エクスガンナー・カッパ~支援機としての務め

作者:陸野蛍

●支援機としてのエクスガンナー機
 赤いチャイナドレスを纏った、ダモクレス『エクスガンナー・カッパ』は、猫の様な俊敏さで工場の外壁に張り付くと、周囲を警戒しながら工場内に侵入する。
「誰も居ないようアルね。すぐに機械部品を回収して、撤収するアル。……ガンドロイドを全て失ってしまったのは、私の失態アル。けれど、必要なパーツもあと僅かアル。それさえ手に入れれば、他のエクスガンナー機と合流出来るアル。一度、拠点に戻れば、エクスガンナー計画を再始動するのも容易アル。……ケルベロス達に、報復するのはそれからでも遅くは無いアルよ。ワタシはワタシの役目を全うするアルよ」
 紅き武闘派射手は、エクスガンナー計画再始動の為、機械の心を一層クールにするのだった。

●『エクスガンナー・カッパ』撃破作戦第三陣
「みんな! エクスガンナー・カッパの動きが予知出来た。今すぐに、カッパ撃破作戦第三陣の編成を始める!」
 駆ける様にヘリポートに現れた、大淀・雄大(太陽の花のヘリオライダー・en0056)は、大声を響かせるとすぐに説明を始める。
「チャッチャッと説明行くからな。移動拠点グランネロスを失った、エクスガンナー機はエクスガンナー計画を再始動させようと、各自で各地の工場を襲撃し、再始動に必要となる機械部品を集めている。既に『ゼロ』『デルタ』『ラムダ』『ジェイド』『イオータ』『ニュー』はケルベロスの手によって撃破されているから、残る指揮官機は『カッパ』『ベータ』『シータ』の三機になる。この三機はまだ合流していない。合流する前に各個撃破を狙おうと言うのが俺達の作戦になるんだけど……状況はあんまりよく無い」
 そう言うと、雄大は頭をわしゃわしゃと掻く。
「俺から依頼する、撃破対象はエクスガンナー・カッパなんだけど、少なくともカッパに関しては、今回撃破出来なければ、拠点に帰還してしまう事が分かったんだ」
 機械部品調達に奔走していたカッパだが、彼女の目的はあくまで『エクスガンナー計画の再始動』資材が揃えば、速やかに撤退を行うのは至極当然の事である。
「そうなったら、こちらから手を出す方法は無い。次の撃破チャンスは、再びカッパが地球に戻って来た時、しかも『エクスガンナー計画』の産物を携えた状態、間違い無く、今よりも厄介な敵として対峙しなければならなくなる」
 つまり、今回の撃破作戦がラストチャンスと言っていいだろう。
「その点も、踏まえて、エクスガンナー・カッパの完全撃破が今回の目標になる。次は無いから、心してかかって欲しい」
 雄大は、真っ直ぐにケルベロス達に視線を向けて言うと、資料を開く。
「カッパについて改めて説明するな。カッパは、エクスガンナー計画における、サポート機だ。名目上、サポート機と言う事になってるけど、カッパの戦闘力は他のエクスガンナー機と遜色無い。演算能力やグラビティの応用力に関しては並のダモクレスの比では無いと言ってもいいくらいだな。そして、エクスガンナー計画への執着も他の機体に比べて高い傾向にある」
 自身が、最大限に貢献する事で、仲間達の負担を軽減させようと考える節と『エクスガンナー計画』に全てを捧げていると感じる言動が多いことが報告されている。
「第二陣までの功績で、カッパの部下だったガンドロイドは、全て撃破済み。カッパは現在1機で動いている。まだ、他のエクスガンナー機と合流していない様だから、カッパだけが相手になる。カッパが侵入する、工場の人員は避難済みだからそっちの心配は無いけど、カッパはどんなアクシデントがあろうと、工場から10分で撤退する。10分以内に撃破出来なければ、こちらの負けと思って欲しい」
 プログラムなのかカッパの意思かは分からないが、時間制限がある以上、それを意識しないで戦えば、撃破する事は難しいだろう。
「カッパの使用可能グラビティは、旋刃脚、降魔真拳、クイックドロウ、制圧射撃、ブレイジングバースト、バレットタイムの6つ。この数のグラビティを効率よく使って来る事と、敵戦力の解析能力がカッパの強みだな。解析が済めば、最も効率のいい戦闘方法を選んで来る。隙を見せたり、戦力に穴が開く様な事があれば、そこから崩される恐れが高いから注意して欲しい」
 戦闘中も一つの作戦に固執せず柔軟に動く様は、ケルベロスに近いと雄大は言う。
「今回の襲撃タイミングに関しては工場内でカッパを待ち伏せ、カッパが工場に侵入次第、戦闘開始で問題無いと思う。カッパのタイマーが動き始めてからの10分をフルに使って、必ずカッパを撃破して欲しい」
 そこまで言うと、雄大は資料を閉じる。
「説明は以上になるけど、もう一度言うな。カッパ単機を相手に出来るチャンスは、今回が最後だ。確実にカッパを撃破してくれ。俺は、みんななら出来るって信じてる! 頼んだぜ、みんな!」
『ニカッ』と笑顔を浮かべると、雄大はヘリオン操縦室へと向かった。


