太陽の光に煌めくもの

作者:白鳥美鳥

●太陽の光に煌めくもの
「……うん、綺麗な空。そして太陽も綺麗だわ。流石、天気の良い時期ね。晴れるからって、昔、オリンピックが開催された理由もよく分かるわ……」
 暑すぎず、でも、太陽の光が眩しく七恵を照らしていた。
「あ、見つけた! 本当に森の中に湖がある……! 不思議な感じの場所……。じゃあ、この湖の水中に太陽みたいな光の花が咲いている筈……! どこかな……?」
 七恵は湖の中を覗き込むように、湖の周りを回っていく。
「凄く綺麗で輝いているって話だよね。見ただけで、その綺麗さと神秘的さで目を奪われるって。そんな花、やっぱり見てみたいよね!」
 そんな七恵の前に第五の魔女・アウゲイアスが現れる。そして、鍵で彼女の心臓を一突きした。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 崩れ落ちる七恵。そして、彼女の傍から白く輝く薔薇のようなドリームイーターが現れたのだった。

●ヘリオライダーより
「不思議な花って、みんな興味があるかな?」
 デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、そう言ってケルベロス達に話を始めた。
「今、不思議な物事に強い『興味』を持って、自分で調査を行おうとしている人がドリームイーターに襲われて『興味』を奪われてしまう事件が起きてしまったみたいなんだ。『興味』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているみたいなんだけど、奪われた『興味』を元に現実化したドリームイーターが事件を起こそうとしているみたいなんだよ。だから、みんなには、このドリームイーターを被害が出る前に倒して欲しいんだ。無事に倒すことができれば、被害者の人も目を覚ましてくれるから安心してね」
 デュアルは事件の全体を説明し始める。
「場所は、深い森の中にある湖。そこまで大きな湖では無いみたいだよ。ドリームイーターは白く光る薔薇の形をしていて、太陽の光を浴びてキラキラ煌めいている。見た目にも凄く綺麗で神秘的な姿っていうのかな、そんなドリームイーターだよ。攻撃は、太陽の力と、自らの力を使って戦ってくるみたいだ。後、このドリームイーターは『自分は何者?』っていう問いをかけてきて、正しく対応出来なければ殺してしまう行動を起こしてしまう。だけど、自分の事を信じていたり、噂をしている人がいると、その人の方に引き寄せられる性質があるから、それを利用すれば上手く誘い出せるかもしれないね」
 デュアルは最後にケルベロス達に言葉を贈る。
「湖に咲く花って綺麗だよね。だから、そういう花達がいつまでも綺麗な存在でいられるようにして欲しいんだ。みんなの活躍を応援しているよ!」


参加者
天司・雲雀(箱の鳥は蒼に恋する・e00981)
シェナ・ユークリッド(ダンボール箱の中・e01867)
イピナ・ウィンテール(折れない剣・e03513)
ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)
ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)
虎丸・勇(ノラビト・e09789)
長船・影光(英雄惨禍・e14306)
柊・天魔(悪の教徒・e25174)

