●魔弾の狙撃手 終章
愛知県小牧市、県立空港に程近い場所に建つ、小さな電子部品工場。
その工場は零細ながら、ある特殊な技術を保有する事が、一部の者達に知られたいた。
そんな小さな町向上に……異変が起こった。
深夜、突如として爆発音が響き渡り、続いて銃声と警報音が鳴り響くと、続いて武装した黒服の男たちが工場内へと乱入してきたのだ。
そして数分後。
警報の鳴り止まぬ構内で、黒服姿のガンドロイド達が、奪い取った物資の運搬準備に取り掛かる中。
大きな狙撃銃を背負った小柄な少女、エクスガンナー・シータは、配下達には目もくれず、工場の一角に設置されたコンピュータへと向かうと、手早くそれを操作し始める。
「……」
無言のまま、画面を流れるデータ群を確認していた彼女の手が、ぴたりと止まる。
「……見つけた」
彼女は小さく呟くと、見つけ出したデータを即座に自身の記憶領域へと複製する。
そして、コンピュータを破壊すると、配下達へと振り向き、エクスガンナー計画再始動に向けての、最後の命令を伝える。
「……準備が出来たら、すぐに部品と機材を持ち出して。計画の再起動に……絶対、必要だから」
命令を伝えるシータの表情は、相変わらずの無表情……だが、微かではあるが、厳しいものが伺い見えるのは、恐らく配下の大多数を失っている為なのだろう。
彼女の配下であるガンドロイドは、残り3体……そして、この作戦だけは、絶対に失敗できないのだ。
だからこそ、彼女は此処で最大の懸念事項を口に出した。
「だけど、必ず邪魔しに来る奴がいるから……」
その言葉に確信めいたものを感じながら、彼女は微かに口元を歪ませると。
「……その時は、シータが足止めする。だから……一体だけ残って」
そう告げた彼女の青き瞳に光が宿る……それは、かつてない強敵に対するの闘志の色なのか。それとも、それは、覚悟の色なのか。
「……ケルベロス」
手にした対竜スナイパーライフル『バルムンク』の出力を調整し終えた彼女は、静かに敵の名を告げる。
そして、彼女は決意の言葉を口にした。
「シータは、お前達を許さない……絶対、排除する」
●決戦の刻、来たる
「ケルベロスのみなさん、お疲れ様っす」
黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は、集まったケルベロス達の前に立つと、深く息を吸ってから……ゆっくりと話を切り出した。
「先日から活動が確認されているダモクレス、エクスガンナーの一人、エクスガンナー・シータが、愛知県小牧市にある工場を襲撃する事が判明したっす」
ダンテの語った敵の名を聞き、集まったケルベロス達の表情は、いつしか真剣なものへと変わっていく。
「どうやらエクスガンナー・シータは、ケルベロスのみなさんとの度重なる戦闘で、配下の大半を失った事もあって、今回、エクスガンナー計画の再始動に必要な最後の機械部品を略奪してから、ダモクレスの本星に帰還するみたいっす……だから、エクスガンナー・シータを撃破するチャンスは、これっきり、って事になるっす」
つまりは正念場……泣いても笑っても、今回がエクスガンナー・シータとの最終決戦になる、という事だ。
否応無しに高まっていく、その場の緊張感。
そんなものを感じ取りながら、ダンテは今回の作戦についての説明を始めていく。
「エクスガンナー・シータは工場を襲撃した後、2体のガンドロイドに部品の運搬を回らせて、残る1体とシータ自身が警戒に当たるつもりらしいっすね。今回はラッキーな事に、襲撃される時間帯が深夜だった事もあってか、襲撃に巻き込まれた一般人も少なく、残る一般人の避難も既に済んでいるはずっすよ」
つまり今回は、心置き無く、エクスガンナー・シータや配下のガンドロイド達と戦える、という事だ。
