パッチワークハロウィン~獰猛なプリンの誘惑

作者:雷紋寺音弥

●ハロウィンの残滓
 祭りの後の公民館。ハロウィンのパーティも終わりを迎え、今は誰の姿もない。壁と窓辺に残るカボチャや怪物の装飾だけが、喧騒の名残を見せているだけだ。
 だが、そんな人気のない公民館の中に、一人佇む女の姿が。いつの間に現れたのか、それとも最初からどこかに隠れていたのか。
「私が失っていた『服従』の心は満たされた。あぁ、誰かに服従し、その為に働く事の、なんと甘美なる事か……」
 誰に言うともなく、女は陶酔した表情で言葉を紡ぐ。その手に握られているのは、眩いばかりの輝きを持つ黄金の林檎。
「魔女の力が最も高まる今夜、第十一の魔女・ヘスペリデスが、その役目を果たすとしよう。ユグドラシルにおられる、『カンギ様』の為に、私の黄金の林檎からハロウィンの日に相応しい植物を生み出そう」
 そう言って、女が黄金の林檎を放り投げると、それは一瞬にして巨大な攻性植物へと姿を変えた。
「さぁ、お前達、ハロウィンの魔力を集めて私に捧げよ。全ては、『カンギ様』の為に……」
 暗闇の中で蠢く謎の影。黄金の林檎より生まれた攻性植物は、まるでケーキ屋や喫茶店のメニューにあるような、プリン・アラモードそっくりの形をしていた。

●ホワイト☆ぷりん?
「今年のハロウィンパーティーも、随分と盛り上がっていたようだな。だが、いつまでも祭りの余韻に浸っているわけには、残念ながらいかないようだ」
 祭りが終わったばかりで申し訳ないが、辰・麟太郎(臥煙斎・e02039)により新たな敵の動きが察知された。そう結んで、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に、事件の概要を語り始めた。
「麟太郎の調べでは、ハロウィンパーティーが終わった直後だというのに、パッチワークの魔女の一人が動き出したということらしい。動き出したのは、第十一の魔女・ヘスペリデス。彼女は、日本各地のハロウィンパーティーが行われた会場に現れ、会場に残ったハロウィンパーティーの残滓と、彼女が持つ黄金の林檎の力で、強力な攻性植物を生み出すようだ」
 このままでは、パーティーの余韻に浸りながら家路につこうという人達が襲われて、殺害されてしまうかもしれない。そうなる前に、現れた更生植物を撃破するのが、今回の仕事だとクロートは告げた。
「敵の攻性植物は、パーティーが行われた後の公民館に出現する。祭りの終わった後だから、周囲に人の姿もない。公民館の扉も開いているようだから心配は無用だ」
 ちなみに、第十一の魔女・ヘスペリデスは、既に姿を消している。とりあえず、今回は出現した攻性植物を倒すことが先決だと伝えるクロートだったが……そこまで説明したところで、彼の口調が唐突に歯切れの悪いものになった。
「で……その、攻性植物なんだが……何故か、巨大なプリン・アラモードのような姿をしていてな……」
 帽子を被り直すようにして頭を抱え、クロートは軽く溜息を吐いた。
 いったい、何故にそんな形状の攻性植物になってしまったのか。どうにも脱力しそうな外見だが、それでも敵は見かけによらず強力だ。
 戦闘になると、敵の攻性植物はフルーツのような物体を撒き散らして相手を惑わしたり、生クリームの海で床諸共に戦場を侵食したり、ケーキのトッピングに使えそうな金箔や小花を振り撒きながら、触手で敵を薙ぎ払うといった攻撃を行って来る。その、どれもが強力な催眠効果を持っており、思わず甘い香りに我を失ってしまうのだとか。
「しかし……それにしても、パッチワークの魔女が起こす事件に現れる敵が、攻性植物であるのは不自然だな。ヘスペリデスが攻性植物を武器にしているのか、或いは、攻性植物がヘスペリデスを手駒にしたのか……」
 腕組みをして自問するクロートだったが、残念ながらこの場で答えは出せそうになかった。
 とりあえず、今は楽しいハロウィンを台無しにしないためにも、攻性植物を撃破して欲しい。そう結んで、クロートは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
レベッカ・ハイドン(鎧装竜騎兵・e03392)
試作機・庚(戦闘機・e05126)
高乃湯・あづま(自称合法ロリ美少女狐・e07337)
雷波・まかね(九歳で人生に負けた・e08038)
白銀・ミリア(しばらく引きこもる・e11509)
黒須・レイン(海賊船長見習い・e15710)
ウルトゥラ・ヴィオレット(はぴねすおふぃさー・e21486)
西城・静馬(極微界の統率者・e31364)

■リプレイ

●名伏し難きプリン?
