コスモス祭のマグロガール

作者:小鳥遊ちどり

●コスモス祭
 群馬県某市では休耕田を利用した広いコスモス畑で、農協・商工会、加えてコスモス畑の真ん中にある神社がタッグを組み、毎年秋に『コスモス祭』を開催している。
 満開で迎えた当日、神社の参道には縁日のように屋台が並び、コスモス見物の善男善女たちを楽しませていた。屋台は、定番のわたあめやイカ焼きに焼きもろこし、リンゴ飴やアメリカンドッグ、射的や金魚すくい、ヨーヨー釣り、群馬名物焼きまんじゅうなどなど一通り揃っている。
 その屋台のうちのひとつ、神社の鳥居近くに建っている子供向けおもちゃの店を、ひとりの少女が覗き込んだ。
「へい、らっしゃい、何をおさが……エッ」
 店主は愛想よく声をかけたが、思わず言葉を詰まらせた。
 その少女は、秋もこんなに深まっているのに花柄の浴衣姿にマグロの被り物という妙な姿をしていた。その上、背にシャイターンのシンボルであるタールの翼を生やしているのに気づいたからだ。
 驚きと恐怖に凍り付く店主に構わず、シャイターンの少女は店先に立ててあった、売り物のビニール製の剣を2本すらりと抜いた。某SF映画のに似せた、いわゆるなんとかセイバーというヤツだ。
「ふうん、ビニールの割にはカッコイイのね」
 少女は、赤と青に輝く剣を二刀流で構え……。
「切れ味はどうかしら」
 無雑作に振り下ろした。
 ザシュッ!
「…………グ」
 逃げる間もなく……悲鳴を上げる間もなく。
 店主の体は真っ二つに切断された。

●ヘリポートにて
「夏頃から、エインヘリアルに従う妖精8種族の一つ、シャイターンに動きがあることは、皆も知っておろう」
 ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)が渋い表情で、集ったケルベロスたちに語り始めた。
 活動を活発化させているのは、マグロの被り物をしたシャイターンの部隊で、日本各地の祭会場を襲撃し、一般人を殺害してグラビティ・チェインを得ようとしているらしい。
 祭会場を狙っている理由は不明だが、お祭りという場を利用して、効率よくグラビティ・チェインを収奪する作戦である可能性が高い。
「シャイターン……その外見から、仮に『マグロガール』と呼んでおるのだが……祭会場に先回りして、事件を未然に防いでほしい」
 ザイフリートは地図を開き、祭の場所を示した。地図では農地の真ん中に鳥居マークが見える。
「花盛りの時期とあって、祭への人出は多いが、会場にいる一般人を予め退去させてしまうと、マグロガールが別の場所を襲ってしまうため、残念だが事前の避難は行えない」
 マグロガールがまず襲うのは、鳥居のそばに出店している玩具店であることがわかっている。その店の近くで一般客のふりをして潜み、マグロが店主に襲いかかる寸前に介入するのがよいだろう。
 マグロガールはケルベロスが現れれば、先に邪魔者を排除しようとするので、挑発しつつ、人の少ない場所に移動するなどして戦闘すれば、周囲への被害は抑えられる。
「幸い、神社の周囲は広い広いコスモス畑だ。花に多少の被害は出てしまうだろうが、人払いをしながら広い場所に誘き出して戦闘に持ち込んでくれ」
 避難を呼びかけつつESPを上手く使えば、一般人を遠ざけるのは難しくないだろう。ターゲットの誘き出し係と、一般人の避難誘導係に分担すれば、更にスムーズかもしれない。
「マグロガールの戦闘力は、あまり高くないが、阻止に失敗すれば祭り会場が惨劇の場になってしまうので、敗北は許されない」
 そこまで言ったザイフリートは、少しだけ表情を和らげ。
「敵を撃破した後は、せっかくの機会だ、コスモス祭とやらを皆で楽しんできたらどうだ?」


