エフェメラの渇望

作者:柚烏

「朕の臣民共よ、奮励せよ、邁進せよ! 黙示録騎蝗による勝利を、朕に捧げるのだ!」
 ローカストを支配する太陽神アポロンの叫びが、山の空気に虚しく響く。
 周囲に集うローカストの重鎮達は、ローカスト達の窮状を訴え黙示録騎蝗の中断を願い出るが、太陽神アポロンは聞く耳を持たなかった。
 既に限界を迎えたローカストの中には、理性も知性も失い、黙示録騎蝗の軍勢から脱落していくものも出始めている。
 このままでは、ローカストという種族すら滅びかねないだろう。
 だが、それでも、太陽神アポロンの権威は、ローカスト達を縛りつけ続ける。
「朕を崇めよ、ローカストを救う事ができるのは、黙示録騎蝗と太陽神アポロンのみであるのだ」
 この呪縛は、太陽神アポロンが黙示録騎蝗の中断を命じるか、或いは死ぬまで続くだろう。
 或いは、グラビティ・チェインの枯渇によって理性を失うその時まで……。

 ア、アアアアァァァ――その山村に轟いたのは、理性の欠片無き咆哮と、生きながら食われる恐怖を滲ませた断末魔の悲鳴。ごぼりと溢れる朱が大地を染める前に、その肉体は襲撃者たちによって貪り食われていく。
 村人たちを襲ったのは複数――それは、蜉蝣を思わせる姿のローカストだった。透き通る翅を持ち儚げな姿で知られる蜉蝣だが、彼らローカストは尋常ならざる力を発揮し、手当たり次第に辺りのひとびとを食らおうと暴れていた。
 その口からは意味ある言葉は紡がれず、彼らは只、強烈なまでの飢餓に突き動かされているのだろう。その日一日を、生きる――それだけを夢見て、本能のままに突き立てられた鋭い牙が、またひとりの命を食らっていった。

 阿修羅クワガタさん達との戦いに見事勝利を収めたケルベロスを、先ずエリオット・ワーズワース(白翠のヘリオライダー・en0051)は穏やかな表情で労った。
「広島のイェフーダーの事件……それに続いて阿修羅クワガタさんの挑戦も阻止したことで、ローカストの残党の勢力は大きく弱まっている筈だよ」
 ただ、と続けるエリオットは、このまま順調に行けばと思っていた所だが――ローカストのグラビティ・チェインの枯渇は、良いことだけではないのだと言う。
「……実はね、グラビティ・チェインの枯渇によって理性を失ったローカスト達が、人里を襲撃する事件が予知されたんだ」
 場所は岡山県の山村であり、ローカストの数は全部で5体――皆、蜉蝣のような姿をしているようだ。それほど強力な個体では無いが、飢餓状態で特攻してくる為、予想外の強さを発揮することもあるかもしれない。
「皆は襲撃される村でローカストを迎え撃つか、或いは村に向かってくる途中のローカストを発見して迎撃するか……そのどちらかになるんだけど」
 先ずローカストを村で迎撃する場合だが、飢餓状態のローカスト達はケルベロスとの戦闘よりも、村人を貪り食ってグラビティ・チェインを得ることを優先する危険性があるので、其処に注意しなければならない。
 もう一方――村に向かってくる途中のローカストと戦う場合、彼らは一直線に村へと向かってくるので、発見は比較的簡単だ。しかし、発見に失敗して村を襲撃されてしまった場合、大きな被害が出ることが予想される。
「それぞれに一長一短があるから、よく話し合って決めて欲しいんだ。人数を分散させてどっちも……なんてことをしたら、戦力差から言っても各個撃破されて終わりになると思うから」
 今回のような脱落者が多数出るようになれば、ローカストの残党が瓦解するのは時間の問題かもしれない。しかし今は、人々が飢えたローカストによって被害に遭わないように、村を守って欲しい――そうお願いしてエリオットは、急いでヘリオンの準備へと取り掛かる。
「飢餓が理性を奪い、ただ生きることを願っているのだとしても。その結果、無差別にひとの命を奪うのなら……」
 ――これ以上飢えに苦しむことの無いよう、眠らせてあげて欲しい。エリオットの零した言葉は、風切り音に紛れて消えていった。


