パッチワークハロウィン~厄災のギフト

作者:東間

●第十一の魔女
 高い天井から吊り下げられている照明や、壁の隅には、毛糸製の蜘蛛の巣。畜光シールで出来たジャック・オ・ランタンや幽霊、星屑が淡い光を放ち、壁にくっついている幾つかのソファには、南瓜のオブジェが転がっていた。
 だが、場を満たしていた人や音楽、食事はどこにも無い。ハロウィンパーティーが終わったここにあるのは、祭りの名残だけ。
 そんな場所に現れた女は、虚ろな目で室内を見渡した後、はあ、と息を零した。
「私が失っていた『服従』の心は満たされた。あぁ……!」
 その声に灯っていたのは歓喜の色だった。
 誰かに服従し、その為に働く事が如何に甘美か――女はそう語り、両腕を広げる。
「魔女の力が最も高まる今夜、第十一の魔女・ヘスペリデスが、その役目を果たすとしよう。さぁ、ハロウィンの魔力を集めて私に捧げよ。全てはユグドラシルにおられる、『カンギ様』の為――!」
 ヘスペリデスと名乗った女が黄金の林檎を放り投げると、林檎から凄まじい速度で蔦が伸び、形を変えていく。やがてその動きが止まると、ヘスペリデスは冷たい声で言った。
「人間共の夢の残滓と黄金の林檎より生まれし『ぱんな・こった』よ……人間どもを、喰い散らかすがいい」
 黄金の林檎から生まれたものは、ゆっくりと動き出した。ここには『喰え』と言われたものがいない。外に行けば――沢山いるだろう。
 
●パッチワークハロウィン~厄災のギフト
「どこの世界も、悪い奴っていうのはタイミングを読んで休んだりはしてくれないものだね」
 ハロウィンパーティーが終わったばかりだってのに、とラシード・ファルカ(赫月のヘリオライダー・en0118)が眉を下げて笑う。
 というのも、辰・麟太郎(臥煙斎・e02039)が調査をした結果、『パッチワークの魔女』である第十一の魔女・ヘスペリデスが動き出したと判明したのだ。
 日本各地のハロウィンパーティー会場に出現したヘスペリデスは、会場に残ったパーティーの残滓と自身が持つ黄金の林檎を使い、強力な攻性植物を生み出すらしい。狙いは勿論――人々の命だろう。
「という事で、君達には現れた攻性植物の撃破を頼みたいんだ」
 場所は、ハロウィンパーティー会場として利用されたクラブホールだ。仮装しての立食パーティーが催されていたのだが、テーブルは通路に近い所へ集められているので、戦闘の邪魔になる物は無いと考えていい。
 ホールに繋がっている通路を誰かが通るとセンサーが働き、ホールの照明がつく仕様になってる為、灯りも要らないだろう。
 必要なのは敵を倒す為の力と意志。
 相手はイタリア発祥のデザート、パンナコッタを思わせる風貌をした攻性植物が、一体だけ。だが、甘そうな見た目に反し、その実力は辛めだ。高い火力と体力を武器に、様々な攻撃を仕掛けてくる。
「原宿で見掛けるような、ファンシーな衣装にされる事もあるみたいだ。と言っても一種の幻覚作用みたいなものだから、現実じゃあ無いけど……」
 人によっては、ハロウィンパーティーの後に赴いた戦場で、精神的ダメージを受けるかもしれない。しかし、この攻性植物を止められるのはケルベロスだけなのだ。
 ケルベロス達を見つめるラシードの目は、真剣なものになっていた。
「日本じゃ『家に帰るまでが遠足です』って言葉があるだろう? パーティーもそれと同じで、家に帰るまでがパーティーだと俺は思う。楽しい気持ちのまま家に帰って、次の日を迎える……そんな『当たり前』が続く様に」
 ――頼んだよ。
 願いを込めた呟きの後、ラシードはにこりと笑い、ケルベロス達にヘリオンへ乗るよう促した。


