竜牙兵、現るッ!

作者:ゆうきつかさ

●予知
 昼下がりの公園。
 公園には犬の散歩をしている年配の男性や、仕事をサボッてベンチで昼寝をしているサラリーマン、ほんのりと頬を赤らめ、恋人が来るのを心待ちにしている少女……。
 ……その目の前で事件は起こった!
 噴水の中央に突然巨大な牙が突き刺さると、その牙が、鎧兜をまとって骨の化け物へと姿を変えたのだ。
「オマエたちの、グラビティ・チェインをヨコセ」
 骨の化け物は、そう言うと、周囲にいる一般人達を無差別に殺戮し始めた。
「グァァァハハハ」
 血と臓物の溢れた噴水の中で、骨の化け物の咆哮が、響いていた。
●都内某所
「ネイ・タチバナヤ(天秤揺らし・e00261)さんが危惧していた通り、こういった事件が発生してしまうようです。三浦半島南端の城ヶ島がドラゴン勢力に制圧されました。このドラゴン勢力は、鎌倉の戦いの後、エインヘリアルとの勢力争いを見据えて城ヶ島に潜伏・集結していたようです。ドラゴン達は、ケルベロスに負ける筈は無く、真の敵はエインヘリアルであると見做していたのでしょう。鎌倉奪還戦の敗北に驚いたドラゴン勢力は、城ヶ島に拠点を築き、防衛力を高めようとしています。この拠点化の一環として、城ヶ島周辺の市街地に、竜牙兵を送り込んで破壊工作を行おうとしているのです。このままだと、多くの人間が殺されて、グラビティ・チェインを略奪されてしまう事でしょう。急ぎ、ヘリオンで現場に向かって、竜牙兵の凶行を阻止してほしいのです。ただし、竜牙兵が出現する前に、周囲に避難勧告をすると、竜牙兵は他の場所に出現してしまう為、事件を阻止する事ができず、被害が大きくなってしまいます。竜牙兵が出現し、皆が、ヘリオンから降下して戦場に到着した後ならば、警察などによる避難誘導を始められるので、一般人の避難はそちらに任せて、可能な限り早く竜牙兵を撃破して欲しいのです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「現れる竜牙兵は3体。3体とも、ゾディアックソードを装備しており、その武器を使って攻撃してきます。ケルベロスが現場に到着すると、竜牙兵は、ケルベロスとの戦闘を再優先として行動してくるようで、周囲の一般人を攻撃する事はなくなります。竜牙兵は、劣勢となり敗北しそうな状況になっても、戦意を失う事無く、最後まで戦いを挑んでくるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
「竜牙兵の目的は、拠点である城ヶ島周辺から人間を駆逐する事です。大きな被害を出してしまえば、周囲の人々の不安を煽り、ドラゴン達の思惑通り、人々が城ヶ島近辺から逃げ出して、周囲が無人になるかもしれません。当面の被害を防ぐのならば、避難すれば良いですが、無人の場所を作ってしまうと、その周囲をドラゴンが拠点化し拠点の規模が大きくなり、更に広い範囲で、竜牙兵の事件が起こってしまいます。これを繰り返せば、最終的には日本全土がドラゴンの拠点となってしまうでしょう。そうさせないために、なんとしても、ここで被害を食い止めなければなりません」
 そして、セリカはケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。


参加者
アシェリー・サジタリウス(射手座の騎士・e00051)
ネイ・タチバナヤ(天秤揺らし・e00261)
眞月・戒李(想失ユークレース・e00383)
八江・國綱(もののふ童子・e01696)
弘前・仁王(地球人の降魔拳士・e02120)
高原・結慰(四劫の翼・e04062)
叢雲・秋沙(ウェアライダーの降魔拳士・e14076)
アテナ・エウリュアレ(オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16308)

