怪瀞の矛先

作者:雨屋鳥


 釧路湿原、人が殆ど踏み込まぬその奥地で獣の皮をかぶった女性が静かに手を広げる。
「さ、あの灯りを、消してきなさい」
 暗闇に浮かび上がる影は、頭頂部から二つ伸びる枝分かれした角を震わせ、彼女が指し示した方角へと視線を飛ばす。
 白く濁ったその目が捉えたのは遥か遠く、人々の照らす光。
 グルル、と低く嘶いたそれは蹄を地面に叩き付け、大きく一歩を踏み出す。
 大地を揺らすような音が響き、剣のような細い怪魚がそれを追って闇に溶けた。


「釧路湿原の奥地、そこに現れる死神によって死したデウスエクスのサルベージを行うようです」
 ダンド・エリオン(オラトリオのヘリオライダー・en0145)は北海道の広大な地図を広げ、釧路湿原と市街地を結ぶ線を示した。
「予知の情報から、デウスエクス、鹿のウェアライダーが市街地へ向かう方角は判明しています」
 市街地から釧路湿原を抜けるその線。恐らくその線上付近にてサルベージされるのだろう。が、サルベージされる地点は判明していない。
 あくまで方角のみ分かっている状態だ。つまり、
「侵攻経路の判明している敵ウェアライダーの撃破を優先する現状、女性の姿を死神との接触はほぼ不可能です」
 そして彼は地図のとある地点を丸で囲む。
「この地点であれば、障害物や民家、人通りもなく戦闘に集中できます」
 ヘリオンでこの地点に向かい、市街地へ向かうウェアライダーを迎撃する。
 それが今回の任務だ。
「敵の数は三。鹿のウェアライダーに加え、死神が二体護衛としてついているようです」
 剣魚の死神。その性能は通常の死神のものと考えていいだろう、とダンドは続ける。
「ウェアライダーは角を使った攻撃、また、獣の膂力を揮う攻撃を使用すると考えられます。またウェアライダーとしての技も使用できるでしょう」
 第二次侵略期以前に死亡したデウスエクスがサルベージされる事件。
 それを食い止めるために、まずは危険に晒されている人命を救わなければいけない。
「死神の策略を叶えさせてはいけません。多くの人々を守るためにも、よろしくお願いします」
 ダンドはそう言って頭を下げる。


参加者
ヒルダガルデ・ヴィッダー(弑逆のブリュンヒルデ・e00020)
エルツァーレ・バレンデッタ(赫翼天焦・e01157)
ドローテア・ゴールドスミス(黄金郷の魔女・e01306)
文丸・宗樹(シリウスの瞳・e03473)
綾小路・鼓太郎(見習い神官・e03749)
秋津・千早(ダイブボマー・e05473)
高円寺・杏(ヴァルキュリアのミュージックファイター・e28520)
服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)

