パッチワークハロウィン~甘くも苦き宵夢を

作者:月見月

 ハロウィンとは、元々は悪霊を払い収穫を祝う祭りである。であるがゆえに、意外とこのイベントは地方の農村部ともマッチしていた。ここ埼玉県にある農地と住宅地の中間のような街も、そんなイベントをうまく取り入れた地域であった。
 子供たちがお菓子を貰い、若者が仮装を楽しみ、大人が収穫した野菜に舌鼓を打った……そのあと。誰も居なくなったハロウィン会場に、一人の女が姿を見せた。
「私が失っていた『服従』の心は満たされた。あぁ、誰かに服従し、その為に働く事の、なんと甘美なる事か。魔女の力が最も高まる今夜、第十一の魔女・ヘスペリデスが、その役目を果たすとしよう」
 女……パッチワークの魔女・ヘスペリデスは恍惚とした表情を浮かべながら、愛おしげに自らへ寄生する攻性植物をなでる。
「ユグドラシルにおられる、『カンギ様』の為に、私の黄金の林檎からハロウィンの日に相応しい植物を生み出そう。さぁ、お前達、ハロウィンの魔力を集めて私に捧げよ」
 そうして取り出したのは、金色に輝く林檎。ヘスペリデスがそれを放り投げると、林檎は瞬く間に膨れ上がり、一つの形を取る。それは深い緑色をした姿の洋菓子……抹茶味のプリン・アラ・モードであった。
「さぁ、人間共の夢の残滓と黄金の林檎より生まれし、攻性植物まっちゃ・ぷりん・あら・もーどよ。人間どもを喰い散らかすがいい」
 支持を受けた攻性植物は体をふるりと震わせると、夜の街へと飛び出してゆくのであった。


「皆さん、ハロウィンパーティーお疲れ様っす! ですが楽しんでばかりもいられないっすよ!」
 ハロウィンを終えたケルベロスたちを前に、オラトリオのヘリオライダー・ダンテが慌てたようにそう口火を切った。
「パーティーが終わったばかりっすけど、辰・麟太郎(臥煙斎・e02039)さんが、新たな敵の動きを見つけてくれたっす」
 麟太郎の調べでは、パッチワークの魔女である第十一の魔女・ヘスペリデスが動き出したらしい。彼女は日本各地のハロウィンパーティーが行われた会場に現れ、会場に残ったハロウィンパーティーの残滓と黄金の林檎の力で、強力な攻性植物を生み出すようだ。
「このままだと、ハロウィン帰りの人々が襲われてしまうっす。楽しい思い出にケチをつけさせないためにも、皆さんには攻性植物を撃破してほしいっす!」
 攻性植物は、埼玉県の田舎町にある、ハロウィンパーティー後の会場に現れる。出店やブースは仕舞っているが、ハロウィンの飾りつけ自体はまだ残っており、それなりの広さがある。
「現れる攻性植物は洋菓子、プリン・アラ・モードみたいな姿をしているっす。それも抹茶味の」
 可愛らしい姿の反面、戦闘能力そのものはそれなりに高く油断はできない。危険な甘みと苦々しい毒を織り交ぜた抹茶ソースの散布、フルフルとしながらも威力の高いカスタードタックル、相手の注意を突き崩すフルーツ投げなど、見た目に相応しい攻撃をしてくる。
「パッチワークの魔女が、ドリームイーターではなく攻性植物を生み出す……なんだか釈然としないっすけど、まずは撃破をお願いしますっす!」
 ハロウィンを楽しかった思い出で締めくくるためにも。そう話を締めくくりながら、ダンテはケルベロスたちを送り出すのであった。


参加者
小華和・凛(夢色万華鏡・e00011)
繰空・千歳(すずあめ・e00639)
平坂・サヤ(ことはみ・e01301)
八崎・伶(放浪酒人・e06365)
ウィリアム・シャーウッド(君の青い鳥・e17596)
ルルド・コルホル(良く居る記憶喪失者・e20511)
リィナ・アイリス(クリスマスは大切な幼馴染と・e28939)
黛・朔太郎(花道或いは獣道を往く・e32035)

