●攻性植物の誘い
東北のとある小さな町を、高校生と思しき少年が歩いていた。
まだ深夜と言っていい時間帯。だが、ジャージに運動靴という格好は、早朝のランニングと言われれば納得できないこともない。
実際彼は走っていた。
どこかへと、わき目も振らずに。
行くべき場所はわかっているのか、その足取りに迷いはない。
もっとも彼の表情を見た者がいれば異変を感じたかもしれない。まるでなにかに取りつかれたかのような顔をしていたからだ。
そのまま、彼は山の中へと入っていった。
息が切れても足を止めることなく走り続けたその先に、1人の少女が待っていた。
「……待っていたわ」
少女に声をかけられて、彼はようやく足を止める。
蔦を巻き付けただけの肌もあらわな少女の姿は高校生の少年にとってはずいぶんと刺激の強いものだっただろう。だが、少年は彼女の姿を見ても動揺はしていなかった。
歩くごとに、腰や頭に生えた植物が揺れる。
「あなたの力が必要なの。……大丈夫、あなたはいつも通り正しいことをするの。だって、この世に罪のない人なんていないんだもの」
凶器を帯びた笑みを浮かべた彼女が少年を抱き寄せると、背中から翼のように生えた葉っぱが彼の体を包み込む。
やがて、彼は山を降りて行く。
「待ってろ……すぐにグラビティ・チェインを……集めてくるから……」
ときおり小さな声で呟きながら歩く少年の体は蔦と葉に覆われ、まるで緑の鎧を着こんでいるかのようだった。
●次なる犠牲者
ヘリオライダーとともに螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)はケルベロスたちへと話し始めた。
「どうやら、秋田県の大館市で攻性植物が現れるらしい」
別な事件の事後調査の結果から予知されたことをセイヤは告げる。
攻性植物はグラビティ・チェインを求めて山から市街地に降りてくる。
「市街地に入る前に倒さなきゃならない。力を貸してくれ」
セイヤはケルベロスたちを見回した。
事件を起こす攻性植物は中に人間が囚われているらしい。彼は何者かの配下にされており、もはや説得の言葉も届かない。
「……調査してたこの前の事件の時も同じだった」
囚われている人物は大館市で数日前行方不明になった男子高校生と特徴が一致する。
運悪く1人で山に近づいたところをとらえられたのだろうが……。
「同じ奴が黒幕なんだとしたら、これ以上犠牲者は増やしたくないところだな」
だが、まずは街を襲うのを防ぐのが先決だとセイヤは言った。
セイヤに代わって、ヘリオライダーが戦場や敵について説明を始めた。
敵は早朝、まだ日も昇っていないうちに大館市の北側にある山から、南側にある登山口へと下りてくる。
登山口から、付近にある小さな町に移動する途中で遭遇できるはずだ。
付近は未舗装の道路があるばかりで、基本的に人や車が通ることはないはずだ。早朝なら登山客もまだいない。
ただ、敵の狙いはグラビティ・チェインのようなので、油断すれば町のほうへと向かうかもしれない。町まではさほど遠くないので警戒しておくべきだろう。
「攻性植物は1体だけで配下はいません」
高校生と思しき少年の体に蔦が幾重にも絡みついている。囚われている彼は顔だけしか見えていない状態だ。
攻性植物はまず、絡みついた蔦を伸ばして攻撃し、捕縛することができる。
さらに蔦を地面に同化させて地面を侵食することも可能だ。
浸食した大地から蔦が伸びてきて、ケルベロスたちを飲み込んでしまうのだ。これは範囲に有効な上、捕らわれた者は催眠状態になって敵味方を誤認することもある。
「それと、葉っぱでできた翼のようなものが背中に生えています。それを広げて走り回り、近距離にいる相手をまとめて切り裂くこともできるようです」
葉っぱには毒があるようなので注意して欲しいとヘリオライダーは言った。
「攻性植物の中にいる高校生を救うことは、残念ながらできないようだ」
再びセイヤが口を開いた。声に怒りがにじんでいる。
