パッチワークハロウィン~甘くて美味しそうな憎い敵

作者:陸野蛍

●パーティ後に魔女は現れて
 ハロウィン当日の被服準備室は、ハロウィンパーティーを終えた女子高生達の声で、賑わっていた。
「今年のハロウィンも最高だったねー♪」
「マジ盛り上がった~♪」
「来年もやろうねー♪」
「来年は受験だってばー。でも、やろー♪」
 華やかな仮装をした女子高生達は、口々に楽しかった今日の日の感想を言い合っている。
「ここの片付けどうする~?」
「今日はマジ疲れちゃった~。明日で良くない?」
 魔女の仮装をした女子高生がそう言えば、周りの女の子達も全員『賛成―♪』と口を揃えて言う。
 そして、彼女達が帰った後、パーティーの飾りが残ったままの教室に、その『本物の魔女』は現れた。
「私が失っていた『服従』の心は満たされた。あぁ、誰かに服従し、その為に働く事の、なんと甘美なる事か」
 言葉を口にすることで、その魔女は『服従』している事に悦びを感じる。
「ユグドラシルにおられる、『カンギ様』の為に、私の黄金の林檎からハロウィンの日に相応しい植物を生み出そう」
 そう言うと、魔女は籠の中に入った黄金のリンゴを一つ手に取ると、女子高生達が残した、パーティーテーブルに放り投げる。
 すると黄金のリンゴは瞬く間に姿を変え、巨大なデザートの形を成す。
「さぁ、人間共の夢の残滓と黄金の林檎より生まれし、攻性植物『ブラック☆ぷりん・あら・もーど』よ。人間どもを喰い散らかすがいい。『カンギ様』もきっと御喜びになる」
 そう言い残すと、魔女は姿をゆっくりと消して行く。
 残された巨大な茶色いデザートの様な攻性植物は『これからがパーティーの本番だ』と言うかの様に、その場を楽しげに跳ね回るのだった。

●美味しそうに見えるけど敵だから
「よっす! みんな! ハロウィンパーティーは、楽しめたか? 俺は楽しんだぞ♪」
 にこやかな笑みを浮かべて、ナイトの仮装をした、大淀・雄大(太陽の花のヘリオライダー・en0056)がケルベロス達に語りかける。
「まあ、そんな楽しいパーティーが終わったばっかりで悪いんだけど、辰・麟太郎(臥煙斎・e02039)が新たな敵の動きを察知して来たんだよな」
 笑顔こそ崩さないが、雄大の言う新たな敵の動きと言うのは一大事である。
「新たに動きだしたのは、パッチワークの魔女の一体、第十一の魔女・ヘスペリデス。彼女は、日本各地のハロウィンパーティーが行われた会場に現れ、会場に残ったハロウィンパーティーの残滓と、彼女が持つ黄金の林檎の力を使って、強力な攻性植物を生み出すみたいなんだ。このままだと、パーティーを楽しんでハッピーな気持ちで過ごしている人々が襲われ、虐殺されてしまう。楽しいハロウィンの1日を、そんな形で終わらせる訳にはいかないよな。みんなの力で攻性植物を撃破して、そんな惨劇が起こらない様にして欲しい」
 新たな魔女が引き起こそうとしている、虐殺。
 幸せな1日をそんな形で壊させる訳にはいかない。
 ケルベロス達は、いかなる強敵にも立ち向かうつもりで雄大に話の続きを促す。
「みんなに向かって欲しいのは、とある女子高の一室だ。そこでパーティーをした女子高生達の夢の残滓をヘスペリデスは、攻性植物化したんだ」
 女子高生達の夢から生まれた、強力な攻性植物……ケルベロス達に強敵の襲来を予感させる……だが。
「その攻性植物は、巨大なチョコレート・プリン・アラモードの外見をしている!」
 雄大の言葉に、ケルベロス達は耳を疑うか、一気に脱力する。
「ちゃんとデウスエクスだから、強いからな! 外見で舐めてかかると痛い目に合うんだぞ!」
 雄大の目はマジだ。
「敵の攻撃手段は、チョコの奔流で動きづらくする攻撃。巨大なカットバナナで物理的にダメージを与えて来るだろ、あと甘い香りには催眠効果があるから気を付けてくれ。ちなみに食べようとすれば食べれるし美味しいけど、胃袋からグラビティ攻撃を受ける事になるから絶対に食べない様にな!」
 外見が美味しそうだからって、デウスエクスを食べる度胸のあるケルベロスはそんなにいない……って、降魔拳士なら食べれるかもと一部のケルベロスは考える。
「あのさあ、俺的に、パッチワークの魔女がハロウィンに事件を起こすのは納得出来るんだよ。だけどさ、何で生み出す敵がドリームイーターじゃなくて攻性植物なんだろうな?」
 雄大の疑問は尤もである。
 パッチワークは、ドリームイーターの魔女集団である。
 攻性植物を使って、事件を起こすと言うのは不自然だ。
「まあ、何はさておき、ハッピーなハロウィンの1日をちゃんとハッピーなままで終わらせられる様に、みんな頑張って来てくれよな! 頼むぜ!」
 いつも以上の気の入り方で、お祭り大好き男の雄大は、ケルベロス達に言葉をかけるのだった。 


