井戸に隠れし不死の怪

作者:飛翔優

●その悪夢から目覚めたら
 指の先くらいしか見通せない、暗い暗い森の中。
 枝葉のざわめきに追い立てられているかのように、風にいざなわれているかのように、小学四年生の少年・トオルは歩いて行く。
 体中を震わせながら、目の端に涙を溜めながら。
 風が大きな音を立てるたびに身をすくませた。思わず声が漏れていた。
 それでもなお歩かなくてはならない。
 止まれば怪物に襲われてしまうから。
 トオルは歩く、前へ、前へ。
 暗闇を必死に書き分けて、遠くに見え始めた月の光が降り注いでいる場所を目指して。
 程なくして、木々の途切れた場所へとたどり着く。
 そこには井戸があった。木板で蓋がされている、レンガ造りの井戸だ。
「……」
 ひどく喉が乾いている事に気がついて、トオルは生唾を飲み込んでいく。
 乾きが癒えることはない。
 恐る恐る、井戸へと近づいた。
「っ!」
 蓋へと手を伸ばした時、小さな小さな音がした。
 手を引っ込めたはずなのに、蓋が小刻みに動き出す。
 脚は、金縛りにあったかのように動かない。
 心臓は早鐘のようになっているのに。
 目をそらすこともできずに見つめる中、井戸の蓋がゆっくりと開かれ……。
 ――ぅあぁがぁぁぁぁぁ!!
「ひっ……」
 目玉が飛び出し鼻が崩れ骨が……ゾンビがトオルに襲いかかり……。

「っ……!」
 ゾンビの指先が触れんとした瞬間、トオルは目覚めた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 呼吸を整えながら周囲を見回し、先程の光景が夢だったことを知る。
 目元に涙を浮かべたまま口元を緩め、安堵の息を吐きだした。
「よかった……夢で……本当に……っ!?」
 不意に、その瞳が見開かれる。
 枕の方に後ずさり、窓の方角へ視線を送った。
 不思議な動物にまたがっている女性が、そこにはいた。
 女性は怯えるトオルに近づいて、一本の鍵を取り出していく。
 ためらうことなく、トオルの心臓に突き刺して……。
「え……」
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの驚きはとても新鮮で楽しかったわ」
 鍵が引き抜かれた時、トオルは瞳を閉ざして倒れていく。
 代わりに、異形が出現した。
 レンガ造りの井戸に下半身を隠している、顔も体も崩れたゾンビ……と言った姿を持つ異形……否。
 ゾンビの下半身は、ドリームイーターの証たるモザイクで覆われていて……。

●ドリームイーター討伐作戦
 ケルベロスたちを出迎えた黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)。メンバーが揃ったことを確認し、説明を開始した。
「子供の頃って、ビックリする夢を見たりするっすよね。理屈は全く通ってないんっすっけど、とにかくびっくりして夜中に飛び起きたり」
 そのビックリする夢を見た子供がドリームイーターに襲われ、その驚きを奪われてしまう事件が起きている。
 被害者の名はトオル。小学四年生の少年だ。
「驚きの内容は、暗い森の奥。井戸から突然飛び出してくるゾンビ……といったものみたいっすね」
 そんな夢を見たのはホラー映画やゲーム、マンガあたりの影響か。
 ともあれ、トオルはそんな驚きを奪われた。
 驚きを奪ったドリームイーターはすでに姿を消している。しかし、この驚きを元にして現実化したドリームイーターが事件を起こそうとしているようだ。
「どうか、現れたドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破してほしいっす」
 このドリームイーターを撃破できれば、驚きを奪われてしまったトオルも目をさましてくれることだろう。
「このドリームイーターは現実化した後、トオルくんが住む街を深夜徘徊しているっす」
 故に、深夜に赴きこのドリームイーターを探すことになるだろう。
「幸い、このドリームイーターは相手を驚かせたくて仕方ないという性質を持っているっす。だから、歩いているだけで向こうからやって来て驚かせようとしてくると思うっす」
 驚かしてきたら戦いを挑み、撃破すればよいという流れになる。
 姿は井戸の中に住むゾンビ……と言った形状で、下半身がモザイクに覆われている。ゾンビと井戸は一心同体で、ゾンビが井戸の外に出ることはなく、井戸が浮かんでいるような形で移動するようだ。
 戦いにおいては、井戸の硬さを生かして持久戦を挑んでくる。技は、井戸に引きずり込もうと相手を捕縛する、相手を捕食し傷を癒やす、驚かせて複数人を威圧する……といったものを使い分けてくる。
「また、このドリームイーターは自分の驚きが通じなかった相手を優先的に狙ってくるみたいっす。この声質をうまく利用すれば、有利に戦えるかもしれないっす」
 以上で説明は終了と、ダンテは現地までの地図を含めた資料をまとめていく。
「子供の無邪気な驚き。それを奪ってドリームイーターを作る……許されることではない、そう思うっす。だからどうか、撃破して欲しいっす」
 トオルが、再び目を覚ますことができるように……。


参加者
篁・悠(黄昏の騎士・e00141)
秋芳・結乃(栗色ハナミズキ・e01357)
ヤクト・ヴィント(戦風闇顎・e02449)
ラズェ・ストラング(青の迫撃・e25336)
塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)
玄乃・こころ(夢喰狩人・e28168)
藍凛・カノン(過ぎし日の回顧・e28635)
三城・あるま(コールミーシャンパンクイーン・e28799)

■リプレイ

●怪しい井戸を探して
 狂おしいほどに輝く月が街灯と共に世界を照らし、人々を建物の中へと追いやっていく冷たい夜。土草の香りの他には遠くを走る車のエンジン音と木々のざわめきくらいしか感じ取れない住宅街を少しだけ広範囲にバラけて歩く中、ヤクト・ヴィント(戦風闇顎・e02449)がふとした調子で口を開いた。
「ホラー映画が現実化したらこんな感じなのだろうか?」
「ホラーのセオリーではあるな。だが、井戸ごと移動されると……シュールっていうか……あ、いやダジャレじゃなくてね?」
 話に聞いているドリームイーターの姿を想像したか、塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)が小さく肩をすくめていく。
 頷くかのように、一人の風が吹き抜けた。
 軽く体を抱きながら、玄乃・こころ(夢喰狩人・e28168)は目を細めていく。
「いずれにせよ、井戸が飛ぶなんて……ナンセンス。ただの不審者、面白くもなんともないわ」
 疑問も、不機嫌そうな言の葉も、落ち着いた会話も……全て、闇の中へと消えていく。
 会話はあれど静寂は保たれている……そんな冷たい空気の中、藍凛・カノン(過ぎし日の回顧・e28635)はいたずらっぽく微笑んでいた。
 今宵のドリームイーター、驚かせるために人前に出現すると聞く。
 ならば、どうやって驚いてみようかの? と……。

●井戸の底に潜んでいた
 町中を練り歩き始めてから、十分ほどの時が経過した。
 時間帯故か、彼らの他に人の気配はない。車が近づいてくる様子もない。窓から漏れている光も少ない……そんな世界の中、今宵のドリームイーターに対する会話は尽きることはない。
 尽きさせぬため、常に誰かが語っていた。
「果てしない井戸魔神感。意外とシュールかもしらん」
 篁・悠(黄昏の騎士・e00141)は口元に手を当てて、小さな笑みを浮かべていく。
 傍らを歩く秋芳・結乃(栗色ハナミズキ・e01357)は、一軒家の陰を眺めながら小首を傾げた。
「ゾンビ、なんだよね? 井戸自体のオバケじゃないんだよね?」
 元となったお話を考えるならば、是。
 実際に形作られただろう存在を思い浮かべるならば、否。
 色々と語り明かされてきたように、井戸と一体化している以上、井戸のオバケと言って差し支えのない存在だろう。
 例えば、そう。
 遊具のない小さな公園の真ん中に設けられている、レンガ造りの井戸が井戸であるように……。
「む……」
 カノンが立ち止まり、仲間たちに制止をかけた。
 公園の中心を指し示す。
 促されるがままに視線を向けたケルベロスたちは、各々気を張り戦うための準備を行った。
 準備完了を確認した後、一塊になって井戸のそばへと近づいていく。
 木々のざわめきよりも、風よりも、足音がより大きく聞こえてきた。
 心音は徐々に速度を増し、体中に熱が回り始めていく。
 抗うように、ひときわ強い風が吹き抜け――。
「……」
 ――粘着質な何かが壁をこするような音を聞き、ケルベロスたちは立ち止まった。
 身構え井戸を見つめる中、音は徐々に大きくなる。
 暗闇に満ちた井戸の中、やがて黒が蠢きはじめ……。
「おぉ……。これはたまげたのぉ……」
「いやあぁぁ!ゾンビなのですよーーっ!!」
 飛び出た目玉が、ただれ崩れた肉が、骨が……ゾンビと呼ばれるだろう者が顔を覗かせた時、カノンを含める多くが静かに三城・あるま(コールミーシャンパンクイーン・e28799)は大きな悲鳴を上げていく。
 構う様子なくゾンビがモザイクに覆われている下半身を晒していく中、あるまはオウガメタルの加護を放出し始めた。
 前衛陣が強化されていくさまを眺めながら、カノンは顎を撫でていく。
「……驚いているように見えぬかもしれぬが、これでも存分に驚いておるのじゃよ? 見かけだけで判断してはいかんぞい」
 飄々とした言葉を投げかけた次の刹那、硬質な音が鳴り響く。
 気づかぬうちに指し示していた井戸の縁が、弾丸一つ分ほど欠けていた。
 驚きもそこそこに素早くケルベロスたちが戦いへと移っていく中、悠はびしっとゾンビを指差していく。
「水底に潜み、人の心を惑わす妖かし。だがしかし、お前は知らないだろう。井戸の外には、お前を討ち果たすべき者達が存在しているということを。……人それを、井蛙と言う!」
 言葉が響く中、光の剣を振り回し無数の雷球を生み出した。
 小さな呼吸を紡ぐと共に腰を落とし、跳躍。
 雷球と共に間合いの内側へと踏み込んで、剣を大上段から振り下ろした!
 光の軌跡は肉を裂かずに地面を砕く。
 誘われた雷球は腐った肉にぶつかり焼いていく。
 異臭が漂い始める中、結乃は片膝をつきアンチマテリアルライフルのスコープを覗き込んでいた。
「……」
 風向きと距離を元に照準を再計算。ゾンビの行動を記憶し仕草から次の動きを予測し微調整。
 瞳孔径を極端に小さくしながらもトリガーに指をかけ、不必要な力を抜いていく。
 アンチマテリアルライフルを完全に固定した上で……。
「……捉えるっ」
 けたたましい音と共に吐き出された弾丸は、誤ることなくゾンビの脇腹を貫いた。
 すかさずラズェ・ストラング(青の迫撃・e25336)が距離を詰め、跳躍。
 ゾンビを飛び越えながら、何かをばらまく仕草を見せた。
「井戸だろうがなんだろうが、消し炭も残さねぇよ。」
 何かが地面を転がる音が聞こえた時、握り込んでいたスイッチを音にする。
 閃光を伴う爆発が連鎖する。
 ゾンビを井戸の縁へと叩きつけ、腐った体を焼き始める。
 臭いがより強くなっていく中、ゾンビは唸り声を上げながら手を伸ばした。
「むっ」
 右足首に違和感を覚え、翔子は立ち止まり視線を送る。
 切り離されたボロボロの手に掴まれていた。
「やれやれ……」
 慌てる様子なく、翔子は深い息を吐く。
「あんたは治療をお望みかい? 繕ったろうか」
 自らの力で手を引き剥がし、ゾンビのもとへと蹴り返した。
 後を追いかけたボクスドラゴンのシロが、ブレスを吹きかけていく。
 抗わんとでも言うかのようにゾンビが前へ、前へと進み始めた時、カノンがガトリングガンを唸らせ井戸の縁へと押し戻した。
「ほっほ、ずいぶんと鈍重じゃのう。その様子じゃ、こちら側へは満足に届かないだろうて」
 流れ弾を受けた井戸が破片を飛び散らさせていく中、ゾンビは瞳を虚ろに開いたまま変わらず唸り声を上げていく。
 まだまだ戦えるとでも言うかのように、ゆっくりと弾丸の暴風に抗いはじめていく……。

 燃え盛るゾンビが、凄まじい速度で前衛陣との距離を詰め禍々しきビジュアルを押し付け始めた。
 すかさず、あるまは歌う高らかに。
 生きることの罪を肯定するかのような詩を、仲間たちの心を救うため。
 時に清らかに時に軽やかに……朗々と世界に響かせながら、現状を整理し始める。
 ゾンビは腕を飛ばす他、音もなく井戸ごと地面を滑り前衛陣と肉薄し驚かす、噛み付こうとしてくる……といった反撃を行ってくる。多くを捌くことができており、不意に受けてしまったとしてもあるまが治療を行っている。間に合わなければ援護を願い、万全の準備を整え続けた。
 癒やしきれぬダメージは蓄積するけれど、多くはない。
 この調子なら……とあるまは拳をギュッと握りしめ、続いてオウガメタルを展開し始めた。
 輝く加護が前衛陣へと注がれていく中、ラズェは脚に炎を宿しながら井戸の縁に乗っていく。
 風に散る異臭を感じながら、腐りきった頬を蹴りつけた。
 炎の色が白へと変わる。
 ゾンビもより鮮やかに映し出され……。
「ちょ! 火だるまの井戸も逆にこええよ! ……と、いかんいかん、平常心平常心」
 崩れた肉から視線を外し、一旦後方へと退いた。
 入れ替わり、踏み込んだヤクトは重花丁子の刃紋を持つ大太刀を振るう。
 月光のように冴え渡る軌跡を描きながら。
「……よし」
 井戸に亀裂が入っていくさまを見て、後退。
 後を追おうと地面を滑り始めたゾンビの前に、こころが立ちふさがっていく。
「やるの? ならどうぞ。全部防いであげる」
 頷く代わりに、ゾンビはこころに飛びついた。
 肩に鈍い痛みを感じながら、こころは表情を崩さない。
「面白くないけど、痛みは本物ね」
 冷たく告げながら、ゾンビの口元を爆発させ井戸の縁へと叩き込んだ。
 ミミックのガランが得物を振り上げていく中、井戸の周囲に輝く光が散らばっていく。
 ゆっくりと視線を向ける先、悠が雷を散らしながら駆け回っていた。
「っ!」
 視線を気取ったのだろう。悠は離脱し……否、公園の端にあった街灯に足をかけ、蹴り上げ跳躍。
 水平に飛びながら、右足を構え……。
「はあぁぁッ!!」
 ゾンビの首に蹴りを放ち、縁へと叩き込んでいく。
 勢いに押され後方へと滑ってきた井戸を、ラズェが焼夷弾にて迎え討つ。
「おらおらぁ、ガンガン燃えやがれ」
 更なる炎に抱かれて、ふらつきはじめていくゾンビ。
 反撃も弱々しいものに変わっていると感じながら、あるまはオウガ粒子をばらまいていく。
「皆さん、この調子でどんどん攻撃して下さい! きちんと治療していきますので!」
 支えるため、更なる加護を与えるため、前衛陣へと差し向ける……。

 眩いほどに盛る炎が、青に変わった。
 こころの捌捌掃射に込められた力を注がれて。
「……」
 冷たく見下ろす中、睨み返すかのように顔を上げてきた。
 光の宿らぬ瞳を見つめながら、こころは盛大なため息を吐いていく。
「呪いのビデオも無しに、何を驚けと?」
 視線は重ねたまま、仲間の邪魔をせぬよう後退を始めていく。
「そこから出てこい、抜殻風情が。石造りの穴から出られないとか、余程自信が無いのね」
 後を追ってくる気配などなかったから、盛大に肩を落としていく。
「つまらないわ、やり直し。驚かすのでしょう? そこに引っ込んでは話にもならないわ。不死者紛いのでたらめな作り物……せめてロメロから学んで出直して来なさい。……いきなり出てくればいいってものじゃないのよ。あまりしつこいと、顔を砕くわよ」
 得物をちらつかせているうちに、結乃が照準を重ね終えていた。
「……今」
 風が収まった瞬間トリガーを引き、魔力の奔流を吐き出していく。
 井戸ごとゾンビを飲み込んで、その体を地面に押し付けていく。
 それでも……と飛んできた左手を、翔子は冷静に踏み潰した。
「ずいぶんと弱々しくなったようで……さて、これには耐えられるかな」
 慣れた仕草でバールを取り出し、ゾンビの頭目掛けて投擲する。
 鈍い音とともにゾンビの頭がえぐられていく中、カノンがガトリングガンを唸らせた。
 ゾンビを井戸の縁へと縫い付けた。
「さ、年貢の納め時じゃ。覚悟せい」
「我が道をしめしたまへ……」
 導かれるがまま、ヤクトは剣を振るいゾンビの左腕を切り落とす。
 すかさず、雷を散らし駆け回っていた悠がゾンビの懐へと飛び込んだ。
「撃ち砕け! 神雷ッ! 爆ッ! 閃―――ッ!!」
 剣を振り下ろし、井戸を両断。
 誘われた雷球はレンガを砕き、井戸の機能を失わせていく。
 隙間を示し、翔子は放つ。
 火花散らす雷を。
「もう、身を支えてくれる井戸はない……おしまい、だね」
 雷に焼かれたゾンビが仰け反る中、シロが踏み込みブレスを吹き付ける。
 あるまは井戸の中へと入り込み、ゾンビにドリンクを手渡した。
「さあさあ、一気! 一気!」
 まるで薬液であるかのような表情で、あるまは飲むことを促していく。
 乗せられたか、あるいは無意識のうちにか、ゾンビはドリンクを口にした。
 すかさずあるまは距離を取り、ゾンビの様子を観察する。
 次の刹那には右腕が腐り落ち、ゾンビが悲鳴にも見たうめき声を上げ……。
「人の夢を貪る輩、哀れなれど慈悲は無し」
 ゆっくりと、こころが歩み寄っていく。
「抜殻は抜殻らしく、意識の海に溺れて沈め」
 告げる内にガランが変形し、ゴシック調の厳かな大砲と化した。
「伽藍開砲、断滅……爆ぜろ」
 エクトプラズムの奔流を放ち、ゾンビを飲み込んでいく。
 炎が消え、井戸も砂に変わった。
 風が止む頃にはゾンビも消え、世界は優しい静寂に抱かれて……。

●優しい月に抱かれて
 風が、火照った体を癒やしてくれる。
 静寂が心を沈めてくれる、平和を取り戻した住宅地。治療などの事後処理が行われていく中、ラズェは風を避けながらタバコに火をつけた。
「夢も欲求も食われるとはな。デウスエクスは塵も残さねえ」
「井戸の中から、というよりは、井戸自体がゾンビな感じだったね。……もすこし面白い感じかと思ってたんだけどなっ……」
 結乃は静かなため息を吐きながら、何気なく空を仰いでいく。
 陰ることのない月の輝きが、星々と共に世界を見守ってくれている。
 夜を、優しく抱いてくれている……。

作者:飛翔優 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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