ここはとある森の中にある病院。空気のいい場所でゆっくり療養する為の病院。
そんな病院の周囲は夜になれば、真っ暗になり病院以外は灯りのない。
「……」
そんな真っ暗の中で動く影があった。それは女性。寝巻きのまま、施錠されている扉を開け、外へ出ていく。
「ヨバレテイル……」
松葉杖を使い、ゆっくりと真っ暗の中、外に出ていく。
「イカナクチャ……」
真っ暗で見えない筈の森の中を迷う様子も無く、ゆっくりと進んでいく。
その森の中で待っていたのは蛍のような光りを漏らす攻性植物。光る頭部に照らされ、見える胴体には幼子が捕らわれているようにも見えた。
「……」
そして頭部が動き、女性を包み込み、その頭部が同様に光りだすと、その首から蔓が伸びて身体を包み込んでいく。
「……イキナサイ……」
その場に松葉杖を落として、蔓を四肢の代わりに使い素早く森を出ていくのだった……。
●
「また、攻性植物が現れました」
集まったケルベロスたちに事件の説明をしているのはチヒロ。
「現れた攻性植物は昨日行方不明になった女性を捕らえています」
そういいながら少し目を伏せる。今回、捕らわれた女性は救出が不可能なのだ。
「このまま放置すると大変な事になります。なんとかして、その攻性植物を倒して下さい」
救出が出来なくても、放置する訳にはいかない。現れた攻性植物は街へ隠れて進行してくるのだ。
「ですが、今回は現れる場所が完全に分かっていません」
そう言って、地図を出して説明をするのだが、今回はどうやら確実に現れる場所が分かっていない様子なのだ。
「現状、3ヶ所に絞られているのですが……」
とても申し訳ない無さそうにチヒロは説明を行う。だが、攻性植物そのものはそれほど強敵ではないようで、普段の攻性植物と比べ半分程度の攻撃力だと説明をする。つまり、ケルベロス4人が相手をすれば負ける可能性が低い相手であるという事だ。
「なので、一番の問題は隠れて近づく攻性植物を発見する事なのです」
隠れて行動する攻性植物は最近現れたタイプ。攻性植物も変化しているという事なのだろうか。
「しっかりと油断せずに警戒していれば突破される可能性は低いと思います」
それでも相応の大きさなので、しっかり警戒していればかなり高い確率で発見出来ると思われる。
「それにしても、何でこんな人が攻性植物に捕らわれてしまったのでしょうか。そこが分かれば原因となる攻性植物を発見する手がかりになるかもしれません。ですが今は、街に入られる前になんとかして攻性植物を倒して下さい」
そう言って説明を終えるチヒロだった。
「また、新たな攻性植物でござるか?」
そんな説明を聞き、危機感を覚えるウィリアム。さらに今回は人手が必要な依頼。ともかく、ウィリアムは荷物を手に立ち上がるのだった。
参加者 | |
---|---|
神地・滄臥(ウォーガンナー・e05049) |
鳳来寺・緋音(鉄拳必倒・e06356) |
マロン・ビネガー(六花流転・e17169) |
氷鏡・緋桜(矛盾を背負う緋き悪魔・e18103) |
百目鬼・命(眼鏡に総てを懸ける者・e25832) |
エナ・トクソティス(レディフォート・e31118) |
川北・ハリ(風穿葛・e31689) |
ユーシス・ボールドウィン(ウェアライダーの鹵獲術士・e32288) |
●
現れる攻性植物に備えて、三ヶ所に分かれケルベロス達が待機していた。
「攻性植物か……」
ここは森から近い場所で広い道があるのだが、そこには路駐された車が多く遮蔽物が多い場所。三ヵ所の中で一番出現率の高いこの場所にいるのは神地・滄臥(ウォーガンナー・e05049)、鳳来寺・緋音(鉄拳必倒・e06356)、マロン・ビネガー(六花流転・e17169)の三人。
「昔から理由も目的も謎だらけですが、今度のは取り込まれた人が救えないです?」
「ああ、救出は不可能……」
「助けられねぇ状態……か」