参加者
アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426)
エニーケ・スコルーク(黒麗女騎・e00486)
星野・光(放浪のガンスリンガー・e01805)
斎藤・斎(修羅・e04127)
雪村・達也(漆黒纏う緋色の炎剣・e15316)
舞阪・瑠奈(サキュバスのウィッチドクター・e17956)
上里・藤(レッドデータ・e27726)
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)

■リプレイ

●ラストバトル
 8人のケルベロス達は、夜の精密機械の部品工場で息を潜めて、ターゲットが侵入して来るのを待っていた。
「ミッション……補給資材強奪に現れる敵指揮官機撃破。ここで取り逃がせば、更なる強敵として再来するのは明白」
 今回の目的を仲間達に再提示する様に、リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)は、事務的に今回の作戦を口にする。
「カッパさんとの戦いも……最後なんですね……必ず撃破して、エクスガンナー計画を……止めなきゃです……」
 金の髪の少女、アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426)が、決意を確たる意志として口にする。
 雄大の情報では、今回の襲撃を終わらせれば、撃破対象である『エクスガンナー・カッパ』は拠点に戻ってしまうと言う。
 そうなってしまえば、カッパの次の動きを察知する事は難しくなるだろう。
 あくまでカッパの目的は『エクスガンナー計画』の再始動だ。
 全容は分かっていないが、多くの指揮官機が動いている作戦である。
 ダモクレス勢力の強化に繋がる作戦であることは、間違いないだろう。
「なるべく、多くの情報を引き出したい所だね」
 多くのエクスガンナー機と対峙して来た、星野・光(放浪のガンスリンガー・e01805)は、彼等の強さも理解していた。
 だからこそ、確実に仕留めなければならないと、誰よりも強く思っていたし、彼等を侮りもしていない。
『ガチャン』
 不意に工場に金属音が響いた。
 ケルベロス達に緊張が走る。
「誰も居ないようアルね。すぐに機械部品を回収して、撤収するアル……」
 赤いチャイナドレスを纏ったダモクレス『エクスガンナー・カッパ』が辺りを警戒しながら、工場内に侵入して来る。
「けれど、必要なパーツもあと僅かアル。それさえ手に入れれば、他のエクスガンナー機と合流出来るアル……」
 その時、カッパに向かって巨大な閃光が奔った。
「グァッ!?」
「取り逃してもなお、こういう形でお会い出来て何よりですわ。なんせ貴女をここで壊せますもの……泣いて命乞いするのならば考えてあげますわよ?」
 バスターライフルを放った、エニーケ・スコルーク(黒麗女騎・e00486)が、高みから見下ろす様な口調でカッパに言う。
「……グッ! ケルベロスアルか……また邪魔をする気アルね」
「人のいる時間帯に侵入して下さらなくて感謝しています」
 ドラゴニックハンマーの柄をカッパの稼働部に達人の如き正確さで、叩きこみながら斎藤・斎(修羅・e04127)は、言葉を続ける。
「貴女の仲間は、そういう所に無頓着な方も多かったですけど」
 その言葉を聞いて、カッパの機械の瞳が怒りの色を湛える。
「他のエクスガンナー機を侮辱するのは許さないアルよ! 彼等は、ワタシより優れて……」
「カッパ、他のエクスガンナーはもう殆ど残ってないぜ」
 カッパの言葉を流星を彷彿とさせる蹴りで遮りながら、上里・藤(レッドデータ・e27726)が、そう口にすれば、カッパは更に激昂する。
「そんな訳ないアルよ!」
「事実だよ。イオータは、この前倒してきた……今度はお前の番だ」
 優しさも憐れみも無い口調で、藤はカッパにそう告げる。
「そんなの、信じないアルよ!」
 怒りに任せてカッパは、藤目掛けて魔を降ろした拳を撃ち込もうとするが、その拳は紅蓮に燃える地獄の右腕に防がれる。
「次に顔を見せたら、殺す……と、そう言っていたらしいな? だが生憎と」
 気分の高揚を表すかの様に、地獄の右腕を更に燃え上がらせると、雪村・達也(漆黒纏う緋色の炎剣・e15316)は、纏ったオウガメタル『オニキス』の力を借りて絶望を象徴する『黒太陽』を具現化し、その光をカッパに浴びせる。
「俺は気を失っていて聞こえてなかったんでな? 今回も存分にお前の邪魔をさせてもらうぞ!」
 光が収束すると、達也は雄々しくカッパに宣言する。
 その達也とスイッチする形で、黒髪を靡かせながら、舞阪・瑠奈(サキュバスのウィッチドクター・e17956)が入れ替わると、暴風を纏った強烈な回し蹴りをカッパに決める。
「先の戦闘で頑張ってくれた皆さんの為にも、貴女はここで必ず仕留めます!」
 攻撃の要として戦場に立つ為に眼鏡を外した瑠奈の瞳には、これまでの仲間達の激闘を無駄にしないと言う思いが込められていた。
「一々癪に障るアルね。……今度こそ全員殺すアルよ」
 高ぶった激情をシステムで鎮めると、カッパの瞳は獲物を狩る獣の様に鋭さを増した。