参加者
エイダ・トンプソン(夢見る胡蝶・e00330)
天谷・砂太郎(増悪は黒き炎となりて・e00661)
琴宮・淡雪(淫蕩サキュバス・e02774)
アーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)
瑞澤・うずまき(ぐるぐるフールフール・e20031)
キーア・フラム(黒炎竜・e27514)
藍凛・カノン(過ぎし日の回顧・e28635)
佐竹・灯子(餅とエルフ・e29774)

■リプレイ

●ハロウィンの日のチョコプリン
 月が空に昇り暗くなった、10月31日のハロウィンの夜。
 女子高の廊下をケルベロス達は、目的の教室に向かって歩いていた。
「しっかし……なんでドリームイーターじゃなく、攻生植物なんだろな?」
 天谷・砂太郎(増悪は黒き炎となりて・e00661)が、納得のいかない顔でそう口にする。
「余もそれを考えておったのじゃ。なぜドリームイーターが攻性植物を従えておるんじゃろうなぁ……」
 頭の向日葵がトレードマークのアーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)も砂太郎と同じ事を考えていた。
 今回の事件はドリームイーターの魔女集団『パッチワーク』の魔女の一人『第十一の魔女・ヘスペリデス』が起こしたことだと言う。
 だが依頼されたのは、ドリームイーターの討伐では無く、攻性植物の撃破である。
 本来、デウスエクス同士は地球のグラビティ・チェインと言う資源を奪い合う、競争相手である。
 特別な状況、例えば利害が一致したり、相手を利用する事で自分達が利益を得られるような場合でもなければ、協力する事は無い。
 ケルベロス達の知らない所で何かが起こっている可能性は否定出来ない。
「考えても埒は開かぬし、撃破してから考えるとしよう」
 アーティラリィの結論も結局そこに落ち着いてしまう。
「そうだな、まぁぶっ倒せばいいんだけど……それにしても、女子高ってなんか居辛いなあ」
 ばつの悪そうな顔で砂太郎が呟けば、もう一人の男性である、藍凛・カノン(過ぎし日の回顧・e28635)は、どちらかと言えば嬉しげな声で。
「女子高に侵入できると言うのは、中々貴重な体験じゃなかろうか?」
 と、緩く笑う。
「私も、ハロウィンパーティーの真っ最中でしたけど、平和を守る為に頑張っちゃいます!」
 本来は、サキュバスだが今日は仮装したままで来ている為、可愛い狐の巫女さんウェライダー……いや、妖狐のエイダ・トンプソン(夢見る胡蝶・e00330)が楽しそうに言う。
「この教室ですね。入り次第、電気付けますから、皆さん敵に備えておいて下さいね~」
 そう言うとエイダは、教室の扉をがらりと開けると素早く室内に入り、明かりを付ける。
「トリックオアトリート! お菓子はお菓子でもデウスエクスなら話は別! きっちり懲らしめちゃうんだから!」
 攻性植物を視界に入れるなり、佐竹・灯子(餅とエルフ・e29774)が勢いよく宣戦布告する。
 だが、完全に決まらないのは、灯子がシスターの仮装をしているからに他ならない。
 相棒のナノナノ『餅子』も普段の鏡餅の様な姿より、幾分ハロウィン感が出ている。
「本当におっきなチョコプリンだぁ……美味しそう~♪ 食べちゃダメとか残念~!」
 攻性植物『ブラック☆ぷりん・あら・もーど』の実物を見て、目を輝かせながら言うのは、瑞澤・うずまき(ぐるぐるフールフール・e20031)だ。
 彼女は依頼内容を聞いた時から、割とお気楽に『お菓子の家』の様なものを想像しワクワクしていたので、思わず零れた言葉にも本音が混じっている部分がある。
「そ、そんな……こんな裏切りってありませんわ……」
 一方、今にも崩れ落ちそうな声をあげて悲嘆しているのは、南瓜のヘルメットを被った『南瓜ガール』琴宮・淡雪(淫蕩サキュバス・e02774)である。
「ハロウィンの攻勢植物って聞きましたから、きっと南瓜のお化けが出て来ると思って、ウキウキして参りましたのに……あんまりですわ~!」
 雄大がちゃんとヘリポートで説明していたのだが、ハロウィンパーティーで浮かれきっていた、淡雪の耳には入らず、重要な敵の外観を勘違いして来てしまったらしい。
「そんな……南瓜じゃなくて、チョコプリンってあんまりですわ!?」
 ついにはショックのあまり、床に膝をついてしまう淡雪。
「あわわ、淡雪さん。ちゃんと南瓜ヘルメット可愛いですから、頑張りましょう!」
 うずまきが、淡雪の肩に手を置き優しく励ますが、淡雪の勘違いは割とよくあるので、実はそこまで心配していないと言うのが実際の所だったりする。
「なんでチョコプリンなのかしら……普通南瓜のパイとかそっち方向じゃないの……!?」
 諦めきれない様に呟きながらも、淡雪は何とか立ち上がる。
「吾輩プリンは、普通のプリンの方が好きなのじゃがのぉ……。それにしてもデカいのぉ……呑気にしておったら、此方が食われてしまいそうじゃな」
 プラック☆ぷりんの大きさに圧倒されながらも、カノンは大鎌を手にする。
「……そういえば、食べると危険と言ってたけど、倒した後なら普通に食べれるのかしら……?」
 キーア・フラム(黒炎竜・e27514)が、気だるげに疑問を口にする。
 そんなキーアも、魔女の三角帽子とマントと言う、いかにもハロウィンな衣装に身を包んでおり、それなりにハロウィンを楽しんで来ていた様である。
「……そもそも、なんで雄大は味を知ってたの……? 予知で食べて胃袋から攻撃でもされたのかしら……?」
 ヘリオライダーの予知の範囲は、キーアには完璧には理解できないが、あの少年ヘリオライダーならあり得ると思われてしまう辺り、雄大の印象とはそう言うものである。
「悪いプリンは、チェーンソーで入刀しちゃいますね☆ 手元が狂って形がぐちゃぐちゃに崩れてしまったら、ごめんあそばせ」
 そう言って、エイダがチェーンソー剣をプラック☆ぷりんに向ければ、プラック☆ぷりんもその場を跳びはね、ケルベロス達を威嚇する様に甘そうなチョコをグラスから溢れださせるのだった。

