●黒翼の女
伊豆半島、最南端。石廊崎付近。
岬の社や灯台から一歩道を外れれば、潮風吹きすさぶ岩場が人を阻む、険峻の地。
薄紫に溶ける宵の色の中、海沿いの岩場を灯りが列を成して進んでいく。
「岩窟……か」
打ち付ける波飛沫を背に受けながら、八剱・爽(ヱレクトロニカオルゴォル・e01165)と調査隊は、ぽっかり開いた岩窟へと足を踏み入れた。
伊豆半島の攻性植物事件の黒幕を探し、遂に南の果てまでたどり着いたのだった。
少し広い空間に出て、朧な灯りの中で波の飛沫を払う一行。
マルティナ・ブラチフォード(凛乎たる金剛石・e00462)が、ぽつりと尋ねる。
「黒翼の女とは誰なのか……尋ねてもいいか」
爽は、ため息を落とす。
今となっては、皆が知る必要がある。
「俺の従姉に八剱・真藍(やつるぎ・さあい)って人がいたんだ。鹵獲術士の名家に生まれ、美人で才能に溢れ、未来を約束された人だった」
一人の女の名から始まる物語。それは短く、淡々と。
「だが……ある時、封印されていた攻性植物に心を奪われ行方不明になった。頭に咲くダリアみたいな花で『アルフェッカ』と呼ばれてた」
語られるのは、それだけ。裏に滲むのは、複雑な想い。
マルティナは、目を閉じた。
「……ありがとう」
しばらく、波音だけが響いた。
ふと、東名阪・綿菓子(怨憎会苦・e00417)の足が、何かに触れる。
「……! ねえ、これ!」
それは、ハンドバッグや財布。レイ・ジョーカー(魔弾魔狼・e05510)が、中から引き出したのは……。
「免許証、学生証、社員証に名刺。被害者のだぜ……!」
全員が息を呑み、視線を交わし合う。
その時。
爆炎が閃いた。
●宵の明星
「……っ! みんな無事か!」
叫んだのは、ノア・リグレット(機械仕掛けの恋のうた・e32160)。爆炎は岩を砕き、岩窟全体に轟音が響く。
態勢を整え身構えた面々に届いたのは、くすくすと含み笑う響き。
「お前は……!」
落ちる砂煙の向こう。レイの射線からするりとドレスを翻し、指先に火を燈して影を揺らめかせるのは、黒い四翼とダリアの巨花。
「おいでなさい……身を隠す前に少しだけ相手をしてあげる。崩れる前に追い付いて来られたらね」
女の影は岩窟の奥へと姿を消した。
「アルフェッカ!」
再びの地響きに足を取られ、爽が叫ぶ。
「奴め……! ここを崩して行方を眩ませる気か!」
マルティナが、態勢を立て直して。
「でも、それなら見付からない内に逃げればよかったのに! どうしてわざわざ出てきたの……!」
向き直った綿菓子を、ノアが重い目で見つめる。
「奴は……私たちを倒せると踏んだんだ。奥に引き入れ退路を断って、『仲間』に引きずり込む算段だろう」
だが欲を出したということは付け入る隙でもある。敵は、こちらを殺してしまわぬよう、侮った闘いをしてくるだろう。
燃える炎。落ちる岩。飛沫を上げる波。
思案の時間は、ない。
「舐めたことを、後悔させてやる……」
爽の呟きは、闇へ溶ける。
それは。
幸福という不幸の伝道者。
解放という呪縛の主。
破滅へと導く、宵の明星。
名を、『アルフェッカ』。
異形の天竺牡丹が、宵闇の遥か奥から、呼んでいる……。
参加者 | |
---|---|
東名阪・綿菓子(怨憎会苦・e00417) |
マルティナ・ブラチフォード(凛乎たる金剛石・e00462) |
灰木・殯(釁りの花・e00496) |
藤守・つかさ(闇視者・e00546) |
八剱・爽(ヱレクトロニカオルゴォル・e01165) |
レイ・ジョーカー(魔弾魔狼・e05510) |
クルル・セルクル(兎のお医者さん・e20351) |
ノア・リグレット(機械仕掛けの恋のうた・e32160) |
●深淵の花園
番犬たちは前へ向かう。
「黒幕が直々にお出迎えってわけ? 上等じゃないの! わたがし達を侮ったツケは払ってもらうわよ!」
東名阪・綿菓子(怨憎会苦・e00417)が、背後の波音へ別れを告げる。
「ついに追い詰めたのだ……! 潜伏などさせるものか。今ここで決着をつける! 走るぞ!」