■リプレイ

●覚めやらぬ宵夢
 楽しかったハロウィンは終わりを告げ、人々も帰路についた深夜の屋外会場。飾りつけのみが残され、言い知れぬ寂しさを感じさせるそこへ、そっと足を向ける者たちが居た。ハロウィン後を狙って現れる攻性植物、その撃破の為に集まったケルベロス達である。
「どうやら、周囲に残っている人は居ないみたいですね」
「そいつは好都合、誰かが巻き込まれるのは後味悪いからな。それじゃ、好都合ついでに、っと」
 黒ヤギの郵便屋に扮した平坂・サヤ(ことはみ・e01301)は、がらんとした会場の中に人気がないのを確認し、ほっと息をつく。その横ではウィリアム・シャーウッド(君の青い鳥・e17596)が会場内に残された飾りつけに近づくや、ごそごそと電源をいじり始める。
「ふふ、少しくらい楽しんだって、バチは当たらないわよね?」
 また一方では、チロルドレスに身を包んだ繰空・千歳(すずあめ・e00639)が酒樽状のミミックと共に、くり抜かれたカボチャやカラフルなキャンドルへ火を灯してゆく。そうしてぽつぽつと灯り始めた光点は、電源の入った照明によって一気に煌めきを増す。ほんの数分で、会場内は暖かな輝きを取り戻していた。
「さて。それじゃあ、相手が現れるまでの間、ハロウィンの続きとしゃれ込もうか?」
「ええ。年に一度のイベントですから、楽しみましょう」
 白衣とナース帽、相棒である白毛のウィングキャットと揃いの仮装をした小華和・凛(夢色万華鏡・e00011)と、雅やかな酒呑童子の衣装をまとった黛・朔太郎(花道或いは獣道を往く・e32035)が、手近なテーブルの上に持ち寄った菓子を広げ始める。
 南瓜を使ったものではタルトにケーキ、変わり種で羊羹。他には蝙蝠の形をしたクッキーに白葡萄に似せた綺麗な飴玉。多種多様な菓子たちは甘味だけでなく目も楽しませてくれ、共に入れられた紅茶や珈琲が肌寒さを忘れさせてくれる。
「……とりっく・おあ・とりーと……。お菓子くれないと、アリスになってもらうの……」
「おっと、それなら、カボチャのプリンはどうだ? 景気づけにもなるかもしれないぜ」
 チェシャ猫のふわりとした猫耳を揺らしながら、リィナ・アイリス(クリスマスは大切な幼馴染と・e28939)がルルド・コルホル(良く居る記憶喪失者・e20511)へ悪戯っぽく笑いかける。問いかけに対し、白とオレンジの囚人服に身を包んだフランケンは、鮮やかなカボチャプリンを差し出すことで答えとしていた。
 そうして、思い思いに甘味と交流を楽しむケルベロス達。だが、いつしかその中にかすかな異臭が混じっていることに気付く。眉をひそめるほどの甘ったるさと、口を閉じたくなる苦々しさの混じった香り。ケルベロスたちがその源へ視線を向けると、装飾の輝きから逃れるように薄闇の中へ身を潜ませる、抹茶プリンを模した攻性植物の姿があった。
「なんだ、やっとお出ましかよ、今日は来ねェのかと思ったぜ」
 齧りかけのタルトを口の中へ放り込むと、ウィリアムは己の得物へと手を伸ばし、仲間たちもそれに倣う。攻性植物もケルベロスたちの殺気を感じ取ったのか、ふるふると体を震わせながら会場内へと進み出てきた。
「ようこそハロウィンナイトってね……Trick or Treat、最高に俺たちをもてなせよ?」
 黒スーツにネクタイを締めた八崎・伶(放浪酒人・e06365)が、相棒であるボクスドラゴンと揃いの中折れ帽を頭に載せながら、一歩前へと踏み出す。挑発とも取れる言葉に対し、返ってきたのは緑色の毒々しい液体の散布。さっと散開し、ケルベロス達は楽しいパーティー気分から、戦闘態勢へと素早く移行する。
 かくして、祭りの最後を飾る戦い、その火蓋が切って落とされるのであった。