「そいつを配下にした誰かが、いつまでも同じ場所にいることはないだろうが、警戒を続ければ足取りをつかめるかもしれない。いや、つかまくちゃならないだろうな」
なんにしても、まずは勝ってからだとセイヤは告げた。
参加者 | |
---|---|
ルディ・アルベルト(フリードゥルフ・e02615) |
螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343) |
円谷・円(デッドリバイバル・e07301) |
パトリシア・シランス(紅恋地獄・e10443) |
シルフォード・フレスヴェルグ(風の刀剣士・e14924) |
レティシア・アークライト(月燈・e22396) |
エリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850) |
川北・ハリ(風穿葛・e31689) |
●夜明け前の戦い
まだ夜と言っていい時間に、ケルベロスたちは山道へ向かう砂利道に立っていた。
幾人かが身に着けてきているライトが周囲を照らしている。
舗装道路から砂利道に変わるあたりで、道端の木を利用してレティシア・アークライト(月燈・e22396)が立ち入り禁止のテープをはっている。
歩きにくそうなピンヒールだが流れるような美しい足取りは普段通りだ。
「……これで大丈夫ですね。さあ、進みましょう」
こんな早朝に山に向かう者はいないだろうが、通れないにこしたことはない。
ケルベロスたちはデウスエクスが現れる方向へと移動し始める。
シルフォード・フレスヴェルグ(風の刀剣士・e14924)は言葉を発しなかったが、その力なく垂れ下がった尻尾を見れば彼の重く沈んだ気持ちが仲間たちには見て取れた。
「悲しいけれど、倒さないわけにはいかないわ。とっとと倒して楽にしてあげましょ」
赤い瞳をただまっすぐに前に向けたまま、パトリシア・シランス(紅恋地獄・e10443)がシルフォードに語りかける。
「……そうですね。わかってはいるのですが」
青い髪の青年は息を吐いた。
「被害者を救うことはできない……。ミス・ネフィラとの連戦の時にも、こんな経験は幾度もしてきましたが、いつまでたっても、辛いものですね……」
以前にも、エリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850) は同じような戦いを経験したことがあるらしい。
「助けられないなら、倒すしかないんですよね。……夜明け前にやる仕事としては、辛いものです」
普段は無感動な川北・ハリ(風穿葛・e31689)でさえ感じずにはいられない。
やがて、前方から隠す様子もない足音が聞こえてきた。
螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)が身に着けた、ハンズフリーのライトが緑の鎧をまとった少年の姿を映し出す。
「来たな。悪いが、ここは通してやれない」
攻性植物の行く手をさえぎる。
「邪魔するな……」
呟きが漏れて、鎧のように敵の体を覆っている蔦が動き始める。
「この世に罪のない人なんていない、か。その言葉真偽はさて置き、無差別な殺戮は困るよ。……と言っても、言葉はもう通じないんだっけ、キミ」
ルディ・アルベルト(フリードゥルフ・e02615)の言葉は、淡々としていた。
「あいつの言ったとおりだ……悪い奴らを、片付けないと……」
敵はルディの言葉を聞いてはいないようだった。言葉を発することはできるが、もう会話は成立しない。
「今度は助けられない、んだね……。悲しいけど、全力でいくよー!」
円谷・円(デッドリバイバル・e07301)が声を上げて、自分を鼓舞する。
「やるしかない。相手はデウスエクスなんだ……」
シルフォードも自分自身にそう言い聞かせて、武器を構えた。
他のケルベロスたちも敵を囲みながら身構える。
(「力を合わせれば勝てない相手じゃないはずだ……なのに、どうしてこんなにも嫌な予感がするんだ?」)