その事実に、ケルベロス達は少なからず安堵の表情を見せる……が、続くダンテの言葉に、彼らの表情は再び真剣なものとなった。
「とはいえ、問題は……どのタイミングで戦闘に突入するか、って事っす」、
そう言うと、ダンテは2つの作戦案を提示しつつも、それぞれのリスクを説明していく。
「まず、攻撃を仕掛けるタイミングを、部品の運搬が始まってからにした場合は……エクスガンナー・シータは10分間、みなさんを足止めをしようとするっす」
此方を選択をした場合、シータの護衛に就くガンドロイドは1体のみとなり、撃破の可能性は高くなる……が、運搬を見過ごす以上、エクスガンナー計画にとって重要な機械部品が敵の手に渡ってしまう事は避けられない。
「次に、攻撃を仕掛けるタイミングを、機械部品の運搬が始まる前にした場合は……物資の運搬を阻止出来るっすけど、ガンドロイド3体とエクスガンナー・シータと10分間、戦う事になるっす」
逆に此方を選択した場合は、ある意味において、最高の結果をもたらす事が出来る……だが、護衛が増える以上、シータ自体の撃破は、非常に困難なものとなるだろう。
加えて、シータを撃破出来なかった場合は、例え運搬を阻止出来たとしても、シータ自身の手によって、エクスガンナー計画に必要な部品に関するデータは敵の手に渡ってしまう事になる。
エクスガンナー計画の進行を見逃してでも、確実にシータの撃破を狙うか。
シータの撃破だけでなく、エクスガンナー計画の阻止をも狙い、分の悪い賭けに挑むか。
大いなる選択を前に、思案を巡らせるケルベロス達に対し、ダンテは、
「どっちを選ぶかは、ケルベロスのみなさんにおまかせするっす……ただし、これがラストチャンスだ、って事だけは忘れないでくださいっすね」
とだけ伝えてから、敵の戦力について改めて説明し始めた。
「既にご存知だとは思うっすけど……エクスガンナー・シータは、数あるエクスガンナー・シリーズの中でも、対ドラゴン戦闘を想定して生み出された特殊なダモクレスっす。その戦闘力はかなり高く……元々の高い射撃性能に加えて、彼女が装備している対竜スナイパーライフル「バルムンク」から放たれる、一撃必殺の「ドラゴンバスター」は、洒落にならないものがあるっす」
そう大仰に話すダンテの言葉を疑う者は、誰一人としていない。
それは、彼女と交戦したケルベロス達からの情報によって、裏付けされていたからだ。
「そして配下の『ガンドロイド』は……精鋭レベルのケルベロスの皆さんと同格か、それ以上の戦闘力を持っているっす」
だから配下と言えども決して油断してはいけない、とダンテは説明した。
「エクスガンナー計画を再始動しようとする試みだけは、何度であってもぶっ潰さなくちゃいけないっす……ただ、何度も言うっすけど、エクスガンナー・シータと再戦出来るのは、今回が最後のチャンスっすから、絶対に悔いが残らない様、必ずエクスガンナーを撃破して欲しいっす。ケルベロスのみなさん……どうか、よろしくお願いするっす!」
「エクスガンナー計画を再始動させようという試みは、何度でもつぶさなければならない」
と、真っ直ぐな瞳でケルベロス達を見つめた後、深々と頭を下げたのであった。
参加者 | |
---|---|
アンノ・クラウンフェイス(ちっぽけな謎・e00468) |
アーティア・フルムーン(風螺旋使いの元守護者・e02895) |
逢魔・琢磨(ザミエルの魔弾・e03944) |
ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020) |
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827) |
原・ハウスィ(ハウスィの動く城・e11724) |
一之瀬・瑛華(ガンスリンガーレディ・e12053) |
スライ・カナタ(彷徨う魔眼・e25682) |