 公民館の扉を開けて中へ入ると、そこは静まり返っていた。
 夕方まで盛大なるパーティーが開かれていた会場も、今となっては闇と静寂だけに支配されている。明日になれば、祭りの残滓でさえ跡形もなく片付けられてしまうのだろうが……その前に、この会場に潜む危険な存在を、さっさと排除しなければならない。
「敵、どこにいるんだろ? ……もしかして、あれ?」
 薄暗がりの中、棒状のスナック菓子を齧りながら雷波・まかね(九歳で人生に負けた・e08038)が指差した場所を見ると、果たしてそこには巨大なプリンが左右に揺れながら蠢いているではないか!
「よりによって、お祭りの夜に出てくるとは! プリンだからって、美味しそうだとか思ってないぞ! ちょ、ちょっとだけしか!」
「やけにうまそうな見た目のデウスエクスだな……。だが、そんな甘い香りと見た目に……だ、騙されたりなんかしないからな!!」
 黒須・レイン(海賊船長見習い・e15710)と白銀・ミリア(しばらく引きこもる・e11509)の二人が、早くも巨大プリンを前にして声を震わせていた。
 敵の全身から漂う甘い香り。揺れ動くプリンの誘惑に、できることなら今すぐにでも飛び掛かって、そのまま食べてしまいたい。
 だが、それでも、あれは恐るべき攻性植物。このまま放っておいたら最後、プリンの方から人々を無差別に襲いまくり、美味しくいただいてしまうに違いない。
「ふむ……。どうやら、敵はカスタードプリンのようですね」
 冷静に敵の姿を品定めしつつ、西城・静馬(極微界の統率者・e31364)が呟いた。
 いや、調べるとこ、そこかよ! これから戦うんだから、もっと敵の弱点とか行動とか、そういったところを見極めようよ!
「……なるほど。たんなるプリンではなくアラモードとは……。こんかいのこうせいしょくぶつは、たいへんなきょうてきのようです」
 もっとも、ウルトゥラ・ヴィオレット(はぴねすおふぃさー・e21486)のように、別の意味で敵の危険性を認識しようとする者もいたので、あながち無駄な行動とは言えなかったが。やはり、甘いお菓子が敵となると、こちらの気持ちも緩んでしまいがちになる。
「うおおおおおお! あれは敵! 敵ぃ!! 終わったら、今度ケーキバイキング行くから我慢なのじゃあああああ!!!」
 案の定、プリンの誘惑に耐え兼ねた高乃湯・あづま(自称合法ロリ美少女狐・e07337)が、既に半暴走状態に陥っている始末。
 これは拙い。まだ何の戦いも始まっていないのに、プリン食べたさに暴走したケルベロス等が現れてしまったら、前代未聞の大珍事だ。
「なんか危険なプリンのようですね。被害が出る前にプリンを退治しないと」
「美味しそうな攻勢植物デスけど、さっさと倒さないとデスね」
 色々な意味で危険な相手だと判断し、レベッカ・ハイドン(鎧装竜騎兵・e03392)と試作機・庚(戦闘機・e05126)が、それぞれプリンを殲滅すべく覚悟を決めた。が、そんなケルベロス達の様子を巨大プリンが黙って見逃すはずもなく、周囲に様々なフルーツを撒き散らしながら、実に美味そうに身体を揺らし襲い掛かって来た。

●甘美なる誘惑
 公民館の床に撒き散らされたスイーツの嵐。だが、一見して美味そうな果物にしか見えない物体も、列記としたデウスエクスの攻撃なのだ。
