紅葉のお饅頭

作者:天木一

 空気に寒さが混じり、青々としていた木々は赤や黄色に色付き始めている。
「んーっと、ここに噂のモミジの木があるはず……」
 中学生くらいの少女が上を見上げて、木々の紅葉を観察していく。
「うーん、見つからないなー。モミジの形をしたお饅頭がなってるって、学校で噂があったのにー」
 そんな噂話を頼りに、少女は好奇心のまま町外れの林へとやって来ていた。
「あれかなー……違うかー。じゃああっちは……んー形は似てるんだけどーおしいなー。もみじ饅頭の葉っぱがあったら面白いのに」
 楽しそうに少女が背伸びしてモミジのお饅頭を探す。そんな時、その胸を貫き鍵が突き出る。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 背後に音もなく現われたのは第五の魔女・アウゲイアスだった。その手にした鍵を引き抜くと、少女の胸には傷一つ残ってはいない。だが少女は意識を失い、土の上に倒れた。
 そして少女の隣に立派なモミジの木が現われる。見上げれば紅葉した葉が生えているはずの枝に、無数のモミジの形をしたお饅頭が生っていた。
 
「もみじ饅頭が生る木が人を襲う事件が起きてしまうようなのです!」
 新たな事件が起きたと、ロゼ・アウランジェ(時紡ぎの薔薇歌姫・e00275)が慌てたように声を弾ませてケルベロス達に声をかける。
「『興味』を奪うドリームイーターが、奪った『興味』を元に怪物型のドリームイーターを生み出し、事件を起こそうとしているのです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が落ち着いた様子で事件の説明を始めた。
「生み出された怪物型ドリームイーターが人々を襲う前に、撃破して被害がでないようにしてほしいのです」
 今ならば敵が一般人と遭遇する前に接触できる。そして敵を倒せば眠りに就いた少女も目覚めさせる事が可能だ。
「事件が起きる場所は広島県にある小さな町外れの雑木林です。周囲には民家も無く、戦闘に人を巻き込む心配はないでしょう」
 その場に居るのは敵と眠ったままの少女だけだ。全力で戦う事が出来るだろう。
「敵は皆さん知っているもみじの形をしたお饅頭が生る大きなモミジの木です。甘い香りや、もみじ饅頭を食べさせたりして攻撃してくるようです」
 枝が幾重にも分かれ、数え切れないほどのもみじ饅頭が生っている。
「好奇心が旺盛だと噂話を確かめてみたくなってしまうのでしょうが、そんなものが現実に現われれば大変な事になってしまいます。このお饅頭を倒し、少女を助けてあげてください」
 セリカが一礼すると、ケルベロス達は任せろと頷く。
「もみじ饅頭……お菓子の生る木なんて素敵ですね。ですが敵である以上は倒さなくてはなりません。悪事を働く前に退治して町の平和を守りましょう!」
 ロゼが元気に胸の前で拳を握って気合を入れ、仲間達と共に生っているもみじ饅頭が食べられるのかどうかと話をしながらヘリオンへと向かった。


参加者
ロゼ・アウランジェ(時紡ぎの薔薇歌姫・e00275)
メルキューレ・ライルファーレン(冬の紡ぎ手・e00377)
ヴォル・シュヴァルツ(花図書のままん・e00428)
草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028)
月海・汐音(紅心サクシード・e01276)
天矢・恵(武装花屋・e01330)
天矢・和(幸福蒐集家・e01780)

