「朕の臣民共よ、奮励せよ、邁進せよ! 黙示録騎蝗による勝利を、朕に捧げるのだ!」
ローカストを支配する太陽神アポロンの叫びが、人のいない山中に虚しく響く。黙示録騎蝗は既に何度も失敗に終わり、ローカストたちの元には、新たな作戦どころか、当面全軍が理性を保つに足るだけのグラビティ・チェインすらない始末。現に、既に限界を迎えたローカストの中には、理性も知性も失い、黙示録騎蝗の軍勢から脱落していくものも出始めている。
このままでは、ローカストという種族が滅ぶ。周囲に集うローカストの重鎮達は太陽神アポロンに訴え、黙示録騎蝗の中断を懇願するが、傲岸な太陽神は聞く耳を持たない。
「朕を崇めよ、ローカストを救う事ができるのは、黙示録騎蝗と太陽神アポロンのみであるのだ」
狂気の沙汰……しかし、それでも太陽神アポロンの権威は、ローカスト達を縛りつけ続ける。この呪縛は、太陽神が死ぬか、グラビティ・チェインの枯渇によって、命令を発することができなくなるほど理性と知性を失うまで続くだろう。
そう、既に普通の意味での「理性」は、とっくの昔に太陽神アポロンから失われている。誰もが、既にそう思っていた。
広島県庄原市。
県内最大の面積を持つこの市は、いくつもの市町村が合併してできた広域市であり、都市部と呼べる領域は、市そのものの大きさに比してあまり大きくない。大部分は、中国山地に点在する山村部の小集落である。
その中で、勝光山にある石灰石の採掘場は、日本全国でも有数の採掘量を誇り、切り出しや運搬に多くの人が働いている。お世辞にも交通の便が良いとは言えない場所なので、作業員の多くは採掘会社が現場に建てた宿舎で生活し、会社が呼びこんだ業者の店で手軽に飲食や娯楽を済ませている。集会場で映画の上映があったり、芸能人が興行に来たり、ちょっとした集落よりは都市っぽい雰囲気があるかもしれない。
悲劇は、その採掘場で起こった。
「虫だあっ! 虫の化物だあっ!」
深夜、絶叫が起き、ぶつりと切れる。熟睡していた作業員の多くは、仰天して飛び起き、自分の車を持つ者は駐車場へと走る。
ところが、その駐車場に、カマキリ型のローカストが数匹入り込んでいた。出くわしてしまった運の悪い者は、一撃で首をはねられむさぼり喰われる。
「うわーっ! 人食い虫だーっ!」
「逃げろ、逃げろーっ!」
何とかカマキリの目を盗んで車に乗り込み、発進して逃げられた者もいる。しかし、動き出した車はカマキリの注意を引き、鎌で一撃されて頓挫する車もある。そうなったら、ドライバーは逃げようがない。
一方、宿舎に入り込んだカマキリたちは、逃げまどう人々を追いかけ、追いつめ、殺して喰っていた。餓えに駆られて理性も知性もなくしたローカストたちは、ひたすら獲物……人間を狩ることだけに総力をあげていた。
そして、餓えて狂っていてもデウスエクスはデウスエクス、普通の人間に対抗できる相手ではない。狂宴は、夜が明けて朝になっても終わらなかった。
「広島のイェフーダーの事件に続いて、阿修羅クワガタさんの挑戦も阻止し、ローカストに対する作戦は、順調に進んでいます」
朗報のはずなのだが、あまり浮かない表情で、ヘリオライダーの高御倉・康が告げる。
「ローカスト残党の勢力は大きく弱まり、グラビティ・チェインは枯渇に近付いているものと推定されますが……良いことばかりではありません。グラビティ・チェインの枯渇により理性を失ったローカスト達が、いわば餓えた獣と化して、人里を襲撃する事件が予知されています」
予知された襲撃場所は、広島県庄原市の勝光山にある石灰石の採掘場です、と、康はプロジェクターに地図と画像を出す。
「採掘場といっても、小さな町ぐらいの規模はあり、周囲の集落よりはむしろ栄えている印象です。出入りする人も多く、そこへ餓えたローカストが惹かれたのかもしれません」
襲撃してきたローカストは、カマキリ型が六体。駐車場に三体、宿舎に三体出現したのを確認しました、と、康は告げる。
