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「朕の臣民共よ、奮励せよ、邁進せよ! 黙示録騎蝗による勝利を、朕に捧げるのだ!」
ローカストを支配する、太陽神アポロンの叫びが、山の空気に虚しく響く。
周囲に集うローカストの重鎮達は、ローカスト達の窮状を訴え、黙示録騎蝗の中断を願い出るが、太陽神アポロンは聞く耳を持たなかった。
既に限界を迎えたローカストの中には、理性も知性も失い、黙示録騎蝗の軍勢から脱落していくものも出始めている。
このままでは、ローカストという種族すら滅びかねないだろう。
だが、それでも、太陽神アポロンの権威は、ローカスト達を縛りつけ続ける。
「朕を崇めよ、ローカストを救う事ができるのは、黙示録騎蝗と太陽神アポロンのみであるのだ」
この呪縛は、太陽神アポロンが黙示録騎蝗の中断を命じるか、或いは死ぬまで続くだろう。
或いは、グラビティ・チェインの枯渇によって理性を失うその時まで……。
●悪夢の夜
「ギャアァア!」
誰かの悲鳴が聞こえた。
それが苦痛のためなのか、あるいは恐怖のためなのか……それすらも分からないほどに、周囲は騒然としている。
「――!」
そしてまた声にならない悲鳴と共に、生暖かい何かが少女の頬を赤く染める。
それが飛んできた方を呆然と見つめれば、そこには昆虫のような姿をした化け物が、母だったものの腹に顔をうずめて激しく顎を動かしている。
その化け物がローカストと呼ばれるデウスエクスであると少女は理解できたが、目の前で起きている事実を受け入れることはできなかった。
つい先ほどまでは平和な……退屈と言っても良いほどに平和だった村は、現れた四体のローカストによって一瞬にして地獄へと姿を変えてしまった。
周囲にあふれる悲鳴と生臭い血と肉の匂い。それらを貪るローカストたち……まるで、趣味の悪い映画を見ているようだと、少女は茫然と佇む。
映画と違うとすれば、食われている人間たちが全員顔見知りだと言うことくらいだろうか、
「逃げ……」
事実を受け入れられない少女の肩を掴もうとした誰かの頭がもぎ取られ、ローカストの口に咥えられている。
そして、トマトのようにそれを噛み砕くと、ローカストは少女へ向かって――。
●本能のままに
「阿修羅クワガタさんとの闘い、凄かったね!」
小金井・透子(シャドウエルフのヘリオライダー・en0227)はケルベロスたちの前に立つと、興奮気味に語りだした。血沸き肉躍る闘い……それは良いものだと、そして何よりそれに勝利したことは素晴らしいと。
「広島のイェフーダーの事件と、阿修羅クワガタさんの挑戦に勝てたから、ローカストの残党たちの力は弱まっているはずなんだよ!」
続けざまに勝利したことによりローカストの勢力は大きく弱まっているはずだと、透子は言う……しかし、それらを阻止したということはすなわちローカストのグラビティ・チェインの枯渇を意味するわけで、
「……でも、グラビティ・チェインの枯渇で理性を失くしたローカストたちが、人里を襲撃するみたいなんだ」
予知した光景を思い出したのか、透子は目を伏せた。
しかし、その光景を現実のものとしないためにも、ケルベロスたちに伝えるべきことを伝える必要がある。
「みんなに向かってもらいたいのは、鳥取県にある山間の村なんだよ!」
透子はケルベロスたちをまっすぐに見つめると、説明を始める。
「村には十五件くらい家があって、村の端から端までは走って五分程度かな? 村人は五十人くらいいてお年寄りが多いんだよ」
お年寄りが多い上に、今回の作戦は事前に避難させることも出来ない。何とも難しい状況だ。
「村に現れるのは蜂のような姿の五体のローカストだよ。アルミの牙を伸ばして敵を食い破る技と、羽をこすり合わせて破壊音波放つ技、それから棘からアルミ化液を注入する技を使うみたい。一体一体はそれほど強力じゃないけど、五体も居るし飢餓状態で特攻してくるから八人がかりで互角くらいかも」
八人がかりで互角となると、侮れない相手ということか。
