●誘われた少女と、誘う少女
秋田県中部の山あいにある町で、螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)は登山道に立っていた。
先日戦った寄生型攻性植物は、正義感の強い者を呼び寄せるのではないか。
セイヤはそんな予測と、山中で見つけたわずかな痕跡から次なる事件への警戒を行っていた。
そして彼は、昨夜から行方がわからないという少女に行き当たった。
『あの子は曲がったことが嫌いな性格で……黙っていなくなるような子じゃないんです』
姿を消した白雪という名の少女について、母親はそう語った。
彼女は、自分もケルベロスになって戦いたいと、常々言っていたそうだ。
「ケルベロスになりたい、か……」
セイヤは、かつて同じようなことを言った少女のことを思い出した。彼に救われ、ケルベロスに憧れるようになった少女。名は……。
「……御門・撫子だったな。元気にしているといいが……」
撫子もおそらくは寄生型攻性植物に狙われる条件に合致するだろう。
とはいえ、今は山中に入り込んでしまった白雪のことだ。
今ならまだ間に合うかもしれない。攻性植物にされてしまう前に、集めた情報をヘリオライダーに渡して予知してもらわねばならない。
「……嫌な予感がするな。急がないと」
寄生型攻性植物の事件に関わってから、ずっと感じている予感。
撫子のことを思い出したとき、それが強くなったのは気のせいだろうか?
山に一度背を向けたとき、セイヤはふとそう思った。
●人型攻性植物を狙え
ケルベロスたちが集まると、ヘリオライダーに代わって、まずセイヤが口を開いた。
「最近活動していた寄生型の攻性植物だが、生み出してた奴の居場所が1か所わかった」
寄生型攻性植物を生み出していた黒幕の1体を撃破するチャンスとなる。もしも取り逃がせば、決着をつける機会がいつになるかわからない。
セイヤは秋田県仙北市の山中に敵がいることを告げる。
「敵は県内で行方不明になった女子高校生を、攻性植物に変えようとしています。放っておけば、彼女はデウスエクスになって市街地へ襲撃をかけるでしょう」
ドラゴニアンのヘリオライダーがセイヤの説明の後を引き継いだ。
敵の居場所はだいたいわかっている。秋田駒ケ岳の一角だ。風景を元に探せば発見できるだろう。
現場は木々に囲まれた広場になっており、戦闘するのに支障はないという。
敵はひときわ大きな木を背にしており、行方不明の少女はその前にひざまづいているらしい。
余計なことをせずに現場を探せば、おそらく少女が攻性植物になるまえに攻撃を仕掛けることができるだろう。他に配下はいない。
「寄生型の黒幕も、やはり人型をしています。黒い髪をした女性のようです。服は着ていませんが、要所を葉っぱや蔦で覆っています」
さらに詳しく敵の特徴を語るへリオライダーの説明を聞いて、セイヤが険しい顔をした。
「どうかしましたか?」
「いや……気にしないでくれ。知り合いに……似ていると思っただけだ」
攻撃をしている場面が見えたわけではないので、戦闘能力の詳細はわからない。
ただ、背中にまるで翼のように生えた葉っぱの塊は刃物のように鋭利で、武器として効果を発揮するだろう。垂れ下がった蔓も高い伸縮性を持ち、攻撃に使えそうだ。
また、胸元や髪に生えている花がなんらかのエネルギーを発振する効果を備えていることが推測できるという。
どんな攻撃であるにはせよ強力であることは間違いないので注意が必要だ。
「人型攻性植物は、人間に攻性植物を寄生させて配下を増やす能力を持ってる。厄介な能力だ」
ヘリオライダーが説明を終えたところで、セイヤは言った。
「だから、ここで撃破しなきゃならない。必ずだ」
言い切る彼の言葉は、どこか自分に言い聞かせているようでもあった。
参加者 | |
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御門・愛華(魔竜の落とし子・e03827) |