「厄介なのは、ローカストがどこから採掘場に来たのかわからないので、ヘタに避難ができないということです。車で逃げて、道路でローカストにでくわしたら、目も当てられませんから」
急いで行けば、現場到着は夕方ごろになりますが、人々が勝手に逃げ出さないように手を打つ必要があるかもしれません、と康は告げる。
「逆に、外から採掘場へ向かわないよう通行止めをすることは、地元警察に頼めばできます」
作戦としては、宿舎なり集会場なりに全員に集まってもらって、そこを警戒するのが最も確実と思いますが、一体でも突入を許したら大惨事になってしまいます、と康は言う。
「敵は餓えており、邪魔者を手間暇かけて排除するより、迂回して獲物にたどりつく方を優先するでしょう。どこまで集団行動をして、どこで分散するかもわかりません。その分、連携などはないと思いますが……充分な注意が必要です」
秩序だって行動する軍団と餓えに支配された野獣の集団、敵として手強いのは前者でしょうが、どちらがより恐ろしい被害を出すかは何とも言えません、と、康は呟く。
「ローカストの崩壊は近いと思いますが、苦し紛れの襲撃で悲惨な事態を起こされてはたまりません。どうか、しっかりと防備していただくよう、よろしくお願いいたします」
参加者 | |
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シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695) |
内阿・とてぷ(占いは気の向くまま・e00953) |
流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984) |
御門・愛華(落とし子・e03827) |
皇・絶華(影月・e04491) |
ソフィア・フィアリス(傲慢なる紅き翼・e16957) |
御手塚・秋彦(昆虫狂いのガンスリンガー・e26919) |
ステッラ・ヴィヴァルディ(一族の緩衝材・e29268) |
●見よ! ケルベロスの力を!
「デ、デウスエクスが、この採掘場に攻めてくるのですか!? いったい、なぜ!?」
広島県庄原市、勝光山石灰石採掘場。ケルベロスたちの来訪を受けた現場監督の中年男性は、当然ながら、愕然とした表情になって呻いた。
「正確には、この場所を目指して攻めてくるわけではありません」
皇・絶華(影月・e04491)が、厳しい表情で告げる。
「敵は、ここで働いている方々のグラビティチェイン……ええと、血肉というか生命力を求めて、引き寄せられてくるのです。ですから、逃げても追われて襲われます」
「ですが、御安心ください。皆さんがここに留まっている限り、わたしたちケルベロスが皆さんを守り、デウスエクスを斃します」
きっぱりとした口調で、シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)が言い放つ。
「一人として犠牲は出させません。どうか、わたしたちを信頼してください!」
「ま、まあ、とにかく、まず作業中止と集合の合図を出して、集会所に全員を集めます。そこで、皆に話をしてください」
そう言って監督は、彼と同様に表情を強張らせている助手らしき人たちに指示を出す。
(「ふむ……こりゃ、ケルベロスと言われてもピンとこなくて、外見で頼りなく思ってるな」)
声には出さずに、流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)が呟く。
今回のメンバーは半数が未成年で、成年者四人のうち御手塚・秋彦(昆虫狂いのガンスリンガー・e26919)は二十歳、ステッラ・ヴィヴァルディ(一族の緩衝材・e29268)はドワーフで外見が幼く、ソフィア・フィアリス(傲慢なる紅き翼・e16957)はドワーフでもないくせに詐欺のように外見が若い。
