湿原の茨女

作者:カワセミ

 爽やかな秋晴れの休日。絶好の登山日和、その高原地帯はハイキング客で賑わっていた。
 人々が、ハイキングコースで思い思いのペースで自然を楽しむ中。一人の女性が、山奥の道なき道をずんずんと突き進んでいた。
 女性の周囲をふわふわと漂うのは綿毛の種子。
 やがて開けた場所に辿り着いた彼女の頭上から、高慢な声が降ってきた。
「顔を上げなさい。わたくしの顔を見、わたくしのために生き、わたくしのために死ぬことを許します」
 その言葉に従い、女性はぼんやりと眼前の大樹を見上げる。樹上で、優雅に足を組み男を見下ろすのは茨を纏った女。その邪悪にして妖艶な美貌に心奪われたかのように、女性の瞳は焦点を失った。
 樹上から伸びた細い茨が、女性の頬を一撫でする。
「……今度は上手くやってちょうだいね?」

「すまないが、また寄生型攻性植物の事件だ。
 長野県の高原地帯に攻性植物が出現する。放置すれば、集まったハイキング客や近隣の市街地に被害が出るだろう。君らには、被害が拡大する前に攻性植物を撃破してほしい」
 そこまで告げたロロ・ヴィクトリア(レプリカントのヘリオライダー・en0213)が、頭痛を耐えでもするかのように眉間を押さえる。
「今回撃破してもらう攻性植物だが、中に人間が囚われている。何者かの支配下にあるようで、既に説得の通じる相手ではない。……犠牲者を未然に防ぐことができず、僕も遺憾だ。
 囚われている人物は、ここ数日中に行方不明届けが出ている三十代の会社員女性と特徴が一致している。現場にもハイキングに来ていたそうなので間違いないだろう。
 何かの弾みで、人気のない場所に踏み入ったところを狙われたのだとは思うのだが……。なぜ彼女が攻性植物に囚われてしまったのか、詳しい事実関係は分からない」

 続いて、攻性植物との戦闘に関する説明がある。
「相手は全身を茨に覆われた姿をした女性だ。……茨女とでも呼ぼうか。
 身に纏った茨を用いたり、胞子を放って攻撃してくるようだ。
 茨女の進行ルート上に開けた湿原がある。森の中よりは戦いやすいだろうから、迎撃するならそこが良いだろう。……美しい場所だが、今回は風景を楽しむ余裕はないだろうな」
 避難勧告は既に出されているので、戦闘の際に気遣うべき市民はいない。
 だが、万が一ケルベロス達が敗北した場合、一番に狙われるのは市街地へ避難中のハイキング客や高原の管理職員だろう。
 もうひとつ、とロロが人差し指を立てる。
「茨女は、囚えた人間の知性や知識を備えているようだ。会話らしきことも可能なのだろう。しかし茨女が何を口にしようと、それは犠牲者の言葉ではないことをよく心得ておいてほしい」

「本当に助けられないんだねえ。……こういう事件、最近多いね。早く止めたいな」
 話を聞いていた獅子鏡・夕(シャドウエルフの刀剣士・en0140)が眉を下げる。その言葉にロロも頷いた。
「今回向かってもらう現場には、恐らく事件の手がかりは残っていないだろうと思う。
 調査について何か思いついたことがあれば、この事件から帰還した後に何でも聞かせてくれ。……茨女の撃破と、無事の帰還を願っている。頼んだぞ、ケルベロス」


参加者
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)
八王子・東西南北(ヒキコモゴミニート・e00658)
ラハティエル・マッケンゼン(黄金炎の天使・e01199)
ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)
樒・レン(夜鳴鶯・e05621)
灰縞・沙慈(小さな光・e24024)
神座・篝(クライマーズハイ・e28823)
龍造寺・天征(自称天才術士・e32737)