斎藤・斎(修羅・e04127) |
螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343) |
嘩桜・炎酒(星屑天象儀・e07249) |
レオン・ヴァーミリオン(リッパーリーパー・e19411) |
エリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850) |
嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437) |
川北・ハリ(風穿葛・e31689) |
●攻性植物の潜む山
(「おまえは……撫子、なのか……? 正義感の強かったおまえが何故……!」)
渦巻く思いを胸に宿したままで、螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)は敵――ではなかったはずの少女が潜む場所を探して足早に進む。
「なあ、セイヤ殿。あんまり気を張っとると、持たへんで」
嘩桜・炎酒(星屑天象儀・e07249)が顔をしかめているセイヤに声をかける。
「ああ……わかってはいるんだが……」
年の離れた親友が気づかう言葉をかけてくれていても、彼の表情は晴れなかった。
「事情は聴いとるさかい元気がでぇへんのはわかるけどな。まったく、えらい話やね」
今できるのは、セイヤにとって最良の結果になるように考えることだけだ。
目的地の目印は大きな木。やがて、それらしい木が見つかった。
「真打ち登場ってワケですか。楽しくなりそうですね! 楽しんじゃいましょ!」
近づく戦いを前に、嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437)が笑みを見せる。
「あんなあ、姉ちゃん……」
口を開こうとした炎酒の肩にセイヤが手を伸ばす。
「いいんだ、炎酒。撫子のことは……俺の個人的な問題だ」
「けどなあ……」
不満げな顔をした炎酒に、セイヤは首を横に降ってみせた。
「私は楽しもうとは思いませんが」
淡々とした声を出したのは川北・ハリ(風穿葛・e31689) だった。
「救える命を救わないことなんて出来ません。撃つべき敵を撃たないことも、同じです」
程なくケルベロスたちは目的の場所にたどり着く。
「いました……。白雪さんと……攻性植物です。あの方が……やっぱり、御門・撫子さんなんでしょうか?」
斎藤・斎(修羅・e04127)が大樹の前にたたずむ2人の少女を指し示した。
遠慮がちに問いかけた斎にセイヤは応じなかった。
「撫子……」
白雪に語りかけている少女を見て、セイヤの口から噛み締めるような声が漏れる。
「セイヤさんの複雑な胸中は察するにあまりあるね……。でも、僕たちはまず白雪さんを救わなくてはいけません」
エリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850)の言葉にもまた、迷いがにじむ。
「うん。いま犠牲になろうとしている人は絶対に助け出す。だけど、あの子は……すでに時間が経ちすぎている」
大人びた雰囲気の落ち着いた少女が言う。
少女が助かるとすれば、そもそも似ているだけの別人だったときだけだろう。本物の御門・撫子はどこかで元気でいる。だが、セイヤの表情を見れば、そうは考えられない。
「無理だとしたら、その身体と記憶を利用しているデウスエクスだけは必ず仕留める。彼女を解放する。それが彼女の尊厳を守る、ただ一つの手段だから」
御門・愛華(魔竜の落とし子・e03827)の声は、森の間に小さく響いた。
姿を発見されにくくする気流をまとって、セイヤと麻代が敵に近づいていく。
けれど、セイヤが少女たちの間に飛び込もうとしたところで、敵は顔を上げた。攻撃や回復の技を使おうとすれば気流の効果はなくなる。
仲間たちが急いで前進する。