■リプレイ

●秋の景色
 冷たい風に揺れる無数の紅葉。まだ緑も残っているが、秋らしい赤と黄色のグラデーションが一面の雑木林に広がり続けていた。
「ふふふー、紅葉饅頭狩りです! 紅葉饅頭、大好きです!」
 紅葉饅頭の生る木という夢のような存在との出会いを期待し、テンション高くロゼ・アウランジェ(時紡ぎの薔薇歌姫・e00275)が紅葉を見上げて駆け回る。
「枝から直接もいだら食べられそうな気はします」
 そんな様子をメルキューレ・ライルファーレン(冬の紡ぎ手・e00377)が微笑ましく眺めながら呟く。
「そういえば、饅頭はこしあんでしょうか、粒あんでしょうか」
 ふと浮かんだ他愛の無い疑問に思いを馳せた。その表情は戦いを前にしているとは思えないのんびりしたものだった。
「どっちにしてもドリームイーターに生ってるものなンざ食う気がしねェな」
 ヴォル・シュヴァルツ(花図書のままん・e00428)が上ばかり見て転ぶなよと仲間に注意する。その横ではウイングキャットのハルがのんびり顔を掻いていた。
「紅葉饅頭……お饅頭かぁ……ううん、洋菓子は美味しいけど和菓子も美味しいのよね……羊羹とかどら焼きとかお団子とか……」
 どんどんと紅葉饅頭から連想させ、月海・汐音(紅心サクシード・e01276)は美味しい和菓子の想像を膨らませる。
「って、いけない、そうじゃなかった、ちゃんと依頼を成功させなきゃいけないわね……」
 今はお菓子よりも戦いに集中しなくてはと、首を振って敵を探そうと周囲を見渡す。
「菓子のなる木に焦がれる気持ちは解る気がするが、食われちまっては意味がねぇ」
 紅葉饅頭にテンションを上げる仲間へ、気を引き締めるように天矢・恵(武装花屋・e01330)が呼びかけ、腕を上げて指差した。そこには木々に紛れるように一本の蠢く大木が見える。周囲を覆う一面の紅葉の中、紅葉饅頭をぶら提げたモミジの木が立っていた。
「ふおおおお……! すごい、本当にもみじ饅頭生ってる……!」
 それを見た天矢・和(幸福蒐集家・e01780)は既にクライマックスな位に興奮していた。
「もぎたてはほっかほかかなぁ? でもまぁ……攻撃喰らうのは勘弁だけどね?」
 にやりと笑い、腰に下げたリボルバー銃を撫でる。
「ああ、食らうのは饅頭だけだ」
 言葉を返しながら恵も人型の紙を取り出す。
「ったく、紅葉饅頭の木なんて、どこからそんな眉唾な噂が出てきたんだか。ま、実際に出てきてるワケだけど……倒しちまうのも、ちょっと勿体ねえよな?」
 やれやれと草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028)は紅葉饅頭に足を向ける。近づくとその隣に少女が倒れているのを見つけた。
「木になる紅葉饅頭……実際にこの目で見れるなんて、ドリームイーターなのが残念……。美味しい紅葉饅頭が人を害する前に……伐採しないとですね」
 楽しみにしながらも倒さなくてはならない事に、ロゼは残念そうに溜息をついてその後に続いた。
「もみじ饅頭かあ……変な効果の付いていないやつなら、食べてみたかったんだけれどね」
 残念そうにロストーク・ヴィスナー(庇翼・e02023)は白手袋をはめ、戦闘準備は整った。