そして最後の一人の清和が、年齢というより製造年月日な雰囲気のメカ然としたレプリカントなので、一般人にしてみれば、責任者というか、ちゃんとした大人はいないんですか、という気分になってしまうのも無理はない。
(「ソフィアねーさんにちょいと本気出してもらってもいいが……ここは一つ、おっちゃんが一肌脱ぐかね。ま、脱ぐんじゃなくて着るんだが」)
もうしばらくは、外は明るいかな、と、清和は窓の外を見やった。
「というわけで、我々ケルベロスが、迫りくるデウスエクスの魔手から貴方がたを守る! ついては、我が力の一端をお見せして、これなら任せて安心と納得してもらいたい!」
集会所で壇上に立った清和が宣言し、人々はざわつきながらも彼に従って外に出る。その数は百人を越えており、個人の種族特性や防具特性だけで全員の信頼を得る方向へ持っていくには、少々多すぎる。
そこで清和は百聞は一見に如かずとばかりに、自分のド派手なオリジナル必殺技『超合金DX要塞斬(チョウゴウキンデラックスフォートレススラッシュ)』の型を披露することにしたのだ。
「では、ご覧あれ! ケルベロス流星・清和の必殺技を!」
轟く大音声で叫ぶと、清和は高々と宙へ跳ぶ。
「全パーツ射出っ 超合金合体! いくぞ必殺、フォートレススラーッシュ!」
「おおおおおおおっ!」
群衆が、大きくどよめく。グラビティで形成された巨大ロボットのパーツが、夕暮れの空の彼方から次々と飛んできて、清和のボディに超合金合体する。
採掘場で働いている人々のほとんどは壮年から青年の男性で、特撮戦隊の巨大合体ロボに胸熱くした子供時代を持つ。清和の必殺技は、そこにどんぴしゃと嵌った。
「ケルベロス! ケルベロス! ケルベロス! キヨカズ!」
誰からともなく歓声があがり、たちまち大勢の声が怒涛の唱和になる。斬撃の型を決めた巨大ロボが、高々と剣を掲げてポーズを取ると、歓声と拍手が混じり合う。
「どうやらこれで、籠城作戦に従ってもらえそうね」
ソフィアが満足げに呟き、ちょっと呆然としている他のケルベロスたちに告げる。
「じゃあ、具体的にどこにどう布陣するか、現場を見て決めましょ」
●窮虫、人を噛まんとす
「そろそろ……ですか?」
集会場の裏口側に待機している内阿・とてぷ(占いは気の向くまま・e00953)が、シャーマンズカードをめくりながら呟く。
すでに夜は更け、予知でローカストたちが出現した時間が、刻々と近づいている。
と、インカム型電話から連絡が入った。
「裏口側、絶華だ。こちらの鳴子に、敵がかかった。数は分からないが、来るぞ」
「裏口側、ステッラ了解。まだ、視認はできないわね」
高所から裏口側を見ているステッラが応じ、そこへ玄関側を見ているソフィアが緊迫した声で告げる。
「玄関側ソフィア、出た! 道路の向こう側だけど、まっすぐ来る! 数、2!」
「前進して攻撃します!」
玄関側にディフェンダーとして配置されている御門・愛華(落とし子・e03827)の声が入り、続いてクラッシャーのシルが抑えた声で告げる。
「玄関側シル、愛華さんと敵一体ずつ引き受けて戦闘に入ります」
「玄関側清和、クラッシャーを援護する」
玄関側の戦況を耳にしながらも、とてぷは裏口側に来ているという敵の気配を探す。正面が道路で開けている玄関側と違い、裏口側はすぐ近くまで木立があり、敵が隠れて接近できる。
と。
「裏口側絶華、敵遭遇! 数1、戦闘に入る!」
絶華の声がインカムから入ったのと、耳を覆いたくなるような金属音が左でしたのと、どちらが先だったろう。
「裏口側とてぷ、クラッシャーを援……じゃない! こっちにも出ました! 数1!」
木立の陰から飛び出してきた人間大のカマキリ……デウスエクス・レギオンレイドこと昆虫人間ローカストが、鎌を振り上げとてぷに殺到するが、ディフェンダーにしてあるサーヴァントのミミック『マミック』が飛び込んで攻撃を受け止める。
「くらえ!」
