●遅れてきた魔女
しんと静まったアーケード商店街――。
祭りの名残は店先にあしらわれた南瓜やコウモリの飾りばかり。一切の人影の無いそこをぴゅうと音を立て、冷たい風が駆ける。
そう、誰もいないはずであったのに――。
いつしか女が一人、佇んでいた。
緑を基調とした長いローブ、杖、そして籠一杯の林檎――誰がどう見ても『魔女』と表現するであろう、その姿。今日という日であらば、不自然な物では無かった――その胸にモザイクさえなければ。
「私が失っていた『服従』の心は満たされた。あぁ、誰かに服従し、その為に働く事の、なんと甘美なる事か――魔女の力が最も高まる今夜、第十一の魔女・ヘスペリデスが、その役目を果たすとしよう」
何処か陶酔したように、彼女はひとりで謳う。
「ユグドラシルにおられる『カンギ様』の為にハロウィンの日に相応しい植物を生み出そう」
そして彼女は黄金の林檎を投じる。
夕闇の中、それは黒く巨大な姿を得る――。
魔女はその姿に満足げに頷くと、まだハロウィンは終わらぬぞ、と薄く微笑むのだった。
●その敵影は
「集まったか――このような日ではあるが、新たな敵の動きがあった」
切り出す口調はいつも通りだが、雁金・辰砂(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0077)は僅かに眉間に皺を寄せていた。パーティー後にこのような話をするのは、彼にとっても多少憚られたのだろう。
辰・麟太郎(臥煙斎・e02039)が突き止めたという新たなパッチワークの魔女――第十一の魔女・ヘスペリデス。
「奴は日本各地のハロウィンパーティー会場に現れ、そこに残された残滓と黄金の林檎の力で強力な攻性植物を生み出す。パーティーそのものは終了しているが、帰路につく者達が襲われることになるだろう――ゆえに、至急現場に向かい、阻止して貰いたい」
攻性植物の現れる場所は、広いアーケード商店街。
ハロウィンイベントのため、その日は夕方ですべて店じまいをしてしまう。よって、周囲に人気は無く、存分に力を振るえる。
「ある程度、迅速な撃破が望まれる状況でもある。敵を逃さぬような封鎖などを考えるよりも、戦いを挑んだ方が良いだろう。さて、問題の敵だが……」
辰砂はそう告げながら、何故だか奇妙な表情をした。どう説明したものか、というような困惑が見て取れた。
一瞬の逡巡の後、
「現れる攻性植物は巨大なチョコレートのプリンのような形をしている」
――よくわかるような、わからないような表現をした。
ハロウィンの残滓から生み出された攻性植物のため、そういう形状らしい。
全長は三メートルほど、少し弾力のあるぷるんとした身体を持ち、ビスケットのような種子を飛ばし、チョコレートのような蔦を自由に伸ばし戦う巨大なプリン。
ソースはビターチョコレート、本体も甘すぎぬビター風味だが、しかし香り付けされたバニラが仄かに漂い人を惑わす。
――ような突進を、時折仕掛けてくるらしい。
しかし、そんな外見ではあるがなかなかの強敵だ、と辰砂は注意する。
「魔女とハロウィンは兎も角、攻性植物というのが気に掛かる……とはいえ、現時点で貴様らがなすべきは、敵を討つことだ。油断せず、務めろ」
そう言って彼が口を噤むと、そこまで共に説明を聴いていたレオン・ネムフィリア(オラトリオの鹵獲術士・en0022)が、ケルベロス達を振り返った。
「俺も同行させてほしい」
別にチョコレートが気になっているわけではないが、と訊いてもいない一言を呟きつつ。
「皆の楽しいひとときを邪魔するような存在を、許すわけにはいかない」
帽子の縁を摘みながら、彼は小さく辞儀をした。
参加者 | |
---|---|
バレンタイン・バレット(ひかり・e00669) |