参加者
メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)
浦葉・響花(ウェアライダーのブレイズキャリバー・e03196)
朔望・月(欠けた月・e03199)
エフイー・ゼノ(希望と絶望を司る機人・e08092)
立花・吹雪(雷刃・e13677)
ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)
フレック・ヴィクター(武器を鳴らす者・e24378)

■リプレイ

●コスモス祭
「コスモス祭ってお花だけかと思ってたのですが、何か色々やってるのですよ」
 ESP隠密気流を使って人混みに紛れながら、ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)がちょっとわくわくした様子で囁いた。
「せっかくのお祭りが台無しになっちゃうのは嫌だよねぇ」
 と囁き返したのはメリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)。
「ちょっとだけ騒がしちゃうし、被害も出ちゃうけど、またすぐに楽しめるようにしてあげたいんだよ」
 2人の傍には浦葉・響花(ウェアライダーのブレイズキャリバー・e03196)エフイー・ゼノ(希望と絶望を司る機人・e08092)フレック・ヴィクター(武器を鳴らす者・e24378)も観客のふりをして待機している。彼女らはマグロガールの暴虐を阻止するために、件の玩具屋台や隣接した店で客のふりをしつつ待ち伏せしているのだ。
 一方、一般人を避難誘導する係のリーズレット・ヴィッセンシャフト(メメント森・e02234)朔望・月(欠けた月・e03199)立花・吹雪(雷刃・e13677)は、事前に確認した避難ルートへと誘導できるよう、少し離れたところで待機している。
「マグロガールも、楽しそうな場所に引き寄せられちゃうんだろうか?」
 リーズレットがため息を吐いた。
「そうだったら気持ちは解らないでもないが……人様に被害が及ぶのは見過ごせないな」
 そうですね、と静かに頷いたのは月。
「せっかくの楽しいお祭です。当日まで準備を重ねてきた農協や商工会、神社の皆さんにも、そしてお祭りに来てくださるお客さんのためにも、頑張らなくては、ですね」
 ……と。
「あ、見てください」
 吹雪が2人の肩を叩いた。
 見れば件の屋台のすぐ近くに、季節はずれの浴衣にマグロの被り物姿の女の子が、忽然と現れているではないか。
「マグロの被り物ですか。かなり個性的な敵のようですがお祭りを楽しみにしている人達の為にも惨劇を起こさせるわけにはいきません。油断せずに参りましょう!」

 もちろん、マグロ引き付け係の仲間たちも、ターゲットの出現に気づいていた。
「マグロガール……前回に引き続き、また祭を荒らすつもりか。今度こそ撃破させてもらうぞ」
「アレが噂の鮪女ね。すぐに分かったわ。周りから完全に浮いてるわ。あの見た目ならマスコットキャラとして人気出ると思うけど、殺戮するなら仕留めないと」
 エフィーと響花の表情がぐっと引き締まる。

 マグロガールはケルベロスたちには気づいていない様子で、店頭のビニールセイバーを抜くと、
「ふうん、ビニールの割にはカッコイイのね」
 赤と青に輝く剣を二刀流で構え、そして。
「切れ味はどうかしら」

 ――ガキン!
 ビニール製とは思えぬ音を立て、店主に向けて振り下ろされたセイバーを、魔剣『空亡』で受け止めたのは、光の翼を広げたフレックであった。
 突然入った妨害にマグロが怯んだ隙に、メリルディが店主との間に割り込んで盾となる。
 そして響花がぐいとマグロの肩を掴んで。
「そこの鮪の恰好した人、ちょっといいかしら? 話を聞かせてもらうわ」

 引き付け担当の仲間たちが、首尾よく敵の初動を阻止したのを確認し、避難係たちも行動を始めた。まずは、吹雪がESP隣人力と凛とした風、月も隣人力と割り込みヴォイスを発動した。
「ケルベロスです! シャイターンが出没しました、速やかに避難してください!」 
 月の力強い声が、運悪く居合わせてしまった祭客たちの驚きのざわめきの中に響く。リーズレットと吹雪は人々を神社の奥へと誘導し、また驚愕して動けなくなってしまった人の手助けをする。
「人も祭会場も傷つけさせるわけにはいきません。上手く避難誘導しなくては」
 本殿の脇から駐車場へと抜けられる道があることは予め確認してある。
 マグロガールも気になるが、とりあえず一般人の避難に集中しよう。ターゲットは、仲間たちが挑発して、神社正面のコスモス畑へと誘き出してくれるはず――。