●データと戦略そして解析
「はじめましてです、カッパさん――以前、貴女方と戦ったメイドさんを覚えていますか?」
 時をも凍らす弾丸を撃ち出しながらアリスが聞けば、カッパは弾丸を跳躍する事で避けながら、記憶プログラムを参照する。
「メイド……桃色の髪の淫らな格好をした女アルか?」
「……その方は……私のメイドさんですっ! 侮辱は許しません! 貴女は、ミルフィの代わりに私達が絶対倒します!」
 普段穏やかなアリスも大好きなメイドを侮辱されれば、語気を強めて次の一手の為にグラビティ・チェインを高めていく。
「敵戦力確認……データベース照合……データ一致……目標『エクスガンナー・カッパ』……火器管制システム、アップデート完了。最新パッチ、配信します」
 機械的にも聞こえる声で、データベースの一致を復唱するとリティは、分析結果を搭載した無数のドローンを仲間達に向けて射出する。
 言葉は無機質でも、リティのレプリカントとしての『心』はカッパ撃破の為に燃えていた。
(「単体でもカッパは強敵。客観的な状況判断で、冷静に最前手を打ってくる。だからこそ、ここで倒さないと……」)
「エクスガンナー・カッパ……か」
 呟きつつカッパとの距離を詰めると光は、ありったけのグラビティを打ちつける。
「支援機とはいうけど、個として成り立ってるように見えるけどね。実際の所どうなの?」
「……どう言う意味アルか?」
「ひょっとしたら、アンタの役割の意味がエクスガンナー計画の鍵なのかな?」
 カッパは一瞬だけ目を細めるが、すぐに近接していた光を振り払う様に、右手を横に薙ぐ。
「ま、聞いたって答えてくれるとは、思ってなかったけどね」
 流れる様な連携で藤の大鎌の斬撃と瑠奈のオウガメタルを収束した拳、そしてエニーケの冷気のビームがカッパにヒットする。
 だが、カッパは静かに口を開く。
「……連携は、ワタシ達と互角かもしれないアルね。けれど、勝負はここからアルよ」
 カッパは静かに瞳を閉じ、己の感覚を機械的に増幅し、知覚精度を上げていく。
「バレットタイムを使用していますね。今の内に動きを制限します」
 ガンスリンガーの能力も持っている斎はカッパの動きに気付くと、すかさず動きを止めたカッパに、機械のバージョンアップの機能を奪う事で凍結させる、強烈な一撃を横殴りで放ち、カッパを勢い良く吹き飛ばす。
「そう言う事なら、俺も行くぜ」
 ナイフのグリップを確りと握ると、達也は仲間がカッパに付けた傷を引き裂いて行く。
「止まっているなら、俊敏な動きとやらも無意味ですわ。集中攻撃です!」
 エニーケが仲間達に言いつつ、グラビティを弱体化するエネルギー光弾を放てば、他のケルベロス達も一斉にグラビティをカッパに叩き込む。
 ケルベロス達の猛攻に晒されながら、カッパが笑ったのに藤が気付く。
「解析完了アル」
 カッパの唇がその言葉を発した。

