悲劇の連鎖を食い止めよ

作者:ともしびともる

●太陽神アポロン
「朕の臣民共よ、奮励せよ、邁進せよ! 黙示録騎蝗による勝利を、朕に捧げるのだ!」
 ローカストの長、太陽神アポロンが号令を上げる。権威者としての振る舞いも、堂々たるその叫びも、今や虚勢と変わりなかった。
 イフェーダーの敗北、阿修羅クワガタさんの敗北。グラビティ・チェインが得られず、困窮しゆくローカストの実情を側近達が何度となく奏上したが、太陽神アポロンがそれを聞き入れることはない。
「朕を崇めよ、ローカストを救う事ができるのは、黙示録騎蝗と太陽神アポロンのみであるのだ」
 太陽神アポロンのもと、ローカスト達が歩んでいるのが破滅の道であることは、もはや明らかであった。飢えにあえぐ末端ローカスト達に救いの手は差し出されない。救済を得られなかった彼らの中から、哀れにも理性も知性も失うものが出始めた。そして飢えた彼らの標的は、更に弱いものへと向けられることになるのだ。

●惨劇
「助けて……!」
 中学生の大竹由美が、パジャマのまま靴すら履かずに、必死の形相で夜のあぜ道を走っていた。
 岡山県の人里離れた山村。事件とは無縁の平和なこの村が、この夜は地獄と化していた。
 一日の終わりを普段通りゆったりと過ごしていた由美の家に、突如虫人間のようなものが窓を割って現れ、キッチンに立っていた由美の母の喉笛に噛み付いた。押し倒された母はピクリとも動かず、虫人間に血をすすられていた。
「由美、逃げろ!!」
 優しい父の、あれほど怖くて本気の怒鳴り声を由美は聞いたことがなかった。言われるままに家を飛び出し、明かりのある近所の家へと駆け出したが、由美を追いかけてきたのは父ではなく、例の虫人間だった。
「助けて……!」
 喘ぐように言いながらようやくたどり着いた隣家の玄関から、赤ん坊を抱えた女性が飛び出してきた。
「やめて! この子だけは、お願っ……」
 玄関から新たな虫人間が現れ、彼女を力任せに殴打する。虫人間は倒れた彼女の腕から赤ん坊をつまみ上げ、頭から貪り食い始めた。
「……!!!」
 由美は絶望的な思いで踵を返す。近所に逃げ込むのは諦め、村の集会場を目指そうとしたが、自分を追ってきた虫人間が既に行く手を阻んでいた。頭が真っ白になり、その場にへたり込む由美。キシキシキシキシと、口から不気味な音を発しながら拳を振りかぶる虫人間を見上げ、由美が最期の言葉を呟く。
「助けて……ケルベロス……!」

●守るために
「阿修羅クワガタさん一党との戦い、見事でした。みなさまお疲れ様です」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が落ち着いた様子で挨拶し、状況の説明を始めた。
「ローカストの作戦を立て続けに退けたことで、ローカスト残党の勢力は大きく弱まっているはずです。ですが、ローカストがグラビティ・チェインを枯渇させつつあることが、新たな事件を生み出しかけています。……飢餓により理性を失ったローカスト達が、統制を離れて人里を襲撃する事件が予知されているのです」
 この事件もまた、飢餓ローカストが起こす事件の一つだ。
「皆さんにはこの村を襲う飢餓ローカストの撃破をお願いします。敵ローカストは5体。全てがコオロギ人間のような外見をしています。強い個体ではありませんが、飢餓状態ゆえの予想外の強さを発揮することもあるかもしれません。敵は村の北側にある山林からを村へと向かってきますので、村に侵入する前の敵部隊を発見して迎撃するか、村の中で侵入したローカストを迎え撃つかを選ぶことになるかと思います」
 山林内で敵を探し出すならば、敵は姿を隠すことなく本能のままに突撃してくるため発見は難しくはないが、発見に失敗してしまうと、村に甚大な被害が出てしまうだろう。
 村の中で迎撃する場合、飢えたローカスト達は戦闘中でも村人を襲ってグラビティ・チェインを奪うことを優先する危険性があるので、注意が必要だ。村の中心地には屋内集会場と広場があるので、作戦に利用できるかもしれない。
「また、部隊を分けて敵を分ける作戦はお勧めできません。敵は一丸となって行動しており、分隊で敵に当たってしまうと、戦力差で押しきられ勝ち目がなくなってしまいます。部隊全員揃った状態で戦闘できるようにしてください。」
 セリカは一呼吸置き、改めてケルベロス達に向き直った。
「罪なき人々を襲う者達に、容赦する必要はありません。私たちは守るべきものを守り通しましょう。よろしくお願いします」