●危険な魅惑のプリン
「紙兵よ、皆を守るのじゃ」
 言葉と共に、アーティラリィが紙兵を宙に飛ばせば、紙兵は仲間達を護る力へと変わる。
「甘い香りは催眠の効果があるんでしたわよね。では、私も」
 どうやらそこだけは覚えていた様で、淡雪も雷の障壁を構築する。
「プリン……なんで、なんでプリンなんだ?? うん、深く考えるのはよそう」
 一人納得した砂太郎は、一気にプラック☆ぷりんに駆け寄ると『豪炎鈍鉄刀~焔~』に破壊のグラビティを込め、大上段に構えると一気に振り下ろし、切っ先が床をかすめるとそのまま上へと返す刀で、プラック☆ぷりんを更に切り裂く。
「ねこさん、回復頑張ってね。ボクはみんなを守って見せるから」
 相棒のウイングキャット『ねこさん』にうずまきが声をかければ、ねこさんは甘い鳴き声をあげると、聖なる翼をはためかせる。
「ありがとう……。ボクも行きます!」
 手に装着した縛霊手で、うずまきはプラック☆ぷりんを殴りつける。
「しっかり切り分けてあげるよ」
 手にしたゲシュタルトグレイブを一回転させると雷を纏わせ、キーアはプラック☆ぷりんの茶色い身体を刺し貫く。
 その刺した感触は、他のデウスエクスでは感じられない程『ぷるんぷるん』だ。
 刺した刃でプラック☆ぷりんを斬ろうと、キーアは横へと刃を薙いだが、プラック☆ぷりんの身体は一度斬り裂かれてもすぐにくっ付き傷の様なものが出来ない。
「此奴にトラウマがあるかは知らんが、ダメージにならぬ事はあるまい」
 言うとカノンは、黒色の魔力弾を撃ち放つ。
 その時、教室内に甘い匂いが満ちる様に広がっていく。
「あらあら、本当にチョコの甘い匂いがする危険なプリンですね……」
「エイダさん駄目だよ!」
 匂いから伝わるグラビティにエイダが触れる寸前、灯子が前に立ちはだかるとプラック☆ぷりんの香りの洗礼を浴びる。
「甘い香りになんて惑わされないんだよ!」
 叫ぶ様に言うと、灯子は自身のグラビティの流れを正常に戻す。
「危険なだけでは無く、このままだとカロリーオーバーで体重にも大ダメージです。誘惑される前に倒しちゃいますよ!」
 エイダは本物のウェアライダーの様に跳びはねると、チェーンソー剣でプラック☆ぷりんのバナナを切り裂く。
「プリンやチョコは好物じゃが……さすがにコレを食う気持ちにはならんのぅ……」
 癒しの雨を降らしながら、アーティラリィはプラック☆ぷりんを見つめ呟いた。

