狙われた提灯職人

作者:神無月シュン

 ミス・バタフライの元に、道化師と猛獣使いの姿をした2人の配下が集う。
「あなた達に使命を与えます。この町に、提灯職人という提灯を作ることを生業としている人間が居るようです。その人間と接触し、その仕事内容を確認・可能ならば習得した後、殺害しなさい。グラビティ・チェインは略奪してもしなくても構わないわ」
 ミス・バタフライは配下の螺旋忍軍へと指示を出す。
「了解しました、ミス・バタフライ。一見、意味の無いこの事件も、巡り巡って、地球の支配権を大きく揺るがす事になるのでしょう」
 ミス・バタフライの指示通り、配下の螺旋忍軍2人は目的地へと向かった。

 瀬戸口・灰(誰が鐘を鳴らすのか・e04992)の予測通り、ミス・バタフライという螺旋忍軍が動き出したようだと、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は集まったケルベロス達に説明を始める。
「灰さんの調査で、提灯職人が狙われることがわかりました。提灯といえば、よくお祭りとかに使われますね。最近では提灯作りの体験などもあるようです」
 ミス・バタフライは配下を使って、珍しい職業をしている一般人の所に現れて、その仕事の情報を得たり、或いは、習得した後に殺そうとするようだ。
「直接的には大したことはないのですが……」
 巡り巡って大きな影響が出るかもしれない。という厄介な事件なのである。
「この事件を阻止しないと、まるで、風が吹けば桶屋が儲かるかのように、ケルベロスに不利な状況が発生してしまう可能性が高いのです」
 勿論、それがなくても、デウスエクスに殺される一般人を見逃すことは出来ない。
「皆さんには、一般人の保護と、ミス・バタフライ配下の螺旋忍軍の撃破をお願いします」

 基本は、狙われる一般人を警護して現れた螺旋忍軍と戦う事になるが、事前に説明して避難させてしまった場合、敵が別の対象を狙ってしまい被害を防ぐことができなくなる。
「今回は螺旋忍軍が襲ってくる3日前には、対象の一般人に接触する事ができるので、事情を話して仕事を覚えることができれば、螺旋忍軍の狙いを一般人から変えさせることができるかもしれません」
 しかし、囮になるには、見習い程度の力量になる必要がある。
「一から全部作る場合、かなり頑張って修行する必要があるかもしれませんね」

 敵は螺旋忍軍2人組。
「道化師の姿をしたほうは螺旋手裏剣を使い、猛獣使いの姿をしたほうは鞭をケルベロスチェインの様に扱うようです」
 囮になることに成功した場合は、螺旋忍軍に技術を教える修行と称して、有利な状態で戦闘を始める事が可能となる。
「罠にかけたり、不意打ちをしたり、2人を分断したりと方法はお任せします」

「バタフライエフェクトを意図的に起こす相手。なかなかに厄介ですが、ここで抑えてしまえば問題はありません」
 よろしくお願いします。とセリカは最後に頭を下げた。


参加者
アイシア・クロフォード(ドタバタ系ツンデレ忍者・e01053)
知識・狗雲(鈴霧・e02174)
ルクレツィア・フィグーラ(自鳴機構・e20380)
白銀・夕璃(白銀山神社の討魔巫女・e21055)
ドゥーグン・エイラードッティル(鶏鳴を翔る・e25823)
ホルン・ミースィア(見た目は巨神っ頭脳は子供・e26914)
リリー・デザイア(耽美なりし幻像・e27385)
鳴上・智親(花鎮の贄・e29860)

