気まぐれ大猫の気まぐれクイズ

作者:飛翔優

●正解も気まぐれ気のままで
 涼しやかな風が吹き抜けて、紅葉を散らしていく秋の夕刻前。主婦たちが買い物へと赴いたからか穏やかな静寂に抱かれている住宅街を、小学一年生の少女・レミは歩いていた。
 レミは道行く猫を見つけてはしゃがみ込み、身振り手振りを加えながら語りかけていく。
「ねえねえ猫さん、こーんなに大きな猫さん、知らない? クイズが大好きらしいんだけど……」
 もっとも、返答がはない。
 時に興味なさげに立ち去り、時に大きく伸びをして、時にじゃれついて……猫たちは、自由気ままに行動していた。
 レミはめげない挫けない。
 クラスの男子が話していた、クイズ好きな気まぐれ大猫。
 問題も答えも気まぐれな気まぐれクイズに正解したら猫語を教えてくれて、不正解なら食べられてしまう、おっきなおっきな猫のお話。
 クイズは大得意だから、正解して猫の言葉を教えてもらうのだと、飼い猫とお話するのだと、口ずさみながらレミは歩いて行く。
「わぷっ」
 曲がり角を右に進んだ時、柔らかな何かとぶつかった。
 鼻を押さえながら後ずさり、慌てて頭を下げていく。
「あの、その……ごめんなさい! よく見てなかった……」
「……」
 返事がなかったからだろう。レミは恐る恐る顔を上げた。
 黒い瞳の中、映るのは黒い服を身にまとっている白髪の女性。
 女性はレミを見つめ返し、告げていく。
 レミを無視し、女性は鍵を取り出した。
 レミの心臓へと、突き刺した。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの興味にとても興味があります」
「あ……」
 血も流さず、レミは地面に倒れていく。
 入れ替わるかのように、レミの隣に顕現した。
 トラくらいのサイズを持つ、太っているブリティッシュショートヘア風の猫……と言った形を持つ、喉がモザイクで覆われているドリームイーターが。
 ドリームイーターを見つめた後、女性は踵を返して立ち去っていく。
 残されたドリームイーターは倒れた少女を一瞥することなく、街に向かって歩いて行く……。

●ドリームイーター討伐作戦
 足を運んできたケルベロスたちと、元気な挨拶を交わしていた笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)。メンバーが揃ったことを確認し、説明を開始した。
「不思議な物事に強い興味を持って、実際に調査を行っている女の子が、ドリームイーターに襲われて興味を奪われてしまう事件が起きることがわかったんです!」
 興味を奪われた少女の名は、レミ。小学一年生。
 クラスの男子が話していた噂話。トラくらいのサイズを持つ気まぐれな大猫が気まぐれなクイズを出してくる。正解したら猫語を教えてくれるけれど、不正解なら食べられてしまう……そんな噂話を聞き、飼い猫とお話したい。元々クイズは得意だから、気まぐれ大猫のクイズに正解して教えてもらうのだ……と、街を歩き猫に気まぐれ大猫の居場所を尋ねて回る……といった調査を行っていた。その気まぐれ大猫への興味を奪われた……という事件になる。
「興味を奪ったドリームイーターはすぐに姿を消しちゃったみたいです。でも、奪われた興味を元にして具現化した怪物型ドリームイーターが事件を起こそうとしているみたいで……」
 怪物型ドリームイーターの姿は噂の通り、トラくらいのサイズを持つ太った猫。種はブリティッシュショートヘアに似ており、喉のあたりがモザイクで覆われている。
 怪物型ドリームイーターによる被害が起きる前に、撃破する。撃破すれば、レミも目を覚ましてくれるはずだから。
 概要を語り終え、ねむは地図を取り出した。
「怪物型ドリームイーターがいるのは、この街。だから、この街でドリームイーターを探して下さい!」
 怪物型ドリームイーターは、人間を見つけると自分が何物であるかを問うような行為をして、正しく対応できなければ殺してしまうという行動を取っている。また、自分のことを信じていたり噂している人がいると、その人に引き寄せられる性質があるため、誘き出す事も可能だろう。
「時間は夕方前で、お母さんたちが買い物に出かけててあまり人はいないみたいです! それでも誰も居ないわけではないので、避難誘導も行うと良いと思います!」
 そうして戦うことになる怪物型ドリームイーター。姿は先程語ったとおり、巨大化している太った猫と言ったところ。クイズを出してくる関係上、会話も可能と思われるが、意味のある返答を行ってくれる可能性は薄いだろう。また、問題も気まぐれ答えも気まぐれなため、正解できる可能性も薄い。
 戦いにおいてはガンガン攻撃してくる。
 技はトラウマを呼び起こす心を抉る鍵、平静さを喰らい冷静さを失わせる、夢を喰らい悪夢で侵食する……といったものを使い分けてくる。
 以上で説明は終了と、レミは締めくくった。
「レミちゃんのためにも、みんなお願いね! レミちゃんの興味が、誰かを傷つけてしまわないうちに……」