参加者
遠矢・鳴海(駄目駄目戦隊ヘタレンジャー・e02978)
チャールストン・ダニエルソン(グレイゴースト・e03596)
八崎・伶(放浪酒人・e06365)
狐村・楓(闊達自在な螺旋演舞・e07283)
外木・咒八(地球人のウィッチドクター・e07362)
ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)
鵜松・千影(アンテナショップ店長・e21942)
鉄・冬真(薄氷・e23499)

■リプレイ

●或る一日の終わり
 それは陽が落ちて、今日と言う一日が終わりを告げる刻。長閑な山村の風景を眺めるのは、遠矢・鳴海(駄目駄目戦隊ヘタレンジャー・e02978)で――こうしていると、此処が間もなく惨劇の舞台になるなど悪い夢のようだ。
(「うん……今はただ、村人を守る事だけを」)
 夕暮れを更なる朱で染めぬようにと、彼女は澄んだ煌めきを宿す霊刀を握りしめる。村へとやって来た一行が選んだのは、此処でローカストを迎え撃つ作戦であった。
「村……まぁ、集落の一つって所だが。そう広くはないし、大きな建物も無いのか」
 村周辺の地図を眺める八崎・伶(放浪酒人・e06365)は、鋳鉄の如き声を響かせながら皆との連絡手段を確認している。迎撃をするに当たり、己のボクスドラゴン――焔に偵察をさせられたらと思っていたのだが、生憎サーヴァントは索敵を行い、且つ此方に伝達する程の複雑な行動は行えなかった。
「ならば僕等で、村民に避難を呼びかけたい所だけれど――」
 表情を微塵も揺らがせぬまま、鉄・冬真(薄氷・e23499)が手元の拡声器に視線を落とした時、村人に事情を説明しようとしていたチャールストン・ダニエルソン(グレイゴースト・e03596)が帰って来た。
「……残念ながら、村全体に一斉に伝達とまでは出来ないようです」
 彼曰く、防災無線を使える場所が近くに無く、またそこまで広範囲に避難を呼びかけると、村を襲撃しようとしているローカストにも気づかれてしまうとのこと。
「敵襲来とは反対側に避難……と言っても、丁度良い場所にそうそう建物はないようですしね」
 目につく建物と言えば、まばらな民家程度のもので――集会所はあるにせよ、とても村人全員を収容出来るほどの規模ではない。
「どうやら、時間に猶予がある訳でもなさそうだしな……近くの建物に避難してもらえればいいんだが」
 よし、とランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)はもふもふ尻尾を揺らし、時間の許す限り避難を呼びかけようと動き出した。
 ――自分たちはケルベロスで、ヘリオライダーの予知によって村を守る為に来たこと。一ヶ所への避難が難しければ、近くの建物へ避難し外へ出ないようにすること。
 拡声器で避難を促す冬真の声は、真っ直ぐに村人たちへと届いていって――突然の出来事に不安そうな表情を浮かべていた者も、不安を煽らぬよう淡々と紡がれる彼の言葉に従い避難を始めたようだ。
(「いつ敵が現れても気付けるようにしないとな」)
 その間に、外木・咒八(地球人のウィッチドクター・e07362)らは出来るだけ纏まって行動し、周囲への警戒を怠らずに敵の襲撃へ備えている。そうしてチャールストンは、移動が困難な者に手を貸して避難の手助けをし――一方で冬真は呼びかけを行う都度、周囲の警戒も行っていた。
「たとえ神サマや仏さんが見離したとしても……俺たちケルベロスがアンタらの命を! 笑顔を! 守ってみせる! 信じてくれッ!!」
 重武装モードに装備を変形させたランドルフの姿は、その頼もしい言葉と共に人々に勇気を与え、彼らは頑張ってと応援しながら避難を終えていく。そうして外を出歩く者が見えなくなった所で、前方の森から姿を現わした敵影を鳴海が捉えた。
「敵だー!」
「やれやれ、お出ましか……めんどくせえ」
 気怠そうに溜息を吐く咒八だが、その口ぶりに反して即座に皆へと注意を呼び掛けている。敵が来たぞと告げる彼の声に頷き、鵜松・千影(アンテナショップ店長・e21942)は傍らのミミック――ベンさんの蓋をそっと撫でた。
「お前、今回結構大変な役割だけどがんばれよ。無事終わったら、うめぇもん食わせてやっからな……冬真が」
「そうだよベンさん、終わったら美味しいものを食べ……え、僕?」
 死んだような目をした千影がニヤッと笑ったのに、つい釣られて返事をしてしまった冬真だが――ベンさんが嬉しそうにかぱかぱと蓋を開け閉めしているのを見ていると、違うとは言いにくい。しかし二人は、こうした冗談を言い合える位に互いを信頼しているのだ。
「冬真。俺はともかくベンさんを……頼むな」
 ――そうしてサーヴァントの身を案じる千影に、無言のまま冬真が頷く中で。直ぐに対応出来るように待機をしていた、狐村・楓(闊達自在な螺旋演舞・e07283)が立ち上がるものの――その表情は微かに曇っていた。
「こんな戦いは楽しくないっすね……」
 今回は少しのミスで人々が守れなくなってしまう。戦うことを楽しむ彼女にとって、背負うものの重さは苦しかったけれど――。
「でも、だから今回は、皆を守るために楓さんは全力で頑張るっすよー!」
 意味を為さない咆哮を轟かせ、飢餓に苛まれながら押し寄せるローカスト達を相手にするべく、楓は颯爽とハンマーを振り上げた。

