●餓えし命は最早風の様に
「朕の臣民共よ、奮励せよ、邁進せよ! 黙示録騎蝗による勝利を、朕に捧げるのだ!」
ローカストを支配する、太陽神アポロンの叫びが、山の空気に虚しく響く。
周囲に集うローカストの重鎮達は、ローカスト達の窮状を訴え、黙示録騎蝗の中断を願い出る。
しかし、太陽神アポロンは聞く耳を持たなかった。
とうに既に限界を迎えたローカストの中には、理性も知性も失い、黙示録騎蝗の軍勢から脱落していくものも出始めている。
……このままでは、ローカストという種族すら滅びかねないだろう。
だが、それでも、太陽神アポロンの大いなる権威は、ローカスト達を縛りつけ続ける。
「朕を崇めよ、ローカストを救う事ができるのは、黙示録騎蝗と太陽神アポロンのみであるのだ」
……この呪縛は、太陽神アポロンが黙示録騎蝗の中断を命じるか、或いは死ぬまで続くだろう。
或いは、グラビティ・チェインの枯渇によって理性を失うその時まで……。
そして……それから暫しの後、岡山県は新庄村。
『ウガアアア!!』
涎を飛び散らせながら、狂いしローカストが村の中で暴れ廻る。
暴れ廻るローカストはもはや理性の証、知性の証などの欠片もなく、ただただ暴れ廻る。
その暴走に逃げ回る村人達……しかし、運悪く逃げ遅れてしまった、お爺さん、お婆さんをがしっと捕まえると。
『ゲヘヘヘ……!』
『ヒ、や、やめてくれ……うわああああ!!』
と……生きたまま食われていく。
口元の血を拭うと……また、ローカストは次の被害者を捕縛しようと、暴れ廻るのであった。
「皆さん、集まって貰えたッスね! 早速ッスけど、説明始めるッスよ!!」
と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスに、挨拶も早々に説明を始める。
「先日の阿修羅クワガタさんとの戦闘、とりあえず皆さんお疲れ様でしたッス! どうにか阿修羅クワガタさんの野望は阻止出来た様ッス」
「広島のイェフーダーの事件に続き、阿修羅クワガタさんの挑戦も阻止した事で、ローカスト残党の勢力はもう大きく弱まっていると思うッス」
「しかし、ッスけど……ローカストのグラビティ・チェインの枯渇は、良いことだらけではないッス。グラビティ・チェインの枯渇により理性を失ったローカスト達が、人里を襲撃する事件が予知されたんッス」
「今回の事件、起きてるのは岡山県の北側にある、新庄村という所っす。山間の村にすむおじいさんおばあさんを、次々と貪り喰らっている様ッスから、急ぎ向かって、ローカストの暴虐を止めてきて欲しいッスよ!」
そしてダンテは。
「ローカストの数は5匹で、全てカブトムシの巨大化したようなローカストの姿を為ているッス。ただ……どうやら最早知能、理性は失っているようで、その行動も知性は全く無いッス」
「ローカストを迎撃するには大きく二つの方針があると思うッス。一つはローカストを村で迎撃する方法。この場合、ローカストはケルベロスとの戦闘よりも、村人を貪り喰らい、グラビティ・チェインを得る事を優先する可能性があり、村人達への危険度が高いッス」
「一方もう一つの方法は、ローカストを山中で山中なので足場は悪く、戦うには不向きな地形ッスが、一般人への被害が少ない方法ッス。彼らを山中で見つける事はそんなに難しくは無いッスけど、逆に発見出来なければ村の被害は深刻なものになってしまうッスから、捜索は気合い入れて行う必要があるッスよ!」
「又、敵は5匹と言ったッスけど、この敵達と戦うには8人で相手するのが相当ッス。下手に戦力分割すると、一方的に推しきられてしまう可能性が高いッスから、その辺りは注意して欲しいッスよ!」
そして、ダンテは。
「今回、餓えたローカストにより人々が今、被害に逢いかねない状態ッス。どうか被害者を出さぬ様、皆さん、宜しく頼むッスよ!」
と、拳を振り上げるのであった。
参加者 | |
---|---|
叢雲・蓮(無常迅速・e00144) |
天導・十六夜(天を導く深紅の妖月・e00609) |
清水・光(地球人のブレイズキャリバー・e01264) |
ガナッシュ・ランカース(マスター番長・e02563) |
イピナ・ウィンテール(折れない剣・e03513) |
姫宮・楓(異形抱えし裏表の少女・e14089) |
ティア・ラザフォード(シューティングスター・e21071) |
木乃枝・久遠(弁証論治のアンチノミー・e30308) |
●狂気の殺意
岡山県新庄市に現れた、狂いしローカスト。
最早理性の欠片などもなく、一般人である老人を次々と喰らい尽くそうとするローカスト達の出現。
彼らローカスト残存勢力の、最後のグラビティ・チェインの確保の為の方法が、一般人を殺し、貪り喰らうという事を伝えられしケルベロス達は、急ぎ村へと向かっていた。
