魔法猫少女ゾンビーにゃん

作者:犬塚ひなこ

●属性過多!
 ハロウィンが終わりを告げて暫く。
 とある街では不思議な噂が流れていた。その噂とは真夜中の路地裏に猫耳を付けたゾンビの美少女魔法使いが現れる、という正に荒唐無稽なもの。誰もが信じず一笑に付す程度の話だが、それを本当に信じている者がいた。
「ゾンビーにゃんちゃん……まさに俺のタイプ!」
 真夜中、青年はぐっと拳を握り締めて噂の少女を夢想する。
 黒いマントにミニスカート、ドクロのステッキ。頭には黒猫の愛らしい耳、スカートの下から覗く長い尻尾。そして何よりも目立つのは、青白く生気のないツギハギの肌。
 噂になった以上はそんな存在が居るはず。否、居るべきだと信じた青年は夜な夜な路地裏を回っては魔法猫少女、通称ゾンビーにゃんを探し回っていた。
 そんなある夜、彼の前に魔女が現れる。
「何だお前は。ゾンビーにゃんちゃんじゃな……っ!?」
 驚く青年に魔女アウゲイアスは魔鍵を突き刺し、その心を覗いていった。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 そして、鍵を引き抜いた魔女は踵を返して去っていく。
 路地裏に残された青年は意識を失って倒れ、その代わりに具現化された新たなドリームイーターが出現した。その姿は勿論、青年が焦がれて想像した通りの魔法猫少女ゾンビーにゃんそのものだった。
 
●猫とゾンビと魔法少女
「今度の敵は、猫さんでゾンビさんで魔法少女なのでございますです」
 単刀直入に今回倒すべき相手の特徴を告げ、雨森・リルリカ(花雫のヘリオライダー・en0030)は仲間達に討伐を願った。
 被害者は眉唾物の噂に興味を持っていた青年。ゾンビ少女が好きだという彼が思い描いた姿となって現れたドリームイーターは今、本当に深夜の路地裏を徘徊している。
「敵が今どこに居るかまではわかりませんでした。ですが、今回の夢喰いは自分の事を信じていたり噂している人が居ると、その方に引き寄せられる性質があります」
 つまり、戦い易い路地裏に陣取ってゾンビーにゃんについて噂をすればいい。簡単な感想でも構わないので話をしていれば自ずと向こうから姿を現すだろう。
 敵は一体だが、その実力はケルベロスよりも強い。
 全員でかかってやっと互角の相手である為、油断すれば返り討ちに合うかもしれない。しかし、それは皆で協力し合えば勝利できるという事にも繋がる。
 リルリカは皆なら必ず勝てると信じ、其処で説明を終えた。
「ゾンビーにゃんさんの噂はきっとただの噂にすぎないものです。ですが、何かに興味を持つ心を奪うなんて許せないです!」
 青年にとって噂が現実と化したことは喜ばしいことかもしれない。しかし、ドリームイーターが存在する限り本人が目を覚ませないのでは本末転倒。
 彼の命を救い、興味を元在る場所に還す為にも――今こそケルベロスの力を揮う時だ。


参加者
天壌院・カノン(オントロギア・e00009)
メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)
白羽・佐楡葉(紅棘シャーデンフロイデ・e00912)
コンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)
アイヴォリー・ロム(ミケ・e07918)
クアトロリッツァ・チュチュヴィエンナ(モノトンエトワール・e20413)
キリリス・キリ(燦籠・e24394)
八坂・遥(掩蔽・e26752)