■リプレイ


 秋晴れの空の下。翠緑の草原の上で、真っ青な空を映した沼地が美しく輝いていた。
 風に揺れる草地。身に纏う茨を引きずる、鈍重な影が姿を現す。
「あまりにむごい……」
 その醜悪な姿を見て、最初に呻いたのは龍造寺・天征(自称天才術士・e32737)だった。
 体中の穴という穴を貫いた太い茨の触手。それが体中に絡みつき、茨の奥に捕らえた体を無理矢理に動かしているように見える。
「我こそはラハティエル、黄金炎の天使、ケルベロスなり!」
 生命への冒涜とも言うべき邪悪な姿に臆すことなく、ラハティエル・マッケンゼン(黄金炎の天使・e01199)が前へと一歩進み出た。その声に気付いたのか、茨女は足を止めてのろりと振り返る。
「緑の悪魔よ、貴様の企みはもはや潰えた。
 さぁ……思うところあれば、申してみよ!」
 ラハティエルは朗々と歌い上げる。その声掛けには茨女から情報を得ようというよりは、反応を引き出そうという意図があった。
 茨女は重たそうに首を傾げながら、か細い声で呟く。
「助けて……」
「うん……。早く助けてあげる、ね。間に合わなくて、ごめんね……」
 それは攻性植物に未来を奪われた女性の言葉ではない。分かっていても、灰縞・沙慈(小さな光・e24024)は自分の無力を悔やまずにはいられなかった。
 俯く沙慈の小さな肩を、神座・篝(クライマーズハイ・e28823)が一度叩く。
「どうしたって、手がとどかねーもの見るのは気が滅入るね。
 けど、これ以上の被害はださねーこと、一歩一歩詰めてくことは、まだ手が届くからさ」
 顔を上げる沙慈を励ますように、篝は一度頷いてみせる。肩を叩いた手を引くと、その手にライトニングロッドを握って茨女へと構えた。
「ま、がんばろっか!」
「囚われた人はもう死んだ。死者に安息を、ってね」
 平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)も首肯し、ゲシュタルトグレイブを手に戦うべき敵へと向かい合う。
 戦意を察したのか、茨女は触手の先をゆっくりとケルベロス達へ向ける。
「助けて……助けて……助けて! 助けて!!」
 呟き程度だった声は、やがて壊れた機械のように同じ言葉を繰り返す叫びに変わる。
 ケルベロス達へ躍りかかる異形。それは誰もが覚悟していた激突だった。


