パッチワークハロウィン~南瓜大行進の夜

作者:幾夜緋琉

●南瓜大行進の行く末で
 10月31日……ハロウィン。
 日本全国、様々な所で仮装に身を包んだ人達が、イベント会場で楽しんだり、子供達が家を訪れ、とりっく・ぉあ・とりーとと言ってみたりする……そんな日。
 でも、そんなハロウィンの日も終わりが来るわけで、10月31日の夜……パーティーが終わった公民館。
 食べ物とかの片付けは一先ず終わり、残りの片付けは明日で、という事になったようで、公民館の飾り付けはまだ、ハロウィンパーティーの残り香が残る。
 ……そんなパーティー会場に、突如姿を現わすのは……パッチワークの魔女の一つ、第十一の魔女・ヘスペリデス。
「ふふ……」
 と、一度笑みを浮かべると、続けて彼女は。
「私が失っていた『服従』の心は満たされた。あぁ……だれかに服従し、その為に働く事の、なんと甘美なる事か……魔女の力が最も高まる今夜、第十一の魔女・ヘスペリデスが、その役目を果たすことにししょう」
 と言うと、立ち止った彼女が。
「ユグドラシルにおられる『カンギ様』の為に……私の黄金の林檎より、ハロウィンの日に相応しい植物をここに生み出そう。さぁ、お前達。ハロウィンの魔力を集め、私に捧げよ。全ては、『カンギ様』の為に! さぁ、人間共の夢の残滓と黄金の林檎より馬れし攻性植物、ハロウィンボムモドキよ。人間共を食い散らかすがいい!」
 と宣言すると共に、ヘスペリデスが投げる黄金の林檎。
 そしてその黄金の林檎より……3m程のハロウィンの南瓜が付いた攻性植物、ハロウィンボムが生み出されるのであった。
 
「ケルベロスの皆さん、ハロウィンパーティー、楽しかったッスね! で、そんな楽しいパーティーが終わったばかりなんッスけど、ちょっと頼みたい事件が発生してしまったんッスよ……」
 と、黒瀬・ダンテは集まったケルベロスに、少し申し訳なさそうに話始める。
「今回は、辰・麟太郎(臥煙斎・e02039)さんにより見つけられた敵の動きッス。麟太郎さんの調べによると、ハロウィンパーティーが終わった直後の今、パッチワークの魔女の一人が動き出した様なんッス」
「この動き出したパッチワークの魔女は、パッチワークの魔女が一体、第十一の魔女・ヘスペリデスッス。彼女は、日本各地のハロウィンパーティーが行われた会場に現れ、会場に残ったハロウィンパーティーの残滓と、彼女が持つ黄金の林檎の力により、強力な攻性植物を生み出す様なんッス」
「このままでは、パーティーを楽しみ家路につこうとしている人達が襲われ、殺されかねないッス。楽しいハロウィンを、惨劇で終わらせない為にも、パーティー会場に向かい、現れた攻性植物を退治してきて欲しいんッス!」
 そして、更にダンテが。
「今回相手にして貰うのが、ハロウィンボムモドキっていう攻性植物ッス。幸い現れるのは、パーティーが行われ、もう終わった後の公民館の中の会場ッスから、周囲に人は居ない様ッス。電気を付ければ、特に足場も問題無い様ッス」
「ハロウィンボムモドキは一体のみッスけど、体長が3m程と巨大で、そのハロウィンカボチャを爆弾の様にして落としてきたり、地面の中から足元を掴んで攻撃してきたりする様ッス。下手に嘗めて掛かると、痛い目を見る位に強い様ッスから、油断しないで欲しいっすよ!」
 そして、ダンテは。
「折角楽しいハロウィンが終わって、平和に終われると思ったら、パッチワークの魔女が事件を起こす……まぁ、ある意味納得な所ッス。でも、攻性植物を出現させるって言うのはちょっと不思議な所ッスよね」
「とはいえこのまましとく訳にもいかないッスから、ケルベロスの皆さん、どうか宜しく頼むッスよ!」
 と、元気と共に皆を送り出すのであった。


