屍徒は月喰島より来たる

作者:朱乃天

 秋が深まり、海岸を吹き抜ける浜風は身を強張らせる程に冷たさを帯びていた。
 夜明け前の小さな漁港には何隻かの漁船が停泊し、漁師達が出港に向けて慌ただしく動き回っている。
 この日も普段と変わらない、穏やかな日常がこれから始まろうとする――筈だった。
「……おい、何だありゃ?」
 海の波が不自然なまでに大きく荒れ出した。漁師の一人が違和感を覚え、目を凝らして見てみると。彼の目に映ったモノは――人間を繋ぎ合わせたような、巨大な異形の怪物だ。
「ひ、ひいぃぃっ!? ば、化け物だああああああ!!」
 耳をつんざくような悲鳴が上がる。早く逃げなければ――頭の中で何度も必死に叫ぶが、恐怖で身体が固まり足も竦んで動けない。
 怪物が放つ不気味な威圧感に戦慄し、打ち震えるだけしかできない漁師の目の前に、その怪物がいつの間にか聳え立っていた。
「お、お願いだ……。い、命だけは助けてく……」
 怯えて涙声で命乞いをする漁師の頭を、巨躯の屍が大きな掌を広げて鷲掴みにして。
 ――グシャリ。 
 力を加えて握った拳から、真っ赤な雫が溢れてポタリと落ちる。
 異形の屍は、先程まで人間だった肉塊を窪んだ眼窩で一瞥し。絶叫して逃げ惑う人々を、次から次へと蹂躙していった。

 月喰島から出現した冥竜ハーデスは、ケルベロス達の空中戦によって撃破し見事勝利を収めた。これで事件は決着したかと思われたのだったが――。
「冥竜ハーデスは、月喰島から配下の戦力も進軍させていたみたいだね」
 まだ事件は完全には終息していないと、玖堂・シュリ(紅鉄のヘリオライダー・en0079)が新たな事件の発生を伝え始める。
 灰木・殯(釁りの花・e00496)が予測した通り、『ヘカトンケイレス』という種類の屍隷兵が次々と日本各地に上陸しようと押し寄せてくる。
 冥竜ハーデスが既に死亡しているので、敵の統率は取れていない状況だ。屍隷兵は10体程度の少数で群がって、太平洋側の海岸地帯を目指して攻め込んでくる。
「そこでキミ達には、これから屍隷兵の迎撃に向かってほしいんだ」
 屍隷兵自体は強力な個体ではない。だが人間を見かけると無差別に襲撃し、虐殺して回る性質があるようだ。もし迎撃に失敗すれば、大きな被害が出る危険性もある。
「ヘカトンケイレスには知性がなくて、ひたすら力任せに暴れたり、奇声を上げて恐怖心を誘おうとしてくるよ」
 敵の上陸地点は、千葉県にある漁港だ。漁師達が漁に出る準備をしているところを襲ってくるが、今回は時間に余裕を持って行動できる。事前に避難を呼び掛けて戦いに備えれば、気兼ねなく戦闘に専念できるだろう。
「冥龍ハーデスも厄介な置き土産を残していったみたいだね。だけど、キミ達の力なら十分太刀打ちできる相手だから」
 ならば返り討ちにするのみだ。
 更なる殺戮を食い止めるべく、シュリは戦地へ赴くケルベロス達に全てを託した。


参加者
水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)
ジョージ・スティーヴンス(偽歓の杯・e01183)
真木・梔子(勿忘蜘蛛・e05497)
鷹野・慶(魔技の描き手・e08354)
千歳緑・豊(喜懼・e09097)
秋空・彼方(英勇戦記ブレイブスター・e16735)
時雨・乱舞(純情でサイボーグな忍者・e21095)
薊・狂(狂い華・e25274)