「痛いの、怖いの! 助けて!」
 悲痛な叫び声をあげながら、言葉とは裏腹に茨女はぐんと右腕を伸ばす。そこに絡みついた茨の触手は、前に立つラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)目掛け真っ直ぐに襲いかかる。
「これはどうか……!」
 茨の一撃は避けようもない。盾代わりの杖を構えるのも間に合わず、重たそうな攻撃の勢いを見てラーナは歯噛みする。その彼女の真正面へと、素早く飛び込む背中があった。
「やらせない!」
 そう声を張りながら茨の触手を受け止めたのは八王子・東西南北(ヒキコモゴミニート・e00658)。体中に毒が回る感覚に一瞬の目眩を覚えつつも、その両足はしっかりと地面に立ったままだ。
「どうして邪魔するの……どうして……」
 茨女はさも悲しそうに呟く。
「――わたしの愛する人も、大切な友達も。彼女の毒牙から守らなくちゃ!」
 戦場に決意を秘めたリリア・カサブランカの一声が響き渡ると同時、加護の力が降り注ぐ。
 それは前衛のケルベロス達を守る力。愛する人の助けに微笑むと、愛用の日本刀をすらりと構えラハティエルは敵前へと素早く駆け、刀を振るう。すれ違いざまの一閃。
「――この私に敵対するのならば、それなりの風格を見せてくれよ?」
 一拍置いて、茨を斬り裂かれた女の絶叫が湿原に響き渡った。
 ラハティエルに続いて飛び出す東西南北。手にしたドラゴニックハンマーを手に、茨女へ一撃を見舞わんとする。
「これ以上の悲劇を防ぐためにも……全力で、貴方を倒します!」
 ぐんと振り下ろしたハンマーは凍結の超重を纏う。
「いけっ! アイスエイジインパクト!」
 その一撃は、身を捩った茨女を追って捕らえる。
 振り抜いたハンマーを素早く手元へ戻す主の元へ飛んできたテレビウム「小金井」が、東西南北の眼前にぴょんと現れて応援動画を流した。温かいテレビウムの応援に、東西南北は深く頷く。
 そんな主従の連携に、樒・レン(夜鳴鶯・e05621)は面の下で微かに微笑んでからその身にオウガメタルを纏わせる。
「またもや悲劇を許してしまったか。警戒活動が後手に回ってしまったとは、何たる不覚……」
 再び、救えぬ犠牲者に引導を渡すこととなってしまった。目を伏せたレンは、すぐに茨女の懐へ飛び込みオウガメタルを纏った拳を突き出す。
「せめて一刻も早く解放してやろう。――この忍務、必ず成し遂げる」
 レンの呟きに続くよう、沙慈もまた素早く茨女の構造的弱点を考察する。
「今回も大丈夫。やる、よ……」
 犠牲者の姿をした敵を攻撃するのは初めてではない。自分を鼓舞する呟きと共に、一瞬で導き出された箇所目掛け、固めた小さな拳を叩き込んだ。ウイングキャットの「トパーズ」が、伸ばした爪でひっかきに飛び掛かって続く。
「ハイ、ただいまより通行止めでーす。ごめんな?」
 沙慈に続けて動いた篝。ここから先は通さないとばかり、市街地を背に立ち塞がる。ライトニングロッドをくるりと振るって前衛のケルベロス達の前へ雷の壁を展開した。
「補助はお任せ、全力で突っ込んでってな!」
 篝の明るい声を背に、沙慈の拳は茨女へ命中する。
「あああああ! 痛い痛い痛い! 痛いよお!!」
 茨女は腹を折り曲げて苦悶の叫び声をあげる。その痛ましい反応に沙慈はぐっと顎を引いたが、ぎょろりと向けられた茨の飛び出す眼窩から、明らかな敵意が滲むのがはっきり感じ取れた。
「……敵意を向けてくるなら受けて立つ、よ」
 そして、仲間へ向けられる敵意も決して通さない。沙慈は改めて決意を固めた。
「動けなくしてやるぞー! てややー!」 
 ゲシュタルトグレイブを構え飛び出した和が、槍に稲妻を纏わせて一息に茨女の身を貫かんとする。
 早い段階で相手の動きを鈍らせようと狙った一撃は、素早く後退する茨女の速度に追い付いてその茨鎧を抉り取った。
「こいつ……けっこう避けてくるね?」
 今の一撃ももう少しで届かなかった。和は難しい顔をする。
 その呟きとほぼ同時に、両手に握ったライトニングロッドを振るい茨女を挟み込んで殴打せんとラーナが躍りかかる。その片手にあるのは極限まで最小化させた針のような杖、「ルドラの子供達」。
 茨女が素早く身を屈めたせいで、両側から襲う杖はガチンと音を立てて獲物を屠れずにぶつかりあった。おや、とラーナが眉を上げる。
「受け取ってもらえず残念です。――茨女さん。何処へ何をしに、そしてそれは誰のため?」
 一瞬で背を伸ばし、人間離れした動きで後退する茨女へラーナが尋ねる。茨の奥で、女性の口元が三日月の形に吊り上がるのが見えた。
「助けてもらうの……。死にたくないから……」
 街へ下りて人を襲うという意味だろう。どこまでも被害者気取りの言動に、ラーナは眉を寄せる。
「囚われた者を助けられぬだと……。そんなこと、認められるものか!」
 人々を救うべくして存在するケルベロスに、そんな無力は有り得ない。天征は拳を固めて叫ぶ。
 たとえヘリオライダーにできないと言われても、この場でできることが何かあるはずだった。そう自分を信じて飛び出し、渾身の力を込めて流星の飛び蹴りを茨女へ叩き込む。
 ギャッ、と蛙のような悲鳴をあげる茨女の足がたたらを踏んだ。
「足止めは叶った、続いてくれ!」
 振り返る天征に、仲間達はそれぞれに頷く。
「ああ、痛い……ひどいよ……助けてほしいのに……」
 弱々しく呟く茨女。しかしその表情は、言葉に似合わぬ残忍な笑顔だった。