■リプレイ

●妄想パラダイム
 魔法少女。それは夢と愛を振りまく希望の存在。
 其処に定番の猫耳が合わせればとても愛らしい。だが――。
「猫耳、 浪漫だよなァ」
 真夜中の路地裏にて、八坂・遥(掩蔽・e26752)は小さな溜息を吐く。猫耳の魔法少女ならば未だ理解できる。しかし、これから出会う存在はゾンビなのだという。
「魔法少女自体はテレビでよく放送しておりますよね。私はあまり見たことがありませんが、実物を見てみたいですね」
 天壌院・カノン(オントロギア・e00009)が首を傾げて呟くと、遥も頷いた。
「だな。ゾンビーにゃんって、想像つかねェけど一度会ってみてェもんだ」
 されど、妄想が噂になったものが現実化するのは驚異だ。カノンが警戒を抱く中、メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)も周囲を見渡す。
「ゾンビーにゃんって猫でゾンビで魔法少女なんだっけ? いろいろ盛りすぎて訳が分からなくなってそうだよなぁ」
 属性過多だと断じるメリルディだが、ひとまずは噂で敵を誘き寄せることが先決。
「魔法猫少女ゾンビーにゃん、早口言葉みたいですね」
 キリリス・キリ(燦籠・e24394)は何度かその言葉を口にして、ちゃんと言えたことを密かに誇る。キリリスの早口言葉を聞いていたクアトロリッツァ・チュチュヴィエンナ(モノトンエトワール・e20413)は静かに双眸を細めた。
「噂話に尾鰭が付いた結果なのかしら。実在するなら是非お目にかかりたいわね」
 きっと、刺激的な時間を過ごせそうだから。
 暗闇の向こう側を軽く見遣り、クアトロリッツァはそっと思いを馳せる。キリリスも想像を広げ、ゾンビ少女を思った。
 死体であってもかの存在は愛らしいいままなのか。彼女はにゃんにゃんといった印象の煌びやかな魔法を使うのか、それともおどろおどろしいのか。
 その答えはおそらく、もうすぐ知ることが出来る。
「ゾンビが撒き散らすものって恐怖と腐敗臭くらいじゃないですか――。変身シーンのバンクで手足がぼとりと崩れたりとか洒落になりませんよ」
 白羽・佐楡葉(紅棘シャーデンフロイデ・e00912)は徐に自分の感想を零す。しかし、すぐに何かを思い至った佐楡葉はそれはそれで面白そうだと呟いた。
 既に路地裏は殺界が形成されており、ケルベロス達以外には人っ子一人いない。そろそろ訪れても良いはずだと感じ、アイヴォリー・ロム(ミケ・e07918)はきゅっと掌を握った。
「ゾンビ―にゃんは絶対にいるのです。わたくしが信じているのがその証拠!」
 今回の青年がそうだったように信じる心は力に変わる。
 アイヴォリーが意気込む最中、コンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)もこくこくと頷いて同意した。
「ああ、早く、お逢いしたい……にゃん」
 憧れの気持ちを込めたアイヴォリーが語尾に猫らしい声を付け加えた、その瞬間。
「にゃん!」
「と思ったらさっそく来たっスよ!」
 仲間の誰でもない声が路地裏に響き、コンスタンツァが前方を指さした。仲間達は瞬時に身構えて敵の声が聞こえた方を見据える。
 其処には猫耳と黒いマントにミニスカート、ドクロのステッキを構えた如何にもな魔法少女ゾンビが立っていた。
「はーい、ゾンビーにゃんですにゃん! 今夜のイケニエはあなた達にゃん!」
「にゃんっスかそれ。間違えたなんっスかそれ! 属性盛り込みすぎて痛いっスよ!」
「やはり腐った臭いがしますね」
 コンスタンツァが思わず突っ込み、佐楡葉が冷静に状況を判断する。
 敵はにこりと、否――にやりと笑ったと思うとステッキを構えていきなり魔法を放とうとしていた。来るぞ、と遥が即座に注意を呼びかければ、相棒テレビウムである彼方がぐっと意気込む。互いの背を叩きあって鼓舞した二人は戦いに意識を向けた。
「相手は強敵ですが、力を合わせて頑張りましょう」
 カノンが皆に決意を語ると、同じくしてメリルディもやや緊張した様子のクアトロリッツァとキリリスに視線を送る。
「気負い過ぎないで。勝利を掴むために皆が居るんだからね」
「ええ、大丈夫」
「先輩方の胸をお借りしてがんばりますよ」
 ケルベロスとして初めて戦いに挑む二人はしっかりと答え、敵を瞳に映した。
 そして、夜闇の中の戦いは幕開ける。