参加者
メルティアリア・プティフルール(春風ツンデレイション・e00008)
シアライラ・ミゼリコルディア(天翔けるフィリアレーギス・e00736)
雨月・シエラ(ファントムペイン・e00749)
椏古鵺・笙月(黄昏ト蒼ノ銀晶麗龍・e00768)
連城・最中(隠逸花・e01567)
サイガ・クロガネ(唯我裁断・e04394)
雪白・メルル(雪月華・e19180)
レテ・ナイアド(善悪の彼岸・e26787)

■リプレイ

●厄災と踊る
 通路にケルベロス達の駈ける音が響く。それと同時に、ぽう、と灯った光が『それ』を浮かび上がらせた。
 目を閉じた大きな苺。つるんと甘そうな白にとろける紅。器に盛られたような姿は、パーティーの為に誂えたオブジェにも思える。『あれ』はそう――。
「パンナコッタ? なんてこっ……」
 ほんの一瞬。
 連城・最中(隠逸花・e01567)の一言で、時がぴた、と止まるような感覚がしたのは気のせいだろう多分。
「何でもありません。しかし植物には見えませんね」
 掛けていた眼鏡をポケットに入れる間、表情も声音も平坦なまま。そんな最中の感想に、椏古鵺・笙月(黄昏ト蒼ノ銀晶麗龍・e00768)は同意するしかない。
「やっぱり……美味しそうに見えるざんしよな……」
 攻性植物で、見た目の通りぱんな・こったという名であっても、美味しそうなものは美味しそうなのだ。
 しかし、あっという間に近くなった敵の名が可愛らしくとも、素敵なハロウィンパーティーの邪魔を――悪さをするのはいけないと、雪白・メルル(雪月華・e19180)はきゅっと握っていた手を傍らで翔る翼猫に寄せた。
「お仕事しっかり頑張ろうね、イル」
 そっと撫でられ、掌にすりっと頭を寄せた翼猫・ソウェイルの鳴き声が、パーティーの名残を漂わすクラブホールに響く。
 同時に、ぱんな・こったがするりと蔦を動かした。目は閉じたままだが、ケルベロス達を見下ろす様は『ハロウィンはまだ終わっていない』と主張するかのようにも見える。
(「魔女たちにはこれからだったざんしかね」)
 敵が動くより先に、笙月は全身に流動する銀を纏った。所属先の旅団長と因縁浅からぬ敵であろうと、やる事は決まっている。。
「それじゃあ、いただきますざんしヨ! はぁああ……!」
 おいで――私の可愛い子たち――。呼び掛け繰り出した一撃は、凄まじい力を伴ってぱんな・こったの体にめり込んだ。衝撃で揺れる巨体を見たサイガ・クロガネ(唯我裁断・e04394)が、改めて思うのは。
「はあ、ハッピーなツラしてんなあ」
 睫毛すげえし。なにこいつ。
 渋顔で呟き、床を蹴り、一瞬。地獄焔を纏った漆黒の爪が巨岩のような衝撃を与え、最中がひた――と緑の視線を向けた直後、苺の一部が風船のように爆ぜて散る。その頭上から黄金の輝きが降った。
「被害が出る前に私たちでなんとかしなきゃです、ね」
 メルルの意志に寄り添うように、ソウェイルの起こした羽ばたきが共に前衛を包み込む。
 輝きと風の向こうから苺状のモザイクが放たれたのは、その時だ。後衛に降り注いだ瞬間、咄嗟に箱竜・ヴィオレッタと、翼猫・せんせいが動く。
「苺をこんな風に使うなんて……」
 仲間を傷付けるモザイク苺を見て、メルティアリア・プティフルール(春風ツンデレイション・e00008)は円らな瞳に怒りを灯す。だが、ふんと鼻を鳴らすと自爆スイッチに手を掛けた。
「お祭りは終わっちゃうけど……最後まで派手にね!」
 華麗な爆煙が巻き起これば、そこに星々の煌めきが続く。ヴィオレッタの力を癒しと共に受け取って、雨月・シエラ(ファントムペイン・e00749)は笑った。
「だね。楽しいパーティーはもうお終い。迷惑なドリームイーターには早いとこ、夢から醒めて貰わなくっちゃ」
 敵の外見がとっても愉快でも、繰り出してくる攻撃の質は厄介。存外油断出来ない相手だからこそ、シエラは敵を見据えたまま。
「その通りです。このような行い、許せません」
 箱竜のシグナスがサイガに力を降ろす中、シアライラ・ミゼリコルディア(天翔けるフィリアレーギス・e00736)は、こと座の輝きを展開しながら怒りを滲ませる。楽しい思い出の中で終わる『祭り』に悪夢の土産など不要。何よりも。
(「イタリアドルチェ好きにしてみれば、こんな名前も気に入りませんっ」)
 そう。戦闘が始まってもやはり――。
「敵のくせにやたらと美味しそうな……」
 守護星座を描いたレテ・ナイアド(善悪の彼岸・e26787)は呟き――前衛陣に向け羽ばたきを贈りながらも、何故か目がきらきらしているせんせいを見た。
「食べやすいように……刻むざんしな♪」
 笙月が刃を閃かせれば、ぷるんと白い身が踊って。
「……食べちゃ駄目ですし舐めるのも駄目ですよ、せんせい」
 せんせいの肩が、しょぼんと落ちたような気がした。

