パッチワークハロウィン~お化けかぼちゃ

作者:柊暮葉


 深夜。
 小さな食堂を貸し切ってのハロウィーンパーティが終わり、会場は静まり返っていた。
 小さな食堂を利用した近所の人達も、店の主人も帰り支度をしている。
 そこに第十一の魔女、ヘスペリデスが現れた。
「私が失っていた『服従』の心は満たされた。あぁ、誰かに服従し、その為に働く事の、なんと甘美なる事か」
「魔女の力が最も高まる今夜、第十一の魔女・ヘスペリデスが、その役目を果たすとしよう」
「ユグドラシルにおられる、『カンギ様』の為に、私の黄金の林檎からハロウィンの日に相応しい植物を生み出そう」
 ヘスペリデスはたった一人なのに恍惚とした表情でぶつぶつと何かを言っている。
「さぁ、お前達、ハロウィンの魔力を集めて私に捧げよ。全ては、『カンギ様』の為に」
「さぁ、人間共の夢の残滓と黄金の林檎より生まれし、攻性植物よ。人間どもを喰い散らかすがいい」
 ヘスペリデスは床に黄金の林檎を投げつけた。
 それはみるみるうちに巨大なハロウィンボムとなっていく。体長3~4メートルの巨大な化け物だ。ハロウィーンの攻性植物はかぼちゃの口を開いて、不気味に笑っているようだった。


 セリカ・リュミエールが集めたケルベロスに説明を開始した。
「皆さん、ハロウィンパーティー楽しかったですね。パーティーが終わったばかりなのですが、辰・麟太郎(臥煙斎・e02039)さんが、新たな敵の動きを見つけてくれました。麟太郎の調べでは、ハロウィンパーティーが終わった直後だというのに、パッチワークの魔女の一人が動き出したようなのです。動き出したパッチワークの魔女は、パッチワークの魔女の一体、第十一の魔女・ヘスペリデス。彼女は、日本各地のハロウィンパーティーが行われた会場に現れ、会場に残ったハロウィンパーティーの残滓と、彼女が持つ黄金の林檎の力で、強力な攻性植物を生み出すようなのです。このままだと、パーティーを楽しんで家路につこうという人達が襲われて、殺されてしまうかもしれません。楽しいハロウィンを、惨劇で終わらせない為に、パーティー会場に向かって、現れた攻性植物を撃破して欲しいのです」


 セリカはさらに説明を続ける。
「攻性植物は体長4メートル近い巨大なお化けのかぼちゃです。ハロウィンボムですね。以下の能力で戦います」
 蔓触手形態……身体の一部をツルクサの茂みの如き「蔓触手形態」に変形させ、敵に絡みつき締め上げます。
 埋葬形態……地面に接する体の一部を大地に融合する「埋葬形態」に変形させ、戦場を侵食し敵群を飲み込みます。侵食された大地は戦闘後にヒールで治ります。
 収穫形態……身体の一部を黄金の果実を宿す「収穫形態」に変形させ、その聖なる光で味方を進化させます。
 以上の能力である。
「場所は、宮城県のどこにでもある小さな食堂です。食堂のご主人が近所の人達を呼んでハロウィンパーティをしていたのです。攻性植物が発生したのは食堂の中ですが、その後、人を襲うために外に出てきます。食堂の外にはそこそこ広い駐車場があり、そこは現在車も停まっていませんし、人もいません。駐車場の外は普通の道路で、深夜ということもあって人通りも少ないようです」
 セリカはテキパキと説明したのだった。


 最後にセリカはこう言った。
「ヘスペリデスが、攻性植物を武器にしているのか、或いは、攻性植物がヘスペリデスを手駒にしたのか……そこは分かりませんが、楽しいハロウィーンを惨劇で終わらせる訳にはいきません。頑張ってください!」


参加者
ジャミラ・ロサ(癒し系ソルジャーメイド・e00725)
春花・春撫(屠竜系アイドル・e09155)
ダルク・フリード(ブラックホワイト・e10663)
雨宮・流人(紫煙を纏うガンスリンガー・e11140)
タカ・スアーマ(はらぺこ守護騎士・e14830)
東雲・菜々乃(のんびり猫さん・e18447)
塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)
天原・俊輝(レプリカントの刀剣士・e28879)