●暴虐の防波堤
 ――蜉蝣を思わせるローカストは5体。黙示録の行軍から脱落した彼らは飢餓によって理性を失い、ただ本能のまま飢えを満たそうと村に雪崩れ込んでくる。彼らは待ち受ける一行の元では無く、避難をした村人たちの居る方角へと向かっていったのだが、直ぐにその行く手を塞ごうと一行が動いた。
「腹が減るって辛ぇよな。でも、俺達だって易々と食われたい訳じゃね」
 しみじみと呟いて、ローカストの前に立ちはだかるのは伶。盾となる彼らは一体につき一人が抑え役となって張り付き、最後の一体へは攻撃の要となる咒八と楓が、二人がかりで付いて早期撃破を目指す。
「絶対に、村人たちの所へは行かせない……!」
 それまでは担当した敵を抑えることに全力を注ごうと、刀を構える鳴海は身を挺して庇うことを誓った。蜉蝣の聲は不吉な響きを孕んでいたが、それは辛くて苦しいのだと、只々もがいているようで――鳴海は無言で奥歯を噛みしめる。
「……さぁて。お前の相手は俺だよ」
 そんな中千影は気怠い様子で腕を伸ばし、その指先から篝火の弾を撃ち出した。それは炎を使い、獲物を誘き寄せる漁猟のように――煌々と燃え上がる篝火の幻影に対峙するローカストは囚われ、まるで炎に引き付けられる魚の如く千影を襲う。
「逃がせねぇーつーの!」
 その漆黒の瞳が凄みを帯びた直後、蜉蝣の牙が彼の腕を食い破ろうと突き立てられるが、千影はその場を退くことはしなかった。隣でベンさんも偽財宝をばらまき、敵群を惑わすのを見守りながら――冬真は前線で身体を張って守る仲間たちを支えるべく、地面に黒鎖を展開して守護の魔法陣を描く。
「グアアアアアアァァァァ!!」
 それでも暴虐のローカストの勢いは凄まじかったが、盾となる者たちは必死にこれを押し留めようと動いた。流石に此処まで一人ずつ集中して張り付かれては、強引に突っ切ることも出来ないだろう――忌まわしき大鎌を振りかざす咒八の、その壮絶な美貌が虚の力を纏う刃に映し出された時。敵の注意を引こうと伶も動こうとするが、ミサイルが放てないことに気付いて急ぎ手段を切り替える。
(「戦いが日々のレベルにまでなっているから忘れがちだが、これはそれぞれの種族が生存をかけている戦争なんだよな」)
 事前に確りと組み立てていた戦法はあったが、それを実行できる手段を伶は持ち合わせていなかった。たった一つしかない攻撃方法は、容易に見切られるだろう――それでも独自の回復術が使えるのは幸いだが。
「だが、それでも……手加減は無しだ。全力でやり合うのが礼儀ってやつだろう」
 顔に走る傷跡がひりつくような感覚に囚われる伶を支援しようと、焔が属性を注入して傷を癒していく。減退効果が生じているとは言え、冬真も紙兵を舞わせ――その霊力によって仲間たちを守護していった。
「ったく、めんどくせえ……が、気に食わねえ。生存本能なんだろうが、グラビティ・チェインをくれてやるわけにはいかない」
 けれど、しょうがねえなと呟く咒八は、纏めて此処で潰してやるとばかりに重力を乗せた一撃を叩きつける。甲殻がひしゃげたローカストへ狙いを合わせようと、彼は共に戦う楓へ合図をするが――感情を結んでいなかった彼女は上手く連携を行えず、その隙を突かれて棘からアルミ化液を注入されてしまった。
「……つぅ、そう簡単にはいかないっすか!」
 激痛と共に楓の身体が硬直していくが、敵を相手にしているのはふたりだけでは無い。後方から狙いを定めるランドルフの、鋼を纏う拳が唸りをあげて装甲を砕いていき――其処へチャールストンが、凝縮されたグラビティ・チェインの弾丸を一気に撃ち出す。
「行けッ!!」
(「……生きるという事は、自分以外の何かを犠牲にする行為」)
 狼の牙を剥き出しにしてランドルフが吼える中で、チャールストンの心は凪いでいた。我々とて何かを食べねば死にますからと、淡々と想いを馳せる彼は全てを受け入れているのだろうか。
「彼らもそれは同じこと。十分理解できます」
 ――その上で彼は戦い、放たれた弾丸が容赦なく蜉蝣の一体を仕留めた。攻撃に特化しているのか、或いは飢餓により消耗している所為なのか、相手はそう耐久力がある訳では無いと一行は判断し――続いて回復手段を持たないベンさんが抑えている敵の排除へと向かう。
「――安息に堕ちろ」
 破壊音波を受けてふらつくベンさんへ、冬真が溜めた気力を解き放った直後。紫の花から作られた秘薬を用いた咒八は、甘やかな匂いと共に二体目を安息へと誘った。
 ――それが安息かどうか、彼自身にも分からぬままに。