●甘い幻想、抗う牙
 ぱんな・こったが蔦を鞭のようにしならせ、再びモザイク苺を放つ。
 最初は後衛だった。今度は――。
「こっちかよ」
「全員にサービスする気でしょうか」
 サイガは舌打ちし、最中は淡々と呟く。
 三人と二体、全員を狙ってのようだが、彼らケルベロスが備えた壁は五の内、三と厚い。ひらりと滑り込むようにして守ったのはせんせい。小柄な体を翻して庇ったのはメルティアリアだ。
 メルティアリアはヴィオレッタからの癒しを受けながら、揺らめく光のカーテンで後衛陣を包み込――もうとして、手首にふわふわリボンを揺らすマカロンブレスレットに気付く。これは。
「えっ……ちょっと、可愛いかも……」
 じゃなくて。
「トラウマを受けるとこういうのが見えるってこと?」
 一瞬ときめいてしまったが、よくよく考えればダメージを受けているので痛い。故に。
「何度も使われたら面倒だね。前衛へのヒールは任せて!」
 シエラの声で意を汲んだシアライラは、真剣な眼差しと共に頷いた。
「こちらは任せてください!」
 シグナスが空を駆け、レテに属性を贈る中、前衛と後衛それぞれの足元に星の光が灯る。
 祓われ、晴れた感覚に一瞬だけメルティアリアがしょんぼりするが、その目にはすぐ強い心が浮かんだ。そして共に輝きを受けた最中の手が鞘に掛かり――一瞬止まる。
 苺チョコなカラーリング。ふわふわライン描く生クリームは強烈ビビットカラー。煌めく大粒ザラメ。
「……」
 無言無表情で靴を見つめる彼が何を見たのか、誰もわからない。わからないが。
「問題ありません。早々に倒してしまいましょういやぶちのめす」
 口調がつい変化した次の瞬間、何も残さぬ斬撃がぱんな・こったの体に刻まれた。それに続いたのもまた、斬撃。ゆら、とケルベロスコートを翻した一瞬の間。
「菓子は詳しくねえけど、食えねえならあんまし興味ねえな」
 サイガの突き立てた刃が甘味に走る傷を押し広げる。
 ぶつんとした音を耳にしながら、レテは気力に満ちたオーラでメルルの傷を癒した。前方で軽やかに飛び回るせんせいが、その羽ばたきで邪気を祓っていけば、ぱんな・こったがブル、ブルリと震える。怒って、いるのだろうか。だとしても。
「やれ、お祭り騒ぎに乗じて悪さとはまた……無粋ですね、貴方方も。お祭りはお祭りのまま、終わらせましょう」
 悪い企みは、今日ここで、自分達が止めるのだから。
「パーティー、といえば」
 飛び交うヒールと、それによりもたらされる加護。その厚さを見て攻撃に転じたメルルは呟く。
「この場所ではどんなパーティが行われてたんでしょうね?」
 電撃杖の先端から迸った雷光。それに照らされ、ソファから床に転げ落ちていたジャック・オ・ランタンが、一瞬強く浮かび上がった。
 壁や天井の隅を彩る蜘蛛の巣も、この季節ならではの南瓜も。この場所も。きっと皆で楽しむ為に用意されたものだろう。
「皆が楽しんだ場所なら、尚更悪いことしちゃダメですよ?」
 バチッ、と光と衝撃が弾けてぱんな・こったが大きく揺れた。僅かに動きが鈍るが、ゆらり、と蔦が不気味に蠢く。大きく膨らんだ尻尾をぴんっと立てたソウェイルが、鋭い爪による一撃を見舞った。
 たたらを踏むように後ろへ下がったぱんな・こったが、蔦を器用に使い、踏み留まる。ガツン、ガツンと跳ねて床を鳴らした直後、甘い巨体が一気に飛び出した。
「ううっ……!」
 衝撃をまともに喰らい、笙月は僅かに呻く。衣服に付いた紅色のソースを払う仕草に、ぱんな・こったはご機嫌だとでもいうように跳ねていた。

