●愛せし獣の影一つ
『くぅぅん、くぅぅん……』
愛くるしい、子犬の鳴き声。
その鳴き声を聞いて、その子犬の飼い主の少年は、飼い犬のチワワの元へ。
「ん、どうしたのかな? 大丈夫、ぼくがいるよ?」
と、少年は、チワワを抱き上げながら頭を撫でて、落ち着かせる。
……しかしくぅん、くぅんと鳴き続ける子犬。
そんな子犬を暫し、慰め続ける少年。
……と、その時。
少年の飼い犬の鳴き声は、次第に太く、低くなり、重く成り行く。
『え……?』
そして、みるみる内に子犬は、シベリアンハスキーほどの巨大剣になり、少年の顔に噛みつき掛かる。
……が。
『わあああっ!! ……え、あ、あれ……?』
……汗だくで、飛び起きた少年。
その居場所は、ベッドの上。
『あれ……ゆ、ゆめ……だったの……?』
と呟いた、その時。
「ふふ……」
流れるは、笑い声。
その笑い声と共に、少年の心臓に向けて、穿たれる……鍵。
そのまま、また眠りに落ちるように、ベッドに横たわる少年。
そして、彼女は。
「私のモザイクは晴れないけど、あなたの『驚き』は、とても新鮮で楽しかったわ」
と言うと共に、彼の傍らに……獰猛な、ドリームイーターのシベリアンハスキーを生み出す。
そして、彼女……第三の魔女・ケリュネイアは。
「さぁ、もっと驚きを集めて来るのよ」
と、ドリームイーターに指示を与え、町へと放つのであった。
「ケルベロスの皆さん、集まって貰えたッスね! それじゃ、早速ッスけど説明ッス!」
と、黒瀬・ダンテが集まったケルベロス達に元気よく挨拶すると、早速説明を始める。
「皆さん、子供の頃の夢って覚えてるッスか? 色んな夢を見た事が有ると思うッスけど、その中でビックリした夢とかなかったッスか?」
「今思えば、ビックリした夢に理屈なんて全く通ってなかったのに、でも、信じてしまって、夜中に飛び起きたりした、って経験がある人も居ると思うッス。そんなビックリする夢を見た子供が、ドリームイーターに襲われ、その『驚き』を奪われてしまう事件が発生している様なんッス」
「この『驚き』を奪ったドリームイーターは、既に姿を消してしまってる様ッスが、奪われた『驚き』を元に現実化したドリームイーターが、事件を起こそうとしている様なんッス。そこで、ケルベロスの皆さんには、このドリームイーターが一般人への被害を起こす前に、撃破してきて欲しいんッスよ。このドリームイーターを倒す事が出来れば、『驚き』を奪われた少年もきっと、目を覚ましてくれる筈ッスからね!」
そして、続いてダンテは。
「今回の驚きの夢ってのは、どうやら可愛い小型犬が、突然大型犬に変身する、という驚きの様ッス。幸いこの一体のドリームイーターのみで、他のドリームイーターや、配下などは居ない様ッス」
「そしてこのドリームイーターが現れるのは、少年の家の近くッス。どうやら少年の家の近くで吠えて、一般人を呼び寄せて驚かす、という事をしてくる様ッスね」
「幸い驚いてくれる一般人には、それで満足する様で危害は加えない様ッスけど、驚かないと危害を加えようとしてくるかもしれないッス。つまり、それこそがこのドリームイーターを呼び寄せる方法にもなる、という事なんッスよ」
「ちなみにこのドリームイーターの攻撃手段はその大きな身体によるタックルと、噛みつき攻撃の二つッス。特に噛みつき攻撃には、毒の効果もある様ッスから注意して欲しいッスよ!」
そしてダンテは。
「こういった子供の無邪気な夢を奪い、ドリームイーターを作るだなんて許せないッス。被害者の子供の目を覚まさせる為にも、必ずドリームイーターを倒して来て欲しいッスよ!」
と、拳を振り上げ、送り出すのであった。
参加者 | |
---|---|
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550) |
鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245) |
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456) |
天照・葵依(蒼天の剣・e15383) |
西院・玉緒(深淵ノ緋・e15589) |
ヴォルフラム・アルトマイア(ラストスタンド・e20318) |
結真・みこと(ょぅじょゎっょぃ・e27275) |
黒岩・白(ドワーフの犬巫女・e28474) |
●驚きは夢の様に
「ったく、昨日はレブナント今日はドリームイーターってか? ホント矢継ぎ早だぜデウスエクスはよ」
と……溜息と共に肩を竦める相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)。
パッチワークの魔女が一つ、第三の魔女・ケリュネイア。
彼女が奪うは【驚き】の感情……そして、今回ケルベロス達が受けた依頼には、愛くるしいチワワが、突然目の前で雄々しきシベリアンハスキーに変わり、咆哮を上げる、と言う。
チワワとシベリアンハスキーという、全く違う二つの犬種……それが目の前で突然起きたとしては、当然飼い主である少年も驚く事だろう。