マルティナ・ブラチフォード(凛乎たる金剛石・e00462)の叫びを待たず、番犬たちは崩れていく岩窟の中へ飛び込んだ。
そこは、どこまでも深い漆黒の闇。
(「不幸を撒き散らすしか出来ねえ破滅の華、アルフェッカ……これ以上、お前の好きにはさせねえ……」)
轟音の中、八剱・爽(ヱレクトロニカオルゴォル・e01165)はひた走る。藤守・つかさ(闇視者・e00546)がその後ろから、足元を照らして。
(「八剱。いつか俺も……同じような状況になるかもしれない。その時どうするかなんて……その時にしか判らないけど。今は……」)
曲がりくねり、落ちてくる水滴と岩の破片に目の前が曇る。
灰木・殯(釁りの花・e00496)は、レイ・ジョーカー(魔弾魔狼・e05510)と相棒のファントムと共に、仲間たちを先導する。
(「アルフェッカは寄生により多くの力、知恵、意志を得たのでしょう……ですが、それがゆえの油断と慢心が、必ずあるはず」)
(「そこを、撃つ。奴はここから逃がさねぇ……魔弾魔狼の、名に懸けて」)
どれだけ走ったのか。ミミックのラウドを引き連れていたノア・リグレット(機械仕掛けの恋のうた・e32160)が、視界の向こうにそれを捉えた。
「灯り……! 突っ込むぞ!」
崩落するトンネルから滑り出る。追いかけてきた土煙が八人を覆い、番犬たちは咽こみながらそれを払った。
「ここは……花畑?」
クルル・セルクル(兎のお医者さん・e20351)が、思わず呟く。
篝火の焚かれた、大きな広間。
その地面を埋め尽くしているのは、艶やかなダリアの花々だった。
「爽……お友達を連れてきてくれて、ありがとう」
その中央に立つのは、頭上に薄紫の巨花を咲かせたオラトリオ。
八剱・真藍。
その名を呼ぼうとした爽が、一瞬、目を閉じて。
「黙れよ……アルフェッカ。俺は、此処で、この場所で、全てを終わらせる!」
その言葉が号令であるかのように、全員が武装を解き放つ。
呪われた星は、妖しく含み笑った。
「そうね。下らないいざこざは終わりにしましょう。あなた達を殺すつもりはないわ。私達は融和の為に来た。その過程で、真藍と同じ苦しみを解き放ってあげただけ」
クルルが一番に守護の電磁波を放ちつつ、謎めいた言葉に気付いた。
「融和……? つまり、わたくしたちも仲間に引き込む、と? 随分と侮られたものですわね……なんにせよ、思い通りにはいきませんわ」
「抗うのは、わかっているわ。まずは力の差を、教えましょう」
女の指先から燃え盛った爆炎が、巨竜の形を取って番犬たちを睨み据えた。
「ドラゴニックミラージュか! ラウド、庇え!」
火炎の竜がラウドを吹き飛ばした。その時にはノアは己の攻性植物を伸ばし、相棒と共にレイが蹴り込んでいる。
「べらべらと余計なことを……! 罪もねぇ人達を不幸に巻き込むのはもうお終いだ……ここで絶対に止めてやるよ!」
深淵の花園で、長く紡がれた因縁の糸が、遂に交錯する……。
●火炎
闘いが始まって後、数分。
「使い魔は、必要ない」
黒翼が、光を注いで前衛の罪を焼き払う。
花園を蹴散らし、打ち据えられたファントムの姿がかき消えた。
「相棒! クソッ……!」
ラウドの姿も、もうない。敵は前衛に出てきたサーヴァントから潰しにかかったのだった。
「シャイニングレイとドラゴニックミラージュの乱舞だと……舐めてくれるな……クルル! 頼む!」
クルルと共に、マルティナが前衛を星辰の加護で癒す。幾度か降り注いだ閃光に巻き込まれただけだが、侮れぬ威力だった。
殯が放った轟竜砲を、頭上の花が海月のように伸ばした蔓が、軽くいなして。
「理力攻撃を連続してなお、かわしきれないとは。貴女の後ろに更に何者かが居るならとても敵いそうにない。我らを仲間にしたなら主の下に連れ往くのですか?」
殯が賭けたかまは、微笑みで返された。
「私達と共に実った稲穂を刈り取って、世界樹の芽吹く地を耕しましょう。そして、仲間を増やすのよ。互いの融和のために」
再び紡がれる言葉。殯の眉も歪む。奴が望む、融和とは?