「なんと、ほんのうをしげきする、こうげきでしょうか……。ここで『メシテロ』のげんいんを、はいじょしなくてはなりません」
 このまま眺めているだけでも危険だと察し、まずはウルトゥラが電子の鳥を生成した。
「かぜたちぬ。いざ、いきむ」
 実体を持たない鳥が順風を巻き起こし、味方の攻撃の命中率を上げて行く。その一方で、ボクスドラゴンのコンピューターには、回復役のフォローを任せるのも忘れない。
「デハ、遠慮なく潰させてもらいマスヨ」
 その間に敵の足を止めるべく、庚が高々と飛び上がる。正面から回転しながら突撃するライドキャリバーの辛。その動きに合わせ、タイミングを見計らって、同時に攻撃を叩き込む。
「……ぷぎゅぅっ!?」
 なにやら妙に可愛らしい鳴き声を発し、蹴りとスピンの直撃を喰らったプリンが悶え苦しんだ。
 周囲に飛散する大量のクリームとプリンの欠片。しかも、それに合わせて敵の身体が、実に美味そうに揺れるのが食欲をそそる。
「前はあたしに任せろ、背中は預けたぜ」
「言われずとも! 後ろは気にせずぶっとばしてこい!」
 後方で星辰の加護を広げるレインの言葉を背に、二振りの斧を構えたミリアが突撃して行く。その瞳は、殆どケーキの食べ放題会場に突撃する際の少女と同じものになっていたが、細かいことは気にしたら負けだ。
「うりゃぁぁぁっ!」
 振り下ろされた鈍重な斬撃が、プリンを十字の形に切り裂いた。その瞬間、やはりクリームやらプリンの欠片やらが飛び散って、周囲に甘い香りが漂った。
「敵の見た目ケーキですけど、おいしいんですかね? 試しにちょっと齧ってみましょうか」
 アームドフォートの砲撃で牽制しつつ、ドサクサに紛れて早々に敵の破片の味見を始めるレベッカ。とりあえず、その辺に付着していた生クリームとプリンの欠片を指ですくい、ちょっと口に入れてみると。
「ああ、これは……」
 ほんのりと甘い香りに続き、口の中に広がる濃厚な甘さ。弱い刺激から一気に強い刺激へと落とす、甘味の大技。海千山千の甘党から、スイーツに目がない女子高生、果ては甘い物大好きな幼稚園児まで、すべからく虜にする禁断の味!
「プリンやクリームが本物かどうか見極めようと思っていたが……その必要も、なさそうだな」
 既に試食を始めている者がいるのを知って、静馬は淡々とエクスカリバールで敵の身体を抉っていた。
 バールの先から滴り落ちる、ふんわりと甘そうな生クリーム。実際、舐めれば甘く、そして美味いのだろう。
 これぞ、正に筆舌に尽くしがたい至高の味。それらを見ているだけという状況に我慢ができなくなったのか、あづまの精神の壁がついに決壊した。
「むきゃおー! 攻性植物の分際でぷるぷるしおって、このプリンめええええ!!!」
 こんなもの、見せつけられて耐えられる方が異常である。そんな怒りのパワーが明日への原動力へと繋がったのか、唐突に公民館の床をブチ破って、噴出したマグマが敵の身体を勢いよく天井まで叩き付けた。
「ぷるきゅぉぉぉっ!」
 身体が熱で溶かされる苦しみに悶えながら、攻性植物が奇妙な叫び声を上げて落下する。同時に、辺りには溶けたクリームやプリンの残骸が飛び散って、ますます甘ったるい香りが漂い始めた。
「ちょっ、まって! まって! まって! タイム!」
