ツッパリ喫茶『メンチキ』

作者:荒雲ニンザ

 外から見れば一見普通の喫茶店。しかし、店名に何やら『ツッパリ』の文字……。そして、扉に『閉店しました』の張り紙が。
 店内では、軽いリーゼントにチョビヒゲをつけたマスターが、しょんぼりとカウンター席に腰掛けていた。
「あーあー……方向性間違えた……。本当にヤンキー連中のたまり場になっちまうとは思わなかったお……」
 一部で絶滅危惧種とまで言われるツッパリ。
 漫画で読むと大層白熱し、ドラマで見ると何かしら泣ける。映画で笑って、中々にフィクション世界の彼らは憎めない。
 そんなノリを追求した店をマスターは経営したかったようだが、いかんせん、周囲に意図が伝わらなかった。
「ここはなりきり喫茶だ、って説明する前からおっかねえお客さんばっかでよぉ……。ももももお、怖くて怖くて、他のお客さん、誰も入ってこねえお! みたいな……」
 要するに、現実の方が常連となってしまったのだ。その上、タチの悪い奴らは食べても払わないのだから、当然店はつぶれる。
 ため息の後、帰ろうと立ち上がった瞬間、背後から第十の魔女・ゲリュオンの声が聞こえた。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『後悔』を奪わせてもらいましょう」
 そのまま彼女の手に持った鍵で心臓を一突きされると、前のめりで倒れたマスターは扉を押し開け、意識を失ってしまう。
 そして彼の立っていた場所に、ツッパリに寛容なマスター風ドリームイーターが現れた!

 言之葉・万寿(高齢ヘリオライダー・en0207)が、アメリア・イアハッター(あの大空へ手を伸ばせば・e28934)と共に入室してきた。
「ちょっとたいへん!」
「自分の店を持つというのは、その道の方達には夢でございましょう。ですが、せっかく夢を叶えたというに、店が潰れてしまうこともありましょう。その成り行きを後悔している御仁が、ドリームイーターに襲われ、その『後悔』を奪われてしまう事件が起こってしまったようです」
 『後悔』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているようだが、奪われた『後悔』を元にして現実化したドリームイーターが、事件を起こそうとしている。
「現れたドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破して頂きたいというのが、今回の依頼でございます」
 このドリームイーターを倒す事ができれば、『後悔』を奪われてしまった被害者も、目を覚ましてくれるだろう。

 敵のドリームイーターは1体のみ。
 戦闘する場所は、ドリームイーターの力で営業再開中のツッパリ喫茶『メンチキ』の店内。
 営業再開中であるが、他の客はいないので安心して戦えるだろう。
 店に乗り込んでいきなり戦闘を仕掛ける事もできるが、客として店に入り、サービスを受け、そのサービスを心から楽しんでやると、ドリームイーターは満足して戦闘力が減少するようだ。
「このマスターは、フィクションでありがちなツッパリ像をモチーフとし、その1シーンであるかのような寸劇をしながら、楽しく飲食して頂く、なりきり喫茶のサービスを提供していたようです。ここはガツンと典型的な寸劇をやってさしあげるのがよろしいかと」
 例えば、『ライバル校のツッパリと店内で鉢合わせ』やら、『よく分からない四天王の話』やら、『スケバンにからんでみる』やら、『喧嘩の仲裁』やら。
 男性でも女性でも、悪役でも、一人でもツッパリがいれば、友達の一般生徒とかでも可能。
 とにかくフィクションにありがちなツッパリ環境っぽいノリで食事をすれば、喜んでもらえるだろう。
 ただ、普通の喫茶店の店内なので、戦闘開始まで暴れるのは御法度。
「あくまでも『フィクションでありがちなツッパリ』だからね」
 アメリアの助言に万寿も頷く。
「お店はつぶれてしまいましたが、このサービスの良い面を見て差し上げ、心から喜んであげることが大事です。敵を満足させてから倒した場合、意識を取り戻した被害者にも良い効果が現れるようですぞ!」
 がんばって下さいませ、と万寿は頭を下げた。