■リプレイ


「冷えるワね……」
 呟いて空を見上げる。張り詰めた黒の帳は薄い雲を纏って、微かに白む息を吐いたドローテア・ゴールドスミス(黄金郷の魔女・e01306)を見下ろしていた。
 コートの裾を軽く引いた彼女の声に、腕を温める様に回す少年、服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)がそうじゃの、と返事をする。
「ま、刺すような寒さとまではいかんが」
「しかし、さすがにそれでは寒いのでは?」
 無明丸の上身は大胆に開いた衣服に包まれているのみで、綾小路・鼓太郎(見習い神官・e03749)が言葉をかけるが、彼女は明るい声を返すばかりだ。
 暗い空に重い地鳴りが微かに聞こえ始めている。
「おでましのようだね」
「ああ、思ったよりも早い」
 羊の角を持つ女性ヒルダガルデ・ヴィッダー(弑逆のブリュンヒルデ・e00020)が片手を杖の頭に置き、薄らと闇に姿を滲ませ始めたかの姿を見据える。エルツァーレ・バレンデッタ(赫翼天焦・e01157)がその隣でその姿に目を凝らす様に細めていた。
「猟犬に狩られる牡鹿とは、まるでアクタイオンのようだな」
「もっとも、神と呼べるような神々しさは持ち合わせていないようだが」
 女神の怒りを買い鹿の姿にされ、自らの猟犬に殺された神に例えたヒルダガルデの台詞にエルツァーレが返す。彼女もまた、昔見た映画に登場した神を想起していた。人に狩られる獣の名を冠する神。
 向かうデウスエクスの姿はだんだんとはっきりして、周りを泳ぐ死神の姿も見える。その作品の中でみた偉容とは似つかない姿に彼女は自分の意見を否定する。
「やはり手駒を使い潰しているようにしか見えないわね」
 その理由が見えてこない。高円寺・杏(ヴァルキュリアのミュージックファイター・e28520)が見ぬ死神に思いを馳せ、すぐにその思いを振り払った。
 今相対すべきは、目の前のデウスエクスなのだ。
「美しい角ね、それだけに物悲しいわ、スパークルホーン」
「スパークルホーン?」
 杏がその姿に零した名前を秋津・千早(ダイブボマー・e05473)が聞き返す。
「ええ、大きな角って聞いてたから。鹿の角はその個体の威厳や魅力なのよね?」
「なるほど、それでスパークルホーン」
 才栄の角、というわけだね。と千早は、いいんじゃない、と返す。少なくとも自分の考えていた、鹿、という身も蓋もない呼び名よりはいい、と頷く。
「不発弾じゃあるまいし」
 千早は絶えぬ事件にそう零し、こちらに気付いてもその勢いを止めようとしないスパークルホーンに視線を送る。
 自らの道の上にのさばる邪魔者を刎ね退けんと猛烈な勢いのまま突き進むその巨体の正面に文丸・宗樹(シリウスの瞳・e03473)が立つ。
 陽光を浴びる緑葉の色彩をもつボクスドラゴンを軽く撫でた宗樹は、突っ込んでくるスパークルホーンに身構える。三又に伸びる後ろ髪を揺らし、体にバトルオーラを纏う彼は、突進ままに打ち上げる様に振り上げられた大角を避けると、周りを泳ぐ剣魚の胴体へと音すら追い越す拳打を突き刺した。


