北に眠る闇呼者

■リプレイ

●釧路の夜は
　釧路市に律する、釧路湿原地帯。
　その釧路湿原地帯の傍らに現れたのは……テイネコロカムイによって復活させられた、ウェアライダーの少年。
　正気を失い、テイネコロカムイの指示にただただ従い、殺害の為に動く彼……。
「……サルベージされた相手とは何度も戦ってりうが……やな気分になるよな……」
（「……一度は眠りにつきながら、再びこちらの世界に引っ張られるとはな……」）
　と楡金・澄華（氷刃・e01056）が小さく瞑目すると、響命・司（霞蒼火・e23363）とプロデュー・マス（サーシス・e13730）も。
「そうだな……やれやれ、厄介な奴が積極的に動いているのは面倒で仕方ない」
「ああ。敵であろうが、死者を利用するのは許せんな……」
　と、二人も溜息がちに言葉を紡ぐ。
　更にリリー・リー（輝石の花・e28999）、ムギ・マキシマム（赤鬼・e01182）、アイム・ペルフェ（偽りの桃色羊・e27519）らも、今回のウェアライダーの少年に対しての思いを。
「眠っていたのを起こされちゃうのは可哀想なのよ。本当は起こした人をめってしたいのだけど……せめて、もう一度、暖かい夢を見て欲しいの」
「そうだな。今回の敵は幼い子供か……頭では分っていても、どうしてもやりきれんものがあるよな」
「そうね……わざわざ釧路まで運んできたのは、目的あっての事か、はたまた死神の都合か……いずれにせよ、放っておく訳にもいきませんねぇ」
「そうだな……こういう時だからこそ、やるべき事をやろう。誰であろうと死者を冒涜する事は許されない。その爪が誰かを傷付ける前に何としてでも止める、止めて見せる」
　そんな仲間達の紡ぎ続ける言葉。
　それに頷きつつ、巴江・國景（墨染櫻・e22226）が。
「そうですね。侵攻経路が判明しているので助かりますね……」
「……とは言え、この暗さですので湿地地帯に紛れ込まれたら、淡く光る怪魚を追うとしても、素早い動きで見失ってしまうかもしれません。そうなる前に、何としてでも討伐しておきたい所です」
　そう、話していると……そこに車で登場するは、滝川・左文字（食肉系男子・e07099）。
「やっと着いたか。さすがに長距離ドライブは疲れるな」
　車から降りて、骨を鳴らす左文字。
「……どうした？　ヘリオンに乗ってくればひとっ飛びだっただろうに」
「い、いやな……別にいいだろう」
　額に汗を浮かべる左文字……高所恐怖症で、ヘリオンに乗りたくなかった、など言えなかったりする訳で。
　まぁ、薄々感じ取られている気がしなくもないが、何はともあれ。
「このウェアライダーが元は侵略者か番犬側かは知らないが、生きてる間は狂月病に悩まされ、死後も意志と違う戦いをさせられるとは……さっさと止めようか」
　と、頷きながら拳を握りしめる左文字に、周りのケルベロス達も頷き、そして向かうのであった。