●
「……どうやら、運搬を開始したみたいだよ」
暗闇の中、幾つもの機材を運び出していく黒服姿のダモクレスを見つめながら、ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)が口を開く。
「ああ、此方も確認できた……となれば、そろそろ彼女も姿を現すはずだ」
その言葉に答えたのは、ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)だ。
そんな彼女の声は普段通りの淡々としてはいたが、その端々には僅かに刺々しいものが混じっている……それは、かつてダモクレスの戦士であった自分として、同じく射撃戦を得意とするエクスガンナー・シータに対する密かな対抗意識と興味があった為かもしれない。
「そういえばシータって、ボクたちの事を許さないとか、排除するとか、面白い事言ってるんだっけ……? それを言いたいのは、ボクたちの方なのにさ」
そんなティーシャに呼応するかの様に、アンノ・クラウンフェイス(ちっぽけな謎・e00468)だ。そんな彼の表情は、これから始まるであろう戦いを前にしても、笑顔を一切崩してはいない。それはまるで さっさと倒しちゃおうよ、と言わんばかりだ。
「とはいえ、そんな事を言い切れる程の実力を、彼女が持ってるのは確か……気を引き締めて参りましょう」
そんな中、淡々と言葉を発した一之瀬・瑛華(ガンスリンガーレディ・e12053)は、シリンダーへと弾丸を込め終えた愛銃を工場の入口へと向けてみせてみせると、
「泣いても笑っても、これがラストチャンス……か」
「ええ……私の事を、脆そうだ、なんて言ってくれた『あの娘』には、もう余裕なんて見させないんだから」
釣られる様にして鋭い視線を送ったのは、逢魔・琢磨(ザミエルの魔弾・e03944)とアーティア・フルムーン(風螺旋使いの元守護者・e02895)だ。
二人はスライ同様、エクスガンアー・シータと戦い、その攻撃力に一度は倒されている。
「……今日で必ず、決着を付けてやる!」
「そうそう! でもきっと、ハウスィは途中で倒されちゃいますけどね!」
そんな琢磨の言葉に、原・ハウスィ(ハウスィの動く城・e11724)が自虐めいた笑顔を見せた瞬間。
「見えた……間違いない、シータだ」
不意にスライ・カナタ(彷徨う魔眼・e25682)が鋭い言葉が発する。
その視線の先にあるのは……工場の入口に立ち、夜風に長き金色の髪をなびかせた小柄な少女、エクスガンナー・シータの姿。
そして、そんなスライの声が聞こえたのだろうか。シータもケルべロス達を姿を捉えると、手にした狙撃銃の銃口を彼らへと向ける。
それを合図に、エクスガンナー・シータとケルベロス。両者の最後の戦いが幕を開けた。
●
「ケルベロス……お望み通り、シータも前に出てあげる」
そう口にしたシータは、構えた対竜スナイパーライフル「バルムンク」より光弾を放つ。
それは先の戦いよりも精度を欠いてはいたが、ハウスィの肩口を正確無比に撃ち貫いた。
その威力を増した一撃は、先の戦いに比べてより大きなものへと変じている。
「へえ、このハウスィの鉄壁を崩す為に、前に出てきてくれるなんて光栄だねぇ……でも、この程度じゃあ、まだまだハウスィは倒れないよ!」
ハウスィは撃たれた肩口を押さえながらも、予想以上に大ダメージを負った事を悟られぬ様、挑発とも取れる言葉を発しながら、にやりと笑ってみせる。
しかし、シータはその挑発には全く興味を示さず、銃口でケルベロス達を薙ぎ払う仕草を見せると、その動きに合わせて短機関銃を構えたガンドロイドが、前衛に立つ者達へと弾丸の雨を降らせる。
その威力は余り大きくはないが、それでも前衛の一部に少なからぬ威圧感を与えていく。
「ちっ、やってくれるわね……!」
