊が追い付いて来たのだと。
これはケルベロス達にも誤算だったが、カーネルにとってはそれ以上に想定外の事態だった。暗殺部隊による援護攻撃によって、瞬く間にアーミー群が倒れ自身の優位が崩壊してしまったのだから。
これこそ最大最後の好機と、8人は残った力を振り絞りカーネルへ攻撃を集中した。
いかにカーネルが単体で優れた戦力を有していても、数倍の戦力差を覆せはしない。
「結局、貴方とは平行線のまま……。しかしこれで良かったのかも知れません。憂いも躊躇いも無く、貴方を殺せるのだから……!」
癒しのベクトルを真逆に転じ生じた対象の魂に衝撃と毒素を与える瘴気。それをカーネルへ送り込みながら、ゼラニウムは自分が背負っていた宿縁が決着したという事実を噛み締める。
不思議と、これといった感慨が湧いて来ない。まだ戦場の中で気を抜けていないからなのだろうか。
カーネルを撃破したためか、周囲からアーミーの気配は感じられなくなっていた。
作戦の成功を喜びたいところではあるが、決着までの過程を省みると、手放しに喜べはしなかった。
それよりも、この場に留まるのは危険かも知れない。
一頻り休んだ後にケルベロス達は満身創痍の身体を引き摺り外へと向かったのだった。
作者:流水清風 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年12月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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