秋風残滓

作者:長針

 秋風が吹き、シンと静まり返ったオフィス街。
 鏡張りのビルが月を映し出し、幾重にも反射された柔らかい光がスポットライトのようにその場所を照らしていた。
 そこへふらりと黒い人影が現れる。
「もうすっかり秋も深まりましたわね……」
 教会の修道女を思わせる出で立ちの女性だった。清らかな装いとは裏腹に、酷く禍々しい気配。
 月明かりの下へ、躍り出るように女性が手を広げる。同時に彼女の両隣周囲の空間が歪み、三体の怪魚がぬらりと姿を現した。 
「おや……そうですか、ここでそんなことが。いいでしょう……私が喰らってあげます。その『因縁』を」
 夏の最中、真昼に行われた戦いの残滓。それを感じ取った女性が三日月のように口の端を吊り上げた。
 瞬間、鬼火のような光が地面を走り、魔法陣が描かれる。
 中央から、手が現れた。黒く錆びた銀色の腕。
 それは、かつて不帰を誓った戦士の、望まぬ帰還を示すものだった。

 一同が到着したとき、ちょうどダンテとボクスドラゴンを伴った降魔拳士の女性が話している最中だった。
「あ、皆さん。俺の名は不破野・翼。今回の作戦について少しばかり因縁があってここにいます。どうぞ、よろしくお願いします」
 こちらに気づいた降魔拳士の女性ーー不破野・翼(参番・e04393)が一同の元へ駆け寄り一礼する。遅れてダンテもやってきて翼の話を引き継いだ。
「これはこれは、おかまいもせずすみませんっす。それで早速作戦についてなんですが、今回の相手は因縁を喰らうネクロムによってサルベージされたローカストで、『黙示録騎蝗』の際に翼さんたちが倒した不退転侵略部隊の無名戦士なんっす!
 場所は前回と同じく大阪・京橋のオフィス街っすが、今回ローカストたちが現れるのは夜なんで戦闘に集中していただければ周囲に被害がでることはないと思うっす」
 書類をめくりながらダンテが説明を続ける。
「次に、戦闘に関してっす! 敵はサルベージされたオニヤンマ型の元不退転ローカスト一体と怪魚型の下級死神が三体。ローカストの方は、鎌状に変化させた羽で切り裂く、羽をこすり合わせて音波を放つ、鋭い牙を突き立てるといった方法でこちらに攻撃してくるっす!
 死神の方はこちらに噛みついてこちらの体力を吸い取る、宙を泳ぎ回り態勢を整える、怨念の塊を弾丸として放つのグラビティを使用するっす!
 ローカストは元々持っていた特徴である高い攻撃力と卓越した敏捷に加え、死神のサルベージによって複数のエンチャントが付与された状態で出現するんで早めにブレイクするのが吉っす! ですが飛行能力は失ってるんで対空戦略は今回は必要ないっす! 
 厄介なのは、死神は積極的にローカストを庇おうとするんで、序盤ではローカストへの攻撃は上手くいかないことも出てくると思うっす。ただ、ローカストの方は連携とか全く考えてないんで、一人だけ突出させるような状況を作るのは難しくないっす! 幸い、周囲は無人でビルも多いですから釣り出すなりおびき寄せるなりしやすい状況っすしね」
 そこまで言うとダンテは書類を小脇に抱え、
「各勢力との戦いが激化している中、戦力を温存したまま暗躍する死神の連中は非常に不気味っす。ですが、皆さんなら必ずヤツらを引きずり出せるって信じてるっす! それでは皆さん、お気をつけて!」
 居住まいを正して一同を敬礼で見送った。


参加者
アギト・ディアブロッサ(終極因子・e00269)
七奈・七海(旅団管理猫にゃにゃみ・e00308)
館花・詩月(咲杜の巫女・e03451)
不破野・翼(参番・e04393)
ラリー・グリッター(古霊アルビオンの騎士・e05288)
フィー・フリューア(赤い救急箱・e05301)
志藤・巌(壊し屋・e10136)
橘・火花(火の信徒・e26794)