とてぷは巫術で火炎弾を発生させ、ローカストに叩きつける。避けようとするカマキリの脚に『マミック』が武器を打ち込む。
「裏口側秋彦、クラッシャーを援護します」
落ち着いた声で秋彦が告げ、同時に左で激しい金属音があがる。
(「こいつは『マミック』に任せて、わたしも向こうに行った方がよい……のですか?」)
一瞬、とてぷは迷ったが、次の瞬間、カマキリが『マミック』を躱し、彼女に襲いかかる。霊的存在のサーヴァントは倒しても餌にならない、と、飢えたローカストが本能的に気が付いたのかどうかはわからないが、『マミック』の割り込みも及ばず、鋭い鎌がとてぷの肩を抉る。
「くっ……!」
激痛を感じながらも、とてぷは下がらず踏み止まり、ローカストに捕縛の巫術を叩きつける。『マミック』は愚者の黄金を吐いたが、カマキリは見向きもしない。
「裏口側ステッラ、ジャマーを援護しますね」
声とともに、とてぷの肩の傷に一瞬激痛が走ったが、すぐに傷が塞がり出血も止まる。ふう、と息をついて、とてぷは目前のカマキリ人間を睨み据えた。
「あと二体……どこにいるの?」
油断なく戦場全体を見回しながら、ソフィアが呟く。
現状、姿を現したローカストは、玄関側二体、裏口側二体。それぞれ布陣したメンバーが対応し、阻止に成功。まだ潰すには至っていないが、押している。
しかし予知によれば、飢えたローカストは、あと二体いるはず。
そして、飢えて獲物を求める獣は、戦闘が起きている場所へ敢えて突っ込んでこようとはしないだろう。むしろ迂回して手薄な場所へ……。
「横……右に出たわ! 玄関側ソフィア、サーヴァントを送る!」
絶華が仕掛けていた鳴子に敵がかかり、ソフィアは手元に残していたサーヴァント、ミミックの『ヒガシバ』を放つ。
「あと一体……」
ソフィアと背中合わせの位置で戦場を見回すステッラが、緊張した声で呟く。
「木立の中だろうとは、思いますが……」
「そうね……でも、思い込みは禁物よ」
ソフィアが応じた時、集会所から少し離れた宿舎の屋上に、ぬっと影が立った。
「……え?」
「何やってんの? あんなところで?」
人々は全員集会場に避難しており、当然、宿舎は無人だ。直前まで人がいた気配に、見当を誤ったのかしら、とソフィアが首を傾げた時。
宿舎屋上に立ったローカストは、羽を広げて集会所に向けて飛翔した。
「あ……」
そういえば、カマキリは飛べるんでしたっけ、と呟きながら、ステッラが殺神ウィルスを投擲、傍らに待機していたビハインドの『アリーチェ』が金縛りを起こし、ローカストは墜落こそしなかったものの、空中でつんのめるような変な動きをする。
そして。
「……この私に肉体労働させるとは、高くつくわよっ!」
燃えるような真紅の翼を広げ、ソフィアが飛翔迎撃に出る。
「(元)時空の調停者、オラトリオにその人ありと知られたソフィア・フィアリス様を舐めるなあっ!」
けっこうノリノリで言い放ち、ソフィアは空中でローカストを捕捉、二つの縛霊手でばちこーん、と挟み込んで撃墜する。
「これで六体、全部所在が知れた! あとは潰すだけよ!」
さあ、みんな頑張って、と、ソフィアは上空から檄を飛ばした。
●狂虫死すべし
「その罪ごと凍らせます。第六地獄『青蓮』」
ソフィアに撃墜されたローカストは、まだ潰れてはおらず、起き上がって全身を震わせる。
そこへ愛華が飛び込み、躊躇なく必殺技「氷華(ヒョウカ)」を放つ。 地獄化した愛華の左手がローカストに触れ、 八寒地獄の一つである青蓮地獄の冷気を流し込む。
「キ……キシャアッ!」
「散れ」
愛華が低く呟き、全身を凍結させられたローカストは、こなごなに砕け散って斃れる。
「私は守ると誓ったんだ」
呟いて、愛華は最初から対峙している二体のローカストを見据える。飢えに駆られ、理性を失い、恐れるものなどないはずのデウスエクスが、たじっとわずかにさがる。
そこへ、シルが必殺技『精霊収束砲(エレメンタルブラスト)』を叩き込む。