●にゃん!
 腐臭を伴う腐敗魔法が解き放たれ、魔力の塊が戦場に舞った。
 その狙いはメリルディに向けられていたが、すぐに飛び出したコンスタンツァが魔力をその身で以て受け止める。
「させないっスよ。全部受け止めてやるっス!」
 どろどろの怨念めいた力が齎した痛みを堪えたコンスタンツァ。そのまま彼女は情感たっぷりに加護のバラードを唄いあげた。礼を告げたメリルディも援護に入るべく、手にした爆破スイッチを押す。
「んー、またアウゲイアス。影は見えるのにまだ本体にはたどり着けないんだなぁ」
 一連の事件を起こしている黒幕を思いながらも、今は人助けだとメリルディは気を取り直した。仲間を鼓舞する色とりどりの煙が巻き起こる最中、アイヴォリーがはっとする。
「というか冷静に考えたら、設定盛り過ぎではないですか!」
 幾ら存在を信じていたとしてもあまりにも過多だ。アイヴォリーは握り締めたバールのようなものを振りあげた。そして、ひといきに敵との距離を詰めた彼女は先端の曲がった所でゾンビーにゃんを貫く。
「すごく痛いにゃん! でも負けないにゃーん!」
「なるほど。確かに前向きで可愛らしいです。でも近づくとお顔の縫い目が……いえ」
 なんでもございません、と頭を振ったキリリスは仲間の援護に移った。地面に魔力を込めた鎖を展開したキリリスは守護の魔法陣を描く。
 拡がる防護の力を受け、カノンは全身を地獄の炎で覆った。
「歪なる夢に終止符を打ちます」
 その為の力を自らに宿したカノンは敵を強く見据える。この間に佐楡葉が竜槌を掲げ、敵の横へと回り込む。魔法少女は素早く察知して佐楡葉の方に振り向いた。
 だが、僅かに佐楡葉が疾い。
「遅いですね」
 砲撃形態に変形した槌から竜砲弾が炸裂し、ゾンビーにゃんを次々と穿った。其処に生まれた隙を見出した遥が更なる砲撃を加えていく。
「ゾンビに猫耳に魔法使いねェ。……俺は趣味じゃねェ」
 本音をさらりと言葉にした遥は、信じている当人がいなきゃ意味がないと首を振った。
 そうして、遥達の連撃に彼方が続く。にゃあ、と鳴いて身構える敵に向けて彼方は凶器を振るった。
 よくやった、と彼方を褒める遥の背には普段は出していない悪魔の羽が見える。色付いた羽が真っ直ぐに伸びる様は戦いへの気概を表しているかのよう。
 そこへ、次なる攻撃が来る前に、とクアトロリッツァが駆ける。しなやかな動きはまるでバレエの演舞。カプリオールの跳躍で以て宙を翔けたクアトロリッツァは、そのまま流星めいた蹴りを敵へと見舞った。
「ごめんなさい、容赦はしてあげられないの」
「その意気ですよ。それでは、わたくしも――」
 仲間の勢いのある攻撃に賞賛を送り、アイヴォリーは禁縛の呪を紡いでいく。重なりあった攻撃に対してゾンビーにゃんは反撃を仕掛けようとする。
 すると、コンスタンツァが再び飛び出して狙われたキリリスを庇った。
「クールジャパンはわかるけど……こうなったらB級ゾンビムービーの本場アメリカで生まれ育ったアタシがゾンビ魂を叩きこんでやるっスよ!」
 自らをヘルキティ、地獄の子猫だと名乗ったコンスタンツァは鋭い一撃を放ち返す。
 そもそも、にゃーとかあざとかわいさを狙った語尾が痛い。ゾンビだったらチェーンソーもってこいっス、と文句を付けたコンスタンツァは敵を睨み付けた。
 キリリスは自分を庇った仲間に向け、ありがとうございます、と告げた後に力を紡ぐ。
「覚悟はしておりましたが、目の前で仲間が傷つくことはこんなにも……いえ、守っていただいた分は報います。必ず――」
 魔術切開による癒しの力を解き放ったキリリスは誓う。たとえ今の自分の力が弱くとも、仲間の背を支える役目だけはしかと果たそう、と。
 メリルディはキリリスの思いを肌で感じ取り、自分も恥じぬ戦いを使用と心に決めた。
「更なる加護をあげる。だから、思いきりお願い!」
 呼び掛けたメリルディが再びスイッチを押すとカラフルな爆風が戦場を彩る。それは負けない意志の籠った、文字通りの発破となった。
 しかし、敵も猫魔法や蠱惑の尻尾を振ってケルベロスを惑わそうと狙い続ける。
「ゾンビーにゃんはさいきょうむてきにゃん!」
「それはどうかな?」
 胸を張る魔法少女はまだ自信満々だが、問い返したカノンは首を左右に振った。振り上げた刃に虚の力を纏い、カノンは敵を激しく斬りつける。
 仲間の動きを見つめ、クアトロリッツァは竜槌を構えながら敵に近付いた。
「戦いは刺激的ね。まるで舞台で踊っているときのよう」
 率直な思いを口にした少女は戦場に躍り、闘いの中でも踊る。白と黒が織り交ざった髪が華麗に揺れる様はまるでアレグロのよう。
 このまま行きましょう、と確りと口にした佐楡葉はバスターライフルを構えた。
「ハロウィン当日に出てくれば人気者だったかも知れませんが、今頃現れても残念なサブカル地下アイドルにしか見えませんよ魔法猫少女ゾンビーにゃん」
「ええ。ハロウィンはとうに過ぎていますよ、お嬢さん。仮装は止めて帰りなさいな!」
 佐楡葉が鋭い冷凍光線を解き放ち、続いたアイヴォリーも武器を振るう。
 二人分の衝撃にゾンビーにゃんが大きく揺らぎ、体勢を崩した。その機会を逃さなかった遥は翼を広げ、勢いを付けて駆け出す。
「夢に終わりは付きものだって知ってるか? 知らねェなら、教えてやるよ」
 遥は身に纏ったブラックスライムを鋭い槍の如く伸ばし、一気に敵を貫いた。
 終結は間もなく訪れる。誰もがそう感じ、仲間達は互いに視線を交わしあった。