参加者
沙更・瀬乃亜(炯苑・e05247)
鳴神・命(気弱な特服娘・e07144)
スミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975)
峰岸・雅也(ご近所ヒーロー・e13147)
エルフリーデ・バルテレモン(鉾槍のギャルソンヌ・e24296)
アメリア・イアハッター(あの大空へ手を伸ばせば・e28934)
弐番堂・むささき(紫電の歯車・e31876)
クルミン・マジカル(崖から落ちてるアイドル・e32992)

■リプレイ

●フィクション世界
 素焼きの鈴が心地良い音で迎えてくれた店内。特別変わりはないが、カウンターの向こうからものすごい視線が突き刺さってくる。
「いらっしゃい」
 マスターのドリーイムーター。今回の討伐対象である。
 このマスター、峰岸・雅也(ご近所ヒーロー・e13147)に視線を置かぬよう、涼しい顔を決め込んでいるが、内心ドキドキであった。雅也が本物さんだったらどうしよう。視野の端はカッチリ雅也に固定されている。
 今、マスターはドリームイーターなのだから、そんな心配は無用だというに、元の素材がいかんせんトラウマ深い。
 雅也の格好といえば、短ランボンタン赤シャツときて、靴がぺったんこ。鞄に入る隙間はマンガか雑誌オンリー。ソフトリーゼントをキメこむその姿は、一昔前のツッパリで、これは……? もしや? とがっつり確認したい気持ちをマスターは必死に抑えている。
 そんなマスターの内心を知ってか知らずか、雅也は隅の席に腰掛け、マンガを取り出した。中綴じのヤンキー漫画! 硬派だお! マスターのテンションは一気に加速する。
「根性焼きとー……レスカねーの? んじゃ、ウーロンで」
 注文してからヤンキー漫画を黙々と読みふける雅也を残し、カウンターに戻ったマスターは嬉々として冷蔵庫を開けた。レモンスカッシュ!! レモンスカッシュをレスカ!! 古き良き時代のツッパリ! 間違いないおあの人! コップを持つ手が震える。
 当店始まって依頼、初めてコンセプトを理解してくれているお客様がやってきた!
 おもてなし。おもてなし。最高のおもてなし。
 マスターがウキウキと調理を始めると、カランカランと再びドアが開く。
 入ってきたのは、赤薔薇の刺繍を入れた服の沙更・瀬乃亜(炯苑・e05247)を筆頭に、リーゼントのカツラと長ラン・ラッパといういかにもなスタイルのスミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975)、特服姿にグラサン装備の鳴神・命(気弱な特服娘・e07144)と、紫薔薇の刺繍が入った特攻服を着た弐番堂・むささき(紫電の歯車・e31876)。
 彼女ら4名を見た瞬間、マスターの顔色が変わる。え、何、何この子達、今日どうしたの。あの子入って来る時、自分のことアタイって言った! そんなのフィクションのツッパリしか言わないお! 一気に訪れた幸運に彼の心臓はバクバクだ。
 だがそこで、むささきが片手に持つケージの中に、動物らしきものをみかけてマスターは慌てて走り込む。
「お、お客様、飲食店なので、ペット同伴はご遠慮願い……」
 ここでウイングキャットのぐんじょうを発見されれば、ケルベロスだとバレてしまう。
 命がグラサンを取り、『あぁ?』と睨み付ける。
「あ、スミマセン。ごめんなさい。でも、ちょっと、それはー……」
 命がグラサンをかけていたのは、ビビっているのがバレないようにだ。気弱な彼女の内心は、マスターと似たり寄ったりなほど心臓バクバクである。長文を喋ればビクビクなのがバレそうなので、ここは友達のアドバイス通り、睨んだ後少し笑ってみせる。
「あ、ハイ。足下に。ハイ、足下に置いておいて頂ければ、ハイ」
 どんな友達から助言を受けたのか定かではないが、的確なアドバイスであったようだ。オリジナルグラビティが出来るほどの怖い笑顔に、マスターは腰が引けた。
 すぐ様スミコがノリノリでけしかける。
「てめぇ、このやろ、メンチきってねえで、チョコレートパフェもってこいこのやろぉ」
 ハイ! と返事をし、マスターはカウンターに走り込む。あれえ? おかしいな、もっとこう……昔ヤンチャやってた風のマスター路線でいこうと思ってたのに、昔ヤンチャやってた友達のカモにされてた風マスターになっちゃったお。まあそれはそれでいいか! おもてなしおもてなし! と内心ルンルンである。