「何のこたぁねえな。人を殺して力を奪い、拠点を設けて、好き勝手に人を乗っ取る。そう言ってるだけだろうが!」
会話の隙を取って背後を取った爽が、スマートフォンを握りしめて殴り付ける。攻撃に全ての力を回した一撃は、防ごうとした蔓を何本か引きちぎる。
余裕をもって距離を取ろうとするアルフェッカの背後には、しかしつかさが回り込んでいた。
「欲はかかない方がいいぜ。ここにいる誰一人として、お前の思い通りになるつもりはないからな」
黒づくめの姿から、白光のように飛ぶ一閃。アルフェッカの防御の蔓を地面に縫い止め、つかさが叫ぶ。
「今だ!」
頭上に飛び込んでいる小さな影は、綿菓子。その手に、蒼い短刀を呼び出して。一刀が、つかさが押さえきれていない蔓をかき切った。
「借りはきっちり、返させてもらうわよ! これは、寿子さんの分!」
それだけでは、綿菓子は止まらない。がむしゃらの連撃が、動きを止められて鈍る蔓を裂き進む。
「次は志麻子さんの分! ……これは珠子さんの! 玲子さんの!」
「ちっ……!」
切り進んでくる綿菓子を、女の細腕が弾いた。グラビティではない攻撃にダメージはない。それは、防御を焦った証拠。
「畳み掛けるぞ! コンビネーションで態勢を崩すんだ! クルル以外は攻撃に回れ!」
言うなり、ノアが爆破のスイッチを押す。破砕される足場から逃れ、女は宙を舞った。その顔が、初めて歪む。
「狗どもが……」
罪を焼く輝きが連続で放たれる。狙いは後衛。この期に及んで女は、本気での攻撃を拒んだようだ。
「私がいる限り、攻撃は通さない……!」
それを庇って閃光の直撃を浴びたのは、マルティナ。無論、その後ろには、癒し手の援護が既にある。
「守られてばかりではありませんことよ! 傷は癒しますわ! 今まで、彼女を追ってきた皆様の意志、果たしてくださいませ!」
クルルの増強の電気刺激を受けて、マルティナが返すのはサイコフォース。爆圧が空中から襲い掛かり、女は全ての蔓を動員して受けの姿勢を取った。
「私は守りだ。【切り札】は、別にある……今だ、撃て! ジョーカー!」
「……!」
女が振り返った地面。滑り込むように銃を構えるのは、レイ。
「あんたも攻性植物なんかに心奪われなきゃ、こうはならなかったろうにな……これがせめてもの供養だ……貫け! ブリューナクッ!」
輝く五つの光弾が弾け飛び、女の躰を天井へと叩きつける。轟音と共に岩壁が砕け、花々は落岩に潰されて、無残に散っていく。
「やった!」
今までのダリアであれば、これで決着がついたろう。それほど見事に決まった、鮮やかな攻撃だった。
「……なぁんて。勝ったと思ってからが本番、って……お約束よね」
そう呟いたのは、綿菓子。
「侮っていたわ。僅かとはいえ、この躰に傷を許すとは」
切り裂かれたドレスを払い、光り輝く巨花を頭上に浮かべて、女の躰がゆっくりと降り立った。余裕の笑みが、消えている。
「本気で勝つつもりなのね……良いわ。勿体ないけれど、全て踏み均してから、修復できそうな躰を拾い上げることにする」
それは、鹵獲術士が禍々しい精霊を召喚しているようにも、巨大な海月が触手で傀儡を操っているようにも見えた。
「気をつけろよ、みんな。本気で来るぜ」
額の血を拭って、爽は妖花の前に立った。感じる圧は、先ほどとは段違いだ。
(「今日……此処で。俺の運命に決着を……!」)
花が輝き、光電を帯びた閃光が、闇を裂いた。
死を導く、星のように。
●死闘
その時、流れは変わった。
黒い翼から広がる輝きは、天罰の如く後衛を薙ぐ。