●甘い香りを残して……
「餅子!」
 砂太郎を襲ったカットバナナを寸前で餅子が庇うと、思わず灯子の口から声が出るが、餅子は自身にハート型のバリアを張ると『大丈夫だよ』と灯子に視線を送る。
「ナイスだよ、餅子。私も負けてられないね!」
 強い瞳でそう言うと、灯子は御業を編み込み縄を作り出すと、プラック☆ぷりんを締め付ける。
「今年のハロウィンはチョコプリンとの出会いだけですか……折角なら石油王さんと出会いたいんですけどね」
 光速の拳でプラック☆ぷりんの飾り皿を打ちつけながら、エイダが溜め息混じりに言う。
「くだらぬ事を言っておらんで、気合いを入れぬか」
 数度目の紙兵を撒きながら、アーティラリィが言えば、エイダは可愛らしく唇を尖らせながらアーティラリィに言葉を返す。
「ちゃんと、分かってますよ。ヒマワリィさん♪」
「混ぜるでない!? 余はアーティラリィじゃ!」
 アーティラリィの反論が飛ぶ最中も、カノンの砲撃形態のハンマーから強力な竜砲弾が発射される。
「二人共、仲が良いのはいいが、こっちを片付けてからの方がいいぞい」
「全くだ。身体中に甘い匂いが染みつきそうだぜ!」
 カノンの言葉に同意しながら、砂太郎が達人の動きでプラック☆ぷりんにダメージを与える。
「うずまきさん、回復致しますわ。この身が朽ち果てようとも、彼の者達を守りなさい! 『ひゃっかおうりゃん!!』あぁごめんなさい……噛んじゃったわ♪」
 淡雪が詠唱を失敗しながらもグラビティを発生させると、前に立つ者達を桃色の桜の花びらが包みこみ、身体を癒していく。
「……大丈夫です! まだ戦えます!」
 息を整えると、うずまきは手にした槍を電光石火の速さでプラック☆ぷりんに突き刺す。
 戦闘開始から8分以上が経過し、プラック☆ぷりんにも多大なダメージが蓄積されている筈なのだが、チョコレート・プリン・アラモードの外見の攻性植物と言うのは、見た目ではどれくらいのダメージを受けているのかが分かり難かった。
 飾り皿のヒビや、キーアが積み重ねたグラビティで動きが鈍っているので、確実に消耗はしているし、確実にケルベロス達有利に戦闘は進んでいると言ってよかったが。
 ケルベロス達は火力を充実させ、アーティラリィと淡雪が回復役を2人で担う事で戦線を安定させていた。
 うずまきと灯子、そして餅子がそれぞれアタッカーを庇いアタッカーに回復の手間をかけさせないと言うのもケルベロス達が優勢なことの一因だ。
「食べれないと言っても、同じ攻性植物なら別でしょう……? キキョウ、遠慮はいらないわ。食べてしまいなさい……!」
 キーアの手から放たれた功性植物は、プラック☆ぷりんのチョコレート部分を貪る様に喰い漁る。
 それに、抵抗する様にプラック☆ぷりんがチョコの奔流でケルベロスを押し流そうとする。
「皆様、そろそろ止めと行けそうですわ! 全力で終わらせましょう」
 癒しの雨を降らしながら淡雪が言えば、カノンの大鎌が宙を舞い、灯子のガトリングガンが火を噴く。
 うずまきの縛霊手がうなり、砂太郎の炎を纏った斬撃がプラック☆ぷりんを切り裂く。
「余の攻撃も受けるのじゃ。一つ一つは小さくとも、集いし力は強大なり。無数の光よ、数多の熱よ、余の手に集いて力となれ! ……力とは、収束してこその力じゃ」
 周囲の光を集める様に、アーティラリィは手の平に熱エネルギーを集めると、その力を直接ブラック☆ぷりんに押しつけ爆発させる。
「身も心も熱くなるような接吻をアナタに……♪」
 爆発と同時に飛び退いたアーティラリィと入れ替わる様に射線を通すと、エイダは魔力を込めた熱い投げキッスをブラック☆ぷりんに送る。
「これで終わりね。焼きプリンを通り越して消し炭にしてあげる……! 燃え尽きなさい!! メギドフレアーー!!」
 キーアは両の掌を構えると莫大なグラビティを黒炎に変えて、全てを消し去る呪いの炎にし、ブラック☆ぷりんの全てを包み込んだ。
 黒い炎が役目を終え消え去る時には、美味しそうな敵の姿も全て消えていた。
 ほのかに甘い匂いだけを残して……。