■リプレイ

●太陽の光に煌めくもの
 空は晴れ晴れとした晴天。太陽の光が眩しく、湖面に反射してキラキラとしている。
 確かにここなら、水中に太陽のような光の花があっても不思議ではないかもしれない。本当にあったら素敵かもしれない。そんな事を思わせてくれる場所だ。
 ……残念ながら、ここにいるのはドリームイーターなのだけれど。
「いいお天気のぴくにっく日和ですね」
 シェナ・ユークリッド(ダンボール箱の中・e01867)は、お散歩しながら湖に近づいていく。
「太陽の光を受けて、太陽の如く煌めく花……か。確かに、この場にあればより一層雰囲気の出る場所になるな……」
 長船・影光(英雄惨禍・e14306)は、淡々と話し始める。柊・天魔(悪の教徒・e25174)を含め、ケルベロス達は、噂話に興じる事にした。
「水棲植物って、どれも綺麗ですよね。神秘的な印象があって、わたくしも気に入っていますよ」
(「光る薔薇ですか、わたくしも薔薇は好きですので、どのようなドリームイーターなのかとても興味がありますね」)
 そう話を合わせるルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)は、心の中では現れるドリームイーターが少し楽しみでもある。
「光を受けて輝いているのか……それとも、花自体が光っているのでしょうか?」
「そうだな。俺も雲雀殿と同じ考えだ」
 天司・雲雀(箱の鳥は蒼に恋する・e00981)の言葉に、ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)も、同意するように頷く。
 確かに、光を受けて光っているのか、自ら光っているのか……。それによって、恐らく美しさも違うだろう。……まあ、相手は残念ながら、やはりドリームイーターなのだが。しかし、戦う時の参考になるだろう。
 ビーツーは確かめる様に湖面に近づいて覗き込む。
 ……すると、湖の湖面が揺れ始め、太陽とはまた違う光を放つ花……白き薔薇が浮かび上がって来る。……まるで、七恵が見たいと思っていた、そんな花の様に。
 そして、湖面から浮き上がった花は、太陽の光を浴びて自らを更に美しく輝かせていた。
「皆様、ごきげんよう。こちらにいらしたのはピクニックか何かでしょうか?」
 穏やかな口調、しかし高貴な感じのする話し方だ。しかし、威圧的な感じは無い。さすが、そこは薔薇、という花だからなのだろうか。
「はい、ぴくにっくです。きれいでふしぎなお花も咲いてるとなればなおさらです」
 シェナの言葉に、白い薔薇は美しく揺れる。
「ええ、ここは素敵なお花が咲いていますよ。そのきれいでふしぎなお花に私も入れて頂けるのでしょうか?」
 優しい口調で話すドリームイーター。これは形が違うが、問いかけだ。
「きらきらの薔薇さんきれいです、太陽みたいです」
「世界で最も美しい薔薇ですよ」
「花の妖精……ってのは少しメルヘン過ぎるかな」
「……太陽」
 シェナ、ルピナス、虎丸・勇(ノラビト・e09789)、影光の言葉に嬉しそうにするドリームイーター。その薔薇の花はより美しく輝いている。
 だが。
「貴方は偽物です」
「偽物。花開くまでの過去も、枯れた後の未来も持たない、ただ形を真似ただけの見せかけの花」
 雲雀とイピナ・ウィンテール(折れない剣・e03513)の言葉に、白き薔薇は落胆したようだ。
「あなた達とは気が合いそうでしたのに……実に残念です」
 そう言った輝く薔薇のドリームイーターは、強い光を太陽から受け始めた。