■リプレイ


 ハロウィーンの夜。どこの町にでもあるような、小さな食堂。
 その小さな食堂のガラス戸の玄関が、中から音を立てて大きく砕け散る。
 ガラスの破片がコンクリートの駐車場に飛び散る。
 玄関の中からはうねうねと植物の蔓が長く伸びてきて、秋の夜の冷たい空気に瘴気を放った。
「せっかくのお祭り気分なのに、壊されたらたまりませんよね。カボチャとハロウィンが子供のトラウマとかになったら、困っちゃいますし」
 その光景を見止めた春花・春撫(屠竜系アイドル・e09155)はバイオレンスギターを片手にそう呟く。
 春撫に続いて現場に到着したジャミラ・ロサ(癒し系ソルジャーメイド・e00725)も硬い表情である。
「ヘスペリデス……旅団の友人に同じ名を持つ女性がいますが、彼女が風評被害を受ける前にさっさと片付けてしまいましょう。本機の本気で」
 それを聞いたダルク・フリード(ブラックホワイト・e10663)は、駄洒落なのか、笑うところなのか? と一瞬悩んだが何も言わなかった。
 それは雨宮・流人(紫煙を纏うガンスリンガー・e11140)も同じだった。彼はハロウィンらしい甘い香りの煙草の匂いを漂わせながら、ダルクの方を振り返った。
「一応人払いはしておいたほいがいいな。ダルク、殺界を頼めるか?」
 ダルクは駐車場から手前の道路に向かってシャドウエルフの殺界形成を放つ。
「ダルク・フリードが命じる……人間達よ、100を数えぬ内にこの場を離れよ……」
 深夜で人影も車の影も見えなかったが、一応念を入れておいたのだった。
 他のケルベロス達も周囲を見回して、危険がないかどうか確かめた。
 ハロウィンボムの攻性植物の方は、8人のケルベロス達の登場に気がついたようだった。
 触手を何度も何度もくねらせながら、大きな笑っているようなかぼちゃの口をカタカタ言わせて、触手のような根をのたうたせつつこちらに近づいてくる。
「やれやれついさっきパーティが終わったと思ったら……。全く番犬暇なしだな。さぁて二次会と洒落込もうか」
 流人はリボルバー銃を取り出しながら言った。
「さっさと終わらせよう。万が一人が紛れ込んだら大変だ。パーティーの邪魔はさせんぞ」
 タカ・スアーマ(はらぺこ守護騎士・e14830)は、巨大化ハロウィンボムから視線を外さずに言った。
 そのタカ達の前で攻性植物は不気味な触手をくねらせながら宙に持ち上げていく。その蔓に次々と小型のかぼちゃ--黄金の果実が実る。その果実が光り輝き、攻性植物にBS耐性の力を付与した。攻性植物はやる気満々であるらしい。
「ハロウィン楽しだ後の余韻を楽しんでるところに本当のかぼちゃの登場ですね。これがアトラクションとかそういうのだったら良かったのですが暴れて被害が広がらないうちにかぼちゃ退治なのですよ。魔女の思い通りにはいかないよう私達が止めるのです」
 東雲・菜々乃(のんびり猫さん・e18447)は獣耳をピンと伸ばしながら言った。
「おっとハロウィンはもう終わりだ。お化けは大人しくあの世にお帰り下さい、ってね」
 やる気を出して蔓をのたうせている攻性植物に塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)は苦笑している。
 天原・俊輝(レプリカントの刀剣士・e28879)も翔子の隣で余裕の態である。
「ドリームイーターが攻性植物を生む…ね。ふむ。しかし、ここ最近で一気にハロウィンはメジャーになりましたね。ドリームイーターにも影響するとは」
 まるっきり世間話の口調なのだった。
 話が通じているのか、攻性植物は根をのたうたせて前方、ケルベロス達の方に進んでくると、思い切り蔓触手を伸ばして菜々乃を掴み上げようとする。
 それを菜々乃は飛び下がってかわした。
「おおっと」
 おどけたように言いながら翔子はメタリックバーストで周囲のケルベロス達の超感覚を覚醒させ、狙アップの力を与える。
 春撫はアイドルのポーズを取った。
「わたしがサポートします、みなさん思いっきりいっちゃってください!」
 そうして三味線を取り出し、やはりアイドルのテンション高いキメ角度を取りながらかき鳴らす。
『響け、払暁の音色!』
 その音色を聞いた者達はたちまち退魔の力を手に入れる。次々とBE耐性が付与されるケルベロス達。