 溶けた生クリームが顔に付着したことで、まかねが慌てて携帯ゲーム機を取り出し、一時停止ボタンを押しまくる。その動きに合わせ、なぜか敵も身体を痙攣させ始めたのだが、細かいことは気にしたら負けだ。
「んがぁぁぁっ!」
 大口を開けて、ミミックのえむいーが敵の後ろから噛み付いた。が、どう見ても巨大なパソコンのような物体がケーキを食っているようにしか見えず、他の者達の甘味へ対する誘惑となるだけだった。
「ぷる……ぷるぉぉぉっ!」
 それでも、ここで食われて終わるつもりはないと、攻性植物もまた身体を震わせながら触手で周囲を薙ぎ払う。瞬間、辺り一面に美しい金箔や小花が舞い散って、薄闇の中で贅沢な輝きを放っていた。

●生クリーム地獄
 気が付くと、戦場となっている公民館の一室は、胸の焼けるような甘ったるい臭いに支配されていた。
 敵の攻性植物が生み出す大量の生クリームによって、どこもかしこもクリームだらけ。それはケルベロス達とて例外ではなく、戦えば戦う程に全身がクリームにまみれて行く。
「なんか周囲にもケーキが沢山、美味しそうですね。このままにしておくのも勿体ないんで、遠慮なく食べちゃいますか……」
 完全に生クリームに埋没した状態で、レベッカが他の者達へと近づいて行く。どうやら、度重なる攻撃から味方を庇い続けた結果、完全に催眠状態へと陥ってしまったらしい。
「……っ!?」
 だが、近くにあった生クリームの塊に手を伸ばした瞬間、レベッカは豪快に足を滑らせて転倒した。その衝撃で他の生クリームまみれになった者に激突し、ますます周囲にクリームが飛散する。
「ぼろぼろに崩れちゃってもったいない……っていうかあれ? このケーキ中に人が?」
 未だ目が覚めないのか、レベッカは不思議な顔をしたままクリームの塊を舐めている。そんな中、静馬は相変わらず冷静に、生クリームの海を掻き分けながら敵を殲滅することだけを考えていた。
「甘美な香りも、過ぎれば胸焼けを起こす異臭……ここで絶たせてもらう」
 それは、喩えるならバラの花の香りも濃すぎるとオナラの臭いに思えてしまうのと同じこと。胸焼けの根源を倒すべく、豪快にハンマーを叩き付けるが。
「……ぷぎゅっ!」
 真正面から鈍器で殴られたことで、再びプリンとクリームが飛び散った。これは拙い。早く退治しなければ、いよいよ周りの様子が洒落にならないことになってきた。
「グラム4442円! グラム4442円!!」
 撒き散らされた金箔に魅了されたのか、まかねが譫言のように繰り返しながら、まかねが生クリームの山に突っ込んで行った。辛うじて気合いで正気に戻ったようだが、しかし代わりに全身がクリームまみれ。えむいーが主の分まで懸命に攻撃しようと頑張っているのが、唯一の幸いと言ったところか。
「いやじゃ! くりーむまみれはいやじゃあああ!!」
 度重なる生クリームの襲撃に恐怖を覚えたのか、あづまが本気で拒絶のサイン。
「お菓子は遊ぶもんでも、まして人を襲うもんでもないじゃろ!」
 恐怖心を払拭すべく、超高速の一突きで敵を貫く。が、全身をぷるぷると痙攣させながらも、攻性植物は未だ倒れる素振りを見せず。
「ひぃぃぃっ! こっちに来ないで欲しいのじゃぁぁぁっ!!」
 お返しとばかりに、あづまを狙ってクリームを発射。その周りにいる者達まで巻き込まんと、純白の海が迫り来る!