●メンチキバトル
 外でバイクのエンジンらしき騒音が聞こえた。暴走族? と思っていると、カランカランと鈴の音と共にドアが開く。
「いやあ~、流石姐さん!」
 いかにもなスケバン風のセーラー服に長いスカート、暴走族御用達の黒い防塵マスクをつけたアメリア・イアハッター(あの大空へ手を伸ばせば・e28934)が先導し、その後ろからセーラー服に甲冑の篭手と具足という、結構な格好をしたエルフリーデ・バルテレモン(鉾槍のギャルソンヌ・e24296)と、ツッパリと言うよりアチラ系の愛人のような派手なドレスを着用したクルミン・マジカル(崖から落ちてるアイドル・e32992)がそろって入店してきた。
 どう見てもリアルのヤンキーではない。フィクションのツッパリだ。暴走族とセーラー騎士とアチラ系愛人の組み合わせなんて、フィクションじゃなきゃ友達にならないお! 今日のお客様にマスターは震えが止まらない。
 先に入った雅也はマンガを読みふけり、次に来店した女性4組は比較的静かにしてくれている。面倒くさそうな連中が来たと思ってはいるだろうが、眼中に無いかのように無関心を決め込んでくれていた。
 しかし、ここにきて新たな客人たちは、厄介ごとを持ちかけてきた。エルフリーデが店内を見回し、口を開いた時からそれは始まる。
「いい店ネー?」
 すると、アメリアが担いでいたバールで床を一突き。
「今日からエルフリーデの姐さんがアタマ張る、うちらヘルハウンドが、このシマとあんたらを締めるから! いいね!」
 そう宣言され、先に来たチームの一人、むささきが立ち上がる。
「このシマを荒らすたぁアンタ達、アタイたちの怖さわかってないみたいだね」
 え、ヤバイ、ケンカはじまっちゃう系? マスターはハラハラと息を呑む。
「Oh、思っていたより弱そうなメンツデスネー? 今日からココはワタシ達のシマデース、5秒数えるからrun away!」
 エルフリーデの挑発に、むささきが長身を生かすよう相手を見下ろしながらメンチを切ると、ケージの中のぐんじょうも密かにメンチを切る。
「ハーイ、時間切れ! アメリア、丁重に送り出して差し上げるのデース!」
 アメリアがハーイ! と返答をすると、むささきが『待ちな』と止めに入る。
「しってるか? せのあ姉さんの髪が赤いのは、相手の返り血を隠すためなんだぜ? 姉さんの髪の赤にてめぇらもなるか、あぁん?」
 瀬乃亜が深紅の髪をファサとなびかせ、そのとおりよ、とでもいわんばかりの重い頷きを一つ。
 グッとくるムチャなツッパリ設定。マスターは思わず顔を下に向けて歓喜を耐えた。
 後から来た3名の頭がエルフリーデなのだろう。どう見てもアチラ系の雰囲気を醸し出しているクルミンがメンチを返す。
「てめェこのボケカスが、エルフリーデの姐さんに舐めた口聞いてたらアカンで!」
 ウィッグのツインテールを外してブンブン振り回している彼女を見ていると、ツッパリを卒業したら、この子はどこに行くのだろうという不安をマスターに抱かせた。
「落とし前は小指でええんか?」
 あ、ホラ、心配。ツッパリ喫茶のマスターとしては、いくらフィクションツッパリとはいえ、かわゆいツッパリの将来を案じて心穏やかではない。親身になる、それがツッパリの集まる喫茶店のマスターの役柄、おもてなしというものだ。
 そんな時、今まで微動だにしなかった瀬乃亜が目を開く。
 返り血を受けるために染められた赤い髪をファサッとなびかせ、スッと席を立つ。
 無表情、無口、その威圧感がただ者ではないオーラを醸し出すが、本人は至って大人しい自然を愛する娘さん。だがそんな彼女の本当の姿を知らないマスターは、無口な女番長、きっと1校とか一人で乗り込んでツブしちゃう系のアレだ、と勝手にものすごい想像を働かせて怯えていた。瀬乃亜本人は、大人しい性格なので喋らない方が無難だと黙っているだけなのであるが。
 アメリアが命のグラサンを奪い取り、あまりの強面に自滅した時だ。
「さっきからキャンキャン煩ぇな……」
 ずっと我関せずを決め込んでいた雅也が漫画雑誌をポイと捨てた。