■リプレイ

●真夜中の残照
 夜。
 冷たく乾いた風が吹くオフィス街の交差点。
 人工物で埋め尽くされる街並みにあって、ただそこだけが自然と混じり合ったような奇妙に有機的な景色を作り出していた。
 一見すると何が起こった判らない、しかし、然るべき者が見ればすぐさま理解しただろう。
 激しい戦いの末に刻まれた爪痕の名残、すなわち『修復された』場所である、と。事実、ここはある兵(つわもの)が散った夢の跡であった。
 しかし、
「……」
 交差点に佇み、三匹の怪魚を従える黒い影は間違いなくここで散った不退転ローカストそのものだった。
 そして、黒い影が動き始めたそのとき。
「にゃにゃ・にゃにゃみ参上!」
「オォ……!」
 燐光を放つ獣の巨腕を振りかざし、黒い影に躍り掛かったのは七奈・七海(旅団管理猫にゃにゃみ・e00308)だ。しかし、その一撃は怪魚に阻まれる。
「むう、やはりそうきますか。しかし、これならどうです?」
 言うや否や、七海はごつい携帯ライトを黒い影へ明滅させ、瞬く間に身体を反転。脇の歩道を直進して遠ざかる。
「……!」
 意志はなくとも本能の残滓が反応した。攻撃が己を狙ったものであることをすぐさま悟った影は疾走を開始。怪魚たちを置き去りにし、彼我の距離は見る間に縮めていく。
「そこなのです!」
 黒い影の追走を阻んだのは小柄な少女ーーラリー・グリッター(古霊アルビオンの騎士・e05288)だ。彼女は小さな身体を街路樹の裏に潜ませ、影が通り過ぎる寸前、グラビティ・チェインを込めた宝剣を鋭く振りかざした。
「……!!」
 黒い影から極光のようなオーラが沸き上がり、超高速で斬り返された翅が宝剣ごとラリーを弾き返した。
「おっとっと、七海さん!」
「おまかせあれです!」
 空中でトンボを切ってから街路樹の枝に着地したラリーが七海へと呼びかける。それを合図に七海が身体を素早く翻し、ごつい携帯ライトを影に向かって照射した。
「わわっ、これは……!」
 照らし出されたローカストの姿を見て、ラリーが珍しく困惑した声を上げる。
 極太の光線に照らし出された影は確かに情報にある通りだった。しかし、その銀の身体は黒く錆び果て、空を飛ぶためにあったはずの翅は肥大化させられ完全に異形の武器と化していたのだ。 
「オォっ!」
 わき目も振らず二体の怪魚がローカストの元へと急行する。故にローカストが立つ歩道の手前、ビルの間にある細い路地に潜む存在に気づくことができなかった。
「行かせません……!」
 黒衣をはためかせ怪魚の前に不破野・翼(参番・e04393)が立ちはだかる。二体の怪魚は進路を阻む敵を排除すべく口から怨念のこもった光を吐き出し、強引に押し通ろうとする。
「オオオッ!」
 攻撃を正面から受け止めながら、翼はむしろ怪魚たちの前へと踏み込む。怪魚たちはどうにかしてすり抜けようとするが、体の位置を巧みに替えて阻む彼女に動きを制御され立ち往生してしまう。
「無駄です! シュタール、今のうちに!」