「……せっかくこの子が同志になってくれるところだったのに」
撫子の顔をした攻性植物は素早く立ち上がり、少女をかばうように前に出る。
攻性植物が作る怒りの表情を、レオン・ヴァーミリオン(リッパーリーパー・e19411)は涼しい顔でながめた。
それから、セイヤを横目で見る。
「さて、諦めるまでなら手を貸すよ。さあ、届くかな?」
狼の紋章が刻まれた大型のメイスを青年は軽々と振り回す。
からかうような言葉に、彼は答えなかった。
●助けられた少女
「撫子!」
「……私のこと? そんな名前だった気もするね」
側面に回り込みながら呼びかけるセイヤに、撫子はそう言い放った。
「どうして、お前が攻性植物に寄生されている!」
「答える必要あるかしら?」
動き出した蔓がセイヤに襲いかかり、縛りあげる。
斎は地獄化した両目を一瞬だけ閉じた。人が傷つくところは好きではない。受けた傷以上につらそうな顔をしているなら、なおさらだ。
(「救えるか、救えないか見極めないと……でも、どうすればわかるのでしょうか」)
それでも回復役の斎は離れた位置で敵を見る。かすかな可能性も見過ごさないように。
「ねえ、手伝ってよ!」
目をそらさず、彼女は地獄化した家族に呼びかけた。
思ったより大きな声が出てしまったことに、斎自身が驚く。
滅ぼされた故郷の人々が集ってくる。妄執が形となり、物理的な攻撃力を伴って仲間たちを支援し始めた。
魔を食らうセイヤの拳が敵の背にある葉っぱの塊を引き裂いた。炎酒が続いて、重力を操った蹴りを叩き込む。
「あなたをここで解放します。いくよ、ヒルコ」
愛華が呼びかけると、彼女の腕が禍々しい竜のものへと変わり、敵を幾度も切り裂く。
さらに、エリオットが起こした爆発に鼓舞されながら、レオンがオウガメタルに包まれた拳を叩き込んだ。
亡者のうごめく戦場を、気流をまとったままの麻代が迂回していく。
彼女の動きに敵はまだ注意を払っていないようだ。気づいていないのか、それとも戦闘を優先しているのか。
ハリは銃を構えたまま回り込むように移動する。
敵が麻代に注意を向けないようにするためだ。
呆然としている少女の手を麻代が引いた。
「立てますか? 立てるなら、さっさと逃げてください」
「あ……ここ、どこ……?」
「森の奥ですよ。覚えてないんですか?」
手を引かれた少女が大樹から離れる。
「わからなくてもいいから、巻き込まれない場所に逃げててくれない? そこにいられると邪魔なんだよねぇ」
レオンは離れるよう促しながら敵と彼女たちの間に割って入り、麻代が戦場の外へと白雪を連れて行った。
「どこに連れてくつもり? その子は私の仲間になるのに」
白雪に注意を向けた敵の気をそらすべく、ハリは狙いをつける。
「違いますよ。……撃たれたいなら、仕方ありませんね」
呟きと共に放った淡緑色の魔力弾は、敵の体を覆う植物を撃ち抜いて引き裂く。
麻代が戻ってくるまでそう時間はかからなかった。
攻性植物が背中にある葉っぱの塊を揺らすと、毒を秘めた硬い葉っぱがケルベロスたちに襲いかかる。
「やらせない!」
広域に広がる葉っぱから愛華がセイヤをかばった。
麻代は戦場に戻ると、葉っぱから腕で体をかばいながら前進する。
手を振り上げると、地獄の炎が掌を包み込んだ。
「根性!」
炎の掌で敵の頬を引っぱたく。怒りの目が真っ向からにらみつけてきた。
「何するのよ、この悪党」
「悪者で構いません。そっちの方があなたもやりやすいだろうし、何より私も楽しめる!」
なおも正義を自称する攻性植物に、麻代は薄笑いを浮かべてみせる。
「その正義で腹は膨れましたか? その正義で誰かを救えましたか? いったい誰のための正義ですか?」
目の前で攻性植物の胸に咲いた花が開いていく。
「黙りなさい。私は正しい。だから私は正義なの」
光が麻代を貫く。
「何一つ決まっていないのなら自己満足ですらない。あなたの正義はもうどこにもない」
仲間たちの多くは敵に同情的だ。
