パッチワークハロウィン~宴はまだ終わらない

作者:神無月シュン

 ハロウィンパーティーが終わり、パーティーの名残がそこらじゅうから感じられる、学校の体育館。片付けは明日にと、生徒達が帰宅する。
 暗闇と静寂が支配し始めたころ、施錠されているはずのパーティー会場だった場所に、人影がひとつ。
「魔女の力が最も高まる今夜、第十一の魔女・ヘスペリデスが、その役目を果たすとしよう。さぁ、ハロウィンの魔力を集めて私に捧げよ。全ては、『カンギ様』の為に」
 ヘスペリデスが黄金の林檎を投げると、林檎は空中で静止し、会場に残ったハロウィンパーティーの残滓を吸収すると、光を放った。次の瞬間、全長4mはある、ジャックオランタンに似た攻性植物が姿を現した。

「皆さん、ハロウィンパーティーは楽しめましたか?」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)がハロウィンパーティーに参加していた、ケルベロス達に声をかける。
「パーティーが終わったばかりですが、辰・麟太郎(臥煙斎・e02039)さんが、新たな敵の動きを見つけてくれました」
 麟太郎の調べでは、ハロウィンパーティーが終わった直後だというのに、パッチワークの魔女の一人が動き出したようだ。
「動き出したパッチワークの魔女は、パッチワークの魔女の一体、第十一の魔女・ヘスペリデス。彼女は、日本各地のハロウィンパーティーが行われた会場に現れ、会場に残ったハロウィンパーティーの残滓と、彼女が持つ黄金の林檎の力で、強力な攻性植物を生み出すみたいです」
 このままだと、次の日には片付けのために集まった学生達が襲われて、殺されてしまうかもしれない。
「楽しいハロウィンを、惨劇で終わらせない為に、パーティー会場に向かって、現れた攻性植物を撃破してください」

 戦場はパーティーが行われた、学校の体育館。深夜のため周囲に人はいない。
「敵は『ハロウィンボムモドキ』と呼ばれる攻性植物1体で、体長4mの強力な個体です。攻撃方法は口から放つ光線と、大小のカボチャ型の爆弾を使うようです」

「パッチワークの魔女がハロウィンに事件を起こすのはわかるのですが、現れる敵が攻性植物であるのは、気になりますね」
 疑問は残るが、まずやることは決まっている。ケルベロス達は気持ちを切り替えて準備を開始した。


参加者
ユーノ・イラ(森と生きる少女・e00003)
珠弥・久繁(病葉・e00614)
コスモス・ブラックレイン(レプリカントの鎧装騎兵・e04701)
アニマリア・スノーフレーク(疑惑の十一歳児・e16108)
ブラック・パール(豪腕一刀・e20680)
中納・鈴子(能無し雀は舌を出す・e23813)
クオン・ライアート(緋の巨獣・e24469)
アスカ・アファルセック(西の風来侍・e33511)