攻性植物に捕らわれる事件は多いが、状況によっては捕らわれた人を救う事が出来た。だが、今回はそれが不可能なのだ。
「くそっ、胸に来るモンがあるぜ……」
自分の胸に手を当てながら苦悩の表情の緋音。しかし、すぐに覚悟を決める。
「だからといって、見過ごすわけにはいかねぇ!」
「ああ、ここで全力で倒すのみだ」
同様に覚悟を決めた滄臥が答える。
(「……これを起こした黒幕は絶対殺してやる」)
そして強い決意を胸に秘める。今回の攻性植物は、別の攻性植物によって作られた可能性がある。その黒幕となる攻性植物は何処かに潜んでいて、仲間を増やしている可能性があるのだ。
「ともかく、今は街への被害阻止ですね」
「ああ、ここで倒すッ!」
この道へ現れる可能性は高いが確実では無い。他の場所へ現れた場合に備え携帯電話を再確認する緋音と翼を広げ空から周囲警戒を行うマロンであった。
ここは二番目に現れる可能性の高い場所。小さな道だが、攻性植物が来る可能性は十分にある場所。ここには百目鬼・命(眼鏡に総てを懸ける者・e25832)、川北・ハリ(風穿葛・e31689)、ユーシス・ボールドウィン(ウェアライダーの鹵獲術士・e32288)の三人が待機していた。
「また、攻性植物に人が取り込まれたの?」
そう嘆くのはユーシス。彼女は先日、同じような攻性植物と戦ったばかりなのだ。
「女の人が捕らわれているって話だけど……何とかして助けたい……けど……」
心の奥から絞り出すような命の言葉。
「助けられない戦いが、続いてますね」
しかし、ハリの言う通り助ける事は出来ない。
「もう手遅れ……なんだよね……悔しいな」
可能性があれば自分が傷つく事を厭わず無理をするケルベロスは多い。
「……嫌なことが続くわね」
そんな苦しそうな命の様子に、思わず呟くユーシス。
「この事件、裏に何かあるのか少しでも手掛かりがを得たいことろです」
「そうね。そして、早く原因を突き止めないと」
だからこそ、攻性植物を撃退して少しでも元凶への手掛かりが欲しいのだ。しかし、以前の事件も含め、分かっている事は多くない。
「でも諦めません。諦めたって犠牲が続くだけで、戦ってきた意味も失われるだけですから」
ハリの言う通り、諦める訳にはいかない。ケルベロスが諦めたら、そこで全てが終わりなのだから……。
そしてここは第3のポイント。細い道で攻性植物が来る可能性の低い場所だが、それでも念には念を入れ、氷鏡・緋桜(矛盾を背負う緋き悪魔・e18103)とエナ・トクソティス(レディフォート・e31118)が待機していた。
「本当に被害者を救う事は出来ないのか?」
静かに呟く緋桜。同時に心の中で葛藤していた。
(「俺一人なら無茶も出来るが……予知を無視すれば何が起こるか分からない……」)
自分が苦労するだけならば、それを厭わず助ける覚悟の緋桜。しかし、そのリスクは大きすぎる。
「助からないのでしたら、仕方ありませんね」
そんな緋桜の葛藤を知ってか知らずか、覚悟を決めた様子のエナ。
「取り込まれた方には申し訳ないですが、迷惑をかける前に、眠ってもらいましょう」
きっぱりと言い切るエナ。
しかし、彼女の胸中には言葉以上の覚悟があった。
(「もし、仮に、あなたが、ヒトへの恨みなどを持っていたが故にしても……」)
被害者がどのような想いかは分からない。しかし、その想いがどんなものであれ背負う覚悟なのだ。
「ああ、そうだな。悪いが狩らせてもらうぞ」
そんなエナの言葉に同意する言葉を繋げる緋桜。そして、周囲を警戒する二人だった。
今回の攻性植物出現に対応するのは八人のケルベロスだけじゃない。攻性植物が現れる可能性のある場所へ一般市民が入らないように避難誘導をしている者達もいる。
「また、攻性植物が罪の無い人を……許せないです」
翼を広げ空から避難誘導を行っているのは大原・大地(元守兵のずんぐり型竜派男子・e12427)とウィリアム・シュバリエ(ドラゴニアンの刀剣士・en0007)。