 空気の壁をぶち破り、轟音を伴って剣魚の胴体の鱗を砕き割るかに見えた宗樹の拳だったが、吹き飛んだ剣魚の体に傷は無い。
「……っ」
 手ごわい、と軽くため息を吐いた彼だが、休まる暇は与えられない。夜明りに仄かに浮かんだ影に思わず飛びずさった。
 布を捲る様に、土が撒き上がる。上体を持ち上げたスパークルホーンが先ほどまで彼のいた地面にその前肢を叩き付けたのだ。
「バジルっ」
 爆弾が破裂したのかという衝撃の中で宗樹が攻撃指示を送り、間髪入れず剣魚へと放たれたブレスに、もう一体の剣魚が割り込み、その攻撃を弾く。
 四散するブレスの残滓に照らされる剣魚の体を、地獄の足が踏んだ。その声に剣魚が反応するより早く、彼女の体を半透明な何かが覆っていく。
「守り給え、祓え給え」と言祝にそれが鎧となり彼女を包んだ。鼓太郎の放った御霊による加護だ。
「穢れは吾が御仕えする御霊が祓います、後方支援はお任せを」
 鼓太郎の言葉にヒルダガルデはありがたい、と一言放ち死神の体を踏切ると、初撃を与えた死神へと跳ぶ。
「陸に上がった魚は、地をのたうち回るものだ。そうだろう?」
 嗜虐的に弧月のような笑みを浮かべたヒルダガルデは、袖に隠していた刃を死神へと覗かせた。降る土の霰に気を散らすことはなく、見据えるのは敵のみ。
「落ちろと言っている」
 ヒルダガルデは宙で体を捻り、軌跡が歪む程の重力を宿す刃を走らせる。交差する剣閃は剣魚の体に十字傷を刻み込んだ。
「――っ」
 声なき悲鳴。呼応するように宙に揺らぐ剣魚の周囲に散った鱗に黒い気が吸い込まれていく。
 そして次の瞬間、怨念の矢じりが周囲へとばら撒かれた。一つが無明丸の胸を貫く瞬間に杏のテレビウムがその軌道に割りこみ、穿たれる。
 自らを庇ったテレビウムに、すまんの、と短く言い、彼女は強く踏み込んだ。
 その耳が声を拾った。過ぎ去った死を悼む歌。
 あまり表に出さない杏の感情をそこに全て注ぎ込むように、高らかに歌い上げられる歌声には強い感情が溢れている。
 見えぬ加護が全身に行き渡り、矢じりに傷ついた体が癒えるのを感じながらエルツァーレは、指を銃の形に動かしその照準を死神へと向ける。
「確実に仕留めていこうか」
 一人ごちると同時にその指先から黒弾が飛び出した。駆ける弾丸は、十字の傷を持った剣魚へと直撃。それに遅れて無明丸が殴りかかろうとするが、その直前、横合いから剣魚の咢が彼女に襲い掛かった。
 たち並ぶ尖った歯が、彼女の体に無数の傷を穿ち、また噛みついてくる。
「ぐ……!」
 何かを吸い取られる不快な感覚に眉を顰めると、剣魚が再び噛みつくために口を開いた瞬間に剣魚の口を蹴り飛ばす。
 弾いた剣魚には目もくれず、彼女は拳を握りしめ消耗している死神へと飛び掛った。
「ん、ぬぉっらあああぁぁ!!」
 全力疾走からの跳躍。握る拳に集められたグラビティチェインが眩く光を放っている。体目いっぱいに引いた拳をただ力を振り絞って思いっきり、その剣魚目掛け打ち放った。
 小さな体の拳から放たれたとは思えぬ殴打音を響かせて、剣魚が吹っ飛んだ。
「無明丸ちゃん!」
 ドローテアの声が、殴りつけた後に少し息をついた無明丸に警戒を促す。だが、一瞬遅い。
 大岩さえ砕くような猛烈な衝撃が彼女を襲い、その身は小石の様に弾き飛ばされた。その回る視界で大角頭を振るうスパークルホーンの姿を捉えた。
「封印魔術式、二番から十五番まで解放」
 無明丸が地面に衝突する瞬間に回転し衝撃を和らげたのを見たドローテアは、重ねた術式を開放する。
 その一つを起動する度、刃は魔力を纏い研がれていく。
「いくワよ」
 ドローテアは身を低く屈め、死神へと疾駆した。十字傷と体を大きくひしゃげさせた剣魚が放った怨念の弾丸を宗樹が弾き飛ばし、その道を切り開く。
 織り込まれた術式に増幅された切っ先の魔力に、突き出した刃は赤い軌跡を描いて剣魚の鋼の鱗を裂き貫いた。