■リプレイ

●弟子入り希望?
 螺旋忍軍の襲撃が行われる3日前、ケルベロス達は提灯の作り方を教わるべく、職人の居る工房へ向かっていた。
 向かっている途中、ルクレツィア・フィグーラ(自鳴機構・e20380)はアイズフォンを用い、提灯づくりの手順を確認していた。
「ごめんください」
 工房の扉を開け、ドゥーグン・エイラードッティル(鶏鳴を翔る・e25823)が声をかける。出てきた職人に事情を説明し始める。自分達がケルベロスであること。3日後に工房に螺旋忍軍がやってくること。自分達が職人の代わりになること。そのために提灯の作り方を覚えなければならないこと。
 話を聞いた職人は協力すると、ケルベロス達を工房の中へと案内した。
「提灯作り楽しそう♪」
 アイシア・クロフォード(ドタバタ系ツンデレ忍者・e01053)は工房の中をぐるりと見渡し、わくわくしていた。
 そして、あてがわれた席へと座ると、教えられた通りに竹ひごを削り始めた。
「折角なら楽しんで技術アップだね」
 そう言うのは、知識・狗雲(鈴霧・e02174)。嫌々やったところで上達はしないだろう。しかし、事前に調べてみた限りでは、楽しくやれるだろうと考えていた。
「まずは骨組みが大事」
 調べたのと実際にやるのでは、やはり勝手が違う。いいものを作りたいと、職人にたずねながら作業を続ける。
「型に竹ひごを巻いて……」
 手順を覚えるため、言葉にしながら、白銀・夕璃(白銀山神社の討魔巫女・e21055)は手を動かしていく。
 職人にお手本を見せてもらいながら、ドゥーグンは自らも横で手を動かしていく。
「こういう物は大好きです……」
 鳴上・智親(花鎮の贄・e29860)は丁寧に提灯を作っていく。
 竹ひごを型に巻いていく方法を、職人から聞いていた、ホルン・ミースィア(見た目は巨神っ頭脳は子供・e26914)。作業途中に隅っこに置かれていた、絵や文字の書いていない無地の提灯を見つける。
 提灯へ文字入れする体験教室用であるそれを、許可をもらいホルンは提灯を一つ手に取る。
「カワイイの作りたいなっ♪」
 ゴーストスケッチを発動すると、手がひとりでにイラストを描き始める。
 やがて手が止まり、提灯を見るとそこには、自身のサーヴァント、ウイングキャットのルナの絵が描かれていた。ホルンは出来上がった提灯を壁に掛け、満足そうに頷いた。
「……私はその、手先が器用ではないので」
 しばらくしてリリー・デザイア(耽美なりし幻像・e27385)が提灯を完成させた。しかし、出来上がった提灯は所々歪んでいて、リリーは気まずそうにしていた。
 これではダメだと感じ、手順だけでも覚えるようにと練習しつつ、練習に使う材料を倉庫から運んだりと仲間のサポートを優先する。
「少し休憩にしませんか?」
 智親は用意していた『夕焼け色のモンブラン』と『テイクアウト用アイスティー』を皆に配り、休憩を提案する。
 しばしの休憩時間、工房からはここが難しいとか、こうしたほうが上手くいきやすいとか、賑やかな声が響いていた。

●2人の訪問者
 楽しみながらも、必死に修行を積むケルベロス達。気が付けばもう、予知の日は明日に迫っていた。
 アイシアの用意した『アルセ特製の弁当』を食べ終えたケルベロス達は、明日の戦闘に備え眠りにつく。
 そんな中、インソムニアを発動し眠気を無効化した、ルクレツィアと狗雲が修行の続きを始める。
 上手くできなかった箇所を、重点的に練習するルクレツィア。
「やっぱり、和紙の匂いっていいよね」
 夜の静寂を紛らわせるように、狗雲が話しかける。手元では丁寧に和紙を貼っているところだ。
 時に会話を交わしながら、2人は提灯づくりを続けていった。
 遂に螺旋忍軍が来る日がやってきた。必死に練習したケルベロス達は、見習いと呼べるくらいには上達した。
 提灯職人には安全な場所へ避難してもらい、螺旋忍軍が訪れるのを待った。
 そろそろ昼に差し掛かろうとした時、2人の男性が訪ねてきた。片方は細身で背の高い男。もう片方は、1人目より背は低めだが筋肉質な男。潜入のためだろう、一般人と変わらない服装をしている。
「工房は狭いので、まずはそちらの方から」
 筋肉質の男を指名し、工房の中へと案内するルクレツィア。近くで待機している、リリーへとアイコンタクトをし、お互い頷いた。
 待っている間、他の場所を案内しますと、リリーとドゥーグンは長身の男を反対方向へと案内した。
 筋肉質な男がルクレツィアに連れられ、工房へとやってくるとそこには狗雲、アイシア、ホルン3人のケルベロスが待ち構えていた。
 ケルベロス達が集まって修行した工房だ。狭いはずがない。周囲を見渡し先ほどの説明との違いに、男は驚きを隠せないでいる。
 アイシアは修行中に着ていた作業着をばっと脱ぎ捨てると、そこにはいつもの戦闘用の服に身を包んだアイシアが立っていた。愛用のゴーグルを装着し、武器を構える。
 相手がケルベロスだと気が付いた男は、変身を解くとバシンと鞭をひとつ地面へと叩きつける。
 狗雲、ルクレツィア、ホルンの3人も武器を構えた。