■リプレイ


 夜明け前の海は未だ太陽が射し込まず。深い青の世界が水平線の果てまで続いていた。 
 一面に広がる漆黒の闇に何かが潜んでいるなど気付く者はなく。海より来たる災厄は、誰にも知られず近くの漁港まで忍び寄っていた。
「俺達はケルベロスだ。悪いがすぐにここから立ち去ってくれ」
 漁の準備をしていた漁師達に向かって、ジョージ・スティーヴンス(偽歓の杯・e01183)が避難を呼び掛ける。
「この港に敵が攻めてくるんだ。お仕事しなきゃだろうけど、今日はごめんなさいだよ~」
 水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)が申し訳なさそうに漁師達に事情を説明し、港から離れてもらうように促した。
「皆さんを危険な目に遭わせる訳にはいきませんから。急いで逃げて下さい」
 秋空・彼方(英勇戦記ブレイブスター・e16735)は漁師達に呼び掛けながら、レブナント襲撃の警戒を怠らず、海の方に注意の目を向ける。
「あァ、悪いな、此処から先は立ち入り禁止だ。時間が無えから早くしてくれよ」
「お、おう、すまねえ。アンタらも無理しねえようにな。勝てるように祈ってるぜ」
 慌ただしく港から逃げ出す漁師達を見送って、彼等が再び立ち入らないよう薊・狂(狂い華・e25274)がキープアウトテープを現場に貼っていく。
「もう残ってる者はいないようだな。さて……ここからは私達の仕事だ」
 いぶし銀な容姿の千歳緑・豊(喜懼・e09097)が、落ち着き払った様子で状況を確認し、上陸地点を見渡しながら戦闘態勢を整える。
「後は敵だけ気にすりゃいいか。面白え、せいぜい楽しもうぜ」
 漁師達の避難を終えれば戦闘に専念するのみだ。好戦的な性格の鷹野・慶(魔技の描き手・e08354)は、レブナントが接近するのを待ち侘びながら、戦いに向けて気を引き締める。
 ケルベロス達が待機していると、東の空が薄ら赤く染まり出す。仄暗い夜の世界が次第に明るく色付いてくる。新しい一日の始まりを告げる朝陽が昇ろうとする、その中に朧気な影が入り混じっているのを時雨・乱舞(純情でサイボーグな忍者・e21095)は見過ごさない。
「レブナントの影を確認しました。配置に就いて、迎え撃ちましょう」
 海の波が大きく荒れ出して、冥竜の屍徒が陽光に紛れてやって来た。その数10体。4mもの巨体がズラリと並んで侵攻してくる光景は、ある種の畏怖すら感じさせられる。
「準備は万端、敵は強大な神話の名を冠する屍鬼の巨人。相手にとって不足はないです」
 襲来する巨人達の影を前にしても尚、真木・梔子(勿忘蜘蛛・e05497)は微塵も怯まず。むしろ望むところとばかりに、武器を構えて待ち受ける。
「――私達の戦いを見せましょう」
 水平線が赤く滲んで、夜のベールを剥いでいく。地獄の番犬と屍の巨兵との、暁の死闘が幕を開いて始まった――。