●饅頭の生る木
「そンじゃあ始めるとするか、行くぞハル」
 ヴォルが手にしたスイッチを押す。すると周辺から爆発が起きてカラフルな煙が仲間を包み込んだ。ハルもまた翼を動かして風を送り、煙の効果を広げる。
「本来、葉が茂る箇所に饅頭ですか……重くないんでしょうかね?」
 ゆっさゆっさと無数の饅頭を揺らす木を見上げながら、メルキューレは黒い液体を足元に広げ、下から木を呑み込むように絡みつけ動きを鈍らせる。
「お相手はこちらですよ」
 挑発するメルキューレに木の注意が向き、根を動かし方向を変えて迫る。
「もみじ饅頭がたくさん食べ放題です!」
 饅頭の生る木を目の前にしたロゼは目をキラキラ輝かせて抱きつかんばかりの勢いで駆け出す。
「ロゼ、ストーップ。ステイ。どうどう」
 あぽろは猛牛のように饅頭を手に入れようとするロゼを止め、注意を引きつけるように御業を呼び出して組み付かせる。
「……慎重に行くわよ。あの子の事、お願いするわね」
 汐音はロゼに声を掛けると駆け出し、木の脇を抜けながらナイフを一閃させ樹皮を削り取る。ぐるりとそれを追って木が方向を変えた。
「巻きこまねぇようにしないとな」
 恵は仲間の前に紙兵をばら撒き、仲間と倒れた少女をガードするように設置した。
「もみじ饅頭のなる木、か。人の発想は無限の可能性があって面白い」
 和が銃を抜き撃ち、饅頭の生った小枝を撃ち落としていく。
「守らなくっちゃね、その子」
 こっちだと木を少女から引き離そうとすると、枝がしなり投石機のように紅葉饅頭が撃ち出された。ビハインドの愛し君が守るように前に立ち、べちゃっと饅頭が顔にぶつかった。そこへ赤い東洋竜の姿をしたボクスドラゴンのプラーミァが火属性を与え治療する。
「прикорм――さあ、僕はここだよ」
 ロストークが音声認識でプログラムを起動させ、指示に従いヒールドローンが群れを成して敵を襲い視界を覆う。するとずずっと根を這わせ木が向かってくる。
「んっ、しょっと」
 皆が戦っている間に、ロゼは倒れている少女を抱き上げて戦場から運び出し始めた。
「落としても落としても新しく生えてるようですね」
 落ちてもにょきにょき新しく生える饅頭に、メルキューレは広げた白い翼から光を放ち、焼かれるように木の傷口が煙を上げて痛みを与える。
「気をつけろよ、見た目は饅頭でも、中身が何か分かったもンじャねェ」
 素早く接近したヴォルは腕に雷を宿し拳を叩き込む。樹皮が砕け白い肌が露になる、そこに雷が奔り全身を痙攣させた。
「木なら炎に弱いかしら? 試してみてもいいわね」
 汐音の背後に御業が現われ、炎弾を放って木にぶつけ火を点ける。
 木がぶるりとふくらみ、所々に穴を開けてもわっと色のついたような空気が吐き出される。それは甘い餡子の香り。ケルベロス達はその香りに誘われるように木に向かって無防備に足を踏み出す。
「甘ったるい香りなんて吹き飛ばしてやるぜ」
 そんな仲間の後ろから恵は小さなスイッチを押し、仲間の背後にカラフルな爆発を起こして、敵のまやかしになど負けぬよう心を奮い立たせる。
「その瞬間、僕は恋に落ちた事を知った。そして、この気持ちから……もう、逃れられない事も」
 詩を諳んじながら和が銃の引き金を引くと、魔弾が撃ち出されて曲線を描きながら枝を次々と落としていく。
「リドニコフ」
 ロストークが名を呼ぶと、ロッドが氷を纏って槍斧をかたどる。それを振り抜くと冷気が吹き抜け木を凍りつかせ、香りの出ていた穴を氷で塞いだ。
「安全な場所に避難させました!」
 駆け戻ったロゼが合流する。
「みてみて、もみじ饅頭があんなに」
「わかったわかった、でも今は倒すのが先だ」
 興奮して指差すロゼをあぽろが宥め、跳躍したあぽろが抜いた刀で枝を斬り飛ばすと、続いて大きく跳躍したロゼも担いだ黒水晶の大斧を振り下ろして枝を断ち斬った。
 枝と一緒に落下した饅頭が潰れ、中のこしあんが覗く。
「どうやらこしあんのようですね」
 疑問が解けてすっきりした顔でメルキューレは黒い液体を操り、背後から襲わせて木を粘々にして動きを鈍らせる。
「間違って食うなよ」
 そこへ力強く踏み込んだヴォルはオーラで強化した拳を叩き込み、拳をめり込ませ衝撃に木が大きく揺れた。
 木が甘い香りを吐き出そうと新たに穴を開ける。
「ブラッドレッド……レイジッ!」
 魔力を高めた汐音が身の丈ほどもある赫い大剣を生み出す。それを横に薙ぎ払えばまるで焔のように広がり、香りを吹き飛ばして木を斬りつける。
「食べたくなっても我慢我慢!」
 惑わされぬように饅頭から視線を下げたロゼが拳の連打で木をひび割れさせ、そこへ貫くように蹴りを放って硬い樹皮を打ち破った。続けてあぽろが攻撃しようとした時、その口に饅頭が飛び込んだ。ふんわりした薄い生地からたっぷりのこしあんが溢れ、口の中に甘味が広がる。
「う、俺が食っちまった……意外と旨い? なんかもっと食いたくなってきたな……」
「あぽろさんだけずるいです!」
 目の焦点が合わないあぽろがふらふらっと饅頭に手を伸ばしたところへ、ロゼが抱きついて止めた。だがそこへ枝が垂れ下がり饅頭の方から向かってくる。
「慌てないで治療を、その間は僕が守るよ」
 ロストークが敵の前に立ち塞がり、槍斧を構えて振り回して枝を斬り落とし、邪魔だと饅頭を弾き飛ばす。
「やっぱり食っちゃいけねぇものみたいだな」
 恵が真っ赤な薔薇のように形作ったオーラであぽろを包み込み、頭をしゃきっとさせて治療する。
「食べられないのは残念だねぇ、どんな味なのかな?」
 構えた銃から和が気の弾を撃ち出し、飛んでくる饅頭を迎撃して蜂の巣にした。