「うーん、これってある意味ギャップ萌えの一種だよね~~。人畜無害のある人形が、いきなりロボットに変ったらギャップ差で驚きが激しくなる様に、いきなりチワワがシベリアンハスキー程の巨大犬になったらそりゃ驚くわ」
「ええ、そうね……まぁ、そんなに驚かなくても、って思うのだけれど。まぁ、小さいんだから仕方ないわね」
鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245)に西院・玉緒(深淵ノ緋・e15589)が苦笑。
不敵に微笑む彼女……なんだか少年が驚く事を嬉しがっている様に聞こえなくも無いが、まぁいいとして。
「何にしても、この様な事を放置しておく訳にも行かぬだろう。少年もこのままでは、トラウマになってしまうだろうからな」
「そうだな。それにこのようなドリームイーターの悪行……許しておくわけにもいかんだろう。確実に、ここで始末を付けるとしよう」
ヴォルフラム・アルトマイア(ラストスタンド・e20318)に天照・葵依(蒼天の剣・e15383)が頷き、そして彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)、結真・みこと(ょぅじょゎっょぃ・e27275)も。
「そうですね。癒しを逆転させることで敵が受けた傷を悪化させる私の力、逆癒。敵の行動そのものを失敗させる相馬さんの技、旋刃脚……私たちは的に、回復することすら許さない」
「そうだね! よーし、みこ、張り切っておどろくのだ!!」
元気よく拳を振り上げるみこと、その傍らのウィングキャットのねこともにゃー、と鳴く。
「あ、ねーこはだめだよ。おどろかないでよー? おどろいたら、てきさんこうげきしてきちゃうんだからねー?」
「にゃぁ」
分ったのか、分って無いのか……ちょっと微妙な所ではあるが、まあそれはさておき。
「そうだね。そんなギャップ萌えの楽しみの為にも、今日も元気にお仕事お仕事!」
「んー……そうッスねぇ……しかしもっと楽な方法無いんすかねぇ……」
猛に黒岩・白(ドワーフの犬巫女・e28474)が頬をぽりぽりと掻きながら肩を竦める。それにヴォルフラムが。
「簡単な方法……無いだろうな。しっかりと一つずつ対処していく他に無い」
「そうっすかぁ……しゃーないっすねぇ。それじゃいっちょ気合いは入れるっすよー……」
……本当に気合いが入っているかどうかはちょっと分らないが、まぁ何にせよ……ケルベロス達は、その変身する犬の出没するという市街地へと向かうのであった。
●恐怖の犬
そして、市街地を歩くケルベロス達。
……すっかり日も暮れた深夜とあっては、街角を歩く人も殆どおらず、静けさが町を支配している。
そんな中を、ドリームイーターを探し、くまなく町を歩き回るケルベロス達。
すると……少年の家の近くにさしかかった所で。
『くぅぅん……くぅぅん……』
と、可愛げな子犬の鳴き声。
そんな子犬の鳴き声に、ケルベロス達は更にその方向へと向かう……そして、とことこと歩くチワワを発見。
愛くるしい、くりくりっとした瞳……両手の上にのりそうな位、小さい身体。
そんな可愛いチワワが、可愛げな鳴き声で、媚びを売っている様にも……。
「あれだね。それじゃ始めるよー」
と、そそくさと猛がキープアウトテープを、その辺りに張り巡らせる。
一方、他のケルベロス達は、チワワに近づき、道具を使って注意を引く。
……すると、暫くはじゃれていたドリームイーターだが、突然……。
『ウ、ウゥゥ……』
と、何処か苦しみ出す様な動きを始める。
そして……程なくして、まるで化けの皮が剥がれるが如く……牙を剥き出しにし、目はグルグルと白目と黒目が反転。
「ふぇぇ……!?」
と驚くみこと。
更にぐ、ぐぐぐぐっ、とその身体が大きくなっていき……次第に、シベリアンハスキーの様な体躯に。
「わっ……こっ、ここまで大きさに差があると、わかっていてもさすがに驚くな……!」
と葵依が数歩後ずさりし、更にみこともぐすっ、ぐすっ、と少し泣き始める。
……と、そんな二人に対し、他のケルベロス達は。
「……随分、大きくなったわね。わたしに、興奮でもしたのかしら? 大きければ良い……って訳ではないのだけれど」
「そうっすねえ。う~ん……大きいって言っても、ねぇ……」
と玉緒に、白が……ホワイトタイガーの精霊、粉雪と、シベリアンハスキーの精霊、マーブルを撫でて。
「……この子達に比べれば、小さいッスよ」
と。
……まあ、ドリームイーターからすれば、それは想定外。
とはいえ変身を止める事なども出来ず、そのまま身体みるみるうちに大きくなっていく……そして、完全にシベリアンハスキーに変ると、ワオオオオン、と獰猛に吠える。
でも、更にそれに。
「シベリアンハスキーってかわいーよな。アレクはどーだ?」
と、ヴォルフラムは傍らのビハインド『アレク』に問いかけると、アレクは小首を傾げる。
……そして、キープアウトテープを張っていた猛が戻ってくると。
「残念だったね! ハスキーよりもマスティフの方が怖かったよ!」