 攻性植物がまた前列の翔子に蔓触手を伸ばす。
 途端に流人が銃を構えて目にも止まらぬ速さで弾丸を撃ち、蔓触手を粉砕してしまう。クイックドロウで武器封じ。
 タカは「破壊のルーン」を俊輝に宿させると、魔術加護の力を与える。
「気休め程度に……」
 それを見て、ダルクも魔道書の断章を読み上げて俊輝の脳を常識外れに活性化させて呟く。
 破剣と壊アップの力を宿した俊輝は、エアシューズで駆け上げると、流星の力と重力を宿しながら攻性植物に跳び蹴りを入れた。
「さて、地獄の番犬がお化けをお迎えに来ましたよ。貴方はお菓子とイタズラ、どちらがお好みですかね」
 蹴りを入れながらとぼけた口調で言う。
 じりじりとケルベロスの方に近づいていた攻性植物は余りに重い蹴りに対してダメージを受け、動けなくなる。
 その直後に、菜々乃の重力の蹴りが命中し、あまりの重さに攻性植物はぴくりとも動かなくなった。
 そこでタカが前列を中心にヒールドローンを展開。
 それを見据えて、ジャミラはライトニングロッドから電流をほとばしらせて攻性植物に命中させる。
 足止めの上にパラライズも付与され、攻性植物は蔓の端から帯電した電気を光らせるのみ。
「女騎士の衣装、相手取るは触手。くっ殺とでも言うべきかも知れませんが……残念ながら、貴女はぶっ殺であります」
 ジャミラはそう呟く。しかし残念ながら、魔女ヘスペリデスは既に立ち去ったのか、食堂から出てくる事はなかった。それでもジャミラは、友人の風評被害のために思うところがあるらしい。
 オウガメタルで全身を覆うと「鋼の鬼」と化したジャミラは、鉄拳でお化けかぼちゃの硬い皮を粉砕した。それは軍用格闘術『システマ』である。
 続けてフロストレーザーを至近距離からぶちかまし、攻性植物を凍らせてしまう。
 そのジャミラの動きに続いてダルクは掌からドラゴンの幻影を出現させる。
「滅せよ!」
 その声とともに焼き払われていく攻性植物のおびただしい蔓触手。
 俊輝はまずは音速を超える拳を近距離から攻性植物に当てていく。
 あまりの威力に攻性植物のBS耐性がかき消える。
 それから俊輝は胸部を変形展開させ、発射口から必殺のエネルギー弾を撃ち放った。
 至近距離から追撃しながら弾丸を命中させていく。
 流人はチェーンソー剣を振り回し、その刃で攻性植物の傷口を切り広げた。
 攻性植物にバッドステータスがたまっていく。
 その上で生命力を奪う地獄の炎弾を撃つ。
 そこでまた前に出てチェーンソー剣を振りかざす。
 燃えさかる炎、吸収される生命力。
 クラッシャーやスナイパーを中心に、ケルベロス達は次々と苛烈な攻撃を加え、攻性植物の体力を削っていく。
 攻性植物は化け物じみた蔓をのたうたせ、かぼちゃの口で嘲笑うようにカタカタ言わせながらも、確実にダメージを受けて、怒り狂っているようだった。
 蔓や根で何度も地面を叩いて怒りを表す。
 それから攻性植物は近くにいた流人に向かい、長い触手のような蔓を伸ばしていった。流人は身をそらしたが間に合わない。
 流人の体に蔓が巻き付き、締め上げる。その蔓から毒が注入されていく。
「ぐうっ!」
 叫ぶ流人。
 ケルベロス達はそちらに気を取られる。
 後列に下がっていた春撫がオーロラのような光を操り、流人を包み込む。状態異常ごと回復していく。
 しかし、その間にもお化けかぼちゃは滅茶苦茶に蔓を振り回すので、前列はそれをかわすために身動きが取れない。
 攻性植物はその根をじわじわと地面と融合していく。
 放たれる毒気、瘴気。
「危ないです、下がってください!」
 ジャミラが叫ぶ。
 しかし、間に合わなかった。
 地面に大きな亀裂が入る--瘴気が地面から噴き上がる。
 足下の地盤が真っ二つに割れ、粉々にヒビ入って割れていき、前列のケルベロス達は全員飲み込まれていった。
 前に出ていた俊輝やダルクも例外ではなかった。
 地面の中に飲み込まれ、攻性植物の瘴気をもろに喰らう。
 悲鳴を上げるケルベロス達。
 しかし、かろうじて後列に下がっていたメディックの春撫が無事だった。
 一瞬、呆気に取られたものの、三味線を取り出して払暁の弦を奏でる。遠くから次々と仲間を回復していく春撫。
『我らが古の龍神よ……癒しのチカラを我に貸したまえ』