「偶にはサポート役も悪くはないか。遠慮なく暴れ回ってくれよ」
 慶が逸る気持ちを抑えるように魔術を行使する。唱える呪文は狂の脳細胞を活性化させ、眠れる力を呼び覚ます。
「有象無象の屍供よ。丁度退屈していた所だ、歓迎するぜ」
 込み上げてくる衝動に口角が吊り上がり、花魁姿の狂が不敵に笑いながら屍隷兵に立ち向かう。眩く輝く翼を大きく広げ、全身に光を纏って溢れる力を敵の巨体に叩き込む。
「もっと俺を、愉しませてくれよ、なァ?」 
 屍隷兵が呻く姿に舌なめずりしながらほくそ笑み、愉悦を欲して狂の切れ長の眼が妖艶に光る。
「……レブナント。この為に一体何人の人が犠牲になったというのか」
 多数の屍を融合させた巨躯の屍隷兵。この怪物を造り出すのにどれだけの命が奪われたのだろう。眼前に聳え立つ異形を目にして、彼方の心に怒りの炎が湧き上がる。
 これだけの数を相手に戦う以上、長期戦も覚悟しなければならない。彼方は星を宿した剣で星座を描き、仲間に守護の力を付与して防御を強化する。
「ガアアァァァッ!」
 立ちはだかる番犬達を払い除けようと、屍隷兵が腕を振り翳す。しかし動じることなくジョージが槍で受け流し、返す刃で斬りかかる。
「……やれやれ、創造主が死んだというのに、律儀な連中だぜ。……とにかく、さっさと片付けるか」
 飄々とした仕草で槍を激しく回転させながら、敵陣の中に突進して槍を振り回し、次から次へと屍隷兵を纏めて薙いでいく。
「海からくるのがお魚だったらよかったのにね。こんなはた迷惑な置き土産はいらないよ」
 龍なら宝物を残してくれた方がよっぽど良いと、ぼやき節を入れながら。蒼月が惨殺ナイフを逆手に構え、屍隷兵の傷口を広げるように抉って斬り裂いた。
「力は強そうだが……あまり面白くはなさそうだ」
 豊の地獄の炎が獣の形を成していく。炎は巨大な犬と化して牙を剥き、五つの目が殺意を帯びて屍隷兵に喰らいつく。地獄の走狗は屍肉を貪り血を啜り、微塵も残すことなく屍隷兵を平らげた。
 まずは一体。勝利を知らせる遠吠えが上がって、ケルベロス達の戦意を高揚させる。
「この調子で数を減らしていきましょう!」
 乱舞が屍隷兵の平手打ちを全身で受け止めて。押し戻すように凍気の嵐を巻き起こし、氷の礫を屍隷兵に撃ち付ける。
「これが奥の手というものです――失った誇りと角と再びすべて取り戻す」
 梔子の背中から、甲殻類の脚が伸びて生えてくる。それは古の時代に失われたとされる土蜘蛛の力。梔子は刹那に甦りし力を振るい、蜘蛛脚の槍で屍隷兵を貫いた。何度も容赦なく――屍の巨人が息絶えるまで。