●にちあさ!
 其処から攻防は幾度と巡り、烈しい戦いが繰り広げられていった。クアトロリッツァやコンスタンツァ、アイヴォリーが仲間を庇い、キリリスが癒しを担い続ける。
 遥と彼方は見事な連携で敵を惑わし、メリルディもじわじわと力を削った。更にカノンと佐楡葉が攻撃手となって確実に相手を追い詰めている。
 メリルディは今こそ畳み掛ける好機だと感じ、勢いよく天を指差した。
「うー……じゃない。くー、りーーー!」
 麻痺毒を詰め込んだ特製イガグリを敵の頭上に召喚したメリルディ。それらを受けた敵は痛いにゃん、と暴れて苦痛から逃げ出そうとしている。
 その姿が少しばかりコミカルであっても油断も容赦も出来ない。
 カノンはもうすぐ散るであろう仮初めの命を思い、静かな言の葉を口にした。
「その魂に安寧がありますよう」
 そして、本に挟んだ蒐の栞を抜き取りったカノンは記録と栞を糧として、破壊エネルギーを生み出した。物語にも命と魂がある。ならば、夢から生まれた存在にだってきっと。
 仲間の落とした言葉を聞き、コンスタンツァも拳を握る。
「安寧の為にそのカワイイ顔をぶっとばして鼻っ柱へし折るっス。ゾンビならゾンビらしくスプラッタに内臓ぶちまけて散れっスにゃん!」
 言動は過激だが彼女が力を揮う理由は平穏の為。一撃が深く巡る中、遥と彼方は一瞬だけ顔を見合わせ、其々に攻撃に転じた。
「新しい色を、あげる」
 歪んだ夢にしか成れなかった存在に向け、遥は新たな色を注ぐ。重く冷たい彩の雨が敵を塗り潰し、染めてゆく。その様を見つめ、キリリスは唇を緩く噛み締めた。
 私も、と最後に攻撃に加わったキリリスは弾丸を放っていく。
 クアトロリッツァは彼女に機を合わせ、淡い言葉を魔法少女へと向けた。
「楽しい夜にしましょう。終わりまで、ずうっと」
 今宵、螺旋巻き木馬で歯車の夢を。くるくるくるりと回る景色は終焉に導くしるべ。
 アイヴォリーも目を細め、甘い蜜の力を夢に放った。それによって敵が膝をつき、崩れ落ちる。アイヴォリーが今です、と呼び掛けると佐楡葉がそれに応えた。
「大人しく埋葬されなさい魔法猫少女ゾンビーにゃん」
 そして、放たれたのは至近距離から見舞われる、最大出力での魔力弾。
 薔薇の海で溺死するように倒れた魔法少女に向けて、佐楡葉は別れの言葉を落とす。
 ――魔法少女たる者、日曜の朝にお披露目できる姿であるべし、と。