●果てるのは
 何度かの攻防を繰り返しながら、ハロウィンパーティーが行われていた場所での戦いは、終わりを見せ始めていた。
 ぱんな・こったの繰り出す濃密な苺の香りや、ステップを踏むような、けれど強烈な体当たり。そして、奇妙なトラウマを与えるモザイク苺。どれも厄介な効果を持ってはいたが、ケルベロス達は序盤からそれへの対応を充分に行っていた。
 幾重にも重ね、高めた耐性。それが発動する度、植え付けられたものは祓われ、お返しとばかりにケルベロス達は攻撃を見舞い続ける。
 ぱんな・こったも負けじと反撃してくるが、全てを攻撃に振っていた性能と、ケルベロス達による様々な効果付きの攻撃は、そう簡単にどうにか出来るものでもなかったのだ。
 ただ――時々。そう、時々。
 運悪く祓う事が出来ず、何かを見てしまったケルベロスが、ちらほらといた。
 それでも。
「……!?」
「あ? 何してんだ笙月。おい、今どうにかするからしっかりしろ」
 きっちりと着込み、肌の露出を厭うが故に悲鳴を上げてしまった者には、癒しの力がたっぷり込められつつもバシッとした衝撃が。
「い、イヤだ! かぼちゃパンツなんてビミョーに格好悪いチョイス! 絶対ヤだー!」
「大丈夫ですよシエラさん、ビミョーで格好悪いチョイスになんてなっていませんよ。ね、せんせい」
「……はっ、げ、幻覚……!?」
 激しい拒否反応には、フォローとヒールをセットにした支援が飛び。
「な、なんか変なお菓子がいっぱい見えま……きゃー!?」
「ちょっと、しっかりしてよね! そんなのは幻だよ!」
 強烈な味わいの飴や漆黒の渦巻きに恐れおののけば、力強い声と共に癒しが贈られて。
「あ、うまそう」
「満腹感は得られないと思います」
「わぁ……!? ……あ、可愛らしいお洋服、ですね」
「ニャァン!」
 意外と平気だったが確実にダメージは受けている為、ツッコミが飛ぶなどして、事無きを得ていた。
 ぱんな・こったの特性と、それに対する備え、その時に何でどう対処するか。それを明確に定めていた事が効を成していた。
 しかし、体力が僅かになり、動くのもままならない。そんな状況でもぱんな・こったは目の前にいるケルベロス達をどうにかしようと、蔦を動かし、モザイクを放とうとする。だったら、とメルティアリアは掌を向けた。
「焼き払ってあげる……おっと、パンナコッタは熱いと溶けちゃうかな?」
 出現した幻影竜の炎が、ごう、と巨体を呑む。本物のパンナコッタなら溶けてなくなり、勿体ないと思ったろう。けれど攻性植物なら、溶けて消えた方がいいに決まっている。
 だからこそシアライラは迷わずとあるグラビティを使った。頭を抱え蹲った途端、何もない所から、どこから見つけてきたのかと言いたくなる不可思議な菓子達が降り注ぐ。心身の痛みを与えるそれは、ぱんな・こったを強かに撃ち――。
「お菓子っぽい何かvs何か違うお菓子……なんだかわけがわかりません。シグナス、期待しちゃダメよ?」
 キラッとしていたシグナスがびくりと止まったその刹那、空気を裂くように振るわれた大鎌――サイガの得物に降魔の力が満ちる。閉じられたままの目がサイガを見て。
「残念、俺肉派でさ」
 サイガはニィ、と笑い、大鎌で斬るのではなく力任せに殴り付けた。衝撃でバウンドした巨体に静かな気配が迫る。とん、と巨体に触れた手の主は、凪いだ表情を持つ鮮やかな緑の目。
「残念ながら祭の時間は終わりです。魔女にもお化けにも、出番はありませんよ」
 最中の言葉と、一瞬の間の後。ぱんな・こったの体が内側からの衝撃に耐えきれず、大きく跳ねた。その勢いと様子に、誰もが思った。
「此処まで来たらこっちのもの、だね。さぁ、早く終わらせよっか」
 シエラは言い、握り締めた鉄塊剣を振り上げる。ぼう、と灯った炎は一瞬で勢いを増して轟焔となり――。
「これはパーティーを出来なかった分! そしてこれは恥ずかしい思いをした分! 全部持って行けーッ!」
 一気に叩き付ければ地獄の炎がぱんな・こったの巨体を完全に呑み込んだ。
 衝撃が止んだ後――あちこち崩れ、ぼろぼろになったぱんな・こったの姿が、ぽろり、ぽろりと欠けていく。そして、数秒と保たずに、完全に消え去ったのだった。