「ううん……案外しぶといね」
 獅子鏡・夕(シャドウエルフの刀剣士・en0140)は少し渋い顔をしながら、傷付いた盾役のケルベロスに魔法の木の葉を放つ。
 意外と攻撃が当たらない茨女を相手取り、ケルベロス達は思わぬ長期戦を強いられていた。
 確実に疲弊が重なる仲間達。しかしケルベロス達の攻撃もまた、着実に積み重ねられている。
「理論上は可能……しかし現実的ではありませんね」
 彼方・悠乃には、今回の戦闘のために考えた作戦があった。しかし成功することはまずないだろう。考えを切り替えて、戦闘支援に徹することを選ぶ。
「貴様を戦いに駆り立てるのは何だ? 誰かに指示されているのか?
 ならば、愛しきリリアと私が……必ず、討ち滅ぼしに参ろう!」
 愛する人の加護を受けたラハティエルの愛刀が、緩やかな弧を描き茨女の脇腹を深く抉る。
「ひい! 痛い、痛い、助けて!」
 同情を誘う叫び声に、ラハティエルは静かに首を振るのみ。
 哀れな茨女の振る舞いに、東西南北は密かに心を痛めていた。
 茨女の喚きは、確かに攻性植物の放つものなのだろう。しかし一方で、犠牲者も死の間際にはこんな思いでいたこともまた想像に難くない。
 だが、東西南北にはケルベロスとしての使命がある。
「家族や友達を守る為、否、この地球に住む人達を守る為に戦っているんです。
 だから……貴女を倒します。ごめんなさい」
 伸ばした掌。体内で圧縮した指向性の高圧電流がそこから放たれる。
「きたれ臨界、破れ限界!」
 鋭い落雷が茨女へ落ちる。その一瞬の殺気を察して茨女が横へ跳んだ。――落雷は大地を焼く。
「く、届かない……!」
「構わん、次だ」
 レンは入手した犠牲者の家族の音声を流しながら、茨女へ流星の襲撃を見舞う。
 苦悶の声をあげる茨女は、しかし家族の音声の何の反応も示さない。それも想定の内だとレンは面の下で表情を歪める。
「せめてもの手向けだ。親しき者の声の中で眠ってくれ」
「今回みたいにどうしようもないタイプって、本当に厄介……」
 溜息混じりに呟いてから、和は意識を集中させる。茨女を爆破するイメージ。目を見開くと同時に、茨女の周囲で無数の小爆発が発生した。
「……お前さー、誰かの指示を受けて動いてたりしない?」
「誰か? 誰か? そうね、うふふ……」
「それはイエスってことなの?」
 爆発に巻かれながら恍惚と微笑む茨女の返事に、和は怪訝げだ。
「人の亡骸を自分勝手に弄んで、自分はどこかに隠れてのうのうと過ごしてる……。腹立つよな」
 飄々と動き回る篝。しかし冒涜的な茨女を前にすると、未だ姿を見せない何者かへの憤りが言葉に滲む。
 素早く振るったライトニングロッドから雷を放ち、仲間を守り傷付いた沙慈に戦う力を与えた。
「がんがん癒すぞー! 頼むな、サジ!」
「……うん!」
 びりびり、と背筋を正させる痺れに、振り返った沙慈は力強く頷いた。
「クッ! 女よ! 意識があるなら反応せよ!」
 囚われた人への呼びかけを、天征はまだ諦めない。その痛切な叫びに、茨女は笑顔で振り向いた。
「お前をそんな姿へと変えた者の姿を少しでも覚えていたらそれをよこせ!
 そうすれば、お前をそんな姿へと変えたものへの反撃の一矢となろう!」
「助けてくれるの……? 嬉しい……。痛いのはいや……」
 茨に貫かれた眼窩を天征へ向け、うっとりとした声を返す。到底理性が宿っているとは思えない弛緩したその笑みに、話の通じる相手ではないことを天征は痛感する。装着したアームドフォートに合図を送るよう一度撫でると、それは見る間に機体を展開し竜の姿を形作った。
「戦うしか、ないのか……。ならば仕方あるまい。――顕現せよ! 機神竜ガルファイド!!」
 機械仕掛けの竜はその顎を開き、強烈なグラビティの光条を放つ。
 キャアアアア、と光の中金切り声をあげる茨女へと、ラーナが静かに杖を差し向ける。
「本来倒すべきは、あなたではないのでしょうけど。これ以上進ませるわけにはいきませんから」
 秋晴れの空から、冷たい銀の雨が茨女へ降り注ぐ。それは無数の細い針のように、茨女の全身を貫いていく。
「――終わりなさい」
 雨と同じ温度のラーナの声。毒の雨の中で、茨女は触手に纏わりつかれた両手を天に掲げて哄笑した。
「あはははははは! あはははははは!!」
 その耳障りな笑い声は、女が背中から草原へ倒れ込むと同時に弱まっていく。
「あはは……」
 雨が降り止む頃には、湿原には完全な静寂が訪れていた。