この状況だと、単純に考えて村で迎撃するか、打って出て村に入り前に叩くかのどちらかだろうか、
「ローカストを村で迎え撃つ場合なんだけど……ローカストたちは飢餓状態だから、ケルベロスとの戦闘よりも村人を襲ってグラビティ・チェインを得ることを優先するかもしれないから注意が必要だよ」
それぞれのリスクは? と問うような視線に気づいた透子は説明を続ける。
「村に向かってくる途中のローカストと戦う場合、ローカストたちは一直線に村に向かってくるから発見は比較的簡単なんだけど、万が一発見に失敗した場合は村が大変なことになっちゃうかも……」
つまりは一長一短。どちらの作戦をとるにしても村人に被害を出さないようにするには何らかの工夫が必要だろう。
かといって八人で互角と推測される敵だ。中途半端な手を打てばケルベロスが全滅し、誰も村人を救えないといったこともあり得る……いざという時に、何を捨て、何を拾うかの覚悟を決めておく方が良いのかもしれない。
考え込むケルベロスたちを透子はまっすぐに見つめると、
「どうか人々を守って!」
祈るような想いを、ケルベロスたちへ託した。
参加者 | |
---|---|
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720) |
風森・茉依(水百合・e01776) |
月見里・一太(咬殺・e02692) |
天津・総一郎(クリップラー・e03243) |
ルーク・アルカード(白麗・e04248) |
海野・元隆(海刀・e04312) |
比嘉・アガサ(のらねこ・e16711) |
レイリア・スカーレット(鮮血の魔女・e24721) |
●静かな村
夜の少し冷たい風が切り裂かれ、そのことに抗議するかのように耳元で音を奏でては消えてゆく。
しかし、そんな抗議の声など意に介した様子もなく、風森・茉依(水百合・e01776)は自分たちが向かう先……つまりは眼下に見える小さな村へと視線を向ける。
空から見れば点のようにも見える光だが、その一つ一つが人々の生活……人の営みがある証拠だ。
町のように賑やかなものではないが、穏やかを感じさせる村の様子を見て、茉依は絶対に村を守るのだと決意を新たにすると同時に、翼飛行の能力で空に留まる。
これから村に向かってくるというローカスト……それらに村を蹂躙させないために、自らが成すべきことを成すために。
空からの警戒に向かう茉依の横を抜けて、海野・元隆(海刀・e04312)は地上に降り立つと同時に周囲を見回す。そして、上空から観察した村の地形と重ね合わせて、粗方の地図を想像する。
「やれやれ」
幸いなことに家と家の間はそれほど広くはなく、避難させること自体は難しくは無さそうだが、頭の飛んじまってるやつは突然わけのわからんことをしてくるからなぁと元隆は息を吐く。むしろ何も考えていない相手だからこそ、それへの対策を練りすぎると裏をかかれると言うべきか。
元隆の数舜の思考の間に、その横に音もなく降り立った、比嘉・アガサ(のらねこ・e16711)は風で乱れた長い赤茶色の髪を後ろ手に払う。それから猫を思わせる金色の瞳で元隆を見つめると、
「始めよう」
作戦の開始を告げた。
「私たちはケルベロスだ。もうすぐここへ敵が攻めてくる」
夜の静寂……というよりは平和な夜に、雑音混じりの声が響く。
それは拡声器を手にした、レイリア・スカーレット(鮮血の魔女・e24721)の声だが、冷静に端的に語るレイリアの声は夜の村にとてもよく響いた。
レイリアの声を聴いた村人が、何事かと外に出始めたことを確認しつつ、ルーク・アルカード(白麗・e04248)は周囲の警戒のためレイリアたちから離れる。茉依が既に空から警戒に当たってるが、地上からも警戒することも必要だろう。
「これからローカストが攻めてくるんだ」
ルークの背中を目の端にとらえつつ、ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)は外に出て来た村人へ事態を説明する。
ローカストが攻めてくること。自分たちがそれを迎え撃つこと。そのために家に避難していてほしいことと、念のため空き家をわざと作って欲しいこと。