参加者
萃・楼芳(枯れ井戸・e01298)
エル・ベルフォニカ(銀の鈴・e02500)
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)
霞・澄香(桜色の鎧装騎兵・e12264)
霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388)
リョウ・カリン(蓮華・e29534)
アーネスティン・サニーライト(春色マーチ・e33435)
村雨・甚内(紅の凶手・e33545)

■リプレイ

●楽しい夜は
 ハロウィンの夜、10月31日。
 いや、正しく言えば、もうすぐ日付が変りそうな深夜の時……ハロウィンパーティーの終わった後の会場は、正しく祭りの後が如く、どこか物寂しい感じが漂っている。
 飾り付けは華やかにされているのに、もはや人は居ない……電気も消されて、そして寒い。
 そんな会場に出現するのが、攻性植物、ハロウィンボムモドキ。
「ハロウィンと言えば、ジャック・オー・ランタンってのは定番だけど……このサイズはちょっと怖いね。というか何でドリームイーターが攻性植物を生み出せるのかってのが不思議だけどさ」
 と、リョウ・カリン(蓮華・e29534)が苦笑しながら言うと、それにうんうん、とアーネスティン・サニーライト(春色マーチ・e33435)、村雨・甚内(紅の凶手・e33545)も。
「そうだね。ハロウィンパーティー、とっても楽しかったよね! でもそんなパーティーを邪魔するハロウィンボムモドキは許せないんだよ! 楽しく終わるためにも、悪い子にはアーネがお仕置きするんだからっ!」
「おお、そうかい。まー確かにそうだよなー、ハロウィンパーティーを楽しく終わるためには、しっかり俺達がやんねーとな」
 と笑う二人。
 そして氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)、霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388)、エル・ベルフォニカ(銀の鈴・e02500)らも。
「これ……いたずらの延長戦にしては、かなりハードね……」
「ええ。ハロウィンパーティーが終わってから呼んでいないお客様まできてしまいましたわね。このパーティーが素敵なパーティーのまま終わる事ができる様、私達はハロウィンボムを倒しますわっ」
「そうですね。『主役は遅れて登場する』とは言うけれど、遅刻では舞台に上げられないでしょう……舞台袖からご退場願います」
 そんな仲間達の言葉に、ハロウィンの仮想に身を包んだ霞・澄香(桜色の鎧装騎兵・e12264)が。
「ハロウィンでありますな。仮想もろとも楽しませていただきましたが、こうも皆さんの予想通り問題が起きようとは。祭りの後はきっちりとした後始末を、でありますね」
 くすりと笑う彼女に、萃・楼芳(枯れ井戸・e01298)は。
「……その衣装、大丈夫か?」
 と眉を顰める。それに澄香が。
「……まぁ、戦闘には支障ないでありましょう、たぶん」
「……そうか……」
 微笑む澄香に一応頷きつつ……そしてちさが。
「その衣装、可愛いですわねっ。私もいつかしてみたいですわっ」
『にゃー』
 傍らのウィングキャット『エクレア』が、やれやれ、と言う風に鳴くが、ちさは気にしない。
 そして。
「何にせよ、パーティーは楽しいまま終わらせたいですわねっ。この敵はどこから襲ってくるかわからないので緊張しますが、畏れず気合いで行きますわっ」
 と気合いを入れ、えいえいおーとするちさ。
 ……と、その傍らでエルはふと。
「しかし……これは、魔女もワイルドハント気取りだったのでしょうか? それにユグドラシルにいる『カンギ様』……官妓? アスガルド神、もしくは……ヴァナディースに遣えていた方、とか……安直すぎかしらね」
 考えるエルに、甚内が。
「んまー……無いともいいきれんが、はっきりとした所は分んねえな。まぁ何だ、俺達の仕事は倒す事、ただそれだけだろう? 深く考えてると実力発揮出来ねえぜ。ま、気張らずいこうや」
 と肩を叩き、そしてケルベロス達は、祭りの終わった公民館の中へと向かうのであった。