別に文句はない。ただ、自分のスタイルではない。
敵の攻撃に備えながら彼女は二振りの刀を構えなおす。
●助けられない少女
セイヤは言葉をかけながら撫子と戦い続けていた。
けれど、どんな言葉も彼女には届いていないようだった。
戦いが長引いているのは、敵が強いからか、それとも迷いのためか。
ケルベロス側に蓄積しているダメージもかなりのものだ。麻代や愛華、ミミックのロツァイスの傷は特に深い。
敵を癒しながら戦うことで犠牲者を救えた事件もかつてあったそうだが、それをするにはリスクを伴う。選ぶに足る理由は今のところない。
そもそも、兆候とはなんであるのかさえ不明なのだ。癒しながら戦うことで助けられる可能性を試したいなら、敗北覚悟でやるしかないだろう。
ただ少なくとも、撫子が正気を取り戻す瞬間は一瞬たりともなかった。
(「助ける方法は……ないのか……?」)
妖刀が弧を描く。
植物を引きはがそうとするが、狙った場所に当てること自体ほぼできない。
偶然植物部分だけを傷つけられたこともあったが、それでも撫子は苦痛の声を上げた。
「こっちの言葉なんて聞いてないんじゃない?」
レオンはセイヤに告げた。
敵から距離をとっている彼は、敵の様子をよく見ていた。怒りの表情を浮かべて、正義を語る言葉を吐いても、どこか作り物めいている。
敵はおそらく正義を名乗ることが有用だと考えているだけだ。
「ねえ、まだ生きてるかい? まだ生きたいかい? 叫んでみろよ、君の中に自分の正義があるなら。その植物は、君の力なんかじゃないんだから」
「わけがわからないこと言わないで。私が正義で、あなたたちは悪よ。だから、私はグラビティ・チェインを奪ってもいいの!」
やはり感情も、信念も感じられない。
「撫子! そんなことを言うな!」
呼びかけたセイヤへと撫子がうるさげに手を振る。
同時に胸の花から光が放たれた。
愛華は迷わず光の前に飛び出した。
「……それはダメ。絶対にダメだよ!」
直撃した光が少女を吹き飛ばす。
「あなたの中に御門撫子さんが残っているかは分からない、だけど、彼女の姿でみんなを、彼を傷付けさせはしない!」
手痛いダメージを受けた愛華に斎が手を向けた。麻代もサキュバスの霧を放出する。
それでも、足りない。
前衛を薙ぎ払う葉っぱの雨を受けて、愛華は倒れた。
「……申し訳ありませんが、彼女を救う手段はもうないんだと思います」
「倒すしか、ないんだな」
斎の言葉にセイヤがうなづく。
「諦めちゃうかー。なら是非もない。そこで足を止めているといいさ。きっちり殺しつくして終わらせるから」
レオンが言った。
「いいや、俺が止める。撫子の為にも、ここで止める……。必ず……!」
首を振り、漆黒のオーラをまとってセイヤは突撃する。レオンの影も地を這いずる鎖となって襲いかかり、撫子の機動力を奪った。
エリオットはセイヤを追ってゾディアックソードに雷をまとわせる。
正義感が強く、ケルベロスに憧れていたという撫子。きっと彼女自身もまた、攻性植物によって変えられてしまった『被害者』だ。
「それでも……今を生きる人を守るために、僕は……僕は!」
貫く刃が撫子の体を覆う植物を引き裂いた。
改造された被害者を殺さねばならない戦いは初めてではない。撫子に改造された者や、かつて戦った蜘蛛の脚を持つダモクレス。
彼女の背後にはおそらく真の黒幕がいるのではないかとエリオットは推測していた。
できれば情報を聞き出したかったが、今までの問答からして無理そうだ。
ケルベロスたちの攻撃が攻性植物を削り取っていく。削られながらも敵は光を放ち、あるいは硬い葉っぱをまき散らして反撃する。
「楽しいですねえ! あなたももっと楽しんでくださいよ!」
麻代が叫んだ。
愛華が倒れ、1人で攻撃を受ける彼女を自身と斎の回復がギリギリで支えている。
炎酒はセイヤへと視線を向けた。
「セイヤ殿、大丈夫か? とどめを刺しにくいっちゅうなら……」