「何よいきなり全力出して! 大人げないわよ! おしとやかにしなさいよ!」
喚き散らすのは、綿菓子。輝きに焼かれながらも、チェーンソーで突貫する。
「あれだけやって効いてないわけがねえ! 消耗は激しいはずだ! 叩き込み続けろ!」
レイのリボルバーが弾丸を乱舞させている。
(「そうだ。ダリア達は、人体の部分を守り、植物部分を消費する闘いをしていた。本気を出してきたのは、焦りでもあるはずだ。だが……」)
つかさが放つ、冷気の光線。嘲笑うかのように降り注ぐのは、炎の竜。広がる爆風に呑まれながらも身を捻り、辛うじて青年は受け身を取る。
(「もう少し……奴の油断がもう少し続いていれば……!」)
『受け入れなさい、番犬たち。あの娘たちのように。この躰のように。さあ、爽? また私が、抱いてあげるわ……』
女が本気で紡ぐ呪いは、催眠の域を飛び越えていた。脳内に割れ響き、内側から頭を破砕しかねない。
「ふざけるんじゃねえ! アンタは……いや、真藍はお前に誑かされたわけじゃなく、力を求めて自ら溺れたんだろう。真藍はハナっからそういう女で、俺はそれを見抜けずに好きになっただけの話だ。だが、お前は真藍を殺して抜け殻を操作してるだけの、ただの人形遣いだろうが!」
爽の放つ怒りの気弾を弾き、笑い声がこだまする。
「どこが殺し? 同じ人格と肉体、記憶情報の結合……八剱・真藍の全ては、私の内に在るのよ?」
「その人の意志も、命も、魂すらも連続しないのにですか?」
殯が、静かな怒りを火炎の蹴りに変えて放つ。しかし、その身もすでに限界。
「生は現象よ。観測結果が同じならば、連続しているも同じでしょう」
番犬たちは等しく傷を受け、後はただ、手折られるのを待つばかり。
「さあ、私と真藍の、最大の力で薙いであげましょう」
女は、笑った。けたたましく。
花と翼の双方に、膨大な力が集まっていく。
光の連撃が、放たれようとしていた……。
●決着
激しく仲間と打ち合いながらも、それを圧倒する妖花。
今、勝敗は決しようとしている。
放たれつつあるのは、光花形態とシャイニングレイの、ダブル。
「わたくし、決断をしなければならないようですわ」
それを見詰めている女が、三人。
「私が、先に出よう。二撃目までは、きっともたない。マルティナは、後ろに続いてくれ」
「ごめんなさい、ノアさん。たまに嫌になります。癒し手として在りながら、仲間を死地に送り出すなんてね……」
「辛い仕事を任せることになるな……クルル、すまない。ノア、前は頼むぞ」
三人は頷き合い、そして向かった。
破滅の星の輝きへ。
「八剱、よせ! 撤退だ!」
「爽さん! 逃げて! 逃げなさい!」
仲間の叫びの中、爽は罪を焼く光へ向けて走る。
(「例え……この光の中で消し炭になってもよ。この一撃だけは譲れない。それなら、この命を燃やし尽くしてでも」)
その瞬間だった。熱を阻む優しい影がその前へ飛び出たのは。
「……!」
「八剱。君の覚悟を、感じたよ。私が道を開く。奴に、叩き込んでやれ」
ノアの言葉が終わると同時に、前衛は光に呑まれた。
女が、笑う。前衛は、今ので壊滅したはずだ。一人を庇って切り抜けても、待ち構えるのは岩を裂く閃光の奔流。焼け焦げて終わるだけだ。
「いいや。アルフェッカ……貴様は我々を。人の心を甘く見過ぎた。それが敗因だ」
「……え?」
跳んできたのは、マルティナ。その後ろに、苦悩と決意を浮かべたクルル。癒しの電撃が迸り、その肉体を強引に奮い立たせていた。
慌てたように、絶死の光花が爆裂する。
マルティナの姿が弾け飛び、女の口元に引き攣った笑みが浮かんで……。