●猛獣使い
「ただの飾りじゃないよ……!」
 狗雲が叫ぶと同時、前衛の武器に唐紅色の鎖を出現させ、攻撃力を高める。
 ホルンがヒールドローンを射出。前衛の守りを固める。ホルンのウイングキャット、ルナも合わせるように清浄の翼の羽ばたきで、前衛に邪気を祓う力を与えた。
「……これでいい」
 ルクレツィアは前衛に『secco』を発動。加護を打ち破る力を付与する。
 アイシアは刀に雷の霊力を帯びさせ、神速の突きを繰り出した。攻撃を受けた猛獣使いは、怯むことなく鞭を一振り。伸びた鞭は蛇のようにうねり、アイシアを締め上げる。
 狗雲は更に『赤ノ鎖』を使用し、後衛の攻撃力を高める。合わせてホルンもブレイブマインで後衛の攻撃力を高めた。
 音速を超えるルクレツィアの拳が、猛獣使いを捉える。攻撃を受けた猛獣使いは、吹き飛び壁へと叩きつけられた。
 ルクレツィアのテレビウム、クレフはアイシアに向かって応援動画を流す。元気になったアイシアは、刀へ空の霊力を帯びさせ、斬撃を放った。
 反撃にと猛獣使いが放った螺旋掌を、ホルンが間に入って受け止めた。
 狗雲がライトニングロッドを猛獣使いへと向ける。やがて杖の先端からビリビリと雷を纏い始める。杖を一振りすると集まっていた雷が、猛獣使い目掛けて襲い掛かる。
 猛獣使いが雷に撃たれている所へ、ホルンがゲシュタルトグレイブへ稲妻を帯びさせ、超高速の突きを繰り出した。
 ルクレツィアが流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを炸裂させ、機動力を奪っていく。
 動きが止まった瞬間を見計らい、アイシアが気咬弾を放つ。放たれたオーラの弾丸は猛獣使いへと喰らいついた。
 猛獣使いが狗雲へと鞭を伸ばす。狗雲は迫りくる鞭を躱すと、ハウリングフィストをくらわせた。
 狗雲のボクスドラゴン、アスナロがホルンの怪我を癒す。
 ホルンが距離を詰め、破鎧衝を放つ。痛烈な一撃が猛獣使いの胴体へとめり込む。
 ルクレツィアが爆破スイッチを起動すると、戦闘中に張り付けた見えない爆弾が次々と爆発してく。
 アイシアは爆発に巻き込まれないように、宙返りで距離をあける。
「ビリビリ痛いよー♪」
 アイシアから放たれる『雷遁 雷刃手裏剣』。雷の力を纏った無数の手裏剣が猛獣使いに襲い掛かる。手裏剣が命中すると同時、纏っていた雷がさらにダメージを与える。
 雷に焼かれ、煙を吹きながら猛獣使いは地面へと倒れると、そのまま動かなくなった。
 戦闘を終えたケルベロス4人は仲間と合流するべく、工房を飛び出した。