参加者
矢野・優弥(闇を焼き尽くす昼行燈・e03116)
アルベルト・アリスメンディ(ソウルスクレイパー・e06154)
リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)
高橋・月子(春風駘蕩たる砲手・e08879)
ミレイ・シュバルツ(白銀の風姫・e09359)
レクト・ジゼル(色糸結び・e21023)
浜咲・アルメリア(シュクレプワゾン・e27886)
ラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503)

■リプレイ

●守るために
「わたしはケルベロス。ここにデウスエクスの襲撃が予知された」
 岡山県某所の夜8時半過ぎ、大竹由美の家を訪ねたのはミレイ・シュバルツ(白銀の風姫・e09359)だった。突然の告知に動揺する一家へとミレイは努めて静かに言葉を紡ぐ。
「落ち着いて、みんなと一緒に集会場に避難して。あとはわたし達がなんとかする。バリケードを作るから、車での移動をお願い」
「廃材とか、木材とか、バリケードになりそうな物は持って避難してね。あと、明かりやテレビなんかはつけっぱなしで!」
 アルベルト・アリスメンディ(ソウルスクレイパー・e06154)も、南側の家を回って避難指示にあたっていた。
 避難所となった集会場に、老爺をおぶった矢野・優弥(闇を焼き尽くす昼行燈・e03116)が到着する。すまないねと恐縮する老爺に、優弥は笑って対応する。
「とんでもない、おじいさんの一人や二人軽くおぶれるくらいでなきゃ、デウスエクスどもに吹き飛ばされてしまいますから」 
 彼の冗談に老爺や周囲の人々から軽く笑い声がもれる。優弥の隣人力と、彼特有の朗らかな雰囲気が相まって人々に安心感を与え、集団心理を安定させるのに一役買っていた。
 同じく身重の女性に手を貸していたリューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)は、傍らの少年が不安を押し殺すように黙り込んでいるのに気づき、その頭を優しく撫でる。
「……大丈夫だ」
 短くも真摯なリューデの声音に、振り向いた少年の表情が少しだけ笑みに和らいだ。
 レクト・ジゼル(色糸結び・e21023)は集会場の入り口に立ち、人数確認や村人との連絡調整を買って出ていた。
「……では、その農業用車両で裏口を完全に塞いでしまって下さい。……残り20分か」
 レクトは時計を確認しつつ、携帯電話を取り出す。
 集会場の外では、ケルベロスと住民が協力し合ってバリケードを設営していた。
 怪力無双を用いて車を持ち上げていたラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503)の携帯に、レクトからの連絡が入った。
「レクトです、すべての村人が集会場に来ているのを確認しました。ラグナさん、バリケード構築の進行状況は?」
「皆様の協力のお陰で資材の量は十分、完成まであとほんの一息といった所でございます」
 ラグナシセロはそう言いながら、車を横倒しにしてバリケートとして立て掛けていく。
 浜咲・アルメリア(シュクレプワゾン・e27886) 集会場の屋根から、注意深く村の北側を見張っていた。
「――守りきるわ、必ず」
 決意を口にしながら、翼を広げて飛翔を始める。彼女は地図を片手に時々上空を旋回し、敵の出現地点を予測しつつ警戒を続けていた。
 襲撃15分前になり、高橋・月子(春風駘蕩たる砲手・e08879) はバリケード作りに参加していた住民に集会場内への避難を促す。ギリギリまで手伝うと言い張る住民を、月子は優しく、落ち着いて制していた。
「気持ちは分かるわ、ありがとう。でも、みなさんは避難をお願い。命が一番大事よ。仕上げは私たちに任せて」
 15分前にすべての住民が揃っていることを確認し、そして襲撃10分前。
「やれることは、やったよな」
 リューデは作り上げたバリケードを見回しながら汗をぬぐう。すべての作業を急ピッチで進めることにはなったが、村人の手をうまく借りたことによって、ケルベロスたちは避難誘導もバリケード作りもほぼ想定通りに行えた。
「ええ。そして、ここからが本番でございます」
 ラグナシセロが険しい表情で言う。ヴァルキュリアである彼には、洗脳され、村を襲撃したという苦い過去があった。村の防衛という今回の任務に、特別な思いを抱かずにはいられない。硬い表情のラグナシセロの肩を、彼の兄貴分であるレクトが叩く。
「大丈夫ですよ。8人で戦っているということ、忘れないでください」
 ラグナシセロはハッとしたように仲間の顔を見渡し、思い詰めていた自分に気づいて苦笑する。ケルベロスたちは頷き合って、村の北側へと迎撃準備に向かった。