■リプレイ

●宴はまだ終わらない
 ケルベロス達は学校の校門を抜け、しんと静まり返る体育館の前までやってきた。深夜の人気のない学校はハロウィンの雰囲気も合わさり、普段にもまして不気味さを漂わせていた。
 雰囲気にのまれないようにと、クオン・ライアート(緋の巨獣・e24469)が口を開く。
「ハロウィン、面白いイベントだったな。その余韻を汚すような存在は……許せん、な」
「お祭りが終わったなら、そのまま日常に戻るべきだよ。それ以上に何か騒ぎを起こすべきじゃない」
 お祭りの余韻に浸っていたかったとばかりに、珠弥・久繁(病葉・e00614)が愚痴をこぼす。
「さて、なかなかふざけた外見の相手ですが、油断は禁物ですね。惨劇を起こさせないためにも、脅威はしっかりと排除してしまいましょう」
 アスカ・アファルセック(西の風来侍・e33511)は、万一の逃走を許さないようにと、出入り口の確認を始める。
「ここでしとめることができれば、被害は最小限ですむんですよね。なら、なんとしても倒しましょうっ」
 たとえお祭りの後だとしても、助けられる命があるのならと、ユーノ・イラ(森と生きる少女・e00003)が意気込む。
「魔女と植物、何かあると考えるところです。ですが、今は推理している場合ではないので保留としましょう」
「たしかに気に掛かる事はあるけれど、深く考えるのは後ね。今は目の前の敵に集中しておきましょう。倒した後なら暇は作れるしね」
 コスモス・ブラックレイン(レプリカントの鎧装騎兵・e04701)とブラック・パール(豪腕一刀・e20680)が今回の事件についての疑問を口にするが、先にやるべきことをしてしまおうと、会話を切り上げた。
「魔女ですか。何の感情を集めているか分かりませんからね。今回は機械的にいかせてもらいます」
「もう近くに魔女は居ないようだし、相手は攻性植物だ。そこまで気負う必要はないと思うよ」
 アニマリア・スノーフレーク(疑惑の十一歳児・e16108)の言葉に、年長者である久繁がアドバイスする。
「……それもそうですね。では普段通りに」
 しばらく考えたアニマリアは、アドバイスを受け入れることにした。その様子を見て久繁は、穏やかな笑みを浮かべ頷いた。
 周囲の確認を終え、ケルベロス達は扉を開けて、体育館の中へと突入した。
 出迎えたのは、4mはあるカボチャの攻性植物、ハロウィンボムモドキ。
 見上げれば、顔のついたカボチャが一つ。伸びる蔓の先には大小のカボチャがいくつも生っていた。
「あーあ、貰ったお菓子全部食べ終わっちゃったぁ……! しかたない……、貴様を潰してカボチャパーティでもするのだ!」
 今までお菓子を食べていて、大人しかった、中納・鈴子(能無し雀は舌を出す・e23813)が宣戦布告とばかりに、ハロウィンボムモドキの頭部に向かって指を突き出した。
「イベント最後の余興として……その存在、破壊してやる」
「なるほど、ジャック・オー・ランタン型の攻性植物とは……なかなか面白い見世物ですね。ですが手加減をするつもりはありません。本気で行かせてもらいますよ?」
 クオンとアスカが武器を構えると、他のケルベロスも続くように戦闘態勢へと入った。