 タカが流人に向かい龍泉を使用する。地面に飲み込まれたまま片膝をついて龍脈の力を吸収、地面に現れた白い円が光り輝いて同じく前に出ていた流人を回復。
 さらに、宙に飛んで難を逃れたウイングキャットのプリンが、主人である菜々乃を中心に清浄の翼を広げた。
 翔子のサーヴァント、白もまた属性インストールで主人を回復。
 まず立ち上がったのは翔子だった。
「やれやれ、面倒な」
 そう呟いてメディカルレインで薬液の雨を仲間の上に降らせる。
 続いて立ち上がったダルクも同じくメディカレインで仲間を回復。
 催眠効果も打ち消す浄化の雨により、完全に復活していくケルベロス達。
 次々と立ち上がって武器を攻性植物に向け構える。
「まだまだ、これからがわたし達の本領発揮です!」
 ガッツポーズで叫ぶ春撫。
 タカは硬く尖らせた竜の爪で攻性植物に殴りかかる。
 激しい攻撃が呪術防御すらも削り取る。
 さらにルーンアックスを振り上げ、高く飛びながら振り下ろしていく。
 スカルブレイカーでハロウィンボムの頭を叩き割る。
 菜々乃も音速のハウリングフィストで攻性植物を容赦なく攻撃。
 ニートヴォルケイノで攻性植物の足下から溶岩を噴き上げてしまう。
 翔子は戦術超鋼拳で攻性植物の皮を打ち砕く。
 さらにライトニングボルトで攻性植物を麻痺される。
 続けざまの攻撃に対して、攻性植物は喘ぐように口をカタカタ言わせ、さらに黄金の果実を少なくなった蔓に実らせて自身を回復させていった。
「……だいぶ辛いようですね。攻めるだけの力がもう残ってないのでは?」
 ジャミラがそう仲間に報告した。
「それなら、一気に攻め立てましょうか? ハロウィンの化け物は地獄に帰るのがいい」
 ダルクがそう言ってオリジナルグラビティの準備を始める。
 周囲のケルベロスも、ぐだぐだと戦いを引き伸ばすつもりはない。攻性植物にトドメを放つ用意で武器を取る。
「最後まで気を引き締めて頑張りましょうね!」
 叫んだのは春撫だった。
 そして攻性植物の方は、最後の力を振り絞り、触手のような蔓をひときわ大きくうねらせると、翔子に向かい走らせた。
 翔子は後ろに飛んでかわそうとする。
 しかし、攻性植物の方が早い。
 蔓触手は翔子の体に巻き付き締め上げ、毒を激しく注入してくる。
「うっ……このっ……!」
 翔子はもがき、自らライトニングロッドで殴りつけて蔓触手をほどく事を試みる。
 そこで菜々乃がゲシュタルトグレイブで触手を叩き斬る。
 落下してくる翔子。毒のダメージで顔色が悪い。
『栄養剤で眠気を取るのですよ』
 菜々乃はそんな翔子に対して、締め切りまであと一日(デスデスデスマーチ)でなんやかやで元気になる応援。翔子はなんだか元気になったような気がして元気になって、ヒールとキュアを受けた。
『座標指定。フィールド展開完了。支援機スタンバイ。メディカルモードに移行。準備はOK牧場……レッツらゴーであります。』
 ほぼ同時に、ジャミラもまた小型の支援機「ナイチンゲール」で翔子を援護。支援機が回復の霧を撒いて翔子の受けたダメージをいやしていく。
 その頃、俊輝はスターゲイザーでさらに攻撃を繰り返そうとする攻性植物を足止め。
 タカは竜爪撃で攻性植物の呪術防御を剥ぎ取り、BE耐性の効力をなくす。
 ダメージを回復した翔子は起き上がり、果敢に攻性植物に立ち向かう。
『全て洗い流されちまいな』
 魔力がこめられた激しい雨が攻性植物に叩きつけられる。
 既に剥ぎ取られたBE耐性を無理にでもまた剥ぎ取ってしまうような、そんな激しい雨。
 ダメージを受けたハロウィンボムが地面に沈みそうになる。
『ワリィな、俺は接近戦(こっち)もイケるんだ。』
 そこに、流人が走り込む。
 地獄の右腕から生まれる美しい日本刀。そのグラビティ・チェインで出来た刀身を流人は鋭く攻性植物に叩きこんだ。
 黒刀・竜(コクトウリュウ)により潰れていくお化けかぼちゃの攻性植物。
「度の過ぎたハロウィンモドキは、魂魄弾で爆発四散」
 禁断の魔道書を紐解くダルク。
 彷徨う魂の残光が光り輝き解放され、続けざまにお化けかぼちゃに突っ込んで行き貫いた。連なる魂の残光(ソウルエクステンド・アフターグロー)だ。
 それがトドメだった。
 お化けかぼちゃは軋むような音を立て、硝煙を上げながら地面に沈み、二度と動く事はなかった。