無拍・氷雨(レプリカントの自宅警備員・e01038) |
スプーキー・ドリズル(弾雨スペクター・e01608) |
ニケ・セン(六花ノ空・e02547) |
片白・芙蓉(兎頂天・e02798) |
詠沫・雫(メロウ・e27940) |
ダリル・チェスロック(傍観者・e28788) |
デイス・エチュード(伽藍堂・e30719) |
●仮装の夜
店先に並ぶ大小の詰まれたカボチャランタン、ポップに表現されたモンスターのイラスト。天鵞絨のリボンで飾られた看板。
いずれも各店が色々工夫してこさえたのであろう。いかにもな手作り感が微笑ましい。
何の変哲も無いただの商店街だが、たったそれだけの装飾と、先程までのパーティの余韻で、異世界に迷い込んだような気配が漂う。
(「人々がどれだけ今日を楽しんだか……街に残る飾りを見れば分かります」)
なるほどと着流しの上に鮮やかな羽織を纏ったデイス・エチュード(伽藍堂・e30719)が金の目を細めた。
愛用の斬霊刀を佩く姿が自然なため、あまり違和感はないが。慣れぬ装いに、彼自身は巧く言い表せない不思議な感覚があった。
「皆さんの衣装は凝っていて素敵ですね」
彼の柔和な声音に、狐面の男が頷いた。
淡い商店街の街灯が路に映すケルベロス達の影も、普段と何処か色々と違った。
「皆の仮装も素敵」
言って、和服姿の男は狐面を少しだけ持ち上げる――顔を覗かせたニケ・セン(六花ノ空・e02547)に、和紙で作られた和柄の桐箱のような箱――今日はニケにあわせて鳥居や狐の絵を市松に散りばめた柄のミミックが、ぱかぱかと蓋をあけて同意する。
「うん、浮かれてばかりもいられないけれど」
ハロウィンを楽しむ機会が出来たのは素直に嬉しいと、がくがく頷くは化け猫の頭部――ダリル・チェスロック(傍観者・e28788)である。前夜より手作りしたそれは獅子舞の頭のように胴体部まで覆う白布に繋がっており、両手は猫ハンドを装着している。
「それを一晩で……なかなかやるねぇ」
と彼を一瞥したスプーキー・ドリズル(弾雨スペクター・e01608)の顔は青ざめた色に深い傷跡のペインティング、綻びのある帽子とスーツ姿。アメリカンギャングにゾンビメイクと、本格的な仮装であるが、さりげなく装着した愛嬌たっぷりのテレビウムランタンが剽軽さを加えている。
ぴょんと軽やかに一歩前に出たバレンタイン・バレット(ひかり・e00669)の姿は鹿撃帽にインバネスコート。更には虫眼鏡やら色々と小道具を身につけた様は、まさしく名探偵。
彼はくるりと振り返り、 レオン・ネムフィリア(オラトリオの鹵獲術士・en0022)を見た。
「ところで、レオンはどんな仮装できたんだい?」
一見、取り立てて変わったところがないように見えるが――レオンは、帽子を指さした。
いつもと違いシルクハットで『この型10シリング6ペンス』の札がつく。いつもは纏うローブもなく、杖も今は小さなネズミだ。
「帽子屋さんですね」
そう微笑むは、詠沫・雫(メロウ・e27940)――彼女は、水色のエプロンドレスと白いニーハイ。その傍らにはウサ耳とモノクル眼鏡をつけてうさぎさんっぽく仮装させられたメルがすぐ近くでふわふわと浮いている。
「へえ、よく似合うぜ」
飾らない真っ直ぐな言葉に、レオンもありがとう、と薄く笑む。
自分はどうかと言わんばかりにくるりとその場で回って見せたメルに、雫は深く頷く。
「メルもよく似合ってますよ」
そう思うのは、主のひいき目だけではないようで、
「フフフ、やはり兎の可愛さこそ最強……」
兎の魅力を再確認し、満足げに頷いているのはデコラティブな白雪姫衣装を纏った片白・芙蓉(兎頂天・e02798)――強気で不敵な笑顔は、それでも一番可愛いのは私……という、自信で満ちあふれていた。
そのキャラはお妃様なのではないだろうか、というのは無粋である。