●道化師
 リリーとドゥーグンは長身の男を案内しながら、3日間で学んだ知識で、よどみなく作業手順を説明する。長身の男は時折頷きながら説明を聞いていた。
 倉庫の前に辿り着いたころ、遠くから壁を叩くような大きな音が聞こえてくる。
 それが戦闘音だと気が付き、長身の男は変身を解いた。
「よくも騙しましたね」
 道化師の雰囲気に、倉庫の前で待機していた夕璃と智親も集まる。
 道化師を迎え撃つため、夕璃、ドゥーグン、リリー、智親の4人は武器を構えた。
 道化師がちらつく分身の幻影を作り出す。
 ドゥーグンは幻影に構わず、ドラゴニックハンマーを砲撃形態へ変形。狙いを定め、竜砲弾を放つ。
 砲撃に合わせて、夕璃が空の霊力を帯びた刀で道化師を斬る。
「させませんよッ!」
 智親の放つグラビティブレイクが、道化師の幻影を消し去る。
 リリーが惨殺ナイフを構え、道化師に向かって走り出す。すれ違いざまに道化師を斬り裂く。
「ワタシの奇術、お見せしましょう」
 道化師が螺旋手裏剣でジャグリングを始める。螺旋手裏剣が宙に投げられるたびに2つ、3つと数を増やしていく。数えきれないほどの螺旋手裏剣を上空へと放ると、空中で一瞬静止したのち、無数の手裏剣の雨となって前衛へと降り注ぐ。
「回復します」
 ドゥーグンが薬液の雨を降らせ、前衛を治療する。
 夕璃が雷の霊力を帯びた神速の突きを繰り出すが、道化師はするりと躱す。
 智親が光輝くオウガ粒子を放出し、前衛の超感覚を覚醒させる。
 リリーのハウリングフィストが道化師を捉え、吹き飛ばす。
 道化師が毒手裏剣を投げるが、夕璃はそれを躱し、絶空斬で反撃する。
 ドゥーグンは光の翼を暴走させ、全身を光の粒子に変えると、道化師に向かって突撃した。
 智親は前衛を守るように雷の壁を構築する。リリーが惨殺ナイフで斬撃を放つも、道化師に躱された。
 そこへ、アイシア、狗雲、ルクレツィア、ホルンの4人が合流した。
 攻撃の数が倍になり、道化師へと攻撃を次々繰り出していく。凌ぐことができずに、道化師の体力はみるみる減っていった。
 道化師が前衛へと手裏剣の雨を降らせる。それでもケルベロス達は怯まずに攻めていく。
「わたくし自身がすなわち杖となりましょう」
 ドゥーグンの『瞳持つ杖』により、道化師の動きが一瞬止まる。
「Lotus flori deschise in zori. Maine, credem ca vine lumina.」
 遠い世界、異国の歌が智親の口から紡がれる。魔力を乗せた歌が道化師を襲う。
 上空に跳び上がったリリーがドラゴニックハンマーからドラゴニック・パワーを噴射させ、加速。全身を使ってハンマーを道化師目掛けて叩きつけた。綺麗に着地したと同時、決まったと満足そうな顔をしていた。
「邪気のみを……断つ」
 『大天田元真』、『花筵藤四郎』2つの刀に宿すのは太陽の力。夕璃の放つ『陽光太刀』。その斬撃は道化師を斬り裂き、ついに道化師はその場に倒れ伏した。
 戦闘を終えたケルベロス達は、工房の片付けを始める。
「手先の練習になるかな……」
 片付けをする前にと、リリーは再び提灯を作ってみるが、やはり出来た提灯は歪な形をしていた。
「出来れば……改めて提灯づくり習いたいな」
 個人的に興味があると、夕璃が呟く。
 片付けを一通り終えると、職人に協力のお礼をし、ケルベロス達は工房を後にした。

作者:神無月シュン 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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