と宣言、そして
「そうね……さて、と。遊んで上げる。わんこちゃんは、どんな風に鳴いてくれるのかしらね?」
眼鏡をくいっとあげながら、銃を構える玉緒。そしてヴォルフラムも。
「ちょっと心は痛むが……倒させて貰おう。夢はそろそろおしまいにしようか」
と。
そんなケルベロス達の対峙の宣言に、ドリームイーターはグルルル、と唸り……そして、しゅたっ、と駆ける。
仕掛けるは驚かなかった人、挑発してきた玉緒。
しかしそんな玉緒への攻撃を、インターセプトするヴォルフラム……ゼログラビトンで武器封じを付与すると、あわせてアレクが前に出てカバーリング。
その腕に深く噛みつくドリームイーター……しかし貫けなかったと分ると、一端距離を取る。
そして、すぐに葵依が。
「大丈夫か?」
と、後方からサークリットチェインを飛ばすと共に、みことがバシリス・アーディン・アイオーニオン・カタラで、妨アップを付与、対しねことは清浄の翼で、仲間達にBS耐性をばらまいていく。
そして、アレクは金縛りで迎撃すると、続いて泰地が。
「てめーも穢れてみるか? あぁ?」
と拳を握りしめ、オーラを纏い妨アップ。
そして悠乃がスターゲイザーで足止めを付与すると、白も。
「ほら、行くッスよ!」
と精霊と共に、スピニングドワーフ。
更に猛、玉緒のクラッシャーが、バーニングブレイカーとグラインドファイア。
……ただ、確りとした手応えは無く。
「……あら、硬いのね」
と、艶やかに笑う玉緒。でも、更に。
「良い感じ、楽しくなってきたわ」
と、更に微笑む。
そして、仲間達の行動の最期に、葵依のボクスドラゴンの月詠がボクスブレスでジグザグ付与。
バッドステータスの効果を倍増させると、流石にドリームイーターは苦しみの咆哮を上げる。
「ふふふ……苦しんでるわね。でも、これだけじゃ終わらないわよ」
「そうだな。ほら、ガンガン行くぜ!」
と、続くターン。即座に泰地がバリケードクラッシュで服破りを付与する一方、悠乃がマインドソードのプレッシャー付与。
白がフロストレーザー、アレクがポルターガイスト、玉緒のハウリングフィストに、猛の旋刃脚……と、立て続けにバッドステータスを加算していく。
一方ヴォルフラムはヒールドローンで盾アップを付与する事で、守りも固め、月読はボクスドラゴンのバッドステ-タスのジグザグ倍加。
……兎も角、大量のバッドステータスを付与する事で、ドリームイーターをじわじわと苦しめていく作戦。
『ウォォォン……!!』
と、段々と悲しげな鳴き声になっていくが……決してその鳴き声に惑わされる事無く、猛攻を続けて行く。
……そして、十数分が経過……流石に大量のバッドステータスに苦しまされたドリームイーターは、かなり動きが鈍りつつある。
「……どうやら、そろそろの様ですね。皆さん、あと一息です。気合いを入れて行きましょう」
と、悠乃の言葉にああ、と泰地は頷きつつ、構える歯『鬼の金棒』。
気合いを入れると共に、無数の釘がその武器から生えていき……それをドリームイーターに叩きつけていく。
その一閃に、身体が大きく吹き飛ぶドリームイーター。
地面に叩きつけられ、う、うう……とどうにか立ち上がろうとする所に。
「あなたと遊ぶの、もう飽きちゃったわ。 終わりにしましょうか……じゃあね?」
と、ジャケットを脱ぎ捨て、『終焉ノ刻』を踊る玉緒。
舞踊る黒髪が、ドリームイーターに巻き付いていくと共に……ドリームイーターは、咆哮と共に崩れ墜ちて行った。
●潜むは驚き
そして、ドリームイーターの姿が消え失せた後。
「ふぅ……つっかれたぁ……」
とぽつりぼやき、傍らのアレクの肩にもたれ掛かるヴォルフラム。
そんなヴォルフラムに、言葉は無い蛾……しょうがないですね、とばかりに撫でるアレク。
そして泰地も。
「これで被害者の少年も助かるか……」
と安堵の溜息を吐く泰地。
……少年を救えたことに対する安堵、一般人wお守れた事に対する安堵。
そんな二つの安堵を覚えつつも、周囲の被害の修復を始めるケルベロス達。
ヒールグラビティで、一通りの修復を終える……と、風が吹きすさぶ。
肌を振るわせる、寒さに。
「しかし寒くなってきたな……帰りに暖かいものでも食べていくか」
と葵依は月詠を肩に乗せ、まるでマフラーの如く巻き付けると、それにみことも。
「そうだね。寒くなってきたね! もうすぐ雪かな? あ、そうそう、ねーこね、だっこしてるとあったかいんだよ!」
とねことを抱き上げ、もふもふな毛並みに顔を埋めて満面の笑みを浮かべるみこと。
ねことも、にゃー、と鳴きながらみことともふもふ。
そんな二人を見ていると……何だか心もほっこりする。
そして……ケルベロス達は、一通りの後片付けを終えると共に、帰路へと付くのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年11月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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