太極の拳

作者:荒雲ニンザ

 遠くから潮の香りのする街。
 横浜マリンタワーの展望台より更に上、塔の頂上に立ついかにも女性的な美しいシルエットが、中華街のネオンを見下ろしている。
 その元に、2つの影。
 ピンと弾いたカードが、赤と橙の光に輪を描く。
「あなた達に使命を与えます。この町に、武術の指導者という、武術を教えることを生業としている人間が居るようです。中でも太極拳の師父、その人間と接触し、仕事内容を確認、可能ならば習得した後、殺害しなさい。グラビティ・チェインは略奪してもしなくても構わないわ」
 それを受け、2つの影は身を低くする。
「了解しました、ミス・バタフライ。一見、意味の無いこの事件も、巡り巡って、地球の支配権を大きく揺るがす事になるのでしょう」
 その意味深な言葉と影は、風と共に消えた。

 言之葉・万寿(高齢ヘリオライダー・en0207)が説明を始める。
「螺旋忍軍のミス・バタフライが、動き出したようでございます」
 この事件は、先を見越した話となる。
 ミス・バタフライが起こそうとしている事件は、直接的には大した事は無いのだが、巡り巡って大きな影響が出るかもしれないという、厄介な事件だ。
「今回の事件は、太極拳の指導者という、珍しい職業をしている一般人の所に現れ、その仕事の情報を得たり、或いは、習得した後に殺そうとする事件になります」
 この事件を阻止しないと、まるで、風が吹けば桶屋が儲かるかのように、ケルベロスに不利な状況が発生してしまう可能性が高いのだ。
 勿論、それがなくても、デウスエクスに殺される一般人を見逃すことは出来ない。
「皆様には、この一般人の保護と、ミス・バタフライ配下の螺旋忍軍の撃破をお願いしたいのです」

 詳細はこうだ。
 基本は、狙われる一般人を警護し、現れた螺旋忍軍と戦う事になる。
 だが、ターゲットを事前に避難させた場合、敵が別の対象に切り替えてしまう恐れが非常に高いため、その作戦をとる事ができない。
「その問題となる対象の人物ですが、上周太郎さん、65歳。小さな太極拳教室で、武術や気功の指導をしておる方です」
 この依頼では、事件の3日程前から、対象の一般人に接触する事ができる。事情を話すなどして仕事を教えてもらうことができれば、螺旋忍軍の狙いを自分達に変えさせることができるかもしれない。
「自分達が囮になるためには、見習い程度の力量が必要でございます。奥の深い内家は技術の取得が難しいので、かなり頑張って修行し、その技を教えてもらって下さい」
 修行内容は『朝からお昼まで、行き交う観光客を避けながら、音を立てずに大股でゆっくり歩き、19基の牌楼門を通って回る』と、『夕方から閉店まで高級飯店で、大量に大皿料理を運ぶ』の2つ。
 どこが太極拳なんだ? と思うような珍妙な修行だが、必ず動作に意味がある。それをこなして根気よく頑張ってもらいたい。

 敵は2体。
 武器は螺旋手裏剣と日本刀を使用し、螺旋忍者と同じグラビティを使用する。
 きちんと修行をこなしていれば、敵は朝から晩まで珍妙な動きをしているケルベロス達の修行を気にしているはずだ。
 囮となることに成功した場合は、螺旋忍軍に技術を教える修行と称して、有利な状態で戦闘を始める事が可能となるだろう。
 戦闘場所は横浜中華街にある『福月季紅』という高級飯店の中。
 店の外は観光客が多いので、被害が広がらぬようにうまく店内に陽動し、閉じ込めて闘ってもらいたい。
 万寿の拳に力が入る。
「武術を取得している一般市民だとしても、相手はデウスエクス。ケルベロスが守ってやらねば、彼らは命を落としてしまいます。どうか油断せぬよう、頼みましたぞ」


参加者
桜狩・ナギ(花王花宰の上薬・e00855)
蒼天翼・真琴(秘めたる思いを持つ小さき騎士・e01526)
水沢・アンク(クリスティ流神拳術求道者・e02683)
エリシエル・モノファイユ(銀閃華・e03672)
宝島・チェイン(ウルトラソニック・e13795)
ソル・ブライン(紫黒の鉄機兵・e17430)
参式・忍(謎武術開祖のニンジャ・e18102)
詠沫・雫(メロウ・e27940)

■リプレイ

●陽向の日常
 早朝、『フレッシュ太極拳』と書かれた教室の前で、背筋の良い老人がゆっくりと空気を撫でている光景を前にする。
 やってきたのは修行志願者のケルベロス5名。
 老人を止めたのは、参式・忍(謎武術開祖のニンジャ・e18102)だ。
「お初にお目にかかる、師父殿。拙者は参式・忍、八極拳士にござる」
 後に続き、4名が自らを名乗る。
「はじめまして、師父。私はクリスティ流神拳術という拳法を学ぶ者であり、ケルベロスの水沢・アンク(クリスティ流神拳術求道者・e02683)と申します」
「同じくケルベロス。ガルド流真療術、桜狩・ナギ(花王花宰の上薬・e00855)」
「エリシエル・モノファイユ(銀閃華・e03672)」
「ソル・ブライン(紫黒の鉄機兵・e17430)」
 深々と頭を下げる若者達に、老師はフウとため息をつく。
「乱れとるのぉ。一瞬で空気の流れが崩れてしまいよった」
 それもそのはず、ややぎこちない面持ちで並ぶケルベロス達は、礼節を弁えようと些か硬くなっていた。
「そのケルベロスさんたちが、ワシに何の用じゃ?」
 アンクが事情を説明し始める。
「上周太郎さん。デウスエクスが貴方の技と、その命を狙っています。我々は貴方の護衛をし、敵の目論見を阻止するために参上しました。それに協力して頂くために必要なことがありまして……3日の内に太極拳を見習い程度まで見えるよう、修行をお願いしたいのです」
 三日と聞き、老師はカカカと笑う。
「お主等も、前戦で戦っておる武芸者。分かっておるだろうが、内家拳はそう容易く身につくものではない。3日では、ダイエットで習いに来た生徒さんにも敵わぬぞ」
「このままでは師父殿にも危険が及ぶのでござる。どうか、拙者達を弟子にして下さらんか? 拙者も武芸者の端くれ、どんな厳しい修行にも耐えて見せる覚悟故……よろしくお願い申す」
 頭を下げる忍の横で、ナギが真剣に口を開く。
「オレは修行中に、師である父親を失った。いくつかの技が継承できていない状態で、宙ぶらりんのまま闘ってきている。その技を再現し、会得する一助にするためにも、修行を付けてほしい。こんな時に不謹慎かもしれんけど、チャンスがあるなら掴みたいんや! どうか稽古をつけてください!」
 勢いよく脳天を見せるナギの横、右を包んだまま包拳礼を崩さないエリシエルも願う。
「自身が見切り・回避・受け流しを主とした我流剣