●爆発注意
 戦闘開始とともに、重装甲を身に纏うコスモス。
 一番初めに動いたのは、ハロウィンボムモドキ。口元へと光を収束させていく。光が集まるのが止まると同時、人ひとり容易く飲み込むほどの極大なビームが、アスカを襲う。光に焼かれ何とか耐えるも、一撃で半分近くの体力を持っていかれた。
 クオンの咆哮が体育館へと響き渡る。まるで戦の開幕を表すかのような巨獣の咆哮。グラビティを宿した咆哮は衝撃波となって、ハロウィンボムモドキへと襲いかかる。
「あなた達は、何がしたいんですか?」
 敵の狙いを少しでも探ろうと、ハロウィンボムモドキへと問いかける。しかし、ハロウィンボムモドキは不気味な笑みを浮かべるだけで、返事はない。ならば倒すしかないと、斧を振り下ろす。
「世界を包め、夜明けの如く」
 久繁の全身の回路がまばゆく輝く。生み出されたエネルギーを掌へと集め、ハロウィンボムモドキへと叩きつけた。
「特殊弾頭装填。強化薬を散布します、意識が飛ばないよう注意してください」
 コスモスの撃ちだした弾が前衛のそばで炸裂し、広範囲に薬品が散布される。薬品を浴びたケルベロス達の感覚が研ぎ澄まされていく。
 ブラックがハロウィンボムモドキへと距離を詰め、自身よりも長い刀を左手一本で振るった。その剛腕から放たれた斬撃は、緩やかな弧を描き、ハロウィンボムモドキを切り裂く。
「イグニス、お願い!」
 ユーノが炎を象った精霊『イグニス』を召喚する。魔力の炎で生成された槍が放たれ、ハロウィンボムモドキの足元へと突き刺さる。
「さて、まずは小手調べといきましょうか」
 アスカが高速で斬撃を放つ、放たれた斬撃は衝撃波を発生させハロウィンボムモドキを切り裂いていく。
「アスカくんを救ってみせるのだ!!」
 鈴子が先ほどのビームでダメージを負った、アスカの治療をする。
 ハロウィンボムモドキが蔓を一振り。先端についていたカボチャを鈴子目掛けて飛ばす。カボチャが鈴子へと命中する前に、鈴子のミミック、かごのすけが庇う。命中したカボチャは爆発を起こし、かごのすけを吹き飛ばした。
「かごのすけ!! よくやったのだ!!」
 咄嗟の事で反応できなかった鈴子は、庇ってくれたかごのすけをほめた。
 クオンが『無銘の大剣』を振り下ろし、ハロウィンボムモドキへと叩きつける。続くように高々と跳び上がっていた、アニマリアがスカルブレイカーを放った。
 久繁とアスカがハロウィンボムモドキへと接近し、戦術超鋼拳を放つ。
 コスモスは再び、前衛へと薬品を散布していく。
 ブラックが絶空斬で、ハロウィンボムモドキの傷跡を切り広げていく。
「い、行きますっ!」
 ユーノが影の如き斬撃を繰り出し、ハロウィンボムモドキを切り刻む。
「光の剣しょーかん!!」
 鈴子はマインドリングから光の剣を具現化し、達人の一撃を放つ。攻撃を受けたハロウィンボムモドキの傷跡が氷に包まれていく。
 ハロウィンボムモドキがクオン目掛けビームを放つ。ビームの直撃を受けるが、怯まずに『宣戦・巨獣の咆哮』を放つ。咆哮の衝撃波がハロウィンボムモドキを襲う。
 アニマリアが地獄の炎を武器に纏わせ、敵に叩きつけ、久繁が炎弾を放ちハロウィンボムモドキを焼いていく。
 コスモスが精神操作でケルベロスチェインを伸ばし、ハロウィンボムモドキを締め上げ、動きの鈍った所にブラックが達人の一撃を放ち、ハロウィンボムモドキを切り払う。
「捉えました!」
 ユーノの放つ炎の槍がハロウィンボムモドキへと突き刺さる。そこにアスカが電光石火の蹴りを浴びせた。
「あっわあわのいったずら!! 鬼火軍団しゅつげきーーっ!!!」
 鈴子が黒い炎を内包したシャボン玉を吹き放つ。ゆらゆらと漂う泡達がハロウィンボムモドキにぶつかり、はじけ、炎に包んでいく。