「火よ、水よ、風よ、大地よ……。混じりて力となり、目の前の障害を撃ち砕けっ!! フルドライブ、バーストッ!!」
虫なんて、虫なんて、いなくなっちゃえー、と、背中に一対の青白い魔力翼を発現させたシルは、鬼気迫る表情で言い放つ。
もともと彼女は生理的に虫嫌いで、見るのも嫌なのを我慢して出動してきているため、闘うとなったら情けも容赦もあるわけがない。
そして三体目のローカストを、清和が砲撃形態のドラゴニックハンマーから発射した竜砲弾で撃ち砕く。
「玄関側、殲滅完了!」
「お見事! で、右側から出た敵を『ヒガシバ』……ミミックがひとりで足止めしてるから、急ぎそっち向かって!」
ソフィアが上空から指示を飛ばし、三人は息つく暇もなく新たな敵に向かう。
一方、裏口側の戦闘も、決着に向かっていた。
「我が身……唯一つの凶獣なり……四凶門……「窮奇」……開門……! ……ぐ……ガァアアアアアア!!!!」
絶華が必殺技『四門「窮奇」(シモンキュウキ)』を発動、愛用のナイフ『三重臨界』を凄まじい速度で繰り出し、ローカストを解体する。
とてぷは火炎弾、『マミック』は武器を振るって、対峙するローカストを潰すまではいかないが、確実に足止め、消耗させる。
そして秋彦が、とてぷと向かい合うローカストを、グラビティを乗せた弾丸で狙撃する。
「……しぶといなぁ」
本来は虫好きの秋彦は、哀しげな表情で呟く。アポロンさえいなければ、早々にローカストと和解する道もあったかもしれない。そうなっていれば、ローカスト達が飢えと狂気に苦しむことも……。
「……もう元に戻る事もなく苦しいだけなら、早く楽にしてやるしかないな」
ローカストはとてぷを攻撃しようとしたが『マミック』に阻まれ、移動してきた絶華から強烈な蹴りを喰らう。
「すまないな……お前達をこの様な方法で止めねばならぬ事を」
対峙したローカストに、絶華は告げる。
「遥か遠い所で……戦いを強要され悲鳴をあげながら命を捨てざるを得なかった女達が居たという。……お前達もまた……そんな自分勝手な何かの犠牲者なのかもしれない、な」
もちろん、狂気に陥ったローカストは、絶華の言葉に何の反応もしない。むしろ秋彦が不思議な共感を覚え、素早く次弾を装填して、ローカストの頭部を狙う。
「……せめてお前達を永遠に飢えぬようにしてやろう」
絶華と秋彦が期せずして同じ言葉を呟き、ローカストの頭部に命中した弾丸が、その飢えと狂気と絶望を、命とともに断った。
「 これで決まりだ! 必殺っ フォートレススラッシュ!」
清和が必殺の『超合金DX要塞斬(チョウゴウキンデラックスフォートレススラッシュ)』で、最後のローカストを叩きつぶす。
敵が巨大化しているわけではないので、傍目には巨大ロボットが人間大の相手を力任せに潰すという図になってしまい、格好良さ的には少々まずいのだが、観客がいないのだから問題はない。
そしてソフィアが、上空から舞い降りる。
「……戦闘中、生きてるうちにあげる余裕はなかったけど、末期の蜜よ」
呟いて、ソフィアはローカストの遺骸に、一滴の蜂蜜を垂らす。ほとんど遺骸の残っていない者もあるが、彼女は六体のローカストが斃れた場所に、それぞれ末期の蜜を手向ける。
「彼らもアポロンの犠牲者……どうか、安らかに」
「太陽神アポロン……配下をこんな目に遭わせて、いったいどこに潜んでいる!」
割り出して、狩り出して、必ず斃してやる、と、愛華が地獄化した左手の拳をぐっと握る。
そして絶華が、厳しい表情でうなずく。
「悲劇の連鎖を断つには、アポロンを斃すしかない。奴の潜伏場所、今回の諸事件のデータを集め、何としてでも割り出そう」
せめて……大地の糧として……眠れ、と、絶華はローカストの遺骸へ黙祷した。
作者:秋津透 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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