 そのマグロガールは、
「邪魔しないで!」
 振り向きざまに響花の手を乱暴に振り払った。しかし背後は既に武器を構えた者たちに固められていたことに、戸惑った様子を見せた。
 フレックとヒマラヤンは無遠慮に……というか挑発的に、じろじろとマグロガールの全身を見回し、
「マグロは美味しそうなのですが、食べられないのなら仕方ないのです。遠慮なく倒させてもらうのですよ」
「相変わらず頭の悪い行動しているわね。そのだっさいマグロの被り物じゃなくて鮭の被り物をした方がいいんじゃない? 鮭は頭が良くなるらしいわよ?」
「う、うっさいわね、マグロのどこが悪いのよっ、高級品よ? 絶滅危惧種よ!?」
 マグロはあからさまな挑発にヒステリックに言い返し、
「大体アンタたち何なのよ……あっ、わかったケルベロスね? んもー、何でアタシたちの邪魔ばっかりするのー!」
 二刀流のセイバーを振り回した。
 ガキン!
 それを防いだのは、今度はエフィーだ。チェンソー剣が火花を散らす。とはいえ、先ほどの人間向けの攻撃とは違い、グラビティを伴うこの攻撃は止めきれず、肩から血が飛沫く。
 だが、
「はっ、君の力はそんなものか。マグロをかぶっていても、所詮は雑魚だな」
 傷を堪えながらエフィーは挑発を続ける。
 いよいよマグロはキレたらしく、
「きーっ、腹立つー!」
 本気でケルベロスたちに突っ込んできた。
「よし、釣れた!」
 ケルベロスたちは、鬼さんこちら♪ と、ばかりに目星をつけておいた戦場へと、ターゲットを引きつけながら退いていく。目的地は神社正面の花畑だ。
 移動しつつ、響花が、
「スイマセン、鮪女通ります、危険ですので道を開けてくださーい!」
 一般人が近づいてこないように声を上げ、ヒマラヤンに手当を受けながら、エフィーはマグロの誘導が順調であることを、避難係の吹雪に通信機で素早く報告した。