●湿原に眠るは
　そして、ケルベロス達は、湿原と村の境界線に到着する。
　当然ながら、周囲は真っ暗闇……そこで、LEDランタンに灯りを灯し、腰に装着して視界を確保する。
　そして、リリーも。。
「リィ、壊れてもいいようにいっぱい持ってきたのよ！」
　と、リリーがカバンから沢山のライトを取り出し、全部に灯りを灯す事で、煌々とした視界を確保する。
　そんな視界確保、周囲を照らした上で……ウェアライダーがくるまで、待ち構えるケルベロス達。
　……そして暫しの静寂の後。
『ウゥゥゥ……』
　と、深く、悲しげな唸り声を上げて、湿原地帯の方から駆けてくる、ウェアライダーと、怪魚達。
　そんなウェアライダーと怪魚達の方角の方へ、國景が立ち塞がるようにすると。
「さて……来ましたね。参りましょうか」
　と力強く、覚悟を決めると、澄華、ムギ、プロデューも。
「そなたの居るべき世界はここではない、冥府に戻られよ」
「そうだな。いくぞ、俺が、俺達がお前の手を血で染まらせやしない」
「脅威は取り除く！　まずは魚からっ！」
「長引かせる心算もありません。目を覚ましなさいと言いたいところですが……声も届きませんか……」
　と、次々と気合いを入れて、武器を抜いていくケルベロス達。
　そして、先ずターゲットとするのは、ウェアライダーの周りに浮かんでいる怪魚達。
　まずは澄華が。
「……汚いやり方かもしれんが、忍者の本領よな」
　と、疾風の一閃を叩き込み、死神にホーミングを付与すると、滑稽もすぐさま続き、死天剣戟陣。
　更にスナイパーのアイムが。
「ちょろちょろ動かれるのも厄介ですからね……まとめていきます。おとなしくしていて下さいネ？」
　と怪魚へライジングダーク。
　と、中、後衛が次々とバッドステータス攻撃を叩き込んで行く……と、その時。
『ウ、ガアア……！！』
　と、咆哮を上げて突撃してくるウェアライダーの少年。
　既に、正気を失った顔、虚ろな視線の彼は……正しく死神に動かされている、ただの駒。
　その攻撃をムギがカバーリングし、立ち塞がる。そしてカウンター気味に。
「お前らがどれだけ素早いとしても、その空間ごと殴れば意味は無い」
　とメタリックバーストを叩き込んでいくと、更に左文字が『聞くに堪えない罵詈雑言』で、抉っていく。
　とはいえ……そんな罵詈雑言をも、全く効いている風ではないウェアライダー。
　そして、攻撃を受けたムギに、すぐリリーと彼女のウィングキャット、リネットが清浄の翼と、メタリックバーストで狙いアップと回復を付与していく。
「サンキュ！」
　と言うムギに、リリーが。
「うん、頑張ってなの！」
　と後方から応援する。
　そして、更にプロデュー、司のクラッシャー二人が。
「さて……先ず先に怪魚型死神を倒していくぞ」
　とプロデューがフレイムグリード、司はヒールドローンで盾アップを前衛陣に付与していく。
　そして、行動が一巡し、次の刻。
　怪魚、ウェアライダー共に、意志無く前へと進み出て、ただただ攻撃してくるばかり。
　先ずは怪魚を倒す為、敢えてウェアライダーの攻撃はムギと左文字が交互にカバーリングし、受け止めていく。
　そして、残る怪魚たちに、澄華、國景、アイムが更にバッドステータスを大量に付与し、動きを制限すると共に、プロデューのストラグルヴァイン、司のキャバリアランページ。
　怪魚四体を、一体一体確実に狙い、始末を付けようと動く。
　そんなケルベロス達の攻撃を、怪魚と共に反撃していくウェアライダー。
　素早い動き……それに、惑わされぬように、攻撃を受け止めていく。
「此の身は現世で構成されております故……多少の痛みはあります」
　と、國景がダメージを受けながらも、フレイムグリードでドレインで回収。
　澄華も絶空斬で斬り付け、アイムもライジングダークで傷付け、一匹、一匹を仕留めようとしていく。
　……そして、怪魚型死神と対峙し、十数分。
　四匹を全て倒し……残るは、ウェアライダーの少年のみ。
　しかし、ウェアライダーの少年は、仲間達の死に何か反応をする事無く……。
『……ウウウ……』
　と唸り声を上げながら、攻撃してくるばかり。
　そんなウェアライダーに。
「脚を使ってくる相手ならその脚を止める……常道ですね」
　と、アイムが轟雷砲を飛ばす。
　それをサイドステップで躱すと、接近、攻撃。
　強力な一撃を喰らった左文字、ちっ、と舌打ちしつつ。
「ガキが！　ヤンチャが過ぎんゾ！！」
　と、声を荒げる。そしてムギ、プロデューが。
「……俺の筋肉を舐めたな。いくら素早くても……こうして捕まえれば俺の全力を当てられる」
「偽りの死を裏切り死後世に戻るがいい！　『禊萩』その名の如く罪を洗い流せ！」
　と、ムギがウェアライダーの身体を掴みかかり、戦術超鋼拳。更にプロデューの、渾身のフレイム・フィスト。
　そして司もスターゲイザーで足止めを行い、動きを制限する。
　……苦しむウェアライダーの少年……一ターン、一ターン……確実に体力を削り去り、血に塗れていく少年へ、司が。
「倒す前に聞きたい。お前を生き返らせた死神について何か知っているか？」
　と、敢えて攻撃を一次止めて、問いかける。
　……しかし、その問いかけには、何の応えも返さぬウェアライダー……いや、反応としては、ただ攻撃するがのみ。
　そんなウェアライダーに……。
「そうか……ならばもう一度眠れ。これがテメェの送り火だ」
　と司が宣告と共に、渾身のフレイム・フィスト。
　炎の拳の一撃に……吹き飛ぶ身体。
　そして、アイムが。
「さぁ、あなたの魂の輝きと熱……分けて下さいね？」
　と、フレイムグリードを放つ。
　その一撃が、ウェアライダーの身体を炎に包み込み……そしてウェアライダーの少年は、そのまま絶叫の表情と共に、消え失せて行くのであった。

●悲しむ前に
　そして……ケルベロス達は、ウェアライダーの少年を倒す。
　その姿が消え失せた後……後に残るは、ただの静寂のみ。
　そんな静寂の中、彼の墓を作り……ウェアライダーの少年のその冥福を祈るムギ。
「悪いな。俺にはこれぐらいしか出来ん……今度こそゆっくり休んでくれ……」
　と……静かに黙祷を捧げるムギに、澄華も。
「どうか安らかに。根が枠ば、来世は平穏に暮らされい……」
　と、その冥福を弔い、祈りを捧げる。
　二人の弔いに、左文字やリリーも……いや、ここに居る全員が、不幸な事件に巻き込まれたウェアライダーの少年の不幸に怒り、冥福を祈り、弔いを捧げる。
　彼を倒した事で、平穏は守られたものの……ケルベロス達にとっては、本当に良かったのか、という所さえある訳で。
　ウェアライダーの遺した爪痕が、彼の生きていた爪痕。
　立ち上がったリリーが、ウェアライダーによって付けられた爪痕をなぞる……そして。
「……お疲れさま、なの……」
　と、リリーがぽつり呟いて……そして、ケルベロス達はその爪痕を、更に弔う様に一つ一つ、補修していく。
　……そんなテイネコロカムイの悪行を、許さぬが如く。
　ケルベロス達は、内なる闘志を燃やしつつ、それら爪痕を片付け回るのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年11月7日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 3／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 0
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