●山村の決戦
 ケルベロス達は携帯電話を片手にそれぞれ距離を取り、北の山の監視陣を広く展開する。監視を初めて数十分後、月子の視界内に蠢く5体の影が映った。
「月子です、目標が村へ侵入したわ。明かりのついた家の窓を覗き込んで……1体が窓を割って家に入ったわ」
「了解。全員でそちらに集合しましょう」
「待って、人がいないと気づいて南へ移動し始めたわ」
 ローカスト達は明らかに家の明かりに引かれるように移動していた。地図の家の位置を確認することで、敵の移動経路を予測することは難しくなかった。ケルベロス達はローカスト達が次に向かうと予想される家へと先回りし、物陰に身を潜める。
 そして予想通り家へと近づいてきたローカストの集団へと、優弥のアイスエイジが炸裂した。
 完全に虚を突かれ、身を切り裂いた氷に動揺する敵集団をケルベロス達は素早く包囲し、奇襲のグラビティ攻撃を次々と浴びせた。
「包囲成功ですね、次の手は……」
 家の屋根に登っていた優弥がそう言って地面に着地する。状況を把握し、体勢を整えたローカストがミレイへと飛びかかり、すかさずアルメリアが庇いに入る。
「……クラッシャーね」
 差し出した腕を牙に引き裂かれながらも、アルメリアは眉一つ動かさず冷静に敵を分析する。
「というか……こいつら、隊列も戦術もあったもんじゃないみたい」
 敵は包囲されていることを差し引いても、明らかに統率のない動きをしていた。ポジションは全員がクラッシャーで、どうも各々本能のままに暴れているようだ。
「了解。手負いの奴から確実に潰す。……狩れ、紅椿」
 ミレイはそう言うや否や一気に一体の敵へと詰め寄り、その胴体に螺旋の掌底を叩き込んだ。その華奢な体躯からは考えられないような衝撃が生まれ、尋常でない勢いでローカストの体が木の幹へと叩きつけられた。
「火力の高い相手かぁ。それなら僕が、張り切って邪魔してやらないとねェ!!」
 アルベルトは闘争への喜びに凄絶な笑みを浮かべる。彼は笑いながら光を纏わせた翼で敵集団の間を翔け抜け、光を浴びた敵の損傷を更に悪化させた。
 奇襲に成功したとは言え、高火力の敵五体を相手するのは中々に骨のある戦闘だった。ディフェンダーと回復手段が充実していたため攻撃に耐えることにそれほど難はなかったが、敵の猛攻の中、積極的に部隊を庇っていたサーヴァントのすあまが最初に姿を消す。集中攻撃を受けていた敵の一体が腕の刃でレクトに切りかかり、主人を庇った金髪少年のビハインド、イードも姿をかき消される。
 イードを切り払ったローカストは、次の瞬間ブラックスライムに全身を包み込まれた。アルベルトが放ったレゾナンスグリードだ。
「っしゃあ! そのまま動くなよ? ……リューデ!」
 友に名を呼ばれた瞬間、リューデは抜刀とともに敵の脇を一気に駆け抜ける。
「……堕ちろ」
 敵は一瞬にしてブラックスライムごと両断され、納刀と同時に事切れた上半身が地に落ちた。
 敵の数が減ったことで、徐々に戦況がケルベロス有利へと傾いてくる。
「お腹を空かせた子には、お腹いっぱい食べさせてあげたくなるけれど……ごめんなさいね」
  月子は表情に憂いを滲ませ、しかし手心は一切加えず、主砲による全力放火を打ち込む。例え敵が犠牲者だとしても、自らの使命の本質を疑う理由になりはしない。
 砲撃とまとわり付いた氷に身体を引き裂かれるローカスト、そこにさらに一段低い冷気が流れ出した。
「古に伝わる八柱の龍王よ。汝が真名と我が魂の契約において、命ず。荒ぶる水と氷の力を持て、我が眼前に立ちふさがりし者どもを討て!」