参加者
月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)
エイダ・トンプソン(夢見る胡蝶・e00330)
フーミア・ノウーダ(掘削屋・e25748)
キルシュ・サルベージ(宝石商・e25914)
ホルン・ミースィア(見た目は巨神っ頭脳は子供・e26914)
カリュクス・アレース(ごはんをおやつをくださいまし・e27718)
サラキア・カークランド(アクアヴィテ・e30019)
青木・杏奈(やかましかしましお喋り大好き・e30474)

■リプレイ

●街が平和であるために
 夜風に変わり始めた冷気に誘われ、空が陰りはじめていく夕刻前。大人たちは買い物に行き子どもたちは家の中で遊び……住宅地は、束の間の静寂に抱かれた。
 万が一の可能性を考えて人払いの力を用いながら、ケルベロスたちはマンション群の中心に位置する遊具のない小さな公園に詰めている。発生したドリームイーターを迎え討つ準備を着々と進めていく中、青木・杏奈(やかましかしましお喋り大好き・e30474)はテレビウムのレビくんに語りかけていた。
「今回は猫さんですね―。喋ってくれる猫って良いですよねえ。アンナちゃんのレビくんも喋ってくれないものでしょうか?」
 レビくんは小さく肩をすくめていく。
「……え、無理? というか四六時中お前の会話に付き合ってなんかいられない? 残念です」
 対象的に、真面目な顔で肩を落としていく杏奈。
 漫才のようなやり取りが行われていく中、ホルン・ミースィア(見た目は巨神っ頭脳は子供・e26914)もまた、腕に抱いているウイングキャットのルナに話しかけていた。
「ねこねこねこっ♪ 猫のドリームイーターだってさルナ! もふもふ、もふもふだよね? きっと! ふふふふふ……」
 ルナは身じろぎはせず、ただただ視線をそらすような仕草をしていく。
「あっ、今ルナ呆れてたでしょっ! 言葉わからなくたってわかるんだからね!」
 ……きっと、猫と話せると聞いたなら多くの者が思い浮かべるだろうやり取りが、世界に暖かな雰囲気を与えていた。
 ぬくもりに抱かれたまま、エイダ・トンプソン(夢見る胡蝶・e00330)とカリュクス・アレース(ごはんをおやつをくださいまし・e27718)を中心にクイズ大会が行われていた。
「石油王の年収ですか? 現在登録されてる全ケルベロスの収入とどっこいどっこいでしょうか……あ、もしかしたらもっと多い? ああ素晴らしい!」
「桁が違う、のかもしれませんね。兆では収まらず、京、垓……」
 時に夢見て、時に真面目に真っ直ぐに、少しずれた回答をしてみたり、楽しく笑いあったり……。
 木々のざわめきすらも楽しげに聞こえる公園で、杏奈は再び語っていく。
「猫さんも大きいらしいですから、やってきたらすぐに見つかりそうなものなんんですけどねー。……あの、大樹の陰に隠れてたりはしないでしょうか?」
 土管があれば、その中を探したりも……と付け加えれば、レビくんがツッコミを入れた上で大樹の陰へと向かっていく。
 頼もしげな背中に、杏奈は抗議の言葉を投げかけた。
「ふ、不朽の名作ですし! い、今も代替わりして立派にやってますし……!?」
 気に留める様子もなく木陰を覗き込んだレビくんが、体を硬直させていく。
 空気が張り詰めたものへと変わった。
 ケルベロスたちは顔を見合わせ、気のそばへと近づいていく。
 陰を覗き込めば……子猫が静かに眠っていて……。