●ハロウィンの夜はこれから♪
「さて……植物のチョコプリンは終わりましたけ、ど皆さまどうせならこの場でハロウィンパーティーを致しませんか?」
 ヒールを終え、そう言ったのは淡雪だった。
「……いいね。私も、ハロウィンだし、クッキーやキャンディならあるよ」
 少しだけ考えると、キーアは薄く笑ってそう答える。
「賛成です! 私もお菓子は、しっかり持ってきてあるんですよ」
 エイダも嬉しそうにお菓子を広げる。
「ハッピーハロウィン! 今年のハロウィンも、お忍びでパーティーを楽しむ石油王とは巡り合えませんでしたが、来年がんばります」
「お主は、その様な事ばかりじゃな。まあ、余もパーティーに異論は無いがのう」
(「はて……かの魔女ども、他にもドリームイーターでなく攻性植物を生み出せる者もいるのじゃろうか……?」)
 アーティラリィは心の中で呟くが、調べられる様な物は残っておらず、次の機会に調べるしかないかと考え、パーティーの準備を始める。
「まぁ騒ぐのはいいが、場所が場所だし程々にな?」
 学校と言う場所に苦手意識を持っている砂太郎も苦笑を浮かべながら、女性陣を手伝い始める。
(「黄金の林檎って言うのも残ってなさそうだしな」)
「楽しめる時に、しっかり楽しんでおかんとの」
 そんな砂太郎の肩を、まるで酸いも甘いも知り尽くした様な口調で、カノンが叩く。
「餅子パーティーだよ♪ ポテトチップにチョコレート、色々食べようね♪」
 餅子の小さな手を握りながら、灯子もハロウィンパーティーの続きにニコニコしている。
「もう南瓜のシーズンも終わってしまいますが……うずまき様にこれを差し上げるわ! 貴女も第二の南瓜ガールになるのですわ!」
 何処から取り出したのか、淡雪が南瓜のヘルメットをうずまきに差し出せば。
「え!? いいの? わぁ~い♪ ボクね、これ、すっごく可愛いなって思ってたの☆」
 うずまきは喜々として受け取ると早速被り、ねこさんに向かって『えへへ☆ 南瓜ガール二号! 参上っ☆』と仮装と共にクルッとポーズを決める。
(「有無を言わさず被せるつもりだったのですが、喜んで頂けたのならそれはそれでいいかしら」)
 淡雪は心の中で呟いて、穏やかに笑う。
 ハロウィンの夜、ケルベロス達のハロウィンパーティーは、まだまだ始まったばかりだ……。
 ……キーアが持って来たクッキーが、実はロシアンクッキーで『ハバネロジャム』が入っていた事を知るのは、砂太郎が口から火を吐いた後だっとか……。

作者:陸野蛍 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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