「うーん……いよいよえげつない事になってきたな……」
と、清水・光(地球人のブレイズキャリバー・e01264)が溜息を吐くと、イピナ・ウィンテール(折れない剣・e03513)、ガナッシュ・ランカース(マスター番長・e02563)と木乃枝・久遠(弁証論治のアンチノミー・e30308)は。
「もうすでに、なりふり構っていられなくなっているのですね……敵とはいえ、哀れな……」
「最早、ただの餓えた獣と化したか……ならば、その苦しみを止めてやるまでじゃな!」
「うん。飢餓感に伴う錯乱、暴走……これはこれでカワイソーだな、とは思うんだけどね。でもゴメンネ、ボクら、人間様の味方だからさ? 無闇に人を殺そうとするなら、それは止めさせて貰うよ?」
久遠はどこかおどけた言葉ではあるが、でもその視線は真剣。
……ともあれ、今回のローカストは一般人を無差別に殺そうとしているのだから……必ずや、止めなければならない。
「追い詰められた生き物の狂気は怖い……デウスエクスはもっと怖いです……でもここで尻込みしていたら……村の人の『今日』を……ううん……『明日』まで奪われてしまう……それだけは、絶対にさせない……!」
と姫宮・楓(異形抱えし裏表の少女・e14089)が言うと、それにティア・ラザフォード(シューティングスター・e21071)は。
「どの時代でも、軍勢の土台になる人達を蔑ろにした指導者は碌な事になりませんね。ここまで狂気じみてると理性と知性を最初に無くしたのがアポロンじゃないかと思えてきますね。まあ私達に原因の一端はあるので、ローカストには哀れみを感じますが、関係の無い人を巻き込ませる訳にはいきません」
そして、天導・十六夜(天を導く深紅の妖月・e00609)、光、そして叢雲・蓮(無常迅速・e00144)が。
「本当、相変わらず頭に来る事をする奴らだ……」
「そやね。所詮はコマとして扱われる悲しさ。自己の改革が出来ない悲劇……と言ってええんか。それでも、恨み鳴く、辛みなく、ただ斬るのみ……この道を修羅道と知り推して参る」
「そうだね。お話とかも出来ないみたいだし、容赦無く行くのだよ。夏はもう終わったのだよ!! さあ、悪いカブトムシをやっつけるのだよー!」
気合いを入れる光に、拳を突き上げる蓮。
そしてケルベロス達は、狂いしローカストを倒すために、村に続く山路を急ぐのであった。
●命の糧は死を迎え
そして、ローカスト達の暴れし山路。
『グウウウ、ウガアア……!!』
と、叫び声を上げながら、暴れているローカストを探す。
そんなローカストの声のする方向へと向かいながら……。
「うー、山道かぁ、インドア派なんだけどなぁボク……!」
と久遠が溜息を吐きつつ歩いていると、それに苦笑為ながら光とガナッシュが。
「ははは、でも備えはいつでもしておくもんやで?」
「うむ。しかしまさか四方を山に囲まれとる村じゃったとはのぅ……さて、どの山じゃろうな?」
と、周りの山を改めて見渡す。
……他にも同様の事件が発生しているのは、深見死、新庄村、津山市……等々。
恐らく敵の本体がいるのは、南か、東の山に居るであろう、という予測。
勿論その予測が本当かどうかは分らないが……その予測。
その話を聞いた上で、イピナと十六夜の二人は上空へ飛び、上空からも索敵を実施している。
つまり、地上と空からの二重検索。
……そうなれば、暴れて、木々を倒して向かってくるローカストの姿は、程なくして発見する事が出来る。
そんなローカストの出現、進路を十六夜、イピナから連絡を受けて地上のメンバーに伝達、その進路の先に立ち塞がるようにする。
「さーてさて、どっからやってくるんやろうか。まぁ……うちらもそのうち地獄行やし、な」
と苦笑為つつ、気合いを入れる光。
そして……ウガアア、と唸り声を上げたローカストが、木々を割り突撃してくるローカスト。
その先手の一撃を、咄嗟に久遠のライドキャリバーが前に回り込んで、カバーリング。
そして、一端距離を取るローカストに、イピナが。
「理性を失ったローカスト、そのなれの果て……如何な戦士もこうなってしまっては……」
と、瞑目しながら呟く。
ともあれ、このまま放置しておいては村に向かってしまう……だから、ここで止めなければならない。
「理性がのーなってきているから、こういう場所での戦いはあかんやろうがな」
と言いつつ光がスターゲイザーを放つと、それに続き楓が。
「私の中の脅威……異形の魂……お願い……! 狂気に満ちたローカストを倒す為に……目覚めて……!」
と祈るように『覚醒・逢魔之時』を使い、自己に壊アップを付与する楓。
「神を纏いて鳴り響け、天導流・鳴神」
そしてクラッシャー列に立つ十六夜、蓮の二人が続けて、雷刃突と、達人の一撃を叩き込んでいく。
勿論、ローカストはマッシュ面から向かってくるわけで、特に回避をしようともしない。