「キュー!」
 主の命を受けた小竜がローカストめがけて体当たりを敢行する。
「……!」
 飛来した小竜をローカストはすかさず回避。しかし視界を隠す軌道であったため、疾駆する志藤・巌(壊し屋・e10136)への対応が僅かに遅れる。
「らああああああ!」
「……!」
 夜気を張りつめさせ、心臓をえぐり出すかのごとき殺気にローカストが強引に姿勢を修正する。同時にようやく追いついてきたもう一体の怪魚が巌の前に割って入ろうとした。瞬間、巌はギロリと怪魚を睨みつけ、
「鬱陶しい! てめぇが殴られとけや!」
 ありったけのグラビティ・チェインを込めた拳を怪魚へと叩きつける。
「オォっ!?」
 渾身の力で殴られた怪魚は地面に叩きつけられ、水揚げされた魚のように跳ね回りながら後方へと吹き飛ばされた。
「館花、今だ! でかいのくれてやれ!」
 巌の叫びがこだまし、死神たちとローカストが周囲を見回す。しかし、彼らの位置からは彼女の姿を見ることはかなわない。 
「…………」
 月明かりのオーラを手に集め、弓を引き絞るように構えるのは館花・詩月(咲杜の巫女・e03451)だ。電子頭脳の演算大半を狙撃に集中させているせいか、冷却が追いつかず放熱策である髪から陽炎が立ち上っていた。  
「火花、翼、お願い」
 詩月が合図を出し、それまでカンテラの炎をじっと見つめていた橘・火花(火の信徒・e26794)と死神の動きを阻む翼が同時に動いた。
「ほいほい、おやすいごようさ」
「頼みます、詩月さん!」
 半透明の破魔の御業が鎧と化し、金色の粒子が意識を覚醒させる。同時に詩月は掌に集中させた月明かりのオーラを射出。髪留めの冷却材が放熱策に吹き付けられ、濃く白い蒸気が立ちこめた。
「……!!」
 死角から放たれた月明かりの一撃が正確にローカストを捕らえ、その身にまとうオーラを削ぎ落とす。予期せぬ場所からの攻撃にローカストはよろめき、しかし、狙撃者に反撃すべくすぐさま駆け出す。
「よくやった、館花。後は俺が引き受ける。ぐ……!」
 それまで静観していたアギト・ディアブロッサ(終極因子・e00269)が詩月を庇うように前へ。地面に星座の紋章を呼び出しながらギロチンと化した翅を受け止めた。
「……!」
 攻撃を防がれたローカストが苛立たしげに顎を鳴らし、今度は翅を震わせる。しかし、音波が放たれる寸前、フィー・フリューア(赤い救急箱・e05301)が赤いケープを翻し、手にした攻性植物をそっと撫でた。
「はいはい、亡くなった方は霊安室に行ってねー。イヤだって言うんなら無理矢理にでも連れ戻しちゃうよ? こんな風にーー枝葉を伸ばし絡め取れーー」
 フィーの手の中で蔓を伸ばした攻性植物は棘茨の蔦をローカストへと絡みつかせ、磔刑のように拘束する。
「……! ……!」
 更に茨の蔦はローカストの身体を蝕み、流れた血を吸い取るように花を咲かせた。
「それが、君の終わりを告げる印だよ」 
 自らが咲かせた花をうっとりと見つめ、フィーは婉然と微笑んだ。