●白薔薇型ドリームイーター●
 動き出したのはドリームイーターからだった。狙いは、いきなり回復の主たるビーツー。眩く視界さえ奪われる攻撃を、正確に繰り出してくる。
「綺麗な花を倒すのは勿体無い気もしますが、人を襲うのはダメですね」
 雲雀はケルベロスチェインを放って、ドリームイーターを縛り上げた。ドリームイーターの動きが鈍った所を確認すると、シェナも攻撃に入る。
「もし、なにものにも遭わずに戻っていたとしたら」
 シェナの手の中に小さな光が灯り、そこから淡い水色に染まりかけた白い羽根をいくつも作り出してドリームイーターへと放った。
「薔薇は棘のある花、か」
 的確な攻撃を行うドリームイーターに、ビーツーは薔薇の棘が頭に浮かぶ。最初の一手で自らを回復しなくてはならなくなってしまった。自らのオーラで身体を清めると、彼のボクスドラゴンのボクスへとアイコンタクトを行う。白橙色の炎を纏うボクスは頷くと、もう一人の回復手の影光の所に向かい、加護の力を高めた。
「首をはねようにも、相手は植物型……とりあえず、花を切り落とせばそれらしくなるでしょうか?」
 イピナは空の霊力を受け、その力を使ってドリームイーターを正確に切り刻む。そこを勇が狙った。
「悪いけど、じっとしててね」
 螺旋の能力を応用し、ナイフに電流を纏わせると、ドリームイーターへと斬りつけると共に電撃を浴びせる。彼女のライドキャリバーのエリィは全身に炎を纏わせると、そのままドリームイーターへと突っ込み、燃え上がらせた。電撃と炎を受けて、薔薇のドリームイーターは攻撃を受けているというのに、その姿は誇り高く、目を奪われるような美しさをしている。太陽の光を一身に受ける花だから、という事なのだろうか。
「御業よ、敵を鷲掴みにしてくださいね」
 ルピナスの御業がドリームイーターを縛り上げた。
 影光はドローンをイピナ達へと展開させる。相手が確実に仕掛けてくる事と、現在の状態では攻撃を的確に当てるのは若干厳しいから、という判断からだ。
 そこに天魔が動きを封じた所を狙い、シェナは惨殺ナイフをドリームイーターへと突き立てる。そして、激しく切り裂いていった。
 ドリームイーターは太陽の光を受けて美しく、眩く煌めく。その光を帯びた尖った葉は、攻撃の要の一人、シェナへと向かうが、ルピナスがそれを庇った。
「シェナさん、お怪我はありませんか?」
「はい、ありがとうございます」
 ルピナスとシェナがお互いの無事を確認している間に、ビーツーと雲雀は星々の加護を得た光の魔法陣をルピナス達や影光達へと送る。ボクスは雲雀へと飛んでいくと属性インストールで加護の力を高めた。
 死角に回り込んだイピナは月の弧を描く一撃を、避けようとするドリームイーターへと何とか突き立てる。
「影光さん、申し訳ないですが支援をしていただけないでしょうか?」
「……俺で役に立てるのなら……」
 影光が用意してきている回復グラビティの一つが強制連鎖という、命中率も上げられるものだ。少しでも誰かの力になれるのなら……それは、彼が憧れるものに近づけるかもしれない。彼の様々な経験による力は、確実にイピナの命中率を上げていった。
「エリィ、同時攻撃いくよ」
 勇の放つ炎の蹴りと共に、エリィがドリームイーターをひき潰す。
 ドリームイーターは白い花の色は炎に染まっているが……それでも、太陽の輝きを忘れず、尚も美しく光り輝くその姿はドリームイーターであれど、不思議な神秘さを醸し出していた。
「きれいなお花なのに倒しちゃうのがちょっと惜しいですけれど」
 シェナは足場に気を付けつつ、水灰色の記憶で白き羽根を作り出していくつも散らす。そして、続けて雲雀の放つ御業がドリームイーターを締め上げた。
「一度、攻撃に回ってみるか」
 ビーツーの言葉にボクスも頷く。そして、ビーツーはエアシューズのジーワイズバッシュを使って炎を放ち、ボクスは白橙色の炎のブレスを吐いて、ドリームイーターへと喰らわせた。
 イピナは凍結の弾丸をドリームイータへと喰らわせる。続けて勇が業【カルマ】と銘した惨殺ナイフの刀身に影を映して放ち、エリィが炎を渦巻かせて突っ込んでいった。
「この炎で、貴方を焼き払ってあげますよ」
 ルピナスは御業を放つ。それは炎となってドリームイーターを焼き尽くしていった。
 影光は、先程攻撃を庇っているルピナスへと強制連鎖を用いてしっかりと回復させる。次の攻撃に備える為にも。
 輝く薔薇のドリームイーター。太陽の光も炎の光も受け、煌々と燃え上がっているようにも見える。しかし、全てが不思議と美しかった。
 輝きに満ちるドリームイーターは、その美しき光を影光へと向ける。それを、高速で走ってきたエリィが防いで護ってくれた。上手く言葉に出来なかったが、影光はそれに心で感謝する。
 シェナは惨殺ナイフの刃を使って、ドリームイーターを切り刻んでいき、雲雀がそれを捕えた。ビーツーも、ドリームイーターの状態を判断して、攻撃に移る。稲妻を纏った突きがドリームイーターへと放たれると、ボクスがタックルを決めた。
 立て続けに攻撃を受け、ドリームイーターがバランスを崩すと、イピナは武龍連挺という名のドラゴニックハンマーを用いてドリームイーターを叩き潰す。
「そろそろ覚悟してもらおうかな」
 勇は逆手持ちナイフ二刀を上手く使いながら、踊るようにドリームイーターを切り刻んでいった。
 ルピナスは御業を放ってドリームイーターを縛り上げる。その状態を狙って影光は雷の霊気を帯びた一撃を放った。
 天魔がサポートしてドリームイーターの動きを鈍らせてくれる。その時間に入って、シェナは水灰色の記憶を使って、羽根を次々に飛ばしていった。
 輝き続けるドリームイーターはもう力など、ほぼ残っていないのに誇り高く、その美しさを保ち続ける。光放ち、太陽の光を乗せた葉はイピナを狙うが、ボクスが飛び込んできて、それを護った。
「ありがとうございます。あの眩しい花は私が必ず仕留めましょう」
 イピナの言葉にボクスは頷く。
「俺もイピナ殿のサポートをしよう」
 ビーツーも続けて渦巻く炎をドリームイーターへと放った。
「花は散り、夢も醒めるものです。せめて夢の終わりは美しい花弁で飾りましょう。今宵は素敵な夢が見れますように」
 雲雀の色とりどりの花弁は幻想的にドリームイーターを包み込む。
「これで終わりです!」
 イピナの刀が薔薇の花を切り落とした。そして、ドリームイーターは散らばる花弁となって輝く。そして……美しく、夢の様に消えていった。