迎え撃つ準備をしながらも、セイヤは心の隅に理由のわからない感覚を抱えていた。
だが、理由を考える隙は与えられない。
ケルベロスたちの葛藤を気に留めず、敵は邪魔者を排除すべく動き出した。
●葛藤する者たち
背中に生えた葉が、翼のように広がった。
レティシアのウイングキャット、ルーチェがとっさにルディをかばったものの、ほかの前衛たちは刃のように硬い葉っぱで切り裂かれていた。
ケルベロスチェインを展開して、レティシアが攻撃を受けた仲間たちを守る。
ハリは巫術で精度を向上させたリボルバーを敵に向ける。
「あなたは、誰からその力をもらったんですか?」
敵の動きに対応しやすい中距離を保ったまま、少女は敵に問いかけた。
けれども答えはない。
(「やっぱり、会話はしてくれないようですね。でも、言葉を発するなら、その中に手がかりがあるかもしれません。覚えておきましょう」)
早く見つけなければ黒幕は犠牲者を生み出し続けるだろう。
……そんなことを考えてしまうのは、考えている間は撃つことから意識をそらせるからか。救えないとわかっていても迷いが消せない。
もっとも、人形のように表情を変えないハリに迷いがあることなど、はた目にはきっとわからなかっただろう。
「撃たれたいなら、仕方ありませんね」
わずかな迷いの後、ハリは愛用する銃の引き金に力を込める。
銃口から放たれるのは淡緑色の魔力弾だ。高い貫通性能を誇る弾丸は、デウスエクスの緑色をした鎧を破りながら貫いた。
「お前らも……悪人なんだろ……。罪のない奴なんて……どこにもいないんだから……」
蔦が地面に潜り込むと、ケルベロスたちの足元が突然沈み込んだ。
エリオットは口を開けた地面に足を取られた。
「確かに、罪を犯さない人間なんていない。僕だって、君を倒すことで、君の大切な人を悲しませる罪を負うだろう」
飲み込まれ、意識を揺さぶられながらも声を上げる。
「それでも人は、その心に『良心』がある限り、その罪を悔い改め、やり直すことが出来る。本当の罪人は、そのささやかな希望すら踏みにじり弄ぶ連中だ……!」
伝わらないとわかっていても、エリオットは告げずにいられなかった。
届かないと言われても、彼はそこにいて、まだ生きているのだ。簡単に割り切ることなどできるはずがない。
自分やハリを飲み込んでいる地面から跳躍して脱し、彼は両手の剣を掲げる。
「僕は……君をこんな風に変えた奴を、絶対に許さない!! 天空に輝く明け星よ。赫々と燃える西方の焔よ。邪心と絶望に穢れし牙を打ち砕き、我らを導く光となれ!!」
切っ先から放つ光は夜明け前の闇を切り裂いて、攻性植物を打つ。
おそらく前回と今回の事件の被害者に共通するのは『正義感の強さ』なのではないかとエリオットは感じた。ならばこそ、悪用させてはならない。
剣に立てた誓いを再び心に刻み、エリオットは言葉と剣を向け続ける。
「なにが目的で街に向かう? お前をそんな姿にしたのは誰だ?」
怒りのにじむ問いかけと共に、セイヤは切っ先で牽制しつつも重力をまとった蹴りで動きを鈍らせる。
ルディの鋭い蹴りや、稲妻をまとうシルフォードのグレイブ、エリオットが繰り出す十字の斬撃が、さらに動きを止めようとデウスエクスをとらえる。
だが敵の動きはまだ止まらない。
猛烈な勢いで伸びた蔦から、パトリシアの赤いライドキャリバーが主をかばう。
パトリシアは礼に変えて軽くサーヴァントの車体を叩いた。
ライドキャリバーを走らせると、くわえていたタバコが揺れる。もっとも、戦闘中の今はまだ火はつけていない。
幾人かの仲間が見せているような迷いはパトリシアにはない。
彼女はただ飄々と戦いをこなすだけだ。
「迷っていても、苦しみを長引かせるだけだもの」
炎をまとって突撃するライドキャリバーの上で、赤い瞳がしっかりと敵を見据える。
手にした爆破スイッチはリア充を爆破させるためのものだが、もちろんデウスエクスも爆破することができる。