●蜉蝣の幻
 後衛で回復を行う冬真と焔の援護もあり、盾となる者たちは其々に持ちこたえていた――筈であった。しかし敵の数が減り、余裕が生まれたと思った瞬間に伶が倒れてしまう。
「畜生、間に合わなかったか!」
 余裕が出た際、いざと言う時の回復を行おうとしていたランドルフは歯噛みするが、向こうも必死なのだろう。サーヴァントを持つが故に、どうしても他の仲間より地力が落ちる点を伶はカバー出来ず――戦法も実行不可能な状態とあっては、その隙を突かれても仕方が無い。
「……全力、出せなかった……か……」
 ――傷つき、血に塗れた伶の肉体が地面に叩きつけられ、ローカストの一体が包囲を抜けようと動いた。しかし其処へ、すぐさま竜槌を叩きつけて行く手を阻むのは楓だ。
「こんな戦い……誰も喜ばないっすよ!」
 暴風のように荒れ狂う槌が振るわれる度、彼女の金糸の髪が豊かに波打つ。愛らしい人形のような佇まいで、武骨な得物を振り回す――その勢いが加速していく中、楓は精一杯の笑顔を浮かべて蜉蝣へと叫んだ。
「楓さんが全力で相手をするっすよ! 理性がない状態でも、最後はしっかり戦ったって思ってもらいたいから!」
 抑えに回る者たち以外で、彼らはローカストの一体へと狙いを定めていく。そうして確実に仕留めていこうとする中で、盾となる鳴海はローカストの牙を――彼らの抱える苦しみを懸命に受け止めていた。
(「此方にとっては虐殺でも、ローカストにとっては生きる為にしている事」)
 澄んだ刀身が氷のような音色を奏でる一方で、彼女の艶やかな黒髪には血がこびりつき、凄惨な戦いが繰り広げられてきたことを物語る。地球人同士だって――と、其処で鳴海はふと想いを馳せた。
 ――自分たちだって、極限状態なら何をするかなんてわからない。彼らローカストだって、理性があればここまでの事はしなかっただろう。もしも、と其処でチャールストンは考える。もし彼らに理性があったら、何を我々に言っただろう。
(「……『俺たちは生きたいんだ』『邪魔するな』……それとも『人殺し』……?」)
「責める事なんてできないよ……でも。だからと言って、それをさせる訳にはいかないんだ」
 ごめん、と血を吐くように呟いた鳴海は、村を守り切れなくなりそうであれば、暴走してでも守ると覚悟を決めていた。
「……私は誰もを救えるようなヒーローじゃないから。せめてもう、君たちが飢えに苦しむことのないように……ここで、終わらせよう」
 六華の幻影が輝き舞う中、鳴海の口からは裂帛の叫びが放たれて――一方でチャールストンの操る黒鎖は、卓越した技量で以て達人の一撃を食らわせる。
「ええ、それでもアタシは、重力の鎖を撃つのを止めない」