 優弥の詠唱が朗々と響き、八体の龍が現れる。召喚された八大龍王が氷の嵐を巻き起こす。氷刃がローカストたちを切り刻み、一体が力尽きたように倒れた。
 吹雪の中、一体のローカストが逃走しようと踵を返す。ケルベロス達を飛び越えて逃げようと跳躍しようとした瞬間、何かに絡め取られたかのようにそのローカストの動きが止まった。
「どこへいく?あなたの相手は私たち」
 包囲陣形を取ったことがここで活きてくる。逃走を図った方向にいたミレイが瞬時にワイヤーを展開し、敵の動きを遮っていた。
「裂け、彼岸花」
 ミレイが冷たく呟くと、引きしぼられたワイヤーが敵の外殻にみるみるめり込み、ローカストは断末魔の悲鳴を上げながらバラバラに引き裂かれた。
 敵は残り2体、掃討戦の様相となってきたところで、二体のローカストは急に南の方を凝視しだした。リューデがハッとして同じ方を見やると、誰かが外の様子を伺おうとしたのか、集会場2階の窓のカーテンが揺らめき、光が漏れ出していた。
「集会場……気付かれた!!」
 すぐさま集会場方向へと走り出すローカスト達。
「させないわ!!」
 月子が駆け、敵の進路に身を挺して立ちふさがる。突撃しながら月子に斬りかかるローカスト、迫りくる刃を、飛び込んだレクトが辛うじて庇った。
 肩口を引き裂かれるレクト。同じく飛び込んでいたアルメリアが間髪入れずに戦術超鋼拳をラリアットの様にローカストの顔面に叩き込む。顔を陥没させたローカストは後頭部を地面に打ち付けて倒れ、動かなくなった。
 最後の一体、もう一方のローカストは予想外の動きを見せていた。極限状態ゆえの驚異的な身体能力を発揮し、ボクスドラゴンのヘルを切り裂いて掻き消しながらさらに隙を生じさせず疾走を始め、包囲を抜けて集会場へと向かってしまったのだ。
「火事場の馬鹿力かよ……! 皆、一体抜けたよ、追おう!!」
 アルベルトが叫び、ケルベロス達は即座に集会場へと駆け出した。
 畑や田圃を踏み荒らし、一直線に集会場へと駆けるローカストに、ケルベロス達が全力疾走で追いすがる。よだれを吐き吹き、狂走するローカストにケルベロス達はそう簡単に追いつけない。しかし誰一人追走の手を緩めるものはいなかった。
「あたしの命は、戦えない人を守るためにある。例え、自分の命がどうなろうとも―― 守ることが、あたしの戦いだから」
 夜の山村を駆け抜けながら、アルメリアが胸に秘めた思いを口に出す。村人を守るという彼らの誓いと団結は硬い。村人を守るためなら暴走も辞さないという覚悟の者さえおり、アルメリアも密かに暴走への覚悟を決めつつあった。
 そしてその彼らの覚悟は追いかける脚へと確かに乗り、確実に敵との距離を縮めていた。
 集会場へとたどり着いたローカストは、奇声を上げながらバリケードの車を激しく殴りつける。フロントガラスが派手に割れる音が響き、集会場の中から悲鳴が上がった。
 しかし、バリケードで足を止めたのが敵の運の尽きだった。追いついたケルベロス達の遠距離攻撃が容赦なくローカストに浴びせられる。猛攻に跪くローカスト。その傷だらけになった背を、レクトが稲妻を纏わせたゲシュタルトグレイブで貫く。
「いけませんよ、手は出させませんからね。……ラグナさん」
「……村人の皆様を傷付けさせはしません。今の僕は、ケルベロスでございますから」
 ラグナシセロは星空に飛翔し、剣を構えて一気に敵へと降下する。
「せめて刹那に終焉を」
 飢えと痛みに喘ぎぬいたローカストが、最期に見たのは流星だったのかもしれない。ラグナシセロは剣と共に舞い降りながらローカストの首を音もなく切り落とし、彼に安らかなる死を与えた。