●香りは甘く、痛みは苦く
「じゃあ、一番手は頂くわね? いくわよ、鈴!」
 敵の攻撃を避けたケルベロスたちの中で、真っ先に攻撃を仕掛けたのは千歳。たる型のミミックが酒瓶状に固めたエクトプラズムで攻性植物の気を引きながら、死角より斬撃を放つ。弧を描く軌跡によって、グラスのふちが切り飛ばされた。
『ムゥウウッ!』
 ガラス状の器も自らの一部なのか、攻性植物は怒りも露わにその巨体を震わせると、削れた部分よりプリンを飛び出させる。見た目とは裏腹な密度を持つそれが千歳へと迫る、寸前。
「そうはさせないよ。代わりにその体の感触を試させてもらおうかな」
 両者の間に、凛が身をねじ込ませた。固いゴムマットの如きプリンの勢いにたたらを踏むも、手にしたライトニングロッドを相手へ突き刺して何とか持ちこたえる。
「何とも、胸やけがしそうな匂いだね……流石に齧る勇気はないけれど」
「なぐってくるお菓子は、誰だってのーさんきゅーなのですよ」
 雷杖より強烈な電流をプリン内部へ流し込み動きを封じるや、すかさずサヤが追撃を掛けた。相手の頭上高く飛び上がるや重力を込めた蹴撃を叩き込み、そのままプリンの弾力を利用して離脱する。
『ブルッ、ブルルッ』
 しかし、相手もただでは転ばない。たわんだ体をあえて縮こませると、周囲全てへ抹茶ソースをまき散らした。接近していた凛や千歳、離脱途中のサヤまでもが全身緑色に染まる。
「うわ、ぺっぺっ! 思った以上に不味いなこりゃ。旨いお菓子じゃなければ、悪戯するしかねェよな!」
 飛沫を顔面に浴びたウィリアムがげんなりした表情を浮かべると、凛のウイングキャットが翼をはためかせ、抹茶ソースを吹き散らしてくれる。それを追い風として相手へと肉薄すると、ウィリアムはグラスの足めがけてハンマーを横薙いだ。これにはたまらず、プリンがどちゃりと地面へと転がる。
「卑怯だなんて言わねぇよな?」
 致命的な隙を見逃す程、ケルベロス達も甘くはない。ボクスドラゴンの属性支援を受けながら、伶が巨体目掛けて疾走する。避けきれないと悟った攻性植物は自らの添え物、果物や焼き菓子を投擲し、迎撃を試みた。ファンシーな見た目とは裏腹に、一撃一撃は強烈。
「改めて見れば見る程、このプリンでけぇな……殴り甲斐がありそうだ!」
 だが、小さくないダメージと引き替えに、伶は敵を攻撃範囲に捉えた。マインドリングをメリケンサックの如く握り込み、高速回転させた拳撃がカスタードプリンを撒き散らさせる。
「回復は、任せて……どれだけ、攻撃されても……治す、よ」
 ダメージレース的には五分五分。だが、傷が危険域となる前にリィナが素早くカバーに回る。素早く紡がれた詠唱が伶の耳元へ届くと、神経を通じて脳細胞を活性化、治癒力を高めていった。
 一方で抹茶プリンも攻撃の勢いを使い、起き上がりこぼしのように体勢を立て直す事に成功する。
「ソースじゃなくて本体ならとも思ったが……くっそ不味いなおい!」
『ム、グゥゥウ』
 飛び散ったカスタードプリンを器用にキャッチしていたルルドが、試しに口へ含んですぐに吐き出した。それを挑発と受け取ったのか、プリンの上に据えられた目玉がグリンと睨みつけてくる。
「そもそも、どうして数あるお菓子の中から、プリンの姿を選んだのでしょうか……」
「どうせなら、味の方も似せて欲しかったな!」
 疑問符を浮かべる朔太郎の言葉に応じながら、ルルドはオルトロスと共に弾幕の如く投擲される添え物を避け始めた。どうしても回避しきれない物はオルトロスの神剣で切り裂いているものの、被弾を避けての接近は遅々として進まない。
「そちらばかり見ていて宜しいのですか? さあ、お手を拝借……螺旋玉兎跳六方」
 だが、それは意識を一方のみに集中させるという事。朔太郎が手を二度打ち鳴らすや、金色に輝く兎が虚空より現れた。二本角に着物、茨木童子の仮装をした兎は死角から抹茶プリンへ近づくと、足下を駆け回り集中を乱す。
『グ、グググ……グワッ!?』
「隙ありっ!」
 抹茶プリンが苛出しげに視線を投げかけた瞬間、兎は目玉目掛けて跳び蹴りをかました。堪らずのた打ち回り攻撃の手を止めた抹茶プリンへ、ルルドの指が突き立てられる。たちまち、弾力を持った表面が硬化し、ひび割れていった。
『オオォォォォ……』
 身を捩るまっちゃ・ぷりん・あら・もーど。悶え苦しみながらも、その身体にはまだまだ余力が在るようにも見える。
 祭りの最後に現れた宵夢。醒めるにはまだ時間がかかりそうであった。