●紅葉狩り
 木は太陽の光を浴び、自らの損傷を回復していく。折れた枝も新たに生えて無数の紅葉饅頭が実る。
「そんな饅頭で僕を倒せるかな?」
 ロストークがヒールドローンを敵の前に展開させ、挑発するように自分との視界だけを通して待ち構える。木は大きく穴を開き甘い香りが戦場に充満する。
「絶対に膝はつかせねぇ、回復し尽くしてやるぜ」
 自信を持って恵は紙兵を設置して回復を行ない、仲間が惑わされないように抵抗力を高める。そこで狙いを変えた木が恵に向かって饅頭を降らせようとする。
「君、……そっちは危ないよ」
 背後から和が飛び蹴りを浴びせ、木の攻撃を逸らす。
「美味しそうな甘い香りが……! うぅ、お腹がすいてきちゃいました。けど、負けません!」
 香りを吸わないよう息を止めてロゼが駆け寄り、横から木を思い切り蹴り飛ばす。すると上からロゼの口目掛けて饅頭が落下してきた。
「同じ手は食わねえぜ」
 あぽろがナイフで饅頭を斬り飛ばし、木の傷口に刃を突き立てる。そして引き抜きながら傷を広げた。
「意外と美味しいのかしら……でも食べてみる訳にもいかないわね」
 どんな味がするのかという雑念を振り払い、死角から接近いsた汐音がナイフで更に傷口をなぞり、より深い傷跡を残す。更にプラーミァが炎を吐き木を燃やしていく。
 傷ついた木はケルベロスから離れながら、光を浴びてなんとか傷を癒そうとする。
「手を休めずに行きますよママン」
 ここが攻め時だと、踏み込んだメルキューレが槍を突き入れ電流を流し、木が焦げ付きながら動きを弱めた。そこへハルが尻尾を振り光のリングで敵を拘束する。
「誰がママンだ!?」
 続けて跳躍したヴォルは雷を纏い、落雷のように蹴りを叩き込んだ。
 ぽろぽろと樹皮を落とし、傷跡が全てぽっかりと暗い穴となった。そこから勢い良く甘い香りが噴出し、ケルベロス達を誘惑する。愛し君が盾となるように攻撃を受け止めるが、全てを防ぎ切ることは出来ずに被害が広がる。
「親父、足元フラついてるぜ? 徹夜でもしていたのか」
 香りにやられた和に恵が軽口を叩きながらオーラを与え治療する。
「ふふ……何のこれしき。この匂いに少し酔いそうになっただけだよ、恵くんのお菓子の方がずーっといい匂いだよ」
 和は笑みを浮かべて銃弾を敵に撃ち込んだ。
 穴の空いた木が銃弾を受けながら突っ込んで来る。
「餡子の香りの所為で和菓子を食べたくなってきたわね……あなたの事じゃないわよ」
 汐音が赫い大剣を振り降ろし、更に切り返して振り上げ、ガリガリと木を彫刻のように削いでいく。それから身を守ろうと、饅頭付きの枝でガードするように周囲を囲む。
「目覚めの時だぜ」
 恵が腰に手をやると、召還した一振りの刀を抜き打ち、相手に斬られた事も認識できぬ一刀を見舞う。守りの枝が落ち木が無防備を晒す。
「倒すのが惜しくなっちゃうけど、君を倒さないとあの子が帰って来ないからね……倒させて貰うよ」
 和はどこまでも敵を追いかける魔弾を撃ち、木を貫通させるとぐるりと旋回して背後からもう一度着弾した。
「毒入りで食べられないなら廃棄しないとね、間違って食べたら大変だし」
 ロストークが槍斧を叩きつけると、冷気が伝わり傷口から木が凍っていく。
「冷凍保存なら、お土産にできるでしょうか?」
 メルキューレが詠唱を始めると、小さな雪の妖精たちが現われ、氷雪の混じった竜巻が起こり木を更に凍らせてゆく。
「土産の話がしたいなら、とっとと終わらせるぞ」
 そこへヴォルが拳を叩き込むと、凍結した樹皮が割れて粉々に砕け散り、ぼろぼろの心材だけが残った。
「なあオイ。日光たくさん浴びりゃ饅頭も大量に成るよな?」
 あぽろの右手に魔力が集まりバチバチと光が弾ける。
「喰らって消し飛べ!『超太陽砲』!!」
 掌を突き出し、放たれる極太の光線が木の全身を貫く。太陽のように眩い輝きが天を突いた。光の後に残ったのはひょろりとした枯れ木。
「甘くて美味しいお菓子の夢を、悪い事には使わせません!」
 ロゼの手に光を纏う大鎌が現われ、一振りすると運命の糸を断ち切るように、残った木の命を刈り取った。