「我としたことが、なんにも出来ないというのか!
 そんなはずはない! お前を必ず助けてやる!! だからそこから手をのばすのだ!!」
 残されたのは、無残な女性のなきがら。その手を取り天征は何度も彼女を呼び続けたが、やがて力なく項垂れる。
 彼女を覆っていた茨は見る間に枯れ落ち、土に還っていく。戦闘の援護に徹していた村雨・柚月は、手がかりのなさに首を振った。
「ケルベロスは、無敵でも万能でもない。全部を救うことはできないんだ。ボクは思い上がっていた。自分はヒーローだって……」
 自分の無力を許せず、東西南北は拳で地面を殴りつける。
「もっと、強くなりたい……」
「救えずに済まない。――どうか、安らかに」
 レンは瞑目して片合掌し、犠牲となった女性へ祈りを捧げる。
「トパーズと一緒に、いっぱい作ったよ。
 この灯籠が次に行く道を示してくれるから……迷わず、進んでね……」
 なきがらに折り鶴を供え、沙慈は女性の魂の安らかな旅路を願う。
「間に合わなくてごめん、ね……」
 顔を伏せる沙慈の悲しみを、篝とトパーズが見守っている。一人と一匹は顔を見合わせ、悲しげに眉を下げた。
「……意味はないかもしれませんが、この湿原も調べておきましょう。同じ場所で同じような事件を起こさせるわけにはいきませんので」
 ラーナは顔を上げ、湿原一帯を探索しようと歩きだす。
「あ、私も、行く!」
 その様子に沙慈も顔を上げ、ラーナと共に探索へ向かう。得られる手がかりはないだろう。しかし、できることは全てやっておきたかった。
「毎度、敵を屠りながら私は思うのだ。何体も何体も我等ケルベロスに倒されながら、それでもどうして貴様達は戦いに勝てると思うのか、と。フッ……」
 不敵に笑むラハティエルの言葉に、和が頷く。
「だねー。今回の戦いだって、俺達は負けないよ。どうにかして、陰で糸を引いてるやつの尻尾を掴みたいもんだけど」
「……この借りは必ず返すぞ。必ず我が……」
 ゆっくりと立ち上がった天征が、拳を固め呟く。
「調査のやり方を、考えてみるか……」
 祈りを終えたレンが、首を巡らし湿原を囲む森を睨む。
 木々の奥に蠢く闇。事件はまだ、終わっていない。

作者:カワセミ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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