●守った今日と、これから
「皆さん、もう大丈夫。敵は完全に排除したわ」
 騒音に怯えた様子の住民へとアルメリアが声をかける。集会場を開放し、ケルベロス達は住民に作戦の終了を告げた。荒らされたり壊されたりの物的被害は多少あるものの、全てはヒールで再生できる程度、そして村人たちからは怪我人すら出なかった。
「守れた…のか」
 笑顔で無事を祝いあい、感謝を告げる村人たちの様子を見て、リューデも安心感に笑みが少しこぼれる。
「無事守れてよかったねえ! ……あ、リューデ怪我ない?」
 リューデの顔を覗き込みながら楽しそうに言うアルベルト。表情を隠すように顔をそむけるリューデを彼は更に覗き込む。
「その様子なら、大丈夫そう? 怪我を隠してるとかは無しだよー?」
「少しは静かにしろアルベルト。……ヒール、行くぞ」
 言い合うようにしながらも、連れ立って戦闘跡などをヒールに向かう二人。
 住民はバリケードを片付けながら、傍らに転がったローカストの死体を気味悪げに見やっている。月子は住民に笑顔で対応しながらも、かつての敵の亡骸を痛ましい思いで見ていた。もはや言葉もかわせなくなっていた今回のローカスト達。彼らも本来はそんな哀れな存在ではなかったはずだ。
「一緒に生きられる道は、どこかに……」
 彼らを救う手立ては残っていなかったのか、未だ無事なローカストたちとも最後には潰し合うしかないのか。やるせない思いが胸に浮かんだが、詮無きことと頭を振り、
「私も手伝うわ。皆無事で本当に良かった」
 守るべき人々と共に、バリケードを片付け始めた。
 ラグナシセロも怪力無双を再び用いてバリケード片付けに貢献する。破損した車などにヒールして回っていたレクトにすれ違う際、ラグナシセロが彼に声をかける。
「レクト様、今日は……ありがとうございました」
 レクトはニコリと笑って彼に握りこぶしを差し出す。ラグナシセロもまた笑って、レクトの拳と自分の拳をコン、と合わせた。
「しかし、飢餓ローカストか。これは本格的にアポロンの居場所を探して後顧の憂いをなくすために攻め入ることを考えないとな」
 優弥は抱えた資材を降ろしながら、北の山を見上げる。
「今回の敵の進軍方向とか、調査をすれば太陽神の潜伏先を割り出せるのでは?」
 側で資材の整理をしていたミレイの言葉に、優弥もうなずく。
「これの後始末が完全に終わったら、周囲を調査してみるのもいいかもな。上手く行けば、本当にアポロンの居場所がわかるかもしれない」
 二人は改めて、北の山と、そしてその先に広がる景色を見やる。今回の事件は人々にとっての脅威だったが、この事件そのものがローカスト勢力の綻びから生まれたものであるのは間違いない。ローカストを追う彼らの行動によって、世界の未来は動き出すかもしれないのだ。

作者:ともしびともる 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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