●広島土産
「大丈夫かな?」
 ロストークが眠った少女を介抱すると、目をぱっちりと開けて目覚める。
「あ、あれ、お饅頭は?」
 何事かと訳の分からぬ状態の少女に、今起きた事件の事をケルベロス達が説明した。
「あの、助けてくれて、ありがとうございました!」
 少女はケルベロス達にぺこぺこと頭を下げて礼をする。もう危ない事はしないと、手を振りながら元気に去っていった。
「紅葉饅頭のなる木……まさに紅葉狩りでした。お土産に持って帰りたかった」
「残ってたらおやつにすっかと思ってたんだが、これじゃあな……」
 残念そうにロゼとあぽろはぐちゃぐちゃに散乱した紅葉饅頭の残骸を見下ろす。
「土産にと思ッたが、あのもみじ饅頭は流石に持ち帰れねェよな。……帰りに本物のもみじ饅頭を買ッて行くか、一応」
 ヴォルが名残惜しそうにしている2人に提案する。
「そうですね、せっかく広島まで来たのですし、紅葉饅頭を買って帰りましょうか」
 メルキューレが賛同し、ロゼとあぽろも賛成と元気に手を上げた。
「私も買って帰ろうかしら、見ていたら食べたくなってきたわ」
 それを聞いた汐音も、すっかり気分は和菓子とお茶になっていた。
「帰ったら饅頭でも焼くか」
「恵くんの饅頭! ねね、あれも作って、揚げた奴」
 恵の言葉に嬉々として和がリクエストする。
「なら親父、饅頭にあう珈琲淹れてくれねぇか」
「ふふ、任せて。香り高い奴用意するよ」
 2人はお茶の予定を立てながら和やかに歩き出す。
「モミジ狩りをするならもう少し平和なのがよかったなあ」
 ロストークはひらひらと落ちてきた赤い紅葉を拾い上げる。秋色に色付く林を見上げ、仲間の後を追ってのんびりと歩き出した。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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