「さーて、まずは派手にいこうか!」
その様子に毒づきながら、アーティアは前衛達を守護すべく、ドローンの群れを展開し、ヴィルフレッドが後衛達の士気を高めんと、カラフルな爆発を発生させる。
「おやおや、ご自慢の一撃、いやさ二撃必殺は撃ってこないのかい? あ、そうか。この前もハウスィを仕留め損ねてるからね、しかたないね!」
そんな中、シータへと更に挑発しつつ、ハウスィは裂帛の気合と共に自身へ掛けられたプレッシャーを撥ね退けてみせる。
「……捉えました」
その様子を後方から眺めながら、瑛華はリボルバー銃を構えると、有効射程距離外からの精密射撃をシータへと見舞う。
そこへ銃声と共に走り込んだスライが追撃とばかりに、炎の名を冠した大鎌に雷を纏わせ、神速の斬撃をシータへと繰り出す。
その斬撃はガンドロイドが遮るも、続け様にティーシャが超鋼金属の大槌より放った、竜の力を秘めた砲弾をシータを襲う。
「さあさあ、元気だしていこー!」
そして、爽やかな笑顔と共に、アンノが猟犬の黒鎖を展開し、味方を守護する魔方陣を地面に描き出す中、琢磨は最良の射撃地点へと移動し終えると、シータを照準の中に捉えた。
「あの地球人……やっぱり、不愉快」
シータはバルムンクの銃口を再びハウスィへと向けると、躊躇せず一撃必殺のドラゴンバスターを放つ。
「来たっ……!!」
ハウスィは自らのマニピュレータを盾にして、彗星の如き光弾を真正面から受け止める。
「ハァハァ……ざ、残念ながら、ハウスィは倒れてませんよ……!」
半ば朦朧となりながらもハウスィは、シータへ向けて不敵に笑ってみせる。
だが、そんなハウスィへ、ガンドロイドは容赦なく爆炎の魔力を込めた弾丸を連射する。
「させないよ!」
その瞬間、アーティアは炎の弾丸の雨へと飛び込みながら、流星の煌きと重力を宿した飛び撃りをガンドロイドに叩き込む。
そしてヴィルフレッドも、身に纏いし黒き粘体を捕食形態へ変じさせ、シータへと襲い掛からせる。
「お返しだ……集中した弾幕の恐ろしさと嫌らしさ、また味わうがいいさ!!」
既に回復は間に合わぬと悟ったハウスィは、覚悟と共に自身の全武装を展開させ、シータを牽制すべく、一斉射を放つ。
その攻撃を浴びたシータは、明らかに顔を歪ませながらハウスィを睨む。
そんなシータに現れた変化に興味を覚えつつも、瑛華は狙撃銃の如き姿へと変じさせ竜の大槌より砲弾を撃ち込むと、スライが魂を喰らう降魔の一撃をシータへと打ち付ける。
そんな立て続けの攻撃を受けたシータの身体が僅かに傾くも、いまだ倒れるには程遠い。
そこへティーシャがグラビティを中和し弱体化する光弾を放つ。
「ねえ、自分が放っている攻撃を受ける気分はどう?」
「……不愉快」
その問いにシータは短く答え、その鋭い視線のみを彼女に向ける。
仲間の傷の具合を素早く確認したアンノは、光の盾を具現化し、ヴィルフレッドに防護の力を施した。
「待たせたな、エクスガンナー……約束通り、お前の喉笛を噛み砕きに来たぜッ!」
そんな口上と共に琢磨が紫電を纏った弾丸をシータへと放てば。
「キャンキャン吠える、こいつも……不愉快」
その攻撃を受けたシータは、小さく歯噛みすると、痺れる手でバルムンクの銃口をスライへと向けた……その時だった。
「ほらほら、どこ狙ってるのさ! ハウスィの心の臓はここだよ! しっかりと狙って、さぁさぁさぁ!」
戦場に、ハウスィの挑戦的な声が響き渡った。
その声を聞いたシータは。
「……じゃあ、狙ってあげる」
自身に身体に纏わりつく紫電の戒めから逃れながら、瞬時にバルムンクの銃口をハウスィに向け、引き金を引く。
続く瞬間、放たれた光弾が、ハウスィの左肺を一直線に貫いた。
「ハウスィ!」
アーティアの悲痛な叫び声が響く中、彼は満足そうな笑みを浮かべたまま、地へと倒れ込んでいった。