爆発の炎が敵を包み込んだ直後に、ライドキャリバーの車輪が敵を轢き倒した。
いくらか動きを鈍らせても、敵の攻撃の強力さは簡単には変わらない。
翼を広げて、また前衛たちをなぎ倒しながら疾走する。
もっとも、ルーチェや、円のウイングキャットである蓬莱が清浄なる翼を広げて、仲間たちを葉っぱの毒などといった敵の攻撃の効果から守っていた。
レティシアは円とともに後列から仲間たちを回復している。
「円谷さん、私は皆さんをまとめて回復します。特に傷が大きい方をお願いします」
「うん、回復なら任せて欲しいんだよー」
言葉をかけ合いながら、レティシアは傷ついた者たちを癒やそうとした。
取り込まれた高校生の顔が目に入る。やはり傷つき、苦しんでいる表情が見えた。
むしろ無表情でいてくれれば、彼がまだ生きているということを考えずにすんだかもしれない。
蔦の一撃が蓬莱を縛り上げると、ウイングキャットが動かなくなった。サーヴァントたちしか防衛役がいないため、積極的に仲間を守ろうとしていたためか。
ルーチェや赤いライドキャリバーもかなりのダメージを負っている。回復役が2人いなければとうに倒れていただろう。
「霧よ、恭しく応えよ。暁を纏いて、彼の者共を癒やし守護せよ」
彼女の体から生まれ出る真っ白な霧が、前衛の仲間たちに漂っていく。
細胞を活性化させて癒やす霧は、むろんデウスエクスの傷を癒やすことはない。
「できることなら、助けたかった。叶わぬのなら、せめて安らかな眠りを……。」
呟くレティシアにルーチェが一瞬振り向く。
傷ついたサーヴァントの視線は、けして助けを求めるものではない。
むしろ、レティシアにはルーチェが自分を気遣ってくれたように見えた。
●砕け散る鎧
ケルベロスたちの攻撃に、緑の鎧はじょじょに剥がれていったが、攻性植物の動きは変わらない。
蔦は燃え上がり、焼かれながらも敵は攻撃を繰り出すことをやめなかった。
「負けて……たまるか……」
時折、苦痛をこらえて呟く声が、耳に届く。
もう何度目かわからない、疾走する敵の背に生えた葉っぱの翼が、前衛たちを切り裂いた。
とうとうパトリシアのライドキャリバーとルーチェが動きを止めたが、彼らのおかげで攻撃役のケルベロスたちはまだ無事だ。
シルフォードは敵が言葉を発するたびに、表情を変えぬように努めなければならなかった。
まだ救えるのではないか。声が届くのではないか。手加減すれば殺さずに倒せるのではないか。そんな思いが胸に宿る。
エリオットが敵に接近して霊力を帯びた剣で切り裂く。
「もうやめてください! 君が守るべき正義はこの戦いにはないんだ!」
彼はいまだに説得を続けながら戦っていた。
「エリオットさんは……まだ諦めていないんですね」
「……わかりません。ただ、声をかけ続けていないと、心が折れてしまいそうなだけですよ」
シルフォードの問いかけに、エリオットは振り向かずに応じる。
答えを聞いて、シルフォードは斬霊刀を握る手に力を入れ直した。
心を折れさせてはならない。最後まで平静に戦うことが、犠牲者を減らす道に繋がるのだ。
自らに言い聞かせると尻尾にピンと力が入った。
狙いすまして一気に踏み込むと、空の霊力を込めた刀が敵を深く切り裂いた。
ケルベロスたちの攻撃は続く。盾役のサーヴァントたちが倒れた以上、ケルベロスの側にもけして余裕があるわけではない。
迷いながら、あるいは敵だと割り切って、攻性植物の体を削り取っていく。
デウスエクスは、グラビティの効果を別とすれば、死ぬ瞬間まで動きが鈍ることはない。
だから、放とうとした蔦が動きを止めたのは、エリオットを初めとする皆の攻撃で体が一瞬麻痺したに過ぎない。
円は、その動きがまるで力尽きたからであるように感じた。
「もう、倒してあげるのが一番なのかな? だとしたら、私は……」
敵の負った傷からは、もはや限界が近いのが見て取れる。
迷っている間にも仲間たちは攻撃を加えていた。
近くにいたレティシアも、ケルベロスチェインを放っている。