●日常へ
 可愛らしい外見と名前を持つ敵だった。戦いを振り返ったメルティアリアは、ぱんな・こったの姿を思い描きながら首を振る。外見ばかり可愛くても駄目なのだ。何故なら。 
「ほんとの可愛さっていうのは、中身が伴ってこそ、なんだから」
 ぱんな・こったがそうなれる日が来るとしたら、本物のスイーツとなった時――かもしれない。その味で誰かをときめかせられる、そんな中身を得たなら。多分。
 ごちそーさんでした、と適当に手を叩いて終いにした伸びたサイガは、ふあ、と出掛かった欠伸を手で押さえる。
「一日働いた~。帰って寝よ寝よ」
 クラブホールは皆で手分けしてヒールした為、完全に元通りとは行かないが、綺麗になっている。若干、淡く明滅する蜘蛛の巣などが浮かぶようになり、幻想的になってしまったが。
「次はクリスマスがあるからいいですよね」
 だってここは、皆が何かを楽しむ場所だから。
 ふわ、とシアライラが笑えば、メルルもにっこりと笑顔を綻ばせた。
「また来年もパーティが開けると良いですね」
「うん……」
 同意したシエラだが、その声はやや張りがない。というのも。
「去年もドリームイーター騒ぎのお陰でパーティー出来なくって、今年はこれ。来年こそは平和なハロウィンになってくれると良いんだけどね……」
「あぁ……そうですね。デウスエクスの邪魔が入らないハロウィン。してみたいですね」
 去年と今年。レテが頷けば、シエラは『でしょ?』と小さく笑った。
 美味しい食事に菓子、悪戯に、南瓜行列。今年もそれらと一緒のハロウィンではあったが、戦いと無縁な日とはならなかった。
「ケルベロスだって平和なハロウィンしたいぞー……なんてね」
 仲間達の会話を聞きながら、最中は仕舞っていた眼鏡を掛ける。
 今年のハロウィンで暗躍した、感情を満たした魔女。その魔女が口にしたカンギ様。浮かぶ単語に解を求めても今は出てこない。残ったのは、戦闘中の甘い香りと――自分だけが知る、あの靴。
(「……帰って寝て忘れましょうか」)
 まずは誰かの日常を、当たり前を守れたならそれでいいと。そう、思う。
 家路に着いた全ての人へ――良い夢を。

作者:東間 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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