●
「邪魔なんだよ! 天つの風を纏い、彩る想いを迸れ。唸れ、夢想の刃。風螺旋龍哭刃!」
アーティアは、続け様にスライへと放った弾丸の雨を受け止めると、身に纏ったオウガメタルを瞬時に双刃へ変じさせ、風の刃を纏わせると、ガンドロイドへと躍り掛かる。
さながら龍の嘶きにも似た轟々と唸る風の螺旋に巻き込まれ、ガンドロイドの身体は次々と傷が刻まれていく。
「君の事なんてお見通しさ……ほら、そこ!」
ヴィルフレッドは、シータ自身の防御の薄い場所を一瞬で看破すると、構えた白き銃より轟音と共に弾丸を放てば、続けとばかりに、瑛華が超遠距離から弾丸を飛来させる。
そして、再び大鎌に雷を纏わせたスライが神速の斬撃をシータを繰り出せば、続けてティーシャが連装砲から一斉射撃を行う。
そんな仲間達の攻撃の間を縫う様に、アンノの操る黒き鎖が地を走り再び地面へ守りの魔方陣を描きせば、これでどうだとばかりに、琢磨のアームドフォートの主砲が唸りを上げて砲弾を射出する。
その猛攻を見たガンドロイドは、主を護るべくその身を躍らせる……が、次の瞬間、弾丸と刃の嵐に巻き込まれたガンドロイドの身体は粉々に砕け散った。
……そして、シータも。
その身に纏った軍服のあちこちに、血とも油とも判別できぬ幾つもの染みが浮かべ、荒い息を吐いている。
そして、その瞳に明らかな殺意の色を浮かべながら、バルムンクの照準をケルベロス達へと向けた。
「ねえ、君が僕を狙わないのって……僕が強いから、避けてるんでしょ?」
「さあ、撃って来なさい、シータ! 私が本当に脆いかどうか、確かめてみなさいよ!」
次の攻撃はドラゴンバスターだと読み切ったアーティアとヴィルフレッドが、スライを庇う態勢を取りながら、敵を挑発する。
だが、次の瞬間。
「もう、その手には乗らない……」
シータの中に潜んでいた何かが、弾けた。
「シータの事を……舐めるな!」
そして裂帛の叫びを上げると、己を縛り付けていたグラビティの戒めの多くを、一瞬で振り払ったのだ。
「なっ……!」
そんなシータの予想外の行動に、ケルベロス達は思わず息を飲む……が、すぐさま気を取り直し、再び攻撃を繰り出していく。
アーティアがシータの足を封じ様と、流星の煌きと重力を宿した必殺の蹴りを放ち、ティーシャが構えたバスターライフルより、再び弱体化の光弾を発射する。
そしてヴィルフレッドが炎を纏った激しい蹴り技を繰り出していく。
「……なかなか簡単には倒れてくれませんね」
そう呟きながら、瑛華は仕切り直しとばかりに竜の砲弾をシータへと撃ち込み、いまだ傷の癒し切れぬスライが、シータの魂をも喰らわんと、降魔の拳を叩き込む。
更に、そんな仲間達を支えるべく、アンノが全身の装甲から光り輝くオウガ粒子を放出し、仲間の超感覚を覚醒させると。
「ドラゴンバスターが脅威なら……撃たせなければッ!」
そして琢磨が、叫び声と共に紫電を纏った弾丸をシータへと撃ち込んだ。
そんなケルベロス達の猛攻は、徐々にではあるが、着実にシータの傷を増やしていった。
●
シータがスライへとバルムンクを構える。。
恐らく今のスライの体力では、次の攻撃が何であろうが、耐え切れないだろう。
……だが、盾役たる自分達ならば。
ディフェンダー達がそう覚悟を決めた瞬間、二発目の竜殺しの光弾が放たれた。
「ここは僕が!」
ヴィルフレッドがスライの前に飛び込むと、その攻撃を全身で受け止めた。
「なんだ……竜殺しの銃の火力って……案外と温いんだね、これじゃあ自販機のお茶の方が熱……」
そんな軽口を叩きつつ、シータへとにやりと笑って見せた瞬間。
運命の悪戯か、立て続けに放たれた光弾が、ヴィルフレッドの身体を貫いた。
「れ、連射……する、なんて……!?」
まさかの連撃を受けて倒れ込んだヴィルフレッドを目の当たりにし、ケルベロス達の間に戦慄が駆け抜ける。