「ウィリアムさん、これ以上被害を出さないように頑張りましょう」
「そうでござるな」
ウィリアムは、大地の言葉に答えながら、地上でバイクに乗りながら避難誘導を手伝ってくれている者に懐中電灯で合図を送る。
皆、様々な想いを胸に、攻性植物の出現を待つのだった。
●
「発見しました。青い軽自動車の影です!」
最初に発見したのはマロン。上空から観察していると、車の陰から車の陰へ移動している怪しい影を発見。間違いなく攻性植物だ。
「よぉ、アタシだ。どうやらこっちがアタリみたいだぜ」
即座に緋音は他班へ連絡を入れる。
「大きな道だな! すぐに向かう!」
連絡を受けた緋桜はエナに視線を送りバイクで即座に移動を開始。
「分かりました」
同じく連絡を受けたユーシスもハリと命に声をかけ移動を開始。
攻性植物が現れた場所には滄臥、緋音、マロンとサポートで先ほど駆けつけてくれた村雨・柚月(無量無限の幻符魔術師・e09239)がいる。戦力面の不安は無いが、すでに住宅地に近い場所。少しでも早く倒して市民の不安を取り除きたい。
「こちらも了解でござる。その付近には誰も居ないはずでござるが、もう一度確認するでござる」
市民の避難誘導を行なっていたウィリアムと大地たちも出現地点を考慮しての、再確認を行う。
「大地殿ももう一度確認を頼むでござる」
「はい、わかりました」
サポートに駆けつけてくれた者達と協力して、万が一の犠牲者が出ないように尽力するのだった。
出現した道では、すでに戦いが始まっていた。
「まずは足止めさせてもらう」
二丁の拳銃、フォーマルとアークトゥルスを構え、高速ファニングとリロードを繰り返し銃弾の雨で攻性植物の領域を制圧していく滄臥。
「皆さんを援護するです!」
マロンは着地と同時に紙をばら撒く。その紙は滄臥や緋音の肩に乗ると同時に形を変え、紙兵となり、二人を守護する。
「ギギギ」
発見された事を理解した攻性植物は街への侵入を諦め、目の前の障害を排除しようとする。
「ガガガ!」
蔓を伸ばし、動きを阻害してくる滄臥を狙う。
「ぐあッ……だけど、そんなモンじゃ……アタシは止められないぜ!」
そこへ割り込み、身体で蔓を受け止める。そのまま蔓を掴み、力任せに引っ張る。
「ガガ?」
凄まじい力で引き寄せられる攻性植物。車の影から引き出されたところへ旋刃蹴を叩き込む。
(「何か類似性、相違点はあるだろうか?」)
そこへ柚月が攻性植物を観察しながら踏み込む。
「宵闇切り裂く藍色の魔弾!」
藍色のカードを構え、力を解放するとカードの半分が光を放つ。
「顕現せよ! ブルーバレット!」
詠唱と同時に叩き込まれる藍色の弾丸が攻性植物の蔓を藍色に凍結させていく。
事前の情報通り、攻撃力はそれほどでも無い相手。攻性植物にダメージを与えながら、仲間の到着を待つのだった。
●
「遅くなった!」
戦い開始から2~3分ほど経過すると、他の場所で待機していたケルベロスたちが合流してくる。一番に合流したのはエナ。街灯があるとはえ夜目が効く彼女が一番早く到着出来た。
そんなエナは先に戦っていた者たちが危機的状況でない事を確認すると同時に静かに口を開く。
「I am Legion―――」
その言葉で自己に強い暗示をかけ、自身を強固にするグラビティ。
「待たせたな!」
その次に到着した緋桜は髪を逆立て、右手に虹の光を集めてバトルガントレットを出現させる。
「悪いが狩らせてもらうぞ!」
そのまま攻性植物と距離を詰め、魂を喰らう降魔の力を拳に込め、素早い連続突きからの渾身の一撃。
「アンタも被害者だけど……だからこそ、他の誰かを傷つけさせるわけにはいかねぇ!」
拳で連撃を繰り出す緋桜に攻撃を重ねるのは緋音。フットワークとフェイントを混ぜた足を止めない攻撃で降魔の拳を叩き込む。
「そこか……」
緋桜と緋音が一歩下がったタイミングで滄臥は特殊な弾丸を込め、攻性植物へ放つ。
「ギギッ!」