■リプレイ

●城ヶ島周辺の市街地
「まさかと思っていたが、本当に現れるとは……。まぁ、それで被害を減らせるんなら、それで良え。景気よく、おさめちゃろうかねぇ!」
 ネイ・タチバナヤ(天秤揺らし・e00261)は仲間達と共に現場に到着すると、まわりの一般人に対してケルベロスの到着を伝えた。
 次の瞬間、噴水の中央に突然巨大な牙が突き刺さり、その牙が鎧兜を纏った骨の化け物姿を変えていく。
「うわあああああああああ、化け物だああああああああああ」
 それを目の当たりにしたサラリーマンが悲鳴を上げ、這うようにしてその場から逃げ出した。
「皆さん、落ち着いてください。ここはわたくし達、ケルベロスにお任せください」
 アテナ・エウリュアレ(オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16308)が一般人達を守りながら、避難誘導を開始する。
 一般人達はパニックに陥りながら、アテナが誘導した方向に逃げていく。
「それにしても……一体、誰の牙かしら? 最近、随分と活発になってきたような気がするけれど……」
 そんな中、アシェリー・サジタリウス(射手座の騎士・e00051)がアイズフォンで警察に一報を入れ、周囲に避難勧告、交通規制を行ってもらう。
「……とは言え、戦争後の後始末にしては、大きな痕が残ったね」
 眞月・戒李(想失ユークレース・e00383)がやれやれと言わんばかりに溜息をつきながら、一般人に斬りかかろうとしていた竜牙兵Aの行く手を阻む。
「ナンダ、オマエタチハ……」
 竜牙兵Aは予想外の出来事に驚き、警戒した様子で後ろに下がる。
 おそらく、竜牙兵達にとって、ケルベロス達は想定外の敵だったのだろう。
 逃げ惑う一般人達を追いかけたい気持ちもあるようだが、自分達にとってケルベロスの存在が厄介なものであると本能的に理解したのか、サッと素早く身構えた。
「黄道十二騎士、射手座のアシェリー、参る」
 自ら名乗りを上げながら、アシェリーが竜牙兵達に攻撃を仕掛けていく。
「あなた達の存在そのものが凄く不快、鬱陶しい、目障り。消えてくれない?」
 高原・結慰(四劫の翼・e04062)も間合いを取りつつ、竜牙兵達対して言い放つ。
「ボク達は、戦うことができない人達の代わりに刃にならないといけない。まぁそういうわけだし、いっちょゴミ掃除といこうか」
 そう言って戒李が自分自身に気合を入れる。
 ここで竜牙兵達を逃がすような事があれば、一般人達に被害が及ぶ事は確実。
 それを防ぐためにも、ここで竜牙兵達を倒さねばならない。
「……随分トヨク喋ル蠅ダナ。目障リナ奴等メ!」
 それでも、竜牙兵Aはまったく怯まず、ゾディアックソードを振り回す。
 だが、竜牙兵Aの予想に反して、空振り。
 結慰の実力を甘く見ていたせいで、かすりもしなかった。
「コイツラ、普通ト違ウ……」
 横にいた竜牙兵Bがそれを理解し、警戒心を強めていく。
「悪いけど自由には動けないですよ」
 弘前・仁王(地球人の降魔拳士・e02120)が、竜牙兵Bの逃げ道を塞ぐ。
「マサカ、コンナ事ニナルトハ……。ダガ、スベテ倒セバ、イイダケノ事……」
 竜牙兵Cが気持ちを切り替え、仁王達に攻撃を仕掛けていく。
 先程とは違い、竜牙兵達も覚悟を決めたためか、動きに無駄がなく、油断していると一気に形勢を逆転されてしまいそうなほどの均衡状態。
「例え、あなた達がどんなに強くとも……、罪なき人々を苦しめる存在は許せません。わたくし達ケルベロスが倒して見せます」
 その攻撃を迎え撃つようにして、アテナが竜牙兵Cの行く手を阻む。
 それと同時に竜牙兵Cが『キエエエエッ!』と奇声を響かせ、ゾディアックソードを振り下ろす。
「思い通りにさせない為にも被害を出さないで倒さないとね。ここでそんな簡単に事が運ぶはずがないと思い知らせてあげないと……」
 間一髪でその攻撃を受け止め、叢雲・秋沙(ウェアライダーの降魔拳士・e14076)がニコリと笑う。
 竜牙兵達の攻撃力は思っていたよりも高そうだが、まわりには力強い味方がいるため、負ける気がしないようである。
「隠形……」
 それと同時に八江・國綱(もののふ童子・e01696)がバイオガスを発生させ、戦場内の様子を見えなくするのであった。