●宵夢は醒めゆく
『ムゥゥゥンッ!』
「はっ、ぜんぜん堪えてやしないな。添え物とか菓子とか、どこまでが本体なんだか」
 抹茶プリンは器が切り飛ばされたり、本体と思しきプリン部分に大穴を開けられながらも、意に介した様子もなく動き回っている。予想外の頑強さに呆れながらも伶は光の剣で鍔迫り合い、後ずさりしつつ衝撃を殺しきった。
「よし、今がチャンス……っぅ!?」
 動きを止めた今が好機。伶の言葉に、周りの仲間たちがすかさず追撃を試みる……が、抹茶プリンはグラス上でプリンを思い切り回転させた。まき散らされる抹茶ソースは先ほどの比ではなく、近くにいた者へ纏めて降り注いだ。
『ブフフフ!』
「敢えて隙を見せて攻撃を誘うとか、菓子のくせに頭が回りやがりますね、っとぉ!?」
 全身に浴びたソースによって服が水分を吸い、僅かだが動きが鈍る。機先を制されたウィリアムは、抹茶プリンと視線が合うと引きつった笑いを浮かべた。攻守の逆転した戦況、その危機を断ち切ったのは。
「本日は抹茶ソース時々飴模様。優しい飴にご注意を……飴降ル夜ノ夢」
 雨あられと落ちゆく、数多の飴。千歳の左腕から生み出されたそれらは仲間達に触れるとふっと溶け出し、緑の汚れを洗い流していった。同時に、優しく暖かな甘みによって疲れ切った体も癒してくれる。
「ありがとうなのですよ、千歳! さぁ、抹茶プリンはもう十分堪能したのです。そろそろ終わりにしましょうか!」
 頭を振って残ったソースを振るい落とすサヤは、ウィリアムと共に敵へと狙いを定める。作戦を破られた抹茶プリンは添え物を投げてけん制しようとするが、致命的にまで遅かった。
「――ようこそ、因果の果てへ」
「――Fiat lux。そらよ、たっぷり味わっていきな!」
 ウィリアムが静かに打刀を鍔鳴らせると、無数の白く透き通った女の腕が抹茶プリンの足元より現れ、がっちりと全身を拘束する。そうして回避を封じられたところへ、サヤの術式が撃ち込まれた。収束させた死の可能性に、流石の抹茶プリンも悲鳴を上げ始める。
『ヴゥ、ヴォオ、ガァッ!』
「最後まで気は抜けないけど、ここは一気に決めてしまうべきかな。いこう、白雪」
 拘束してくる腕を引きちぎりながら、所構わず添え物を投げ散らかす攻性植物。凛は突き刺さった棒菓子を足場に跳躍すると、月を背に抹茶プリンを強襲する。重力によって威力が増した蹴りは紙一重でプリンを外れ、グラスのふちを半分ほど割り砕くに留まった。だが、続くウィングキャットの鋭い爪がザックリとプリンを切り落とす事に成功する。
『ォ、オオ、ヴォゥ……』
 体のあちこちを破壊された影響だろうか、相手は傷口から抹茶ソースが流出し始めていた。赤くない分まだマシだが、益々食欲を減退させる姿となっている。しかし、どれほどコミカルな姿であろうとも敵はデウスエクス、ダメージと比例して鬼気迫る怒気も濃密になっていた。
「戦うの怖いけど、みんながいるから、頑張れる……頼りないかもしれない、戦いにも慣れてないよ。でも、みんなの力に、なりたいの……!」
 余りの気迫に気圧されかけるリィナ。だが彼女は勇気を振り絞り、後ずさりしかける足を前へと踏み出し、まっすぐに相手を見据える。そんな彼女の背をポンと叩く者が居た。
「勿論、頼りにしているぜ? 後ろは任せた!」
「……うん!」
 短くそう告げたルルドは、ナイフを手に地面スレスレまで身を低くして突貫してゆく。その背中へ、リィナは純粋さと艶やかさの入り混じった香りを送り出す。身じろぎする度に舞う緑の毒液は、香りに阻まれ彼の身まで届かない。最早投げられる添え物も尽きた抹茶プリンは、最後の武器である体そのもので迎え撃たんとする。
「もう使えるのはそれだけみたいだがよ……ここがなくなったらどうなるのか、試してみようか!」
 両者の交差は一瞬。その瞬き一つの間に、ルルドの蹴りはグラスの足をへし折っていた。地面へ放り出された抹茶プリンの機動力は、完全に失われたといって良い。それでもなお、噴き出す抹茶ソースで一矢報いんとのたうつデウスエクスであったが。
「祭とは一時の夢であるか故に映えるもの。ハレとケが区別されるからこそ美しいのです……宴もたけなわ、ここで幕を引くとしましょう」
 もはやその程度で戦局は覆らない。朔太郎の放った二つの手裏剣は瞬く間に竜巻へと姿を変えると、抹茶プリンを挟み込む。
『ブ、ォ、ア……ァ………』
 見る間に削り取られゆく抹茶プリン。断末魔は風音にかき消され、竜巻が消え去った後には跡形もなく消え去っていた。まるでそれは夢幻の如く、初めから存在していなかったかのようであった。