●舞台はコスモス畑へ
 風に揺れるピンクや黄色、白や赤の可憐な花に囲まれて、戦いが始まった。
「無礼な邪魔者をさっさと片づけてから、ゆっくりグラビティ・チェインをいただいてやるわ!」
 いきりたつマグロガールに、ヒマラヤンが、
「普通にお祭りを楽しみたいだけなら止めないのですが、他の人に危害を加えようとするのを放っておくわけにはいかないのですよ!」
 力強く言い返し、祝福の矢を仲間に向けて射る。
「ありがとーっ!」
 矢を受けて力を増したメリルディが、
「ケルス、縛って!」
 蔓を伸ばして縛り上げたところに、エフィーが砲撃形態のハンマーから竜砲を撃ち込んだ。ヒマラヤンの愛猫ヴィー・エフトもしっぽのリングをセイバーめがけて一生懸命飛ばしている。
「易々とあんたらに狩られる程やわなつもりはないわよ。二刀流じゃ負けないわ!」
 フレックは、雷気を宿した二刀流の斬霊刀を巧みに使って刺突を見舞いながら挑発を続ける。
「それにしても、マグロガールって一体何人いるのよ? あんたらのご主人は本当にマグロが好きなのね!」
「だってマグロ美味しいでしょ!」
 思わず言い返したマグロに、
「隙有り」
 響花は氷気を宿した拳を深々と浴衣姿の腹にめりこませた。
「ぐぼっ」
 腹を殴られたマグロは吐きそうな顔で一歩退いたが、
「あ……アタシの本当の力を見せてやるわッ!」
 セイバーを顔の前に水平に掲げた。するとそこから現れたのは、巨大な冷凍魚……というか、一応、氷をまとった魚座っぽいもの。
「いけーっ!」
 マグロがセイバーを鞭のように打ち付けると、魚は一直線に後衛へ……!
「……あっ!」
 ディフェンダー陣がその動線に入ろうとしたが、間に合わず、
「うにゃっ!」
 魚はヒマラヤンをびたんと打ち倒した。しかも氷が彼女を覆っていく。
 コスプレ的なビジュアルであっても、そこはやっぱりデウスエクス。攻撃力は侮れない。5人で相手をし続けるのはなかなか難儀……と、そうケルベロスたちが痛感した瞬間。
「皆大好きにくきゅうぷにぷに、癒しの時間がやってきたぞー!」
 突然、大きな肉球が現れて、凍りかけのヒマラヤンをぷにぷにと癒しはじめ、ボクスドラゴンがぱたぱたと飛んできてカバーに入った。
 そして。
「お待たせ……しました!」
 月の光のような刃が背後からマグロガールを薙ぎ、同時に魔力の矢が突き刺さった。
「外見だけ見るとかわいい感じがしますけど、やっぱりそうはいかないのですね。何にせよお祭りでの過ごし方を間違えているあなたには、しっかりお仕置きです!」
 マジックミサイルは月、月光斬は吹雪、そして肉球はリーズレットが放ったものだった。ドラゴンはリーズレットの響である……避難係の急襲だ!
 彼女らが戦闘に加わったということはつまり、一般人の避難が済んだということだ。見回せば、周囲の人気も引いている。
 とはいえ、今回は祭ということもあり人払い系のESPを使用していないので、いつ何時、命知らずの野次馬やマスコミがやってこないとも限らない。それに、コスモスや祭会場の被害を最小限にとどめるためにも……彼女達自身が後ほど存分に祭を楽しむためにも……できるだけ手早くマグロを倒してしまうにこしたことはない。
 
●冷凍マグロ
 メンバーが揃い、意気上がるケルベロスたちにとっては、マグロガールは、もはやまな板の上の鯉ならぬ、マグロであった。数分の後には花柄の浴衣も被り物もボロボロで、惨めな様子になっていた。
 そんなマグロに、ケルベロスたちは絶え間なく攻撃を浴びせかけていく。
 古代語を詠唱するメリルディから石化光線が発せられ、エフィーは炎弾を撃ち込んで生命力を吸い取った。吹雪は氷を宿らせた鋭いキックをぶちこみ、フレックは鮮やかな刀さばきで毒刃をひらめかせ、タールの翼を刈り落とした。
「はーい、痛くしないので、逃げちゃ駄目なのですよ~?」
 巨大な注射器を振り回すヒマラヤンに回復を任せ、リーズレットも、できるだけコスモスを踏まないルートを選び、鉄の装甲をまとった拳を握って踏み込んだ……と。
 ビシッ!
「く……ここは一旦……っ」
 マグロガールは拳をセイバーでかわすと、ケルベロスの包囲の輪をすり抜けて、逃げだそうとする。
 しかし。
「逃がさないわよ!」
 黒い影がその足下に滑り込み、
「むぎゅ」
 足でひっかけてすっころばした。逃亡を警戒していた響花がすかさず止めたのだ。続いて、
「ああ、またコスモスが……」
 転んだマグロに潰された花を嘆きながら、自分は株の間に慎重に足をおいて、月が氷結の螺旋を放つ。いよいよコスモスに埋もれもがく敵に、
「今だ、リーズレット!」
「おうっ!」
 友人同士息を合わせ、エフィーは急所にハンマーを叩きつけてかぶりものをひしゃげさせ、リーズレットは今度こそとばかりに鉄の拳をめりこませた。
 勝負どころとみて、仲間たちも迷いなく必殺技を繰り出していく。
「この華は貴方へのせめてもの手向けです。潔く散りなさい……雷光一閃……貴方に見切れますか?」
 まずは吹雪の斬魔刀の一閃が目映い雷の花を咲かせ、フレックも魔剣を振りかぶり、
「今度こそ我が全霊を捧げようか! 受け止められるなら受け止めてみなさい! ソラナキ……唯一あたしを認めあたしが認めた魔剣よ……今こそその力を解放し……我が敵に示せ……時さえ刻むその刃を……!」
 高速斬撃で空間ごと敵を切り裂いた。月は、
「あなたたちも祭を楽しんでるのかもしれないですけど、やりすぎですよ!」
 ビハインドの櫻に援護させつつ、自らは軽やかなジャンプで敵に接近すると螺旋のパワーを流し込んで体内を破壊する。そこに、
「うー……じゃない。くー、りーーー!」
 メリルディが召還したウ……ではなく毒入りイガグリがボトボトと落ちれば、もうマグロガールは呻くばかりで動くこともできない。
「躊躇わず……討つ」
 微塵も躊躇うことなく響花が叩き込んだ氷の拳は、みるみる敵を白く氷結させていき……。