 戦闘後、ケルベロス達はそれぞれ建物や地面にヒールを行った。
「滅びた大地に、もう一度祝福を」
 春撫はハロウィンを守れたならよかったと思っている。
「やれやれだな」
 タカも手を動かしている。
 ヒールをしつつ、ダルクは動かない巨大なハロウィンボムの攻性植物に歩み寄る。
「はぁ……ハロウィンの残りカスよ、間が悪かったな。次があるなら食用の南瓜になって来年来い。歓迎はしないが……」
 その隣に菜々乃が近寄ってきて、かぼちゃをのぞき込んだ。
「普通のかぼちゃと何が違うのかな……」
 観察してみたが、よく分からなかった。
 一方、ジャミラは生真面目なものである。
「騒いだ後は片付ける……それがハロウィンパーティに於ける人間のルールであります」
 てきぱきと滅茶苦茶になった駐車場の地面をヒールで直していく。
「とんだハロウィンだったな」
 俊輝はそうぼやき、口寂しそうに唇を動かした。
 翔子はそんな俊輝にタバコの箱から細い棒を取り出した。
「タバコ吸う?」
「あぁ? 悪いな」
 俊輝は何気なく受け取って、そのまま口にくわえ込んだ。
 そして予期せぬ甘さに噴き出しそうになる。流人は気になって振り返る。
「な、なんだこれは!」
 それはココアシガレットだったのだ。
 大爆笑する翔子。そして流人。
「トリック&トリート。ハッピーハロウィン、なんてね」
 翔子のいたずらに、深夜まで働いていたケルベロス達は一様に噴き出し、和やかなうちに戦いは終わっていった。来年のハロウィーンもその後のハロウィーンも、仲間達には素晴らしいハッピーが訪れますように。 

作者:柊暮葉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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