「ありがと、二人とも……本当にさ」
驚愕が、それを裂いた。
「よう、真藍。久しぶり。色々、積もる話もあるよな。恨み言ならこっちもあるし地獄で話し合おうぜ」
尤も俺に対する興味なんざないんだろうけどな。
目の前でそう語る従兄弟の笑みが、恨みに引き攣る。
「地獄で待ってろ。クソッタレ」
全ての負の想いを込めた一撃は、初恋の人への別れ。
輝ける星を落とす、漆黒の一撃だった。
●足掻き
目を焼くような輝きが広間を満たし、唐突に消える。
妖花は、爽ともつれ合うように墜落した。
「処置が必要ですわ、急いでヒールを……」
クルルを先頭に、全員が駆け寄る。
その瞬間。
「……!」
跳ね飛んだ蔓が、番犬たちを牽制した。
『今のは……際どかった。ああ、可哀想に私の真藍。こんなになって』
頭の中に反響する、掠れた老婆のような声。
「まさか……! まだ!」
女の躰は左胸と頭だけで転がっていて、その隣には脈打つ球根のようなものが転がっていた。
「この声……てめぇが、アルフェッカか!」
『そうだ。お前たちが畳みかけて来ていれば、私は核を切り離せず死んでいたろう。決着を望む彼の心を重んじすぎたな……』
「なら、俺たちが後始末してやるぜ!」
レイが銃を乱射する中、蔓が倒れていた前衛三人を絡め取る。爽もまた意識はない。先ほどの閃光の中、花が辛うじて反撃をしたのだろう。
『邪魔をするな……すでに胞子偵察によって、この世界は認知されている。だから我々がやって来たのだ。現地世界と世界樹の融和のために……』
「それがあんたの言う融和の正体? つまり……ただの侵略じゃない!」
綿菓子に切り裂かれながらも、花は前衛たちを引き寄せて、動かぬ真藍の肢体を持ち上げる。
『【侵略寄生】を開始する。さあ、お前たち……番犬どもがうろつく原野を焼き払い、世界樹の花吹雪く永劫の大地へ、共に逝こうなァ……!』
ずるずるとのたうちながら、花は真藍の唇を開かせる。
その時。
「いいや。お前だけで逝ってくれ。地獄へ、だけどな」
一閃が妖花を貫いた。
『……!』
序盤からつかさが紡ぎ続けた痺れの呪縛。それは遂にこの時、発動した。
「ヒトの意志を踏み躙った報いが貴女を待っています。真に心なき花よ。堕ちる時です」
『やめろ! 差し伸べられた手を払うな!』
殯は、構わず指を鳴らした。衝撃波が花と核を押し潰して行き、岩窟は遂に崩壊を始めた。
「出ましょう……火が燃えていたから、出口はあるはずですわ」
篝火は落ち、番犬たちは倒れた仲間を抱えて、広間の奥へ走る。
『……やがて来るぞ! 悠久の花開く大地より、千紫万紅の大雪崩が! この世界を呑み込みにな!』
響くのは、死にゆく花の断末魔。
それもやがて、閉じていく闇の中へ消えていった。
●
やがて番犬たちは海辺の森へと這い出て、一連の事件は幕を閉じる。
だが紡がれた因縁の終わりの時、彼らは確かに感じ取った。
世界の裏に根を這った、大いなる謎。
デウスエクス・ユグドラシルの、蠢きを……。
作者:白石小梅 |
重傷:マルティナ・ブラチフォード(凛乎たる金剛石・e00462) 八剱・爽(エレクトロサイダー・e01165) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年11月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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