でも、攻撃は最大の防御が如く、前へ前へと出て攻撃してくるローカストは、攻撃を受けても恐れようともしない。
そしてローカストが反撃。五体のローカストが次々と、左から、右からと攻撃を叩き込んでくる。
「……これは、なかなかじゃな!」
「くっ……まさしく知性のなき獣の如き、直線的なのに、それでいて軌道が読めない……!?」
とガナッシュ、イピナが唇を噛みしめつつ、攻撃を受けとめる。
そして、中衛のガナッシュ、イピナが続いて、それぞれロックオンレーザーと、時空凍結弾の連続攻撃をしてくる。
そしてそれに連携するようにティアが、フォートレスキャノンを叩き込み……最後に久遠のライドキャリバーが、キャリバースピン。
最後に久遠が。
「もー、ほんとはこんなの、ない方がいーんだよぉ?」
と言いながら、長久の秘薬を飛ばしていく。
そして、次のターン。
ライドキャリバーがガトリング掃射で次々とローカストを射抜き、足止めし、注意を引き付ける。
勿論、ローカストは前に居るケルベロス達を兎も角殺し、少しでも餓えを凌がんと、凄まじい勢いで仕掛けてくる。
そんなローカストの動きを見定めながら、ガナッシュのバレットストーム、イピナのドラゴニックスマッシュ、そしてティアのドラゴニックミラージュで、バッドステータスを蓄積。
そして、蓮、十六夜、光、楓のクラッシャー陣が。
「綺麗な桜を舞散らせ……天導流、桜華絶咲」
「さーさー、悪いカブトムシさん。さっさとやっつけるのだよー!」
と言いながらの、桜花剣舞や斬霊斬、それにフレイムグリードや、戦術超鋼拳。
クラッシャー効果と共に、一体を集中攻撃していく事で、どうにか一体を、早期撃破出来るように急ぐ。
……そして、戦闘開始から五分程。
『グガアア!!』
と、叫び声を上げて崩れ落ちるローカスト。
でも、仲間の死に対しても、一切他のローカストは感知せずに、ただただ攻撃し続ける。
そんなローカストの動きに、何処か。
「良いぞ! 命尽きかけ、決死の狂気を孕んだ戦蟲は狩り甲斐がある!」
と楓が笑いながら、黒金の流体・外装に身を包みながら一部を鋭利化させ、刀剣と槍を作り出していく。
そして。
「一寸の虫にも五分の魂、最後まで輝いて見せよ!」
と、渾身の絶空斬を叩き込む。
……そして、敵から受けたダメージは、しっかり久遠が回復を飛ばすことで、戦線は維持していく。
経過する事、数十分。
ローカスト、残るは後一体。
『ガアア!!』
と、叫ぶローカストは、どこか悲壮感が漂うが……でも、それに油断する事は無い。
「さて、そろそろこれでしまいや」
と光が宣言すると共に、接近し緋色芙蓉で刺すと、更に十六夜が。
「貴様の業を数えろ……天導流神殺し、血刃蓮華」
と、渾身の攻撃を猛打。
その攻撃に、みるみる内にローカストは体力を削られて行き……そして蓮が。
「あっは! それじゃーそろそろ終わりにしてあげるよ!」
何処か嬉しげに、斬霊斬の一撃を叩き込み……その一撃に、ローカストは全員、崩れ墜ちて行くのであった。
●死を迎え
「死したら朽ちるのみや」
と、光の宣告……どうにか、ローカストを倒したケルベロス達は、息を吐く。
そして十六夜も武器を降ろして。
「ああ……皆、お疲れ様だ。しかし……ローカストめ……何を狙っている……」
拳を握りしめる十六夜。それにガナッシュ、ティアが。
「そうじゃな。どうやらローカスト達は広島、岡山、鳥取と移動しとるようじゃしの。この速さだと……近い内に滋賀か京都で事件が起るかもしれんのう」
「そうですね……ある程度、来ている方向に法則性があるのならば、未然に防ぐ事も出来るかもしれませんね」
と頷き合う。
……そして久遠が。
「そうだね。それ、ヘリオライダーさんに伝えといた方が良いかも? 独断じゃ何か起きても対処出来ないしね。でもさ……ったく、武人肌が多いよね、ローカストは。だからかな……分っかんないなぁ、そーゆーの……こんなになる前に、やりようもあったろうにさ……」
久遠はそう呟きつつ、少し不機嫌に。
「ええ……まぁ、これがアポロンの指示指導であるならば、ローカスト達個々では中々反対行動を起こすことも難しいのかも知れません。何にせよ……一般人達の救出も出来ましたし、後は周りの後片付けをしてくるとしましょう」
と頷き、そしてケルベロス達は壊した者ものの片付けと、修理をヒールグラビティで行い、そして帰路へつくのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年10月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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