●爆発を潜り抜けて
 激しい戦いに床やパーティーの飾り付けが燃え、辺りを炎が照らしている。ハロウィンボムモドキの一撃一撃がとても重く、油断のならない状況が続く。
 ハロウィンボムモドキが小型のカボチャ爆弾を、クオンへと飛ばす。
「そうだ!良いぞ、どんどん来い!」
 狙いを自分へと向けさせ、他のメンバーを動きやすくする。思惑通り事が運び、クオンは笑いながら攻撃を受け止める。
 反撃とばかりに、生命力を喰らう、地獄の炎弾を放つ。炎弾はハロウィンボムモドキへと命中し、奪った生命力の一部を吸収した。
 ハロウィンボムモドキが怯んだ所に、アニマリアがブレイズクラッシュを叩き込む。
 久繁が熾炎業炎砲を放ち、ハロウィンボムモドキを焼く。そこへコスモスのケルベロスチェインが絡みつく。動きが止まった瞬間を見逃さずに、ユーノがシャドウリッパーを繰り出す。
 ブラック、アスカ2人の斬撃が立て続けに、ハロウィンボムモドキを襲う。
 鈴子は浮遊する光の盾を具現化。クオンの治療と防護を行った。
 戦いの最中、蔓に付いているカボチャの一つが、徐々に大きくなってきていることに気が付いた久繁が声を上げる。
「みんな、下がって!」
 ケルベロス達が反応するよりも先に、巨大に成長したカボチャが蔓から離れ、地面へと落下した。その瞬間、爆音と共にカボチャが大爆発を起こし、ケルベロス達は吹き飛ばされて、壁や鉄製の扉へと叩きつけられた。
 爆風で窓ガラスは砕け散り、扉はひしゃげ、所々でくすぶっていた炎が消し飛び、再び体育館は暗闇に包まれた。
 爆風で吹き飛ばさせただけで、ダメージを受けていない中衛と後衛が立ち上がる。
「大丈夫か?」
 前衛のメンバーに久繁が声をかける。
「だ、大丈夫です」
 ユーノが返事を返し、立ち上がる。
 他のメンバーも何とか立ち上がった。防具で軽減されたおかげで、まだ戦闘は続けられる。
 ユーノはオーラを溜めてクオンを治療する。さらにクオンが叫び、自身を回復する。
 鈴子が光輝くオウガ粒子を放出し、前衛を回復させる。
「陽光浴びる高き峰よ、凍てつく山の影巫が命ず、我が前に立ち塞がる者を穿ち、砕け!」
 アニマリアが武器へと赤い光を収束させ、ハロウィンボムモドキへと打ち込み炸裂させる。
 久繁がチェーンソー剣で斬りつけ、コスモスが『パンドラ・ボックス【試作】』を構え、一斉掃射。
 達人の一撃を放つブラックに、アスカが旋刃脚で追撃する。
 ハロウィンボムモドキがビームを放つ。
「さあ、宴もたけなわ。この馬鹿騒ぎもそろそろ……」
 クオンはそれを躱し、『無銘の大剣』を構え、飛び出す。
「幕と、行こうか!」
 ハロウィンボムモドキへと、デストロイブレイドを叩き込んだ。
 アニマリアのブレイズクラッシュ、久繁の『願いの行先に手向けを』、コスモスのブレイジングバーストが次々とハロウィンボムモドキを襲う。
「これでどうですかっ!」
 ユーノが『炎槍刺突』を放つ。
「さあ、もうハロウィンは終わりました。あなたの出番もこれで仕舞ですよ」
 アスカの空の霊力を帯びた刀がハロウィンボムモドキを斬り裂く。
「とやぁぁああああッ!!!」
 鈴子が2つのマインドリングを合わせ、光の巨人へと変身すると、光を纏って突撃する。
「さぁ……花を咲かせましょう……!」
 ブラックが『妖刀・白桜』をハロウィンボムモドキへと突き刺す。刀を捻り、斬り上げると同時、体内へと送り込んだグラビティが爆発した。
 そのままハロウィンボムモドキは動かなくなり、床へと崩れた。

●宴の終わり
「まっずーい!」
 ハロウィンボムモドキの欠片を口に含んだ、鈴子がぺっぺっと吐き出す。
「煮ても焼いても食べられそうに無いです」
 それを見ていたアニマリアが呟く。
「先に言ってよ。もー!!」
 地獄化した舌を出し、まずそうにしながら文句を言う。
 2人のやり取りを聞きながら、何か情報をつかめないかと、アスカはハロウィンボムモドキの残骸を調査する。
「戦闘の痕跡だけ直しときましょうか。このまま帰ると色々と問題しかないわ」
 ブラックは体育館を見て提案する。ハロウィンボムモドキの爆弾で体育館はボロボロの状態になっている。流石にこのままにしておいたら学生たちが気の毒である。
 それでは、と体育館をヒールしていくコスモス。
「これでみんな、何事もなく明日を迎えれるはずです」
 無事に直った体育館を眺め、満足そうにするユーノ。
 宴は終わりと、ケルベロス達は深夜の体育館を後にした。

作者:神無月シュン 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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