●対カッパ決着!
「くっ! この! 俺が居る限り仲間を倒れさせはしない!」
 カッパの拳を鳩尾に喰らいながらも、達也は必死に身体を支える両足に力を入れる。
「お前には、分かっていると思ったアルがね。別にお前から倒れてもワタシは、問題無いアルよ」
「達也さん回復を。その間、藤さんは私が庇います」
 斎が達也とカッパの間に割って入りながら、達也に自身のオーラを飛ばす。
「すまない。月の光よ。静かに我が身をを清めよ……」
 斎に言葉を返すと、達也も自身に宵闇に光る月光の様な輝きを纏わせ回復に専念する。
(「以前の様に一番最初に俺が倒れる訳にはいかないんだ!」)
 今と同じ様な工場、目の前に居る敵はカッパ……その時、一番最初に地に伏したのは、盾である事を誇りに思っていた……達也だった。
 自身が盾として砕けた時、仲間達の負傷度が格段に上がる事をこれまでの戦いで達也は理解していた。
 だからこそ、斎の言葉にも素直に従った……負けられないのだから。
「もう7分っス! 時間が無いっス! 俺は倒れてもいいっスから、カッパに攻撃を集中して下さいっス!」
 藤が大鎌を振るいながらもタイマーを確認し、仲間達に叫ぶ。
 カッパが優先的に狙ったのは、藤だった。
 回復手である、リティから狙われる可能性が高いと読んでいたケルベロス達だったが、カッパは藤を標的とした。
 カッパの思考回路の中には既に、リティとの戦闘データが入っていたし、今回再びリティの動きを確認する事で前回との誤差を無くした。
 その上で、1番力量が劣り最初に落としやすいと判断し藤を徹底的に狙っている。
 盾が2枚になっている事でダメージが分散されているが、確実に動きは制限出来ている……カッパはそう考えていた。
「みんな、回復は私が支えるわ。カッパ撃破を優先」
 リティが雷の障壁を形成しながら、静かに響く声で仲間達に言う。
(「誰一人倒れないように支える、それが、私のミッション。こっちだって、この前よりは出来るようになった。私の目から逃れるのは……結構しんどい」)
 リティには考えていた事があった。
 もし、自分がダモクレスのままだったのなら、カッパとは良い僚機になれてたかもしれないと……。
 けれど……リティは、心に目覚めた。
(「だから、私は戦う。脆くて弱いからこそ、どこまでも強く輝く命の為」)
 リティの想いが雷の障壁の輝きを更に強くする。
「分かりました、私も攻撃のみに専念します。♪Flowery Princess Heart Style♪――チェンジ・ハートスタイル……!――♪Heart Strike♪」
 リティと共にヒールと攻撃を兼任していたアリスも、振り返らずに言うと『女神のフラワリープリンセスポーチ』のデバイスに『スペードのA』をスラッシュし、オウガメタル『ハート・オブ・プラチナ』を鎧装化し、戦う姫君へと姿を変える。
 姿を変えたアリスの一撃は重く、カッパのガントレットに罅を入れる。
「鬱陶しいアル!」
 カッパは狙いを変えて、前を固める者達に大量の弾丸をばら撒く。
「もう私達も自分の傷に構ったりしないよ。貴女を倒す事だけに集中するって決めたのよ!」
 弾丸を受けても瑠奈は足を止める事無く、右手にグラビティを集中していく。
「そんな拳、避けるのは容易いアルよ」
「残念ね、そっちは囮よ。生成終了。薬は間違った使用すると危険な毒となるのよ」
 後ろに隠した左手にグラビティで生成した注射器を構え、先端の針をカッパの首筋に撃ち込み薬液を流し込む。
「私の生成した毒は機械の身体だろうと蝕んでいくのよ」
「お前等は所詮は人間アル! ワタシを舐めるなアル!」
「うるさいですわよ。カッパ巻きにしてあげますと前にも言いましたわよね。今度こそ死になさい!! ガトリング……READY! ありったけの弾幕を張らせていただきましょう!!」
 内に秘める抑えきれない砲火衝動を全て開放すると、生成したエネルギーをグラビティに変え、エニーケはバスターライフルの引鉄を引くと無慈悲な連続弾をカッパに浴びせる。
「伏して悔いて、泣いて死んで」
 地獄と相性の良い言葉に呪いを乗せグラビティに変え、斎がカッパを苦しめる。
 光の超加速突撃が、アリスの魔法のこもった一撃が、藤の呪詛が、瑠奈の鋼の拳が、エニーケの弾丸が次々にカッパに決まれば、流石のカッパの装甲もボロボロに壊れていく。
「私はまだ終われないアルー!!」
 刃の鋭さを持った渾身の蹴りをカッパは光へと放つが、達也の背中がそれを防ぐ。
「それで終わりか……カッパ?」
「お前は、もうボロボロだったはずアル……何処にそんな力……」
 カッパの目にヒールグラビティを放つ、リティが映る。
「私は誰1人として倒れさせない」
「今だ! 光!」
 達也があらん限りの声で叫ぶ。
「出来ることはやってみせるよ。今だって、一仕事くらいはさ……」
 無造作にカッパに忍び寄ると、光はリボルバー銃の銃口を直接カッパの胸に当てる。
「それが、あんた達をずっと見て来た、私の責任ってやつだよね……」
 光が引鉄を引くも、グラビティで作られた弾丸は銃声を響かせることは無く、静かにカッパの胸を貫いた。
 カッパの脚はゆっくりと折れ、そのままカッパは身体を地に預けるのだった……。