ここだけを見ると彼らはただ和やかな一時を過ごしているように見えるが、戦いを前に緩んでいるわけではなく。
周囲への警戒や注意は怠らず、最速で駆けつけて来た。
「あれが……」
全身を覆うローブ纏う魔法使いの仮装をした無拍・氷雨(レプリカントの自宅警備員・e01038)が、思わず呟く。
十数メートル先からでも解る、巨大なシルエット。あれは正真正銘――。
「チョコレートのプリン……あれがデウスエクスでなければ凄く盛り上がるですが、倒すしかないのが辛いのですね。……これも敵の作戦なのでしょうか……?」
サポートにやってきた機理原・真理(フォートレスガール・e08508)の心底残念そうな呟きが耳に入る。いつも通りの無表情なのにも関わらず、辛そうな空気がひしひしと伝わってくる。
騙されないのです、と自らに言い聞かせ、敵を見据えた真理がプライド・ワンと共に後ろを守ると請け負う。
一歩踏み込めば――相手も流石に気付いたのか、ぐるりと身体を回し、こちらを見た。その動きはやはり、不気味であるが。
この時を待っていたとばかり、ダリルは大きな化け猫頭部を猫ハンドで両側からがしり押さえる。
「待ってたにゃーん」
裏声とともに、化け猫の身体がぬっと伸びたので、レオンが少し驚いたのは秘密である。
●悪戯するお菓子
まず、鼻腔をくすぐる香りがあった。チョコレートとバニラ。
商店街の真ん中で、チョコレートのような蔦を四方へ伸ばす褐色の攻性植物。その形は確かに、どこからどう見てもプリンではあるのだが――。
「こんなに美味しそうな攻勢植物は初めて見る気がするね……いや、嬉しくはないけれど」
「ぷりんはお菓子と聞きましたが……なんとも面妖で大きいですね。美味しいのでしょうか」
化け猫を脱いだダリルと共にそれを仰ぎ――何せ三メートルもある――ながら、デイスの裡に浮かび上がったささやかな疑問。
興味があるならば、口にしてみてもいいし、しなくてもよい――とか何とか、考えている場合ではない。
跳躍するは、小柄な影。
「パーティっていうのは、たのしくしあわせに終えるまでがパーティなのさ。だから、モザイクのやつらにジャマなんてさせない!」
一足跳ねた姿勢のまま構えたバレンタインのリボルバー銃から放たれた弾は、一度地面へと撃ち込まれる。
されど誤射ではない――同時、芙蓉が彼と反対に位置するよう回り込んでいた。長いスカートを難なく捌き、振り上げるエクスカリバール。
「兎パワーご覧なさいなっ、ヨイショー!」
背後から振り下ろされる強烈な一撃と同時、下方より不可避な跳弾が、プリンに迫る。
それは抵抗のため彼らを遠ざけるべく、蔦を振り回したりすることもなかった。
ただ受け止めた。
つるん。
敢えて表現するならばそのような擬音をもって。
つるりと滑らかな手応えに芙蓉は、後ろへと退きながらフフフと不敵に笑う。
「いよいよプリンって感じだねえ……植物だけど」
「ダメージが通ったのかどうかもわかりにくいですね」
ニケは呆れとも感心ともつかぬ感想をぽつり零すと、雫も頷く。彼が紙兵をばらまくと同時、彼女の手にした黄金の林檎が放つ光が仲間達を包む。
メルもまた、指示通り属性をダリルへと注ぐことで、一度目の備えは完了。
それを待たず、走った影の軌跡に紫煙が燻る――。
「……林檎飴のキャラメリゼは如何かな? 黒と赤のコントラストも素敵だよ」
スプーキーは蔦の間をかいくぐって素早く位置取ると、低い声音で問いかけ――解は端から不要と、真っ直ぐ伸ばされた腕の先、双頭銃口が赤く吼える。
「That's original sin」
放たれた深紅の弾丸は、褐色の柔らかなそれに触れるなり破裂し、鮮やかに紅く染め上げた。
ならばそれを喰らって見ろと言うかの如く。半分が紅く染まった種子をお返しとばかりに、プリンは放つ。