……だが、それでも彼らの心は決して折れはしなかった。
彼らは己を奮い立たせると、再び超長距離からの狙撃や冷凍光線、大鎌の斬撃や主砲の一斉射撃をシータへと浴びせていく。
「ほーら、みんな、この程度、大した事ないよー!」
そしてアンノが、その笑みを崩さぬままに、光の盾を具現化すると、最後の盾役たるアーティアへ防護の力を施すと、ケルベロス達は再びシータと向かい合った。。。
「消えろ、ケルベロス……!」
そう告げたシータは、スライへと重力を打ち消す光弾を解き放つ。
そして、その光弾は……スライの胸部へと突き刺さった。
「ぐはぁ……こ、こんな……所でっ!!」
スライの身体が大きく傾く……が、彼は倒れない。否、彼の魂が倒れる事を許さなかったのだ。
「……これ以上、倒させません!」
瑛華が更なる足止めを狙って竜の砲弾を撃ち込み、己を鋼の鬼と化したアーティアが渾身の拳撃を叩き込む。
更には、アンノの描いた守護の魔方陣に護られながら、スライは瀕死の身体も鞭を打ちつつ、シータへと降魔の一撃を叩き込み、その生命力の一部を盗み取った。
「……終われ!」
「電光石化ッ! 行け、パラライザーッ!」
そして、気合の一声と共に繰り出されたティーシャの破砕アームと、琢磨が愛銃から放った紫電の弾丸がシータへと叩き込まれた瞬間。
シータの身体が大きく傾く。
が、彼女は満身創痍の身体を引き起こすと、バルムンクを構え、必殺の一撃を放つ態勢を取る。
「……ドラゴンバスター!?」
「此処で、終わり、とはな……」
迫り来る死を前にに、スライが覚悟を決めた……次の瞬間。
「耐え切って……みせる!」
叫び声と共に飛び込んで来たアーティアが、身を盾にして光弾を受け止めた。
「がはっ……! だけど……アンタの魔弾は、それで最後だよ……シータ!」
膝を付き、口から血を吐き出しながらもアーティアがそう告げた瞬間。
相打ち気味に放った彼女の竜砲弾がバルムンクに命中し、竜殺しの狙撃銃を完膚無きまでに破壊した。
そして。
「……さようなら。機械の狙撃兵さん」
瑛華の愛銃から放たれた弾丸が、シータの左胸を貫くと……魔弾の狙撃手と呼ばれた少女は、ゆっくりとその場に崩れ落ちた。
アーティアが残された物資を調べ、アンノが傷付いた仲間達を回復する中、スライと琢磨は倒れたシータを見下ろしていた。
「本当は全滅させる気だったが……無理だった。お前の覚悟は無駄ではなかったな」
「そう、シータは負けたけど……エクスガンナー計画は再起動する……だから、シータ達は……」
スライの賛辞に言葉を返したシータの身体が、徐々に白い砂へと変わっていく。
「答えろ、シータ! エクスガンナー計画とは……何なんだ? お前達は一体……何を企んでいるんだ!?」
「……」
琢磨の問いに、シータの唇が小さく動く。
その言葉を聞き逃すまいと、耳を寄せた琢磨に届いた言葉は。
「……絶対、教えて……あげない……」
そして、シータの身体は白き砂と化し、サラサラと崩れていった。
そんな彼女の最後の表情は……何故かほんの少しだけ、笑っていた様な気がした。
作者:伊吹武流 |
重傷:ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020) 原・ハウスィ(バーニングハウスィ・e11724) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年11月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 14/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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