●最期の言葉
「仲間の為にと行動するお前の事は嫌いじゃなかったよ。敵同士でなければ酒でも酌み交わせたかもな」
 達也は横たわるカッパにそう呟いた。
「……冗談じゃないアル。……ワタシはお前みたいな奴は嫌いアルよ」
 カッパは光の最後の一撃を受けてなお、生きていた。
 すぐに彼女に死が訪れるのをケルベロス達は分かっていたけれど……。
 カッパの言葉に少しだけ笑むと『線香代わりだ』と言って達也は煙草に火を付け、カッパの傍らに置く。
「カッパさん……エクスガンナー計画とは……一体なんなのですか……?」
「……お前達には理解出来ないアルよ」
 カッパは、アリスにそう答える。
「貴女方の企んでいる計画も……ここで、終わりです……!」
「……フフッ……何を言っているアルか?」
「え?」
 アリスの言葉を笑うカッパに、思わずアリスは声をあげる。
「……エクスガンナー計画は、まだ終わらないアル。……これまでに持ち帰った資材とデータがあれば、必ずや……」
「お疲れ様、もうよいですわ」
 そう言うとエニーケは、チェーンソー剣の駆動音を響かせカッパの首を刎ねる。
 それと同時に、カッパのヘッドとボディが大きな音を発てて爆発する。
「……皆さん、大丈夫ですか?」
 斎が聞くが、グラビティによる爆発では無かった様で、ケルベロス達に怪我は無い。
「カッパの記憶媒体や装甲材等の回収は無理なようね……」
 何かの手がかりになればと思っていたが、リティが手に取れる様な残骸では何も情報は得られないだろう。
「エクスガンナーが盗んだパーツを回収したいけど……どこに隠してあるのかしら?」
「カッパの言う拠点が何処か分からないっスからね……」
 瑠奈の言葉に、藤が困り顔で答える。
「エクスガンナー計画は、終わらないか……」
 光の呟いた言葉がケルベロス達の表情を曇らせる。
 だが、彼等は『エクスガンナー・カッパ』の撃破という当初の目的を達成する事が出来たのだ。
 新たな脅威が現れようと、ケルベロス達は立ち向かい、撃ち砕く事が出来るだろう……きっと、今日の様に…………。

作者:陸野蛍 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年11月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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