命中箇所の皮が固くなっていく。
「いきましょうです!」
「そうね」
マロンとユーシスはタイミングを合わせて攻撃を繰り出す。連続して召喚した竜の幻影を波状攻撃で攻性植物に叩き込む。
蔓が燃えると不快感を感じる匂いが発生するが、それでも攻撃の手を緩めないケルベロス。
「てめぇ、いい加減に倒れろ!」
戦いの中で少々興奮しているのか、荒っぽい言動になっている命。フォートレスキャノンを至近距離で構え、そのまま斉射する。
「ギャギャギャ!」
ケルベロスたちの連携攻撃を受けても、蔓を動かし反撃してくる攻性植物。
「私の声が聞こえますか」
戦いの中で、犠牲者と言葉を交わす事が出来ないか挑戦するのはハル。攻撃の合間に問いかけるも反応は蔓による攻撃だけ。その蔓を高速射撃で撃ち落としながらも、問いかけ続ける。返答が無くても何か判る事があるかもしれないと、諦めずに問い掛け続けるハリ。しかし、残念ながら犠牲者に意識があるようには見えないのだった。
●
全員集合すればケルベロスたちが負ける要素は無い。耐久力が高いだけの攻性植物を追い詰めていく。
「これでどうかしら」
ユーシスが放つケルベロスチェインが、攻性植物の蔓を上回る勢いで、その身体を束縛していく。
「どうして貴方は捕らわれてしまったのですか……」
ハリは諦めずに何度も問いかける。
「……」
しかし、やはり返答はない。
「仕方ありませんね」
これは諦めではなく、次への道を探す為、ハリは銃を構え、その弾倉に淡緑色の弾丸を込める。
「そこです!」
狙い定め発射すると、淡緑色の軌跡を描き攻性植物に弾丸が吸い込まれる。
「ガッ……」
連射不能な高威力の弾丸は攻性植物を貫通し空洞を作る。
「【1324ー7156891】 汝、至高天に輝き駆ける綺羅星となれ!」
そこを狙い攻撃を重ねるマロン。星の砂と自分の魔力を触媒として描く数式を光り輝く天馬に転換させ鹵獲術を発動させる。
そこへ追撃するエナ。一歩距離を取った場所で、120口径長距離砲を生成。同時に対デウスエクス用徹甲榴弾を装填し狙い定める。
「Globus Genesis―――」
前衛で生成した120口径長距離砲を器用に操り、そのまま攻性植物の一番太い蔓に直撃させる。
「ギャギャギャ!」
命中と同時に爆発し、蔓を何本か砕け散り、主軸となる太い蔓が露わになる。
「その樹皮……」
高い耐久の元凶は丈夫な主軸、そしてそれを覆う樹皮。それを狙い滄臥が動く。リロードで銃に込める弾丸は手製の強力な弾丸。
「剥がさせてもらう!」
特製弾丸で的確に攻性植物を撃ち抜く滄臥。命中と同時に破裂し、樹皮をズタズタにする。
「ギャギャ!」
吠える攻性植物に勝機を見た緋音と命の二人が構えを取る。
「撃鉄起動ッ! 弾丸装填!」
「バンカーセット!」
似た動きの技だけに、視線一つでタイミングを重ねる。
「……唸れ!」
高速で蔓の中へ入り込む二人。先手は緋音
「ストライク……ナックル!」
緋音はバトルガントレットに内蔵されたジェットエンジンにより拳を急加速させる。そのままインパクトの瞬間、杭状のグラビティチェインを形成し敵を貫く。
「穿て! 貫け! 敵を粉砕せよ!」
続けて反対側から命がパイルバンカーを至近距離で打ち込む。
「ギャギャギャァァ!」
左右からの凄まじい衝撃に身体がねじれる攻性植物。しかし、それでも動きは止まらない。
「今……その重力の軛から解き放ってやる」
緋桜が拳を握ると、そこへダークエネルギーが収束していく。
「闇拳!」
収束したエネルギーを込め、攻性植物へ叩き込む。
「……」
拳が蔓に触れる瞬間、周囲の音が消える。時でも止まったかのような錯覚を感じるほどの静寂。
「ガ?!」
その刹那の静寂が奇声によって破られると同時に、打撃点から緋桜のグラビティチェインが解放され崩壊していく。
「ガガガァァ!!」
そして打撃点を中心に熱傷のような傷跡を残し、攻性植物はその活動を停止させた。
ケルベロスたちの勝利だ!