「まず、一体ね」
 地に落ち、風に吹かれる灰の様に消える死神を確認しドローテアはもう一体の剣魚へと視線を戻す。
 夜闇を小さな影が走る。打ち出された無数の鉄杭が死神とスパークルホーンの体へと突き刺さり、爆ぜた。爆風は獣が食い破ったように歪な傷跡を作り出していた。
「纏まってくれるのはありがたいね」
 その攻撃を放った千早は、言葉を零す。死神はスパークルホーンから離れることなく戦闘を行っている。標的を定める時に迷いを少なく行えるという事に千早は心中で誰に向けたでもない感謝を述べ、次ぐ攻撃へと思考を巡らせる。入れ替わる様に影が走る。
 宗樹の放ったオーロラの光が怨嗟の残滓を浄化していく。その恩恵を受けた杏がその身を光の奔流に転じ、剣魚へと突撃する。光槍となって死神を貫いた杏と並走したヒルダガルデはスパークルホーンへと剣を向ける。
「やあ、同胞よ。貴殿の角と私の角、先に折れるのはどちらだろうね?」
 言葉と共に、月光に似た光を全身に漲らせるスパークルホーンの体をその光ごと、重力の刃が切り裂いた。
「グ、ォオオ!」
 傷の痛みに嘶いたスパークルホーンは、頭を下げると突進の構えを取る。地面を揺らす踏み込みから猛然と駆けだした。
 無数に伸びた強靭な角が槍衾の様に数歩距離を取っていたヒルダガルデに迫る。攻撃の初動には気付いたが避けきる事は出来なかった。だが、その角が貫いたのは彼女ではなく杏のテレビウムだった。
 抉り取られ、吹き飛んだテレビウムはまだ動けるようだったが、回復の合間も与えられず死神の咢がその体を食い破らんとした所を杏が庇い受ける。
「一人で引き受ける事はないわ、倒れないように気を付けて」
 盾は壊れない事こそが肝要、と窘める様に言葉をかける。再度食らいつく瞬間に身を躱した彼女が離れた剣魚へ、エルツァーレが肉薄する。
「爆ぜろ我が獄」
 地獄を漲らせる右腕に魔力を流し込む。顕現するは巨大な爪をもつ異形の腕。
「体術はあまり得意じゃないんだがな」
 エルツァーレは変異した腕に眉一つ動かさず、剣魚目掛けて腕を振るう。横薙ぎに振るわれた凶暴な腕を水面を跳ねる様に剣魚は攻撃を回避。その剣魚を追ってもう一歩踏み出し振り下ろしたエルツァーレの爪が、死神の胴を抉り取っていく。
「外つ神屠る、吾等が力を寿ぎ給え」
 鼓太郎が希う言葉に、彼の胸から淡く輝く光球が現れて無明丸の体を覆う。
「え?」
「虚しいの」と小さな声に鼓太郎が思わず聞き返す。
「志が伴わぬではその強さも虚しいのお!」
 それは死神にただ操られ暴れ狂うスパークルホーンへ向けられた言葉だった。無明丸は拳を握り剣魚へと走り出し鋭い蹴りを打ち放つ。
「んぅっ?」
 直後、冷えた空気が更に凍る感覚に彼女が身を引くと、それを待っていたように足を踏み鳴らす音。同時に吹雪がデウスエクスを包み、二体を氷塊が閉じ込めた。
 靴を鳴らし精霊を召喚しそれを成したドローテアが油断なく閉じ込めた巨氷を見つめる。
 数秒とも経たず、氷山に幾重もの亀裂が走り崩れていく。氷が全て砕ける前に、無数の刀剣が殺到し、残った氷ごと打ち砕く。
「まだ動くか」
 剣の嵐を放った千早は氷礫と白煙の中動く二つの影に勘付き、零す。
 凍り、無数の剣刃を身に受けながらもまだ攻撃を緩めぬその剣魚へと、白靄を突っ切った宗樹の拳が直撃し、大きく弾き飛ばした。拭き取んだ剣魚は矢の様に吹き飛びながら、その身を虚空に散らす。
 宗樹の音速の拳、その衝撃に立ち込めていた白靄が吹飛び視界が開かれる。
 