●湖の畔で
 戦場になった場所を簡単にヒールした後、被害者の七恵を発見した。ケルベロスの皆で七恵を介抱し、無事に彼女は目覚めてくれた。
「残念だけど、ここには七恵さんが探していたものは無かったんだ」
「良かったら一緒にぴくにっくしませんか? 敷物にお茶とお菓子……金平糖。それにきれいな花がどこかに咲いていたらすてきです」
 勇が七恵に話しかけ、シェナがピクニックに誘う。それに七恵も頷いてくれた。
 それぞれ、ピクニックを楽しんだり、休息をしたり。
 水が苦手なビーツーとボクスは、水に濡れない範囲で散策をしている。
 同じく散策しつつ空を見上げながら、大切な恋人と一緒に来られたらと思いを馳せる雲雀。
「雲雀さんもピクニックを楽しみませんか?」
「ありがとうございます」
 ピクニックを楽しんでいる仲間達に声をかけられて彼女も加わった。
 ルピナスは湖に足を浸して冷たい水の感触を味わう。
「気持ちが良いですか?」
「ええ、七恵さんもどうでしょうか?」
「はい!」
 ルピナスの誘いに七恵も湖に足を浸す。彼女は湖の花を探しに来た位だ。湖も好きなのだろう。何だか楽しそうな顔をしている彼女がルピナス達には嬉しかった。
「良い天気だね」
「ええ、良い天気です」
 勇の言葉に、七恵も頷く。この晴れた太陽があるからこそ、この湖は輝くのだろう。
 天魔は晴れた空と、綺麗な湖を見ている。司祭である彼には、その風景はどう映っているのだろうか。
 影人も景色を楽しんでいた。そして、先程まで戦っていたドリームイーターへと思いを馳せる。
(「……あの花、敵で無ければ本当に絵になっただろうに」)
 少しだけ勿体ない事をした気分になる。
 でも、世の中には美しいものが沢山ある。それを夢見て、求めて、手を伸ばす事は、決して無駄な事では無い。きっと、何かが手に入るだろう。
 七恵も、仲間のケルベロス達も、そして手を伸ばし続けている影光も。
 晴れ渡る空と美しい太陽。煌めく湖。心を癒してくれる、景色。
 そっと思う。
 この景色がいつまでも失われない様に、と――。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 0
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