●
「倒した攻性植物から、何かわからねぇかな」
動きを止めた攻性植物の様子を調べようと緋音が近づくと同時に、その身体がゆっくりと徐々に崩れ炭化して消滅を始めた。
「以前の攻性植物と同じようだな」
消滅していく様子を調べる柚月。以前に調べた攻性植物とほとんど同じ消滅の仕方だった。
消滅するのは蔓などだけではなく、捕らわれていた女性も同様だった。衣服などを除き、彼女の身体もゆっくりと消えていく。
「俺に出来る事なんざ、これぐらいしかねぇしな」
滄臥は、消えていく犠牲者に静かな言葉と共に花を供える。
(「デウスエクスに利用され、殺された無念は必ず俺が晴らしてやる」)
その言葉の奥に強い想いを込めながら手を合わせる。それに習うようにマロンやエナも静かに手を合わせ黙祷を行う。
(「彼女は何を思っていたのでしょうか……」)
一緒に合掌をしながらエナは静かに考える。それが分かれば元凶となる攻性植物へ近づけるかもしれないのだ。
「何か言葉が聞ければ良かったのですが」
戦いの最中に何度も問いかけていたハリ。返答は無かったが、その問いかけに反応が無かった事から、すでに捕らわれていた人の意識は無かったのだろう。戦いの中で苦しむ事が無かった事が不幸中の幸いと言うべきなのかもしれない。
そんな中で、消滅していく女性の懐から一冊の本が落ちた。
「これは……」
それは日記だった。比較的新しい日記は、ここ数日しか書かれていない。それも、精神的に厳しい状況だったのだろうか、読むのが難しい状況。それでも分かったのは、彼女が事故で大きな怪我をしてしまった事。そして、その結果、普通の日常生活が送れなくなっていた事。そして、その事でとても苦しんでいた事が分かった。
「……」
この日記だけでは分かる事は少ない。彼女に助けてくれる人が居たのか、それとも居なかったのか。
ただ、日記からは彼女がこれから『生きる事』について苦悩していた事だけが伝わってくるのだった。
「これ……」
読み終わった日記を閉じると同時に一枚の便箋が落ちた。それはほとんど白紙であったが、一言だけ記載があった。
『先立つ不幸をお許し下さい』
その一言だけ。
「もしかしたら……」
ユーシスが呟くも、それ以上の言葉は無かった。
「色々気になる所だけど、今から調べるとなると危険かな」
周囲を見渡しながら命が呟く。もうかなり遅い時間。真っ暗なのはもちろんだが、余計ないことをすれば近隣住民に不安を与えてしまうかもしれない。
「衣服に付着物がありますね」
寝巻のような服だからだろうか、少量の種子らしきものが付着していた。それで何か判る可能性もあるだろう。丁寧に回収するユーシス。
「元凶を叩かないと、同じ事が繰り返されてしまう……」
「そうでござるな」
静かに想う大地とウィリアム。
「この先にある病院の患者……だったか……。被害者の身元や周囲を洗ってみるか……」
日記帳などの遺留品を集め、病院のある方向を見る緋桜。その視線は、他の者とは少し違う意味があるのかもしれない。
今だ判らない元凶の事を考えつつ、この場を後にするケルベロスたちであった。
作者:雪見進 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年10月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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