●心の裡に
 悪い夢の化身は消え、路地裏に静けさが満ちた。
 さようなら、とアイヴォリーが葬送の思いを紡ぎ、コンスタンツァも残滓を見送る。キリリスは肩の力を抜き、仲間達の方に振り返った。
「みな様のおかげで無事に終えることができました。また一緒に――」
 闘っていただけますか、とキリリスが問えば遥をはじめとした皆が勿論だと答える。そして、彼方を伴った遥は夢の主である青年の元へ駆けた。
 相手は顔も知らないが、遥が彼を心配する気持ちは人一倍。目を覚ましかけた青年に遥が水のボトルを差し出してやる。
「大丈夫かー。色々大変だったな」
「おにいさん、こんなところで寝てたらお化けに攫われちゃうかもね」
 メリルディも彼の傍に付き、状況を簡単に説明してやった。
「ねえ貴方、残念なお話だけれど。噂のゾンビーにゃんはもう居ないの」
 クアトロリッツァも諦めが付きやすいよう語り、現れたのは危険な存在だったと話す。 あまり変なところに出歩くとゾンビ以外の魑魅魍魎に食べられる。そう告げた佐楡葉は青年の傍に屈み込んで肩を叩く。
「大人しく二次元で我慢しとけ……な?」
「妄想は妄想だけに留めておいてくださいね」
「う……」
 カノンが合わせて告げたことで青年は項垂れたが、きっとこれでよかった。そう判断したコンスタンツァは息をつく。
「何はともあれ解決っスね!」
 しかし、青年は未だ落ち込んだまま。するとキリリスが一歩踏み出して問い掛ける。
「どうしてもゾンビでなければなりませんか? 例えば、ケルベロスにゃんなんていかがでしょう、にゃん」
「え? おおお、萌え……!」
 キリリスが戯れに猫のポーズを取って見せると、青年は急に瞳を輝かせた。クアトロリッツァは現金なものだと幽かな溜息を吐きながらも安堵を覚える。
「生きていれば刺激的なことなんてまたいくらでもあるに違いないわ」
 ね、と少女が話すとアイヴォリーも同意を示した。残念な気持ちはあったとしても命を繋げたということは新たな道に進めるということ。
「大切なものは目には見えないのかもしれませんね。かの名作でもそういってました」
 なんて、と悪戯っぽく微笑んだアイヴォリーは青年に手を差し伸べた。
 理想が実在してもしなくても、逢えなくとも構わない。
 何故なら――貴方の心に、皆の心に、ゾンビ―にゃんは確かに息衝いているのだから。
 夢物語は夢のまま。きっと、これが一番のかたち。

作者:犬塚ひなこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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