 攻撃を一体に集中させて、各個撃破を狙うケルベロス達。既に二体を倒し終え、数の上では同等となった。だが手数では敵も負けてはいない。
 屍隷兵が巨大な掌を広げて掴み掛かってくる。複数の人間の腕を繋ぎ合わせたような奇怪な造形は、とても人の所業ではないと思える程におぞましく。番犬達は様々な思いを抱きながらも、今はただ殲滅することのみに専念をする。
「ぐっ……!? こんな、ところで……!!」
 屍隷兵の腕が彼方を鷲掴みにして締め付ける。全身が圧し潰されそうになるような苦痛に耐えながら、腕を振り解こうと抵抗を試みる。
 そこへライドキャリバーのヤタガラスが高速で体当たりを仕掛け、彼方は間一髪のところでこの危機を逃れた。
「今度はこちらの番だ! ブレイブスター! セットオン!」
 掛け声と共に左の拳を握り締め、装着したガントレットに埋め込まれた宝石が光を放つ。眩い煌めきが全身を包み込み、彼方を守る紅蓮の鎧装へと変化する。
「ユキ、そっちの援護は任せたぜ」
 慶が使役するウイングキャットに命じると、猫の尻尾のリングが飛び回って屍隷兵を斬り刻む。しかしその身に傷が刻まれるのも構わずに。屍の怪物達は力任せに攻撃を繰り出して、食い下がる番犬達を叩き潰そうとする。
「……獲物にも休暇をとらせてやるべきだろ?」
 歪な青黒い闘気を滾らせながら、ジョージが屍隷兵の腕を受け止め抱えて離さない。ジョージはそのまま力を加えて腕をもぎ取って、屍隷兵の本体へ豪快に打ち据える。巨体がグラリと揺れて地面に沈み、倒れた屍隷兵は二度と起き上がらなかった。
「悦イじゃねェか、気兼ねなく殴れる屍なんざ最高だ。アンタの色をあたしに見せな」
 黒い着物を纏った狂が、裾に花咲く曼珠沙華を翻して縦横無尽に駆け巡る。裾が捲れて露わになった美脚から、刃の如き鋭い蹴りが放たれて。屍隷兵が体勢を崩したのを確認すると、乱舞に視線を送って頷いた。
「さあ、我が幻影達よ……踊りなさい!!」
 乱舞が素早く指先を動かして印を結ぶと、彼と同じ容姿の分身がその都度作り出される。そして屍隷兵を取り囲むようにして、乱舞と分身達が一斉に突撃をする。分身達が敵を惑わせている隙に、乱舞が跳躍しながら手刀で屍隷兵の喉を掻き抉る。
 幻影に踊らされるように血飛沫を撒き散らし、致命傷を負った屍の巨人がまた一体、大地に沈み込んで動かなくなる。
「所詮は自我の無い、量産型みたいなものか。戦うには些か物足りないな」
 豊はレブナントとの戦闘に興味を抱いていたのだが。知性が乏しく会話も通じないような輩が相手とあって、拍子抜けした気分になっていた。
 それでも豊は集中力を切らすことなく、リボルバー銃を瞬時に構えてトリガーを引き、隙のない動作で屍隷兵の胸部を撃ち抜いた。
「そろそろ狩りの時間だね。いいよ、出てきて一緒に遊ぼうよ」
 黒猫の獣人らしく、蒼月が軽やかに跳ねると足元から猫の影が這い出て群れを成す。猫の幻影達は戯れるように屍隷兵に飛び掛かり、飽きが来るまで屍肉を掻き乱し。狩りを終えると蜘蛛の子を散らすように消え去って、後には何も残らず屍隷兵も消滅してしまう。
 ケルベロス達はこれで屍隷兵の半数を撃破した。戦いはいよいよ折り返しに差し掛かる。