 鼓太郎のヒールが怨念の矢じりに穿たれた千早の体を癒していく。
「残るは、一体のみですね」
 鼓太郎が呟いた視線の先でエルツァーレが振るわれた角を掻い潜って、銃の形を作る手をスパークルホーンへと向ける。心を抉る黒色の砲弾がスパークルホーンへと射出され、その身に沈み込んだ。
「起きても悪夢にうなされるだけ。早く寝た方が良いんじゃないか?」
 見えぬ恐怖に抗うような素振りを見せるスパークルホーンにエルツァーレが語りかけるが、それに答えが返る事はない。
 瞬く火電を散らしてドローテアが突きを放つ。
「――ッ!」
 雷光のごとく疾走した槍の穂先がスパークルホーンの左目を撃ち貫くと、耳を塞ぎたくなるような雄たけびが放たれた。ドローテアはその四肢が僅かにたわんだのを見逃さない。
「来るワ……っ」
 彼女が声を上げる。それを合図にしたようにスパークルホーンは前へと飛び出すと前脚を地面に着地させ、その勢いのままに体を反転させた。
 千早から見れば丁度、敵が背後を見せたようだった。だが、そうでない事は明白だ。
 迫るスパークルホーンの後ろ足が彼の目に緩慢に映る。鼓太郎から回復を受けたとはいえ消耗は依然したまま。
 耐えれるか?
 凄絶な力強さをもってスパークルホーンの蹄が千早の前に割り込んだ宗樹の体を吹き飛ばした。
 ルーンアックスを盾に、吹き飛んだ彼の元へバジルが走り寄っていく。
 まだ動けるようだ。と判断して千早は手早く敵を屠るために意識を切り替えた。
「良い益荒男ぶりじゃのお! 天晴である!」
 無明丸が輝く拳を打ち付けながら戦士としての称賛を送っている。揺らいだ体を見るにスパークルホーンも消耗が激しい。蓄積され続けたダメージに体を蝕まれているのだろう。
「攻めるのみだね」
 うごめく液体金属が全身に纏うと千早は接敵する。彼のグラビティ・チェインを喰らったオウガメタルが拳にその力を収束させていく。彼を弾き飛ばす様に振るわれた角に千早はその拳を叩き込んだ。
 歪に湿った音を立てて、千早の体が弾き飛ばされる。よろめくスパークルホーンの強靭な大角に大きな罅が走っていた。
「悪いが被害を出す前に、また眠ってもらう」
 宗樹が肉薄し、告げる。彼が放った炎纏う強蹴が罅の入ったその角を、その半ばから砕き割った。同時に頭をひどく揺さぶられたようにスパークルホーンはたたらを踏む。
「おやすみなさい」
 杏が砕け散った角を見て、呟く。ヒルダガルデの振るった二降りのゾディアックソードがスパークルホーンの喉を切り裂いた。その傷から血が溢れる事はない。
 亡骸は静かに草の大地に沈み込んだ。
「この戦い、わしらケルベロスの勝ちじゃ! 鬨を上げい!」
 無明丸の健闘を讃える声が空に響く。


「さらばだ、悲しき同胞よ」
 ヒルダガルデは角の欠片を残し消えていく亡骸を見送り、視線を広い湿原に巡らせる。同様に周囲を睥睨したエルツァーレは、もどかしさを感じながらもそこに死神の面影がない事を確認した。
「気に入らん、気に入らんのじゃ」と無明丸が言う。真っ当な戦士として戦えていたならば、と彼女は言えぬ内腑の疼痛に顔を歪めながら惜しんでいた。
「誇りも意志も決意もない。……哀れね」
 苦虫を噛んだような声を聴きながらドローテアが零した言葉に無明丸は首肯し、首謀の死神に言う。
「この憤懣いずれぶつけさせてもらうぞ……!」
 二人の話を聞いて鼓太郎が震える息を吐く。
「志が伴わぬではその強さも虚しい」その言葉が深く胸を刺していた。飲み込む息がひどく重い。
 ただ、敵が出た、だから倒す。そこに志はあったのだろうか。鼓太郎にはその言葉が酷く羨ましく思えた。
「皆、無事?」
 と杏が全員に軽くヒールをかけ、確認する。戦いで誰も脱落することなく勝利を得る事が出来た。
「周りには、観測機器が少しだけだ」
 と宗樹が補足する。周囲に壊れた物がないかの確認をしていた彼が修復の完了を告げると、杏は帰りましょう、と提言した。
「夜明けだ」
 千早が角の欠片を拾い、白む空の向こうを見つめる。二、三度瞬いた山間から陽が昇る。だが依然冷えた空気は和らがない。
「早めの雪が降りそうだね」
 任務を終えた満足感と共に、白い息を吐き出した。

作者:雨屋鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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