落ち着かせるように淡々と説明するノーフィアと、空から拡声器を使用して同じような言葉を並べるレイリアだが、村人の表情には不安の色が見える。これから自分たちの身に降りかかることを考えれば当然だろう。
「指示に従い避難してくれ。必ず守っから」
「ちょっとだけ待っていてくれ、ローカストくらい俺たちが蹴散らして見せるさ」
不安は当然……だが、月見里・一太(咬殺・e02692)が必ず守ると宣言し、天津・総一郎(クリップラー・e03243)がオトナのような余裕を見せれば、その不安も少なからず拭えたように見えた。
家の配置を把握していた元隆とアガサが避難するべき家を指定し、足の悪い老人には一太や総一郎が手を貸す。空からもレイリアが避難指示を出しつつ、家を気にする老人には壊れても自分たちが直すことを伝えて愁いを失くすように努めている。ノーフィアも村人の非難を手伝っていたが、これなら離れても問題ないだろうと判断し、翼を広げて空へと舞い上がる。
「来たぞ!」
そして丁度その時、ずっと警戒に当たっていた茉依の声が村の中へ響いたのだった。
●理性無き者
茉依の声と彼女が示す方へ視線を向ければ、山の木を揺らし……あるいは薙ぎ倒しながら進んでくる一団を確認できた。
なるほど確かに一直線に進んできて分かりやすいなとレイリアは息を吐き、向かってくる一団……ローカストを迎え撃つべく移動する。この速度ならローカストたちとは村の入り口で遭遇することになるだろう。
「ここは通さない」
喉の奥を鳴らすように唸るルークの横へ茉依は舞い降りる。ルークの視線の先を見やれば、そこにはローカストたちが、ふらふらと理性もなくグラビティ・チェインを求めて向かってくる。
「俺のように米や肉を食って満足できるのなら……幸せになれたのかもな」
総一郎は、その姿には哀れみを感じるが、奴らの糧となるのは人々のグラビティ・チェインだ。ローカストに糧を与えるなら、人々の命を差し出すしかない。だからこそ、分け与えられもしないし、奪わせるわけにもいかない。
分かってはいても想いは残ってしまう。総一郎の目指すオトナならばそこに折り合いをつけた答えってやつを見つけられるのかもしれないが……、
「うん、後で考えよう」
ちらつく分身の幻影を纏いながら考える総一郎の横から、惑星レギオンレイドを照らす黒太陽を具現化したアガサは、ローカストの一団へ絶望の黒光を浴びせる。
アガサにも色々と想うところがあるのだが、とりあえず目の前の危機を脱してからで良いだろうと結論付けたようだ。
「ほら、こっちだよ。君らが欲しいのはここにある」
太陽神に導かれた成れの果てが、黒太陽の光を前に足を止める。黒太陽の光を嫌がるように手で目元を覆っていたローカストの一体へノーフィアは駆け込むと、がら空きになった腹へ電光石火の蹴りを叩きこむ。
足元から突き上げるように放たれたその蹴りをまともに受けたローカストの装甲に亀裂が走り、ノーフィアのボクスドラゴンであるペレがおまけとばかりに封印箱に入って箱ごと体当を食らわせる。
理性を失っても痛みはあるのか、ローカストは苦悶するように体をくの字に折る。
くの字に折ったところで足元に居たノーフィアと視線が合い、ローカストは獲物を見つけたとばかりに蜂のような顔にある牙を交差させてノーフィアの喉元へ食らいつこうとするが……ペレの後ろから駆け込んでいた一太が流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りをローカストの頭部を真横へ叩き込むと、衝撃に耐えきれなかったローカストが地面を転がる。ローカストは地面を転がり苦痛に身を震わせながらも、光のついた民家へ視線を向けて立ち上がろうとする。
「ここまでだ」
だが、一太の蹴りによりあらぬ方向へ曲がった頭の付け根へ元隆が簒奪者の鎌を突き付け、卓越した技量からなる達人の技で、その首を刈り取った。
胴体と泣き別れた首が光となって消え始める……元隆は消えゆくローカストを視界に収め、せめて戦士として散って行けと小さくつぶやいた後に、残ったローカストへ意識を向ける。