「私の糸は、魂の一片たりとも逃しません」
 梔子が敵との間合いを図りつつ、玉鋼の鎖を投げ飛ばす。伸ばした鎖は地獄の炎を纏って赤く燃え盛り、蜘蛛糸の如く絡めると。肉を灼き焦がす音と臭いが充満し、屍隷兵から苦悶の悲鳴が溢れ出る。
「グオオオオォォォッ!!」
 屍隷兵の口から瘴気と共に吐き出される叫び声。屍隷兵を造る為に犠牲となった人間達の怨嗟の声が、雄叫びとなってケルベロス達の心に恐怖を植え付けようとする。
「……ったく煩え、とっとと沈めよこのウスノロ!」
 耳を塞いでも、屍隷兵の怨念は脳に直接響き渡ってくる。慶は顔を顰めて屍隷兵を睨みつけ、古の言葉を紡いで魔力の帯を織り上げる。
「じっとしてろよ。絡まったら困るだろ?」
 呪いを篭めて織り成す帯で、屍隷兵の口を塞いで締め上げて。慶が念を注いだ強度の呪詛が体内へと侵食し、屍隷兵の巨体はやがて腐敗し崩れ落ちていく。
「……助けられないならせめて、罪を犯す前に僕達の手で」
 屍隷兵の巨腕が彼方に圧し掛かって潰そうとするが。光の盾を展開させて耐え凌ぎ、闘志を奮い立たせて押し返す。可能であれば、レブナントにされた人達も救いたかった。しかしその望みは叶わないと知った以上、任務を全うするのみだと自らに言い聞かす。
「安らかに、眠ってもらうしかない……!」
 剣に重力を纏わせて、彼方が振るった一撃は屍隷兵の守りを砕いて肉を断つ。
「……死臭の混じる潮の香りなんざ、嗅ぐものじゃない」
 流れる血と硝煙の臭いが鼻を突く。ジョージは戦場に満ちる死の気配に惹かれるかのように、負傷も構わず猛然と攻撃を繰り返す。
 混然とした意識の中で、ジョージの脳裏には――故郷が滅んだ『惨劇の夜の苦痛』の記憶が蘇る。今はただ生きてるだけの、立派な死に損ないだと自嘲して。破滅的な戦い方しかできない自分を虐げる。
「……後はここで眠りに就くことだけが、残された道だ」
 屍隷兵の集団の中央で仁王立ちをして、気力を振り絞るように闘気を漲らせ、我を忘れる程に激しく攻め立て敵の生命力を削いでいく。
「GO! シラヌイ!」
 乱舞が相棒のライドキャリバーを駆って疾走し、気合が昂り炎の塊となって屍隷兵へ特攻する。
「戦いは、命が懸かってこそなのだがね。もう少し愉しませてくれないか」
 確実に数を減らして、戦況を優位に進めるケルベロス達。畳み掛けるように追い詰めていく状況に、豊は憐れみすら感じている程だ。とはいえ戦いに同情は必要ない。
 豊は蔑むような眼差しで屍隷兵達に銃口を向け、一片の慈悲もなく鉛の弾丸を乱射する。
「此処から先へは通してあげないんだからね!」
 蒼月が強い決意を護符に篭め、召喚した御業の炎が屍隷兵を灼き払う。
 ケルベロス達の攻撃の手は止まず。一体また一体と屍隷兵が倒れ伏し、ついに最後の一体を残すだけとなる。
「そろそろ決着を付けましょう。この戦いに終止符を打つ為に」
 梔子が降魔の力を解き放ち、赤手の縛霊手を屍隷兵の脇腹に捻じ込んだ。巨体が傾き膝を突き、決定打には至らず辛うじて踏み止まったが、屍隷兵の命は風前の灯火だ。
「遊戯は終りだ。アンタとの殺し合い、悪くなかったぜ?」
 狂が高下駄を鳴らして死に体の巨人に歩み寄り、脚に闘気を宿して力を溜める。
「此れで仕舞いだ――くたばれッ!!」
 蓄積した魔力を一気に爆発させて、蹴りを連続して驟雨の如く打ち付ける。血と肉片が鮮麗に乱れ咲き。花道に添えた彩りは、赤くて黒く、恍惚の笑みを浮かべながら酔い痴れて。
 散るは徒花。仮初めの生も最後は儚く朽ち果てて、屍を積み重ねた戦場に終焉が訪れる。

 明け方の冷たい風が吹き抜けて、一日の始まりを告げる朝陽が勝者の勇姿を照らし出す。
 薄闇が晴れた空は眩い日差しが射し込んで、海の波も穏やかに揺れている。
 豊が見つめる水平線の先、その向こうに月喰島があるのだろうかと。壮年の男性は海を眺めながら感慨に耽る。
 戦いを終えても尚、高揚感で火照る身体を夜明けの風に癒されながら。乱舞は戦闘で破損した箇所をヒールで回復させていた。
 蒼月も漁師達が早く仕事に戻れるように願って、周辺をヒールで直し回った。建物が幻想的になるのはご愛嬌だからと、照れ笑いを浮かべつつ。
 静けさを取り戻した空気の中で、梔子は安堵の溜め息を吐きながら、共に戦い抜いた仲間達に微笑みかけて感謝と労いの言葉を掛ける。
 慶はレブナントが跡形残らず全て消滅したのを確認すると、黙って地面に視線を落とす。
 知性のないただの怪物は、命が果てる瞬間までも、何も感じることはなかっただろうか。勝利を得てもすっきりしないもどかしさが胸に絡みつく。
「……哀れだとは思わねえが、ハーデスってのはつくづく悪趣味だったな」
 彼の者達も元々は一人の人間だ。その魂は、きっと海の中に還っていったことだろう。
 戦いの嵐は止んで、いつもと変わらない日常が訪れる。
 平和を守り抜いた戦士達は、昇る陽光を背に浴びながら港を後にした。

作者:朱乃天 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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