 ――自分が生きていく為には、自分以外の何かを犠牲にしなければならないのですから、と。凍てつくかのように冷静な心のままに、蜉蝣は氷に包まれて儚く砕け散った。
「逝ったか……」
 これで残るは一体――傷つきながらも戦場に立ち続ける千影は、己が対峙する最後のローカストを見遣る。怒りで此方に引きつけた上で、光の盾により守りを固める――そうして相手の力を削ぎ、更に回復も交えていくことで、千影は抑えとしての役割を見事に果たしていた。
(「神を信じ戦い、最後は理性なくし生きる為に喰らう只の虫と成り果てる」)
 それでも彼の瞳に、歓喜や高揚の光は無い。催眠状態によって自身に牙を突き立てるローカストの姿を、千影は憐憫や同情と言った感情も無く、只々静かに見つめるばかりだ。
(「残酷な神は、これをどう見てやがるんだ? この、神に玩ばれた哀れな蜉蝣を……」)
 ――生きたい、と蜉蝣は啼いたのかもしれない。それでも破滅の道をひた走るローカストへ、自分たちがしてやれることは限られている。
「……死んで飢餓から解放されても、君達の望むところではないだろうね。だからせめて最後までその姿を、叫びを、忘れず焼き付けよう」
 君達の命を喰って生きる、それが僕の生き方だと冬真は言った。そうして咒八の振るう大鎌が、夕陽を受けてあかあかと煌めく中で――ランドルフは尚も生きようともがき続ける蜉蝣へ、純粋な破壊の気を纏わせた両腕を振りかぶる。
「詫びはいつかあの世で会ったらしてやる! 今は……お前達を斃して守る! 命を!! 笑顔をッ!!」
 放つのは咆哮による音波衝撃を纏わせて、威力を大幅に増幅させた銃魂技――左右の拳によるコンビネーションブローだ。
「俺の『拳』よ! 輝け! 砕けッ! 貫けェッ!!」
 ありったけの想いを込めて振るわれた、ランドルフの連撃がローカストを捉え――その悲痛なまでの叫びが村落に響く中、蜉蝣たちの進撃は其処で途絶えた。

 チャールストンの燻らす紫煙が空へと昇り、鳴海は残骸さえ残らなかった地面で静かに黙祷を捧げていた。と、彼方を見上げる千影が目にしたのは、舞い散る蜉蝣の翅の幻影だったのだろうか。
「これもアポロンのせいだっていうのなら……絶対に許せねえッ!」
 黙示録騎蝗の犠牲となったローカスト達――彼らにだって名前が、生活があっただろう。ランドルフは非情な太陽神に届くよう、遠く遠く咆哮を轟かせる。
「許さねえッ!! 終わらせてやる!! 首を洗って待っていやがれッ!!」

作者:柚烏 重傷:八崎・伶(放浪酒人・e06365) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。