●楽しむのなら最後まで
 戦闘はケルベロスたちの勝利で終結した。それに伴い戦場に満ちていた甘ったるさが霧散してゆくと、八人の間にもほっとした空気が流れ始める。
「ふぅ、ようやく終わったって感じですかねェ」
「ああ……全く、暫く抹茶系のお菓子は十分そうだな」
 大きく息を吐きながら腰を下ろすウィリアムの横で、伶も自らの胸をさすっていた。匂いだけとは言え、十分すぎるほど堪能してしまった以上無理もなかった。
「さて、会場内の片づけもしてしまいましょうか。立つ鳥跡を濁さず、です」
「きちんと綺麗にするところまでがはろうぃんなのです」
 一方で朔太郎とサヤは会場内へとヒールを掛け始める。明日市民の人々が片づけてくれるとはいえ、戦闘の余波で散らかしてしまったまま放置するのは忍びなかった。幸い、デウスエクスの消滅と共にソースや添え物は消滅していた為、そこまで手間はかからなかった。
「なんだか、もうちょっとだけハロウィンを楽しみたい気分だな……2次会をするのも良さそうだね」
「あ、良いですね。私も何だか、体を動かしてちょっと甘いものが欲しいと思ってたの」
 凛の言葉に、千歳が笑顔で同意する。年に一度の祭なのだ、ちょっとぐらいオーバーしても咎める者はいないだろう。幸いお菓子もまだある。残すのはもったいというものだ。
「甘いもんも良いけど、そろそろコイツが恋しくなってきたな。二人でどうだ?」
「うん……いいね。頂く、よ」
 ルルドがそっと取り出したのはワインのボトル。甘いものも悪くはないが、夜にはこちらも相応しい。その誘いにリィナはグラスを手に頷いた。
 夜は更けてゆく。かくして、彼らは最後の一瞬まで全力でハロウィンを楽しむのであった。

作者:月見月 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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