普段から鋭い眼光をさらに険しくしている彼に、声をかける。
だが、セイヤは首を横に振った。
「俺がやる。それが、彼女を救えなかった俺の責任だから……止めないでくれ」
「止めやせんさ。ただ、お手伝いくらいはさせてくれな」
親友は炎酒の言葉に頷いた。
無言のまま放ったハリの銃が撫子の蔓を千切り飛ばす。炎酒がグラビティを中和する光弾を撃っていたこともあり、攻撃の威力は徐々に下がっていっている。
麻代へと伸びた蔓が彼女を捉えるが、倒すにはいたらない。
「どうして……正義を名乗れば必ず勝てるはずなのに……」
「名乗りゃええもんやなかろ。俺はお前さんのことは知らんけど、そないなことくらいわかってたはずやないか?」
「そんなの……知らない」
斎が麻代を回復するのに合わせて、炎酒は前進。一気に懐に入る。
「目標確認・距離OK・圧縮ばっちり。さぁて、ひとつ奥の手でも見て行けや!!」
圧縮した空気を、エリオットが植物に開けた穴から叩き込む。
思わず後退した先に友人がいることが、炎酒には分かっていた。
「打ち貫け!! 魔龍の双牙ッッ!!」
漆黒のオーラがセイヤの全身に漲り、利き腕に黒龍が宿る。
拳が攻性植物をとらえた瞬間、解放されたオーラは少女の体を飲み込み、破壊した。
●もうどこにもいない彼女
攻性植物が消え去り、後に残っているのは少女の死体だけだった。
「さようなら。地獄で会おう」
もはや動くことのない彼女へとレオンが別れを告げる。
「……泣けませんね。一番泣きたいのは、わたしじゃないから」
エリオットに助け起こされた愛華が、セイヤの背中を見て呟いた。
倒れた少女を見下ろして、うつむいたままの彼。
「これにて一件落着! というにはお悔みムードですか? まぁ知り合いなら致し方無しですが」
麻代の言葉に、セイヤは顔を上げてにらみつける。
ただ、固めた拳を叩きつけた先は地面だった。
「気にすなや。それよか、葬ってやらんと」
炎酒にうながされて、彼は動き出した。
「親元に連れ帰ってあげましょう」
斎はケルベロスコートを亡骸にかけた。
表情を動かさないようにしているが、彼女もまたどうすれば助けられたのか自答しているのが見て取れる。
セイヤは抱き上げようとする斎を制して、少女を抱き上げた。
「助けられたハズなのに……俺が、もっと早く気づいていれば……救えたはずなのに!」
冷たくなった体を支えた瞬間、セイヤの口から叫びが漏れていた。
「なにも彼女が悪いってワケじゃありませんよ。これが正義だと吹き込んだ奴がいるだけです。彼女の正義を利用して食いつぶした奴が」
重い沈黙を破ったのはまたしても麻代だった。
「そうだね。この世界に、卑劣な罠を仕掛ける敵がいる限り、僕たちは何度だってこんな思いをするだろう」
エリオットが再び剣を抜く。
「何度この手を血に染め、心を切り裂けば気が済むのかと自分に問いながら。それでも……いや、だからこそ、僕たちは立ち止まるわけにはいかないんだ」
「ま、強い人と戦えるなら私はなんでもオッケーですけどね。食わず嫌いはしませんよ!」
剣へと誓うエリオットの横で、麻代は不敵に笑っている。
ハリは緑の瞳でコートにくるまれた少女の死体を見つめていた。
一連の事件で助けられなかった人と同じく、彼女のことも忘れられそうにない。
エリオットや麻代の言う本当の黒幕、犠牲を生み出す根源を撃つことができれば、この気持ちも変わるのだろうか。
「私は、何と戦えばいいのでしょうか」
無感動だった少女の疑問に答える者はいない。
険しい表情で歩き出したセイヤを追って、ケルベロスたちは帰路についた。
作者:青葉桂都 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年11月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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