●気まぐれ猫はもふもふだ
 万が一を考えて、ケルベロスたちは子猫を起こし毛を逆立てながら立ち去っていくさまを見送った。
 緩やかな時間に戻ってから十分ほどの時が経った頃だろうか? 不意に、何かがやってくる気配を感じたサラキア・カークランド(アクアヴィテ・e30019)が、仲間と顔を見合わせた後に入り口方面へと視線を……。
「あはー。噂話なら可愛いものを、こうなっては救えないですねー」
 笑顔を向ける先、のっしのっしと歩いてくる。
 灰色に近い白と黒が入り混じり、縞にも斑にも見える柔毛、くりくりな瞳に柔軟なお髭を、そしてトラほどの体を持つ……喉元にモザイクがなければトラと勘違いしたかもしれない……、ブリティッシュショートヘア風の巨大な猫型ドリームイーターが。
「吾輩は何物にゃん?」
「千両箱、あの子の妨害を頼んだぜ!」
 フーミア・ノウーダ(掘削屋・e25748)は問いかけを無視し、ミミックの千両丸に指示を与えながら影の弾丸をぶっ放す。
 後を追い、千両丸は剣を形作る。
 弾丸を避けたドリームイーターの顔面めがけて振り下ろした!
 剣は地面を砕く。
 ドリームイーターがごろりと転がったから。
「まだまだ!」
 転がり行き着くだろう場所に狙いを定め、キルシュ・サルベージ(宝石商・e25914)が飛び上がる。
 治療待機するボクスドラゴンのミコミが見守る中、転がり立ち上がったドリームイーターの背中めがけて拳を振り下ろした。
 地面を砕き、礫が飛び退いたドリームイーターを打ち据える。
 休む暇を与えぬ連携が繰り出されていく中、カリュクスは反撃に供え小型治療無人機の群れを展開した。
「みなさん、わたくしが守り、支えます。ですからどうか、憂いなく攻撃をして下さい」
「うにゃーお、うざったいにゃぁ」
 カリュクスを含む前衛陣を小型偵察機が護衛し始める中、ドリームイーターが不機嫌そうな声を上げながら尻尾を振り始めた。
 尻尾が一つ、二つと時を刻むたび、足元から歪なモザイクがにじみ出る。
 すかさずカリュクスが移動し、にじみ出てきたモザイクを踏み抜いた。
「っ!」
 心臓が跳ね回り呼吸が乱れ、思考もかすみ始めていく。
「……」
 拳をギュッと握りしめ、深呼吸。
 自分を守る小型治療無人機に軽い指示を出しながら、増援を展開しはじめていく。
「大丈夫、です。このくらいなら……!」
 額に汗を浮かべながらも微笑んでいくさまを見て、サラキアはカリュクスから視線を外した。
 小さな息を吐きながら、両手で何かを握っているかのような構えを取った。
「それは妄想、私の幻想。全てを刻む魔女の剣」
 グラビティ・チェインを収束し、剣の形へと変えていく。
 切っ先をモザイク越しにカリュクスと戯れているドリームイーターへと向けながら、一歩、二歩と歩み寄った。
「得る物も無いので、早々に退場して下さいな?」
 曇りのない笑顔で冷たく告げながら斜め上に掲げ、袈裟に振り下ろす。
 反応が遅れたか、慌てて飛び退いたドリームイーターの横っ腹を薄く裂く。
 込められたいた力に当てられたか、喉元のモザイクが僅かに歪んでいく。
 更に、柔らかそうな毛並みに影が差す。
 ドリームイーターが小首を傾げ見上げる先、キルシュのつま先が眼前へと迫っていて……。
「よしっ!」
 つま先が額へとめり込んで、ドリームイーターを地面に叩き落とす。
 反動で飛び退いたキルシュはギュッと拳を握りしめ、笑顔を輝かせた。
「上手く入った! この調子で行こうぜ! ミコミも、カリュクスのネーチャンの治療をよろしくな」
 じーっとキルシュを見つめた後、盛大なため息を吐きながらカリュクスへと向かっていくミコミ。
 さなかに立ち上がったドリームイーターは尻尾を逆立てながら、ケルベロスたちを睨みつけていく……。