それを大きな口でばくりと食らいついたのは、桐箱のようなミミック。
間髪入れず数弾放たれたそれへ、飛びつき一口で平らげたようにも見えたが、着地するなり、ぱかぱかと蓋を開いてまずーいと報告する。
「残念だったねぇ」
でも、変なモノを食べてお腹毀さないようにね、とニケは緩く注意する。毒も持っていたはずだし。
攻性植物を中心に取り囲むよう前衛が動として巡り、更に後衛が隙が無いように立ち回る。
二人のヴァルキュリア、ダリルとデイスが背を合わせるように「寂寞の調べ」を奏であう。
静かで寂しげな旋律に耳を傾けつつ、氷雨はローブを思い切り脱ぎ捨てる――。
プリンセス変身で煌びやかなプリンセスへと姿を変じ――瞬く間にそれを解除して、更に、魔女の姿へと変身する。
ハロウィンらしく、魔法の国のお姫様から、戦う魔女に。
「攻性……植物、植物? どうやって養分を吸収しているのかしら?」
神秘的な変身とは裏腹に割と現実的な事を気に掛けながら、胸部を変形展開させると、動く皆の合間を縫うようコアブラスターを放つ。
光線はチョコレートの蔦を溶かすも、すぐににゅるりと伸びて修復されてしまう――。
「さて……皆の攻撃から弱点を分析していきたいところだけど、これは骨が折れそうだなぁ」
ニケは敵を観察しながら、ひとりごつ。
一見、どのダメージが効果的に通ったか非常に解りにくい反応だ。だが紫の瞳はより注意深く、見逃すまいとそれを追った――。
●かぐわしき敵
「膝! 膝で何とかなるのよ!」
叫んだ勢いと共に両手をあげた芙蓉の本日何度目かの全力跳躍。そのまま正座に似た姿勢で膝から飛び込む追儺ニードロップ。
普段ならゴツーンといくのだが――ぷにっと受け止、ぽよんと彼女を跳ね返す。
わっ、と思わず小さく叫び、対角線上でバレンタインが浮いた。オーラを纏った武器で殴りつけた結果、つるりと滑ったのだ。
――傍目には楽しそうでもある。
「ひきょうだぞう!」
体勢を崩したところ、そのままチョコレートの蔦で脚を掴まれたバレンタインが声を上げる。
「今、お助けします」
涼やかな一声と、風を断つ音が後から響く。羽織を翻し、空の霊力を纏うデイスの一撃は鮮やかに蔦を断ち切った。すかさずレオンがオーロラを展開し、傷を癒やす。
「柔らかく堅い、そういうことですか」
ドラゴニックミラージュを走らせながら、ダリルが黄硝子サングラスの下、目を細める。
炎のドラゴンが正面から襲うにあわせ、黄金の融合竜のエネルギー体が氷雨の指示に従って、側面から食らいつく――炎は表面を焦がし、黄金の顎が囓り取ったのは僅かな表面のみ。
焦げたから、ではあるまいが、漂う匂いがより甘くなったと気付いたニケが声を上げる。
「来るよ」
多分前衛に――と短く鋭く通る警告。
攻撃対象の傾向から、こいつは最も近くを飛び回る二人を特に厭っている、と彼は勘付いていた。
その進路が浅めに傾いだそれを見たことで確信へと変わる。
「させないよ」
守るべく翼を広げ、スプーキーが待ち構える。元々銃創だらけの身体、今更新しい傷を厭うことなどない。
地響きは一瞬、ドンッと身体に走った衝撃は予想以上に重かった。柔らかな身体は掴み所がない――全身を包む深いショコラと上品なバニラの香りに、目眩がした。
「否を是に、歪を正に、在るままに」
静かにダリルが紡いだ詞――背負う光の翼を大きく広げ、羽ばたかせる。
空気を震わせるのは、不浄を正し、在るべき姿の境界を照らし、癒しを伴い包み込む数多世界を巡る白き光の発現。
前衛に駆け抜けた衝撃と、蠱惑の香りを一気に遠ざけ、現世へと戻した。
このまま一気呵成にと、両手を祈るように組んで雫が歌う。
「力を貴方に。」
戦場に響き渡る天上の歌声が奏でる第二楽章『Destruction』――未来を切り開く力を貴方に。全てを打ち砕き、どうか道を示して、と。