「……ルディさんにまだ傷が残っています。回復してあげてください」
「はい、わかりました。……ありがとうございます」
声をかけられて、円はサキュバスの霧を生み出し始めた。
エリオットの剣とシルフォードのグレイブが敵をとらえる。間を縫って、円は霧をルディへ飛ばす。
敵がなにか呟いているのを聞きつけ、ハリが問いかけた。
「……謝っているんですね。誰に、謝りたいんですか?」
これまでと同じように返答はない。
おそらくは黒幕である誰かへの言葉なのだろうが……。
一気に翼を広げて、攻性植物が猛然と加速する。
勝ち目がないことを悟り、力を振り絞ったのであろうその攻撃は、しかしケルベロスたちの誰も打ち倒すにはいたらなかった。
ルディは突進を終えた敵の行く手をふさぐように回り込む。弱った敵を、なおも包囲する。
「そろそろ終わりだね。たたみかけようか」
青年が発した声は淡々としていた。いつものように。
「食べにくいかな。いや、君たちには関係ないか」
言葉とともに現れるのは炎の蝿たちだ。
蝿の王は主に与えられた物ならばなんでも食らいつく。それがデウスエクスに囚われた哀れな犠牲者であろうとも。
「助けられないならせめて一思いに。今楽にしてあげるよ」
次から次と食らいつく蝿たちを見やり、ルディは呟く。
パトリシアが生み出した炎の弾丸もさらに敵を燃え上がらせる。
「地獄の焔に灼かれなさい」
タバコを手に、告げた彼女の言葉は、いくらか悲しみが滲んでいるように聞こえる。
そして、戦いの終わりが訪れる。
セイヤは漆黒のオーラを全身にみなぎらせた。
「喰らいつくせ! ウロボロスの牙ッッ!!」
降魔の剣を一時収め、両腕に帯びたオーラが黒い龍を形作る。
一気に踏み込んで、2つの拳をほとんど間を置かずに叩き込む。
漆黒の手甲が触れた瞬間、まとった黒はすべて攻性植物へと流れ込んでいた。
弱ったデウスエクスの体を黒龍のオーラが穿つ。魂すらも食らう力は、敵が二度と立ち上がることを許さなかった。
●行くべき場所へ
「どうか、安らかに」
動かなくなった敵へ、レティシアはやりきれない表情で告げた。
シルフォードは静かに黙祷を捧げると、荒れた周囲をヒールし始める。
言葉はなかったが、尻尾がまるでうなだれたようになっていた。
「悲しい出来事だったわね……。早く大元をとっちめたいわ……これ以上の犠牲が出る前に」
パトリシアがくわえていたタバコに愛用のライターで火をつける。
「……終わりだといいんだけどね」
ルディはまだ警戒を解いていない。黒幕が近くにいることはないはずだが、手がかりになるものがないか赤い瞳が周囲を探っている。
「ごめんなんだよ。私も攻撃したほうがよかったよね……」
「気にしないでください。迷わずに攻撃できる相手ではありませんでした」
誰にともなく謝る円にハリが落ち着いた声で告げる。
「助けられない相手との戦いは、何度経験しても慣れないものですからね」
エリオットに気遣われて、円ははにかんだ笑みを彼に向けた。
沈黙がケルベロスたちの間に落ちた。
やはり少年へ黙祷を捧げていたセイヤが、顔を上げる。
立ち上がる前に、先日戦った攻性植物の少女と同じ系統の植物かどうか観察している。もっとも、植物の知識がない彼でははっきりとはわからない。
「今回も俺はこいつが着た場所を探ってみる。敵はもう残ってないかもしれないが……」
痕跡や手がかりはあるかもしれない。
いや、これ以上犠牲を出さないためにも見つけださなければならない。
……嫌な予感がだんだんと大きくなっていくことだけが、セイヤの気にかかった。
作者:青葉桂都 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年11月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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