本能のままに獲物を貪り食えば、それは最早獣と変わらないのだ。だからそうなる前に引導を渡してやるのが、せめてもの情けとなるだろう。
『ルオォオ!』
ルークは魔力を籠めた咆哮を放ちローカストたちの動きを封じ、
「恨むのなら、あの無能な神気取りを恨むといい」
レイリアはルークの咆哮に怯んだローカストたちに向けて冥府深層の冷気を帯びた手刀を放つ。
ただ獲物を求め彷徨うローカストたちは既に言葉を理解することも出来ないだろうが、それでもそう言葉にせずにはいられない。それはこのローカストの背後に見える王への怒り故だろうか
「ここは絶対に通さないぞ!」
レイリアの手刀で凍り付くローカストの一体が、自分たちではなく民家へ視線を向けていることに気付いた茉依は、氷結の螺旋を放ち更に氷を張りつかせる。
アガサたちの誘導によって避難は完全にではないが問題ない程度には済んでいるはずだ……だが、避難はあくまで保険であり、茉依たちがこの場でローカストたちを完全に抑え込めるのが最良だろう。
茉依は気合を入れなおすように大きく息を吸い込むと、ローカストたちをこの場で抑えるべく、その動きを注視した。
●本能のままに
残り四体のローカスト。
その中の一体が氷に覆われた身を温めるかのように身を……羽をこすり合わせると、ルークたちへ破壊音波を放つ。
「うっ……!」
ルークがその音波に思わずうめき声を漏らす中、続けて別のローカストがアガサの頭を噛み砕かんと、アルミの牙を伸ばしてくるが、
「そんなまとまりのない攻撃、当たらない」
アガサはアルミの牙をゲシュタルトグレイブであっさり受け止めた。一貫性もない散発的な攻撃では、アガサたちを崩すことは難しいだろうが……ぶっきらぼうに言い放ったアガサの横をすり抜け、二体のローカストが明かりのついている民家へ向けて駆け始めた。
「民家に向かうつもりだぞ!」
「させるか!」
ローカストの動きを注視していた茉依が素早く警告を発し、それに応じるように動いた総一郎がローカストの真横へ踏み込み、薄墨色の闘気を纏った拳で魂を喰らう降魔の一撃を脇腹にねじ込む。
「ちょっと合わせていこうか一太。姿勢崩すのはこっちでやるよ。ペレもお願いね! ……我黒曜の牙を継ぎし者なり。然れば我は求め命じたり」
総一郎の一撃で足元の揺らいだローカストの前に回り込んだノーフィアが掛け声をかけると、応えなど聞かずとも分かっているのか一太の反応は聞かずに詠唱を始め、主の意図をくんだペレは大きく息を吸い込み、ローカストの目の前へブレスをまき散らす。
「顕現せよ、汝鋼の鱗持ちし竜。我が一肢と成りて立塞がる愚者へと鉄鎚を打ち下ろせ」
ペレのブレスを嫌がるように手を振り払うローカストにはノーフィアの動きは見えていない。ノーフィアはゆっくりと言の葉を唱え、古の鋼竜の魂を降ろした右腕を鋼竜の巨大な腕そのものとして具現化させる。そしてその腕をローカストへ向けて振り下ろす。
単純明快な力の一撃によって地面へ叩き付けられたローカストの手足があらぬ方向へねじ曲がり、人の手で潰された虫がごとく地面へ押し付けられる。
「あいよ館長、続かせてもらうぜ!」
それからノーフィアの腕の合間に潜り込んだ一太が、その脳天へ目掛けて地獄の炎を纏わせたドラゴニックハンマーを振り下ろすと――ローカストの頭部は枯れた枝を折るような音を立てて砕け散った。
一太たちが一体のローカストを相手にしている間、別の一体をアガサたちが追う。
「……馬鹿なの?」
そしてローカストの後ろからアガサが接触した瞬間、周囲に赤が満ち……それと同時にローカストの瞳にも怒りの色が満ちる。
「これだから、何も考えてないやつは」
アガサが何をしたのかは不明だが、とにかく足が止まったのなら行幸だ。アガサの後ろを追っていた元隆はアガサの脇を抜けてローカストの懐へ踏み込むと、読み難いんだよとぼやきながら構造的欠陥である肩口にドラゴニックハンマーの痛烈な一撃を叩きつける。