 ぴし……ピシパシ……ピシピシッ……カシャアァァン……!

 マグロは氷漬けとなり、砕け散ったのであった。

●そしてコスモス祭
「祭だーー!」
 リーズレットは拳を振り上げ、嬉しそうに叫んだ。
「私、わたあめと焼きまんじゅうたべたーいっ!!」
 無事に任務を果たした後、ケルベロスたちは戦闘で乱れたコスモス畑と、互いのケガをヒールしあった。これで心おきなくコスモス祭を楽しめるというものだ。
「そうだな、まずは腹ごしらえを……リンゴ飴も食べたいな」
 リーズレットとエフィーは手をつないで屋台を見て回っている……と、リーズレットがある屋台の前で、突然足を止めた。
「この金魚さん、ゼノさんの弟に似てる!」
「む? ……確かに。この金魚だけやたらと餌を食べているな」
「これは捕らねばなるまい!」
 エフィーは苦笑を漏らし、リーズレットは闘志満々で腕まくりをした。

 月は櫻とコスモス畑を堪能した後、屋台を覗いていた……のだが。
「て、……櫻、物欲しそうに見ないでくださいよ……」
 櫻が食べ物の屋台を見つけるために足を止めるので、一向に先に進めない。
「仕方ないですね……ひとつ、お願いします」
 視線の先のリンゴ飴をひとつ買い、櫻に手渡した。
 受け取った櫻は嬉しそうに笑み、月もつられて笑う。

「あ、メリルディさん」
「あ、吹雪」
 2人はそれぞれ食べ物を手に、コスモス畑で出会った。
「焼きまんじゅう、おいしい?」
「ええ、甘味噌ダレがなかなか……メリルディさんはたこ焼きですかー」
「こ、これは弟へのおみやげで……ねえ、花摘みってできないのかなぁ? コスモスの種も欲しいの」
「花もおみやげですか?」
「店に飾りたいの。裏庭にハーブ畑もあるから、種はそこに蒔けるし」
 メリルディの家はケーキ屋である。
 吹雪はニッコリして。
「それはステキですね。祭本部は案内所も兼ねてるようですから、聞いてみましょうよ」
「うんっ!」

「わぁ。2人ともずいぶん買い込んだのね!」
 屋台が並ぶ神社の参道で、ヒマラヤンと響花に出会ったフレックは、思わず驚きの声を上げた。2人は、食べ物や景品を両手いっぱいに抱えているのだ。
「……こ、これは全部私のというわけではないのですよ? お土産とか色々入ってるのです!」
 ヒマラヤンは慌てて言い訳した。
「ザイフリートちゃんは余りお祭りとか行った事無さそーなので、お土産とか買って行こうかと思いましてっ」
 うんうん、と響花は真顔でご当地焼きそばを飲み込みながら頷いて。
「ザイフリートさんが祭りを楽しんで来いと言ってたし」
 うん、確かに言ってた。
「遊んだ代金を立て替えると言ったしー」
 え、そうは言ってなかったと思うんだけど……?

作者:小鳥遊ちどり 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 6
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