●祭りの残滓
 そして、会場となる公民館へと到着したケルベロス達。
「ここか……良し。それでは打ち合せ通りに3班に分かれ、突入するとしよう」
 と楼芳の言葉に皆も頷き、取りあえずエルは澄香とアイズフォンの回線を解放し、疎通確認。
「備えあれば憂いなし、です……えっと、聞こえますか?」
「ええ、問題ありません」
 と頷き合い、疎通確認を取ると共に、エルはリョウ、ちさと共に組む。
 そして甚内とアーネスティン。
「甚内おにーさん、よろしくね! 攻撃はアーネに任せてっ!」
「ああ、アーネスティン、宜しく頼むぜ?」
 にやっ、と微笑む甚内に、こちらも頷くアーネスティン。
 そして残るかぐら、澄香とエクレア、エルのボクスドラゴン、ポムに、楼芳。
 ……息を潜めながら、人の居ない公民館に侵入すると、ダンテから聞いた会場へと向かう。
 部屋の中は静寂に包まれている所に……しゅるる、と蔓を蠢かせている音が聞こえてくる。
 そんな部屋に突入するとすぐに、入口の所にあるスイッチを付けて、灯を点灯。
 光を受けて、一瞬怯んだ様な動きをするが、すぐにケルベロス達へ対峙体制を取る。そして。
「今回の立ち回りは、敵の行動阻害と弱体化が主でありますな。さて、行くでございますよ」
 と澄香は良いながら、早速ブレイブマインで仲間達の強化を施す。
 その横でポムも、属性インストールで仲間達を此処にBS耐性付与する事での仲間を強化。
 そんな強化を受けつつ、かぐら、ちさ、甚内のディフェンダー陣が、まず前に進み出て敵の注意を引き付ける。
 注意を引き付けながら、ちさが旋刃脚で蹴りを叩き込む一方、かぐら、甚内はヒールドローンとマインドシールドでの補助。
 そしてエルがメタリックバーストを後衛に付与し、狙アップを付ける事で命中精度を上げると、アーネスティンはそれを受けて。
「悪さをする子の魂は、アーネが眠らせてあげるっ!」
 と、ルーンディバイドで服破りを付与した一撃を強烈に叩き込むと、更に楼芳、リョウのアタッカー陣は、破鎧衝と月光斬で次々と斬り付けていく。
 そんなケルベロス達の連続攻撃に、ハロウィンボムモドキは、身体を震わせる。
 その震えに応じるように、その頭上に実った南瓜が大きく揺れて、落下。
「っ……!」
 と、その頭上からの爆弾を咄嗟に避けるかぐら……そして、キャットリングで迎撃するエクレア。
 そんなケルベロス達の行動が一巡。
 次の刻、前に出た楼芳、リョウのアタッカー2人がフロストレーザーと居合斬りで、ハロウィンボムモドキに斬り付けていく。
 一方、スナイパーのエル、アーネスティン二人は。
「真っ向からぶちのめして差し上げます」
「そうだねっ。さあ、一気に仕掛けるよっ!」
 と、ペトリフィケイションと稲妻突きで、高い命中力で以て確実に攻撃を叩き込んで行く一方、ジャマーのポム、澄香は属性インストールにヒールドローンを重ねていく。
 そして、ディフェンダーのかぐら、ちさ、甚内はそれぞれ、チェーンソー斬り、グラインドファイア、スターゲイザーと叩きつけていく。
 確実にバッドステータスを重ねて、ジリジリと体力を削り去って行く。
 そんな作戦を確実に遂行しつつ、ハロウィンボムモドキが仕掛ける頭上からの南瓜爆弾と、足元へ絡みつかせる蔓攻撃を、脚を振りほどくように強く振り回して振りほどく。
 そして、受けたダメージは確実にエクレアが清浄の翼で確りとヒールグラビティを飛ばし、ダメージを後に残さないようにしていく。
 ……そんなケルベロス達の上手い連携は、巨大なハロウィンボムモドキの攻撃を上手くこなす。
 攻性植物は、その巨体もあり、中々攻撃を躱す事も出来ずして、確実にダメージが蓄積されていく。
 そして、そんな戦況が続く事、十分程。
「……?」
 と、リョウがハロウィンボムモドキの動きが少し変りつつあるのに気付く。
 蠢く蔓の勢いは弱くなり、何処か……ケルベロス達に対し、直接的な攻撃で対峙したくない様にも見える。
 そんなハロウィンボムモドキに対し、更にエルがゾディアックブレイク。
「奇抜だろうと、自由に動けなければそれまでです」
 と、確実にバッドステータスを重ね、更に澄香の破鎧衝、アーネスティンも。
「あなたの魂をアーネに預けて。 ーーーおやすみ」
 と『神域の鎮魂歌』を唄い、ホーミング効果を重ねる。
 ……そして、クラッシャー、ディフェンダー陣は次々と攻撃を叩き込む。
 確実に、じりじりと……弱っていくハロウィンボムモドキ。
 どうにか事態を打破しようと、南瓜爆弾を無差別に放って行く。
「かなりの威力……でも、これで倒れる訳にはいかないよね」
 とかぐらが言うと、甚内も。
「ああ。まぁそろそろあっちも限界の様だしな、一気に仕掛けようぜ!」
 と受けつつ、渾身のサイコフォースをハロウィンボムモドキに叩き込む。
 と……その一撃に天井の方に伸びていた蔓が切り落とされる。
 そして……。
「そろそろだね、うん、トドメいくよ!!」
 とリョウがステップを踏み、その頭上から。
「陰を守護せし影の虎、その牙は精神を噛み砕く!」
 と、『陰虎影牙撃』を叩き込むと、その身体に大きな風穴をこじ開ける。
 そしてその風穴から。
「もう迷いはしない。ここからが本当の私の道だ」
 と楼芳の『心淵より来たる真掩【拒】』を放ち……その一撃に、ハロウィンボムモドキは、其の場で崩れ墜ちて行くのであった。