元隆の痛烈な一撃でよろめいたローカストへ、さらにルークが突っ込んでゆく……ルークの姿を見たローカストは嫌がるように腕を薙ぎ払い、ルークを遠ざけようとするが、攻撃した瞬間ルークの姿は掻き消えるように揺らいで――背中に衝撃を受けたことを認識した次の瞬間には、意識を刈り取られていた。
光となって消えるローカストの後ろから、惨殺ナイフを手にしたルークの姿が現れる……上手くやったということだろう。
ローカストの内、何体かが民家へ向かう可能性がある、それもまた想定の内だ……心臓には悪いけどと、茉依は小さく息を吐きながらルークへちらつく分身の幻影を纏わせる。ルークの幻影はその傷を肩代わりし、これでルークの傷は癒えるだろう。
「最早語り合うべき言葉は無い。貴様らの死に場所は此処だ」
息を吐いた茉依の正面に躍り出たレイリアがローカストの首筋へゲシュタルトグレイブの痛烈な一撃をねじ込む。ねじ込んだゲシュタルトグレイブは、そのままローカストの首を貫き……ローカストは膝をつく間もなく光となって消え去った。
●守られたもの
最後に残ったローカストは逃げる訳でもなく、無謀にも……と言うよりは何も理解していないのだろう、元隆へ向けて棘を突き立てようとしてくる。元隆はその棘をバトルオーラで受け止め、
「太陽を喰らった魔狼の咢、味わってけよ」
元隆が攻撃を受け止めている間に、裏へ回り込んだ一太は狼の顎を大きく開くと、無防備にさらされたローカストのうなじへ牙を突き立てる。
降魔拳士の魂喰いの能力を応用し、対象から魂ではなく熱を喰らい取るその一撃は、ローカストから最後の熱を奪い取り……熱を奪われたローカストの体は出来の悪い氷細工のように簡単に崩れ落ち、そのまま光になって消えたのだった。
「ん、やったね一太」
一太が口の中に残った残骸を吐き捨てていると、頭の上にペレを乗せたノーフィアがぐっと親指を立ててきた。それに一太が親指を立て返して応じる。
「太陽……」
そんな一太たちを見てルークは考える。理性を失い、本能のままに村を襲おうとしたローカストを許すことは出来なかったが、その原因を作っているアポロンを何とかしなければと。
「アポロンさえ倒してしまえば黙示録騎蝗も止まるんだろうけど」
ルークの言葉を聞いたアガサが頷く。アポロンを倒せれば、黙示録騎蝗を止めることは出来るかもしれない。そうすれば今回のように村人たちに不安を与えるような事態も避けられるだろう。
「ザイフリート王子のように、共に戦場に立つ気概すら無く。配下の命を使い捨てるような外道に、今一度現実を思い知らせてやろう。貴様に残されているのは、滅びだけだとな」
村人が心配だから見てくると小走りに村へと向かうアガサの背を見送ってから、再び消え去ったローカストたちが居た場所へ視線を送り、レイリアは冷たく言い放つ。自ら動く気もない神の末路など一つしかないとレイリアは考えるようだ。
「座して死を待つべからず」
だが、種の存亡をかけて行動するローカストに対し、総一郎は別の感情を抱く。もしも自分がローカストの立場だったらどうするだろうかと……もちろんケルベロスとしての役割は果たすが、
「ヘビーすぎるぜ……種の存亡ってやつに自分が関わってるなんてよ」
それはあまり考えたくもないことだった。
「家がなくなるのはとても悲しいことだからな」
もっとも、鷹揚に頷きながら茉依が言うように、家を失うのも種を失うのも一個体として見れば同じくらいの大事だろう。
「さて、理性をなくしてたってことは、偽装工作もないだろ連中が来た道を辿ってみるとするか? すぐ行けないなら一杯やって……」
茉依の言葉に、う、うん? と首を傾げる総一郎を横目に、元隆は提案するが……ふと、村の方を見れば、先に小走りで向かっていたアガサが早く来いと言った様子でこちらを見ていた。
「まぁいいか」
その様子に元隆は肩をすくめると、仲間たちとともに自分たちが守り切った村へと戻るのだった。
作者:八幡 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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