●竜牙兵
「こそこそ、ちょっかいを出さずに、ずっと寝てれば良いのに……。ほんと、バカだね……」
 結慰が皮肉混じりに呟きながら、竜牙兵Aに攻撃を仕掛けていく。
「ナラバ、望ミ通リ、寝カセテヤロウ。……永遠ニ、ナ!」
 竜牙兵Aが一気に間合いを詰めて、ゾディアックソードを振り下ろす。
 その一撃をギリギリのところで避けたものの、竜牙兵Aが放った第二撃を食らってバランスを崩した。
「何か勘違いをしているようですが、永遠の眠りにつくのは……あなた達の方です」
 すぐさま、アテナがグラインドファイアを放ち、竜牙兵Aの身体を炎に包む。
「貴様ラァァァァァァァァァァァァァア!」
 竜牙兵Aが殺気立った様子で、ゾディアックソードを振り回す。
「……遅い」
 それに気づいた國綱が、竜牙兵Aにスターゲイザーを放つ。
「貴様ラ、絶対ニ……許サン!」
 竜牙兵Aはプライドを激しく傷つけられ、後先考えずに突っ込んでいこうとする。
「オ、落チ着ケ! 感情ニ身ヲ任セテ戦ッタトコロデ勝機ハナイ!」
 竜牙兵Bが竜牙兵Aに警告をしつつ、その行く手を遮った。
「オ、俺トシタ事ガ……」
 竜牙兵Aもその事を十分に理解していたつもりのようだが、怒りで我を忘れていたようである。
「俺達ガ協力シテ戦エバ、コンナ奴等、楽勝ダ!」
 その横にいた竜牙兵Cも、ハイテンションで攻撃を仕掛けていく。
「確かに、力を合わせて戦えば、私達にも勝てるかも知れませんね。ですが、それは可能性の話であって、絶対ではありません。少なくとも、一般人と同じように扱っているのであれば、考えを改めておいた方が身のためですよ」
 仁王がボクスドラゴンと連携を知りつつ、竜牙兵Cにグラビティブレイクを放つ。
「グワアアアアッ!」
 その一撃を食らった竜牙兵Cが、悲鳴を上げてゴロゴロと転がっていく。
「貴様ァァァァァァァァァァァァァァァァァア!」
 それを目の当たりにした竜牙兵Bが、ゾディアックソードを振り上げて襲い掛かってきた。
「これで終わりよ。滅びなさい」
 アシェリーが竜牙兵Bの懐に潜り込み、近距離から絶空斬を放つ。
「グワアアアア、マダダ、マダマダァ!」
 それでも、竜牙兵Bが最後のあがきとばかりに、激しく抵抗!
「奥義……椿」
 続いて國綱が神速の連続斬りを仕掛け、竜牙兵Bの身体を斬り刻む。
「ヨ、ヨクモオオオオオオオオオ!」
 これには竜牙兵Aもブチ切れ、狂った様子でゾディアックソードを振り回す。
「……ぶっ飛べ、三下ッ!」
 その攻撃を受け止めながら、ネイが竜牙兵Aをブン殴ろうとする。
「笑ワセルナッ! オ前ノ拳ナド、弾キ返シテヤルゥ!」
 だが、竜牙兵Aは小馬鹿にした様子で、ネイの攻撃を受け止めようとした。
「女の拳と甘く見ん方が良えよ……ッ!」
 その間にネイが一気に間合いを詰め、全力全開が竜牙兵Aを殴る。
「グガァ! 馬鹿ナ……」
 竜牙兵Aが信じられない様子で、激しくフラついた。
「……劫火よ、私の求めに応えよ。不浄なる咎人達を祓い清め賜え」
 それに合わせて結慰が熾炎業炎砲を撃ち込み、竜牙兵Aの身体を炎に包む。
「グハッ!」
 続け様に攻撃を食らった事で、竜牙兵Aがバランスを崩して、近くのベンチに突っ込んだ。
「オ、オボエテイロヨ」
 さすがに勝ち目がないと判断したのか、竜牙兵Cが捨て台詞を残して一目散に逃げ出した。
「……逃がさないよっ!」
 それに気づいた秋沙が竜牙兵Cの後を追い、降魔真拳を叩き込む。
「グガアアアアアアアアアアアアア」
 その一撃を食らった竜牙兵Cが悲鳴をあげ、バラバラと音を立てて崩れ落ちた。
「バ、馬鹿ナ……。コンナハズデハ……コンナハズデハァァァァァァァア!」
 竜牙兵Aが最後に力を振り絞り、一気に間合いを詰めていく。
「綺麗な空だよ。ほら、見える?」
 戒李が殺意や戦意を全て消し去り、まるで友人に声をかけるようにして、竜牙兵Aの死角から間合いに入り込み、致命傷となる部位を切り裂いた。
「グ……ガ……ガァ……」
 竜牙兵Aは空を見る余裕すらなく、地面に突っ伏すようにして倒れ込んだ。
「何とか、無事に終わったね」
 秋沙がホッとした様子で溜息をもらす。
 竜牙兵達はバラバラに崩れ落ちたまま、ピクリとも動かない。
 これもケルベロス達が迅速に行動したおかげである。
 そして、ケルベロス達は壊れた物をヒールグラビティで修復した後、その場を後にするのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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