受け取ったわ、と芙蓉が笑みを浮かべて地を蹴った。
「鏡(プリン)よ鏡よ鏡さん、この世で最も可愛い――私よっ!」
再びエクスカリバールを高く振り上げながら、白雪姫が迫る。
スプーキーが石化の呪いを籠めて放ったいくつかの紅い銃創。狙って叩きつければ、大きくヒビが広がった。
「ハロウィンはお菓子か悪戯か選ばせる……のでしょう? ではお菓子のその身を差し出すか、悪戯でその身を腐らすか選んでいただきましょう、ね」
デイスが流麗な所作で構えた白刃に、幾筋かの稲光が走る。
トン、と一蹴、距離を詰めて放たれた雷刃突――雷光がそれを貫き、灼いていく。
「汝、朱き者。その力を示せ。」
これで一気に詰められるね、とニケが事も無げに告げながら、朱き鎖の影がバレンタインの影へ癒しと破壊の力を注ぐ。
「さぁさぁお立ち会いってね」
「ああ、みてな!」
送り出され、飛び出した彼を搦め捕ろうとチョコレートの蔦がいくつか束となり、鞭のように撓る――のを、斬り裂く五爪。
「今だよ、バリィ!」
スプーキーに呼ばれたバレンタインはおう、と威勢良く応え、吹き抜ける風を一粒に集める。
「臆病風に、吹かれろよ!」
涼風一陣――目視できるものは、敵へと彼が銃口を向けた、それだけだ。
ひょう、と高い音がひと啼きしたかと思えば、巨大なチョコレートプディングは鋭利な刃物で美しく無造作に、何分割にも斬り刻まれていた。
絶えきれず四散すると共に、仄かに苦みのある甘い香りが商店街中に一気に広がった――。
●祭りの夜
「名探偵バレット、今日もひとつ事件をカイケツしたぜ! ……なんてね。これにてハッピーハロウィン、かな?」
鮮やかな銃さばきでさっと愛銃を仕舞ったバレンタインは朗らかに宣言する。
「このあまあまお菓子だらけの中、ちょっとビターで攻めて来るなんてやるじゃない……!」
腕を組み斜めに構えた芙蓉が、上から賛辞する。
でも、レオンは小さく息を吐く。
「散らかし放題で、迷惑な敵だ」
ハロウィン最後の悪戯、とでもいうつもりなのか、足下にはまだそれなりの大きさの残骸が残っていた。
散らばる一欠片を氷雨がひょいと回収する。掌大になってしまえば、何となく普通のプリン感が増す。
「食べられるのかしら」
まじまじ見つめつつ、彼女は首を傾げた。
皆そこはかとなく興味はあるものの、流石にかじりつく猛者はいなかった。
「甘いもの、嫌いじゃないけど。押し売りはゴメンだね」
狐面を被り直したニケの嘆息に、ぱかぱかと蓋を開けてミミックが同意する。或いは、種が不味かったと憤慨しているのかもしれない。
これを食べる気にはならないけれど――。
「ビターチョコレートのプリン、僕も後で作ってみようかな」
改めて一服しながら、スプーキーが残骸を眺めて口角を上げる。
勿論、誰も襲わないヤツをね、という言葉に、素敵ですね、とメルを両腕に抱いた雫が微笑んだ。
「時間が許すなら、もう少しだけパーティが楽しめるといいね」
――ダリルが言っていた、その言葉は共通の思いだったようだ。
誰ともなく提案した、この姿で傷付いた商店街をヒールしていくのは南瓜行列の続きのようで。
楽しみを忘れない皆を尊敬しつつ、そこに混ざる自分自身もどこか信じられないと――デイスは皆に続きながら、そっと息を吐いた。
(「……少し、愉快にも思う」)
――ハロウィンの夜は、もう少しだけ、続く。
作者:黒塚婁 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年11月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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