●祭りの後に
 そして……ハロウィンボムモドキを倒した後。
「……ふぅ……終わったか」
 と汗を拭いつつ、息を吐く楼芳。
 ……とは言え、周りは今迄の戦闘の痕跡が色々と残っていて……そのまま安心、という訳にも行かない。
「うーん……結構散らかしてしまいましたね」
「うん。ねえみんな、片付けていこうよ。散らかした後は、ちゃんと片付けないとねっ!」
 と、アースティンの言葉に周りの皆も頷き、そして……ケルベロス達は、戦闘の痕跡の後片付け。
 大きな被害は、ヒールグラビティを持つ仲間達が片付け、天井とか高い所の所は、楼芳など男性陣が肉体労働。
 そして一通り片付け終わった所で、パーティー会場をちょっと見回る……ちょっとだけのこっていた袋菓子などを手にして、ちょっとつまみ食いしたりするが、まぁソレくらいは許してくれる範囲だろう。
 そして一通り片付けが終わった後、ちさは一応、先ほどのハロウィンボムの痕跡を探す。
「この敵がどんな目的で襲ってきたか、もっと深い理由までわかるといいのですわね……」
 と言いつつ、一通りの痕跡調査。
 大方終わると共に。
「さてと……終わったかな? それじゃ折角のハロウィンだし、町に出かけて美味しいお菓子でも食べに行こうよ!」
 と、リョウの言葉に皆も頷き……そしてケルベロス達は、公民館を後にするのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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