 しなやかに動き回りながら、時に鍵をくわえ時にモザイクを放ち襲いかかってくるドリームイーター。
 オルトロスのリキが鍵との打ち合いを行っていく中、月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)は得物を横に構えていく。
 リキが生み出してくれるだろう一瞬の隙を見逃さぬよう見つめながら、ふとした調子で問いかけた。
「なぞなぞを出すお前に問題だ。みかん九個を十人で等しく分けるにはどうしたら良いでしょう?」
「にゃっ!」
 直後、ドリームイーターの鍵がリキの刃を打ち払う。
 すかさず距離を詰めた朔耶の振るう得物へと鍵をぶつけ、至近距離で睨み合った。
「うにゃ、猫はみかん食べないので九人でわけられるにゃぁ!」
「っ!」
 本来の答えはジュースやゼリーにする……だけれど、朔耶は説明の間もないまま弾かれ飛び退いた。
 得物越しに受けただろうダメージを癒すため、杏奈は薬液の雨を降らせていく。
「アンナさんが中心となって治療していくよ―! だから、今は攻撃をお願いします! レビくんも、バンバン凶器攻撃お願いしますよ!」
 レビくんは小さく肩をすくめながらドリームイーターへと向かっていく。
「え、見切られちゃうからバンバンは無理……? お、応援動画とかで補助しつつほどほどにお願いします!」
 改めて頷きながら、凶器で殴りかかっていくレビくん。
 凶器が柔らかな肉体に埋もれるようにして隠れた時、ホルンが感極まった様子で目を輝かせ――。
「――!」
 ホルンは走っていた。
 瞬く間も与えずに、ドリームイーターの懐へと入り込んでいく。
「はぁ……はぁ……」
 疲労からくるものではない乱れた呼吸を紡ぎながら、真っ直ぐに拳を突き出した。
 反応しきれなかったのだろう。飛び退くことのできなかったドリームイーターの柔肌に、拳を全身を埋もれさせていく。
「大猫はもふる、心底もふるっ! 情熱的に、圧倒的にっ。もふってもふってもふりまくるんだぁ!」
 暖かな場所、最も鼓動の跳ねた場所、ドリームイーターが身じろぎした場所を的確に捉え、もふもふと堪能しはじめていく。
 嫌じゃないのだろう。ドリームイーターは身じろぎしながらも、ホルンを跳ね除ける仕草は見せていない。
 動く様子もなかったから、エイダが背中に狙いを定めて飛び上がった。
 足を伸ばす代わりに全身を広げる……フライングボディプレスにてドリームイーターの背中に体を埋もれさせた。
「……♪」
 暖かく柔らかでスベスベなもふもふを堪能し、口元を緩め身を委ねていく。
 振り払おうにも振り払えないと行った様子で尻尾を垂直に立てているドリームイーターに、朔耶が再びクイズを投げかけた。
「問題だ、坂の多い町で有名な長崎。では上り坂と下り坂、どちらが多いでしょう?」
「うにゃあ……坂を走るのは楽しいにゃん……すぐに終わっちゃうから寂しいにゃん……」
 答えになっていない返答を聞きながら、朔耶は半透明の御業を解き放つ。
 見方が違うだけで同じだと告げながら、御業で巨体を掴んでいく。
「せめて、クイズとしての答えは出して欲しいものだが……ふむ」
「……ふふっ、すっごく気持ちよかったよ!」
 直後、ホルンが満足げな笑みを浮かべ距離を取り始めた。
 入れ替わるように飛び込んだルナが尻尾の輪を飛ばし、脚へとまとわりつかせていく。
 その頃にはエイダも離脱し、ドリームイーターもまた尻尾を左右に振り始めた。
 サラキアが笑みを浮かべ、矢をつがえていく。
「それじゃ、互いに満足したようですし―……ちゃっちゃと片付けてしまいましょー」
 手放された矢は飛び退くドリームイーターの後を追い……左後ろ足を、貫いた。