●ナワバリ対決
「決着つかねーなら、メンチキ特製、根性焼き大食い早食い対決で決めな! 勿論、負けた奴が全額支払いだ。 これなら文句無ェだろ」
 一匹狼の仲裁。思わずガッツポーズで手を上げそうになったマスターは、そのまま一回転してカウンターに戻る。
「何だい、アンタ。やるってのかい」
 アメリアがイチャモンをつけにいくと、雅也はそれを軽くかわす。
「俺はオンナに手ぇあげる程シャバかねぇ……」
 先からツッパリ言葉のチョイスが秀逸すぎるため、マスターは心の中で『軟弱とか、ヘボいとか、そんなニュアンス』と再確認でニヤニヤしている。
 むささきが瀬乃亜に目配せすると、瀬乃亜は静かに頷いて勝負を受け入れた。
 さあ、マスターは忙しい。大食い勝負ときたら、沢山の料理が必要だ。
「チーム『毛流辺露須』対、チーム『ヘルハウンド』。いくよ!」
 大量の料理を前に命が仕切る中、勝負が始まる。っていうか、チーム名そんななんだ! ドリームイーター的にどっちも応援しにくいお!
 大人しい顔をした瀬乃亜は、こう見えて大食いは得意だ。整った口にもりもりと食事が吸い込まれていく。
 スミコの側には常に甘味。甘いジュースですら水代わりという、恐ろしいまでの甘味党だ。
 アメリアは姐さん方のフォローに回っていたが、いつの間にか根性焼きを食べるハメに。
 その流れで命にも悲劇が訪れる。配膳や片付けを手早く手伝い、座っていた椅子に戻ると、明日からダイエット決定事項が目の前に。
「……あれ? なんで前にデザートが……? 参加しないつもりだったのに……あれ? この流れで食べないってダメ……?」
 命までもが大食いに参加するハメとなり、誰がこの場をまとめるのだ。一匹狼……あああ漫画読んでるし! 何だコイツら、可愛いツッパリだな! ツッパリの対決が大食いとか、超劇画タッチなのにやってること小学生みたいな、あんなツッパリ!? そこでマスターのテンションはついに振り切れた。
「そんだけ楽しんでくれたら、もお殺してもいいおね!!!?」
 言ってることとやってる事が繋がらないが、それがこのドリームイーターなのだ。
 黙々とほおばる瀬乃亜目がけて飛びかかるマスターの動きを察すると、雅也の全身が光ったと同時、オウガ粒子が味方の超感覚を覚醒させた。
「メタリックバースト!!」
 それを受けたスミコが間に入り、敵の攻撃に割り込んで一撃を受け止める。
「危ねぇな、このやろぉ」
「な、なんだお!? お前たち、普通のツッパリ好きじゃないな!?」
 驚くマスターにクルミンが言ってのける。
「ケルベロス、ナメたらアカンで!」
 そこでポーズを決め。
「なーんて、マジカル☆クルミンだぞ」
「ケルベロスだとー!! ど、どうりで、どうりで何かおかしいと思ってたんだ! だ、騙したなー!! お前らなんて……」
 と、エルフリーデを見て。
「ゴートゥー三途リバーだ!」
 言うや思い切り稲妻突きでつつかれると、悲鳴を上げて飛び退いた。
「悪いな、日本語はペラペラなんだよ!」
 話の途中でもお構いなしに瀬乃亜が巨大なハンマーを振り下ろし、無表情のままドラゴニックスマッシュを敵の脳天に食らわせる。
「やれやれだ……」
 めりこんだ床から起き上がる敵に、再び容赦なく命の稲妻突きが超高速で突き刺さる。
「アギャア……アイだだだだ!!」
 アメリアが持っていたバールを投げ捨てた。
「やっぱり喧嘩の華はステゴロよね! タイマンとはいかなかったけど!」
 その勢いのまま宙に浮いた所で、アメリアの剛魔真拳を顔面に喰らい、クルミンのテレビウムを乗せ、窓を割って入ってきたエアハートのガトリング掃射で全身に穴を開ける。
「セーラー服といえば、機関銃よね♪」
 素手喧嘩のハズが、何となく捨て殺しの方がニュアンス的に当てはまるような、そんな戦い。
 ふらふらと目を回す敵の足下に、ケージがぶつかった。その横に、特攻服を着せられて不服そうな表情を乗せている、ウイングキャットのぐんじょうが。
「嫌そうな顔はよすでござる、ぐんじょう」
 むささきがChangeで味方の命中率を上げ、ツッパリ系アイドル猫がスミコのいる前列に向けて清浄の翼を放つ。
「くっそぉぉ……!! やめなさーい! もお、さっきから……この不良どもめー!!」
 敵が起き上がり様にかけ声を飛ばすと、スミコと雅也の間をすり抜け、クルミンの脳天を直撃。
「ぎぇぇぇ……!!」
「あああ、クルミンーー!!」
 仲間の声が左右に移り変わるほどかなり後方に吹き飛んだが、がっつり攻撃を食らったクルミンは慌てて起き上がると、背後を向いてお化粧直し。
「何晒してくれとんじゃアホボケカスがぁ!」
 瞬時のメイクアップに振り返ると、そのまま逆上して戦術超鋼拳を敵の顔面にめり込ませた。
「あっ」
 てへり☆ と音が出そうなポーズでペロッと舌を出し、かわいらしく顔の横でグーでキメてみたが、それは色々とアレだ。ムリだ。
 顔が埋まって前が見えない敵の背後、エルフリーデがGeirscogulを頭上で大きく回転させ、そして待った。
「良い店だ……楽しかったぜ!」
 声のする方に敵が振り向いた瞬間、その一撃がドリームイーターの喉を貫き、最期を仕留めた。