「……うぇっぷ。ひ、酷過ぎるのじゃ……」
 残念ながら、運命というものは非情である。頭から生クリームを浴びせ掛けられ、あづまの全身はベタベタだ。おまけに、クリームによる被害は周囲にいた者達にまでおよび、もはやクリームを浴びていない者の方はいないとまで言い切れる状態になっていた。
 このままでは、本当に冗談抜きで人間ケーキにされてしまう。だが、それでもケルベロス達が未だ健在なのは、極端なまでに前のめりな陣形が功を奏していたからに他ならない。
 敵の攻撃は、全て広範囲を攻撃するもの。しかし、その対象が増えれば増える程、攻撃の威力も効果も拡散して低下する。通常の戦いとは真逆の発想が、ここに来て彼らを甘党催眠地獄の脅威から守っていた。
「そろそろ、あのプリンを片付けないと拙いデスカネ?」
「データのかいせき、かんりょう……。おいしいところは、わたしがいただきます」
 こうなれば、いっそのこと余すところなく食ってやろうと、一斉に攻撃を仕掛ける庚とウルトゥラ。
 飛来する気弾が皿に乗っていたキウイフルーツを弾き飛ばしたところで、炎を纏ったライドキャリバー辛が真正面から突撃した。コンピューターのブレスがプリンの本体を大きく抉り、そこを目掛けてウルトゥラが肉薄する。
「いちばんおいしいのは、ここですね」
 ケーキやプリンで美味いのは、時に本体ではなく上に乗っている飾りである。そう思っていたのかどうかは知らないが、高速演算によって計算され尽くした一撃が、目玉のような物体の生えた敵の頭頂部を削り取った。
「ぷぎょわぁぁぁっ!!」
 さすがに、これだけ好き勝手に貪られ……もとい、攻撃されるのは、攻性植物といえど耐えられなかったようだ。
 思わず逃げの姿勢に入り、砂糖水の涙を流して後退する巨大プリン。もっとも、ここで逃がしてしまうような失態など、ケルベロス達が演じるはずもなく。
「ハロウィンを楽しむ人の邪魔はさせん! この海賊船長が成敗してくれる!」
「お前を倒して、裏にいる魔女との関係性、洗いざらい吐いてもらうぜ!!」
 最後は、レインの援護射撃を受けたミリアの拳が、一撃の下に敵の身体に大穴を開けた。
「……っ!?」
 断末魔の悲鳴さえあげられず、四散する巨大なプリン型の攻性植物。ハロウィンの日に現れた珍妙な敵は、甘ったるい臭気を散乱させつつ、虚空の闇へと溶けて消えた。

●Trick or Treat?
 戦いが終わった公民館には、再び平穏と静寂が戻っていた。
「疲れたー。お腹空いたー。ミリアー、お菓子もってないー? お菓子くれなきゃいたずらするぞー」
 生クリーム地獄から解放され、レインがその場にへたり込む。
「菓子ー? えぇ、さっきのやつじゃダメ? 消えてるからダメかぁ……」
 周囲を見回し、ミリアも大きな溜息を一つ。倒れた敵が消滅したと同時にクリームも消滅し、残されたのは穴だらけになった公民館の部屋だけだ。
「とりあえず、着替えの必要はないみたいですけど……でも、その前に部屋を直した方がいいかな?」
 滅茶苦茶になった室内を見回し、レベッカが言った。一通りのヒールを済ませてから改めて見ると、変貌した部分が部屋の装飾と混ざり合って、なんとも楽しげな空気を醸し出していた。
「なんだか、よけいにおなかがすいてきました」
 一足先に菓子を頬張りながら、ウルトゥラが誰に言うともなく呟いている。もっとも、その気持ちは彼女だけでなく、この場にいる全員が同じであり。
「プリン……食べたくなって来たデスね……」
 先程まで戦っていた敵の姿を思い出し、どこからか庚がデザート類を取り出して並べ始めた。その様子に、静馬もまた紅茶とカフェオレを提供しつつ、微笑みを浮かべながら給仕に徹していた。
 まあ、その一方で、クリームと一緒に金箔まで消滅してしまったことに落ち込んでいるまかねの姿もあったが、それはそれ。
「ぷちハロウィンパーティやりなおしして、気分を取り戻すのじゃー」
 緑茶と和菓子を並べるあづまに諭されて、まかねも気持ちを切り替えたようだ。これから先、冬に向けては先立つ資金も必要だが、同じくらいカロリーも必要なのだと。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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