●絡む因縁
 ただひたすら暴れ回るローカスト、執拗にローカストを庇おうとする死神、それらの隙をつき攻撃を通そうとする一同が入り乱れ、戦況は膠着しつつあった。
「不退転の戦士が相手なら当然前にでるべし、です!」
 そんな状況の中、ラリーが小柄な体躯を活かし、壁や障害物を足場に三次元機動で戦場を駆け巡る。その動きに死神たちは翻弄され、ローカストへの防備が開けつつあった。そして、
「ほらほらこっちよ~、もうちょっと……そこ!」
 カンテラを誘蛾灯のように光らせローカストを引きつけた火花がその翅に向かって精神の波動を爆発させる。
「!?」
 縦横無尽に振り回されていた翅の動きが止まり、一瞬の空隙が生じた。それを逃さなかったのは七海だ。
「さっきのリベンジですよー」
 防がれた初撃と同じく燐光をまとった獣の拳が鳴動しながらローカストを打ち抜き、その身に揺らぐオーラを腐食させるように黒く打ち消した。
 完全にオーラが消失したのを確認した一同は反転攻勢を仕掛ける。
「てめぇらみてえな救いようない連中には勿体ねえが、こいつをくれてやらあっ!」
 先陣を切った巌が死神へと力強く踏み込み、右の五指を折り曲げた虎爪の型の掌底を怪魚へと叩き込む。
「ーー穿て……羅漢把心掌!!」
「オオオオオッ……!!」
 接触と同時、抉り込むように肉を打った掌から莫大な気が心臓まで浸透、正確に気脈の要を突かれた怪魚が内部から爆散した。
「ーー月の元にて奏上す。我は鋼、祝いで詩を覚えし一塊なり。なれど我が心はさにあらず。許し給え。我が心のままに敵を打ち砕かんとする事を」
 月へと捧げられるように紡がれた詩。その言の葉とともに弓弦が打ち鳴らされる音が虚空へと響きわたる。
「咲杜式巫術が一つ、鳴弦の儀ーー月下詩人(ツキニウタイテヒトリマウ)」
 詩月が空弓を一際強く弾いた瞬間、その一撃が放たれた。
「オォォォォォっ!?」
 魂魄を打ち抜く不可視の一撃に、怪魚は何が起こったかも分からないまま浄化されるように光の粒子となって消え去る。
「……」
 ローカストは死神の消滅に何の感情も見せず、ただ目の前の相手へ機械のようにただひたする攻撃するばかりだった。
「かつて同胞のためにと誓った戦士も、今は仲間すら目に入らずただ戦うだけ、か」
 狂ったように、しかし生前の精確さを見せるローカストの攻撃を受け止めながらアギトが呟く。
「仕方ないよ。彼はただの死体で、糸で操られてるだけ。だから僕らがその糸を切って上げるんだよ」
「……そうだな。ああ、そうなんだろうな」
 傷を癒すフィーの台詞に頷きながら、アギトが感情の凪いだ瞳でローカストから残った死神へと視線を移す。いや、残ったというのは正確ではない。なぜなら、
「通してもらいます。拳を交えなければならない相手がいますから」
「オオォォ……」 
 いま正に死神を打ち倒した翼が駆け出し、アギトを庇うように前に出た。
「ありがとうございます、アギトさん」
「気にすんな。一応、言いたいことがあるならいま言っとけ」
 ぶっきらぼうに一息つくアギトに一礼し、翼がローカストへ真っ直ぐ瞳を向けた。そして、
「お久しぶりです。もう一度名乗ります。俺の名前は不破野翼。貴方を、倒しに来ました」
 二度目の名乗りを上げ、拳を構えた。

●空に還る
「…………!」
 ローカストが信号機や街路樹、ビルの壁面を蹴り、翅で姿勢を制御し、縦横無尽に攻撃を繰り出す。
「鍛えられた身体は頑健、研ぎ澄ました業は健在。できりゃ、てめぇが本当に戦士だったときに闘り合いてぇとこだったが……ったく、死神はほんとろくなことしやがらねえ」
 拳を握り直しながら吐き捨てたのは巌だ。死神を撃破してから集中砲火を浴びせているのだが、ローカストは全身傷だらけにも関わらず、攻撃の手を休めることはなかった。
「むう、あれだけ大きいのにこんなに素早いなんて……ずるいです!」
 同じく地形を利用した三次元機動をとるラリーが唇を尖らせつつローカストと交錯、互いの刃が相手を切り裂いた。だが、明らかにこちらの傷の方が深い。  
「ふむ、やはり足止めが必要なようですねー」
「そうですね、やっぱり速いです。七海さん、何かあるんですか?」
 のんびりと話す七海の顔を、翼が自らの血を拭いつつ見つめる。
「ええ、とっておきのやつが。詩月さんも手伝ってもらいますか?」
「うん、僕なら大丈夫。やってみせる」
 口元に得意げな笑みを浮かべる七海に、詩月もこくりと頷く。
「はいはい、それならまずケガはしっかりと治そうねー。ちょーっとビリッっとするけどね?」
 いつの間にか背後まで近寄ってきていたフィーがいきなり雷の壁を展開し、突然のことに皆がビクリと身体を震わせる。しかし、これで態勢が整えられた。
「…………!」
 ローカストが電信柱を蹴り反転、今度は顎から牙を突き出し、徹甲弾のごとく強襲する。
「もうそろそろってところだろうがーー閉幕にはまだ早いだろ? この程度では、死に届かない」
 今日何度目になったか判らない衝突。幾度も受けた攻撃情報を取り出し、アギトの外装が偽りと模倣による変化を起こす。結果、最適化された鎧の装甲が牙の一撃を受け止めた。
「そこ……!」
「…………」
 一瞬動きを止めることになったローカストへすかさず竜の咆哮のごとき轟砲を放ったのは詩月だ。彼女が話った砲撃は正確にローカストの脚に直撃し、硬直させる。そこへ七海が立ちはだかった。
「さてさて、それではとっておきをお見せしましょう。自分がなければ耐えられませんよ? ーー報いを! 報いを! 尊厳を冒せし者に相応しき報いを!! 尊厳を剥ぎとり晒してやれ!!!」
 正に豹変としか言いようがない一心不乱の様相で、七海が狂気に塗れた呪詛を吐く。そして、一瞬完全な沈黙を置き、ぽつりと呟いた。
「ーー淤岐嶋乃鰐(オキシマノワニ)」
「……!? ……!!」
 原始的な、ただ圧倒的な狂気だけが純粋な呪いと化し、心を、魂をじかに侵す咆哮となり、ローカストの本能を捕らえる。
「それでは翼さん、お手並みを拝見させてもらいましょう」
「え、ええ……わかりました!」
 あまりの七海の変貌ぶりに若干引き気味だった翼だったが、すぐさま気持ちを切り替え旧敵の元へと走り出す。
「!」
「以前は終の型でしたが、今回はこちらですーー不破野の追の型からは逃しません!」
 閃く銀翅に頬を切り裂かれながらも翼は相手の懐に踏み込み、渾身の力を込めて拳を繰り出す。
 放たれた拳はローカストへと追いすがり、その身を殴打した。同時、拳をすぐさま開き、相手の身体を掴み取りながら鋭い蹴りを叩き込む。その時、一瞬だけローカストの身体が何かに反応した、かのように見えた。
「皆さん……今です!」
「後は任せな! 橘! グリッター! 一気に畳みかけるぞ!」
 振り切るような翼の声に真っ先に応じた巌が握り締めた拳を振り抜く。
「……!!」
 強烈な一撃に吹き飛ばされたローカストは空中で翅を操り、地面に叩きつけられることなく着地。しかし、そこには仕掛けがあった。
「志藤さん、ナイスコントロール! それではーー足元にご用心♪」
「!?」
 火花がマイペースに快哉を上げると同時、ローカストの足下で魔法陣が展開。瞬間的に巨大な炎の柱が吹き上がり、ローカストの身体が天高く打ち上げられる。
「!」
 最初こそなすすべなく空中に放り出されたローカストだったが、すぐさま身体に馴染んでいるかのように滑空を始め、一同の元へ再び迫る。
「もう飛べなくなったはずなのに、空を飛ぼうとするんですね……わかりました、私が空に返してあげます!」
 ローカストの姿を見上げながら、ラリーが決然と剣を構える。
 夜闇の中で剣は輝きを帯び、加速度的に光が強くなっていく。やがて剣から光が溢れ出し、
「ーー刃に輝きの洗礼を! 邪悪を貫く光の奔流……受けてみなさい!!」
 ラリーの叫びとともに極大の光の刃が奔流のように迸った。
「ーーーー!!」
 ローカストは莫大な光芒を前に逃げることなく拳を突き出し、そして消え去った。
「さようなら、誇り高き戦士よ……」
 いつもは騒がしいラリーもこのときばかりは神妙な声で戦士へ別れを告げる。
「誇り、か……そう、戦士は死んだ、だが確かにそこには誇りがあった。やるせねぇよな」
 ぽつりとアギトが呟く。皆も同じ思いだったのか、沈黙が長く続いた。
「でも」
 絞り出すように翼が口を開く。
「あの……終わりにすることができました。それが、俺たちにできる唯一の手向けだったと思うんです」
 最初は探るような口調だった。しかし、徐々に確信に変わり、最後は力強く放たれた。
 その言葉に皆は顔を見合わせて頷き、秋風とともに散った戦士へそれぞれのやり方で哀悼を捧げた。

作者:長針 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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