●よい方のツッパリ
 マスターが目を覚ますと、目の前にツッパリ集団が勢揃い。
 またカモられる悪夢が始まるかと悲鳴をあげて気絶したが、二度目に目が覚めた時は事の説明を受けてようやく落ち着いてくれた。
 雅也は流石男の子、このテの男臭いコンセプトの店がつぶれたことを残念に思っているらしい。
「でも、ホンモノさん方に好かれちゃう要因であることは確かな店ですし……」
「ケルベロス立ち寄り場所にすれば、ホンモノのツッパリも来ないんじゃないか?」
 その提案に、マスターはハッと顔を上げる。かなり良い案だ。
 思考的に幸先明るくなったマスターの背後、よほど怖かったのだろう、めそめそ涙目になっている気弱な命が強面オーラを振りまいていた。そんな彼女をなぐさめるように瀬乃亜も息をつく。
「なんだか疲れました……。がらにもないことは、よした方がいいですね」
 そして、むささきとぐんじょうに笑いかける。
「それにしても、ぐんじょうさんのその姿がかわいらしすぎて……抱きしめてしまいたい」
 せっかくだからと、アメリアがカメラを出してきた。
「記念に、ツッパリっぽい迫力のある集合写真を撮りたいです! ヤンキー座りで、カメラにガンをつけて記念撮影したーい!!」
 その提案にクルミンが化粧直しでバッチリポーズ。
 流石の早業に数名がドン引いていると、その距離に首を傾げる。
「あっれー? どしたの?」
 今日もまた、おかしな店がつぶれ、ケルベロスたちによって救われ、また、おかしな店が増えるのだろう。

作者:荒雲ニンザ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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