 鍵にこじ開けられたとしても、モザイクに心惑わされたりしても、薬液が全て洗い流す。
「さあさあ、どんな攻撃でもアンナさんが癒やしてしまいますよ―!」
 全力で杏奈が支える中、レビくんは凶器を振るい地面を砕いた。
 礫からも逃れるかのように飛び退いたドリームイーターを、エイダが大鎌に虚ろなる力を走らせ出迎える。
 慌てて身を捻り体の軸をずらそうとしたドリームイーターを、ゴルフスイングで打ち上げた!
「今です!」
「おうよ!」
 すかさずフーミアが千両丸と共に跳躍し、拳を固く握りしめる。
 千両丸が口をパカっと開く中、落ちてきたドリームイーターに拳を突き出した!
「にゃっ!?」
 巨大にめり込んだエイダの拳ごと砕かん勢いで、千両丸は噛み付いた。
 毛並みを一部ハゲさせながら、それでもなおドリームイーターは両者を振り払う。
 入れ替わり、朔耶がリキと共に踏み込んだ。
 リキが咥えた剣を閃かせ、多くの柔毛を散らしていく。
 直後、朔耶はオウガメタルを鋼の鬼へと変貌させ固き拳で殴りかからせた。
「っ、来るぞ!」
 拳は深くめり込むも、殺気を感じて朔耶は飛び退く。
 すかさずカリュクスが割り込んで、モザイクをその身に受けた。
 心乱れるのを感じながらも、最初の程ではないとカリュクスは小さな息を吐く。
「大丈夫です。このくらいなら……治療も必要ありません!」
 元気な声を響かせながら、体の中心に蹴りを叩き込む。
 直後、ルナの放つ輪がドリームイーターの体を捕らえた。
 すかさずホルンが距離を詰め――。
「――!」
 次の刹那には向こう側へと居たり、稲妻の残滓がドリームイーターを悶えさせていく。
 今が好機と、エイダが軽やかなステップを踏み始めた。
「さぁ踊りましょう、蝶のように」
 舞踏を紡ぐとともに魔力がこぼれ、無数の赤い蝶を形作る。
 蝶の群れは立ち上がろうとしていたドリームイーターに纏わりつき、傷ついたその巨体を踊らせた。
 ケルベロスたちから視線を外しているさまを前に、フーミアはキルシュに視線を送る。
「宝石のご主人、ミコミ!」
「フーミア、千両丸、行くぞ!」
 うなずき合い、ミコミ、千両丸を引き連れキルシュが駆け出した。
 ミコミが至近距離からブレスを吐き、千両丸が大きな剣を振り下ろし、キルシュが脚に炎を宿していく中、フーミアはドリームイーターを指し示す。
 影の弾丸を、額めがけてぶっ放す!
「続いてくれ!」
 誤ることなく額を貫いた弾丸の後を追い、ブレスが巨体を包み込む。巨大な剣は額を割り、炎の蹴りはドリームイーターを地面に沈ませた。
 更なる炎に抱かれし巨体に、サラキアは矢をつがえながら狙いを定めていく。
「これで、トドメですよ―」
 放たれた一矢は風に流されることなくドリームイーターの喉を……モザイクを貫き、存在のほつれへと変えていく。
 力もまた消え去ったか、ドリームイーターは再び立ち上がることなく、モザイクのように崩れ消滅した。

●安らかなる夜を目指して
 風の訪れとともに、勝利を確信したケルベロスたち。
 静寂に抱かれた公園の中、各々の治療や戦場の修復といった事後処理へと移行した。
 砕けた地面を修復しながら、朔耶は安堵の息を吐きだしていく。
「無事に終わった、後は……」
「レミちゃんの救助、だね!」
 興味を奪われ倒れた少女、レミ。
 彼女を救助するために、彼女と一緒に猫を探すのだと、ホルンはひと足早く公園から立ち去った。
 それから程なくして作業も終わり、一人、また一人と帰路について行く。
 あるべき静寂を取り戻した公園で、フーミアはキルシュに呼びかけた。
「宝石のご主人、少し遊んでいかないか?」
「お、いいぜ。ミコミたちも一緒に……」
 遊んでいるうちに、少しずつ空が茜色に染まりはじめていく。
 商店街へ向かっていた大人たちが戻り、友達の家で遊んでいた子どもたちも帰宅を始め……少しずつ、活気が取り戻されていく。
 気づけば逃げたはずの子猫も戻ってきた。
 猫の友達を引き連れて。
 可愛らしい鳴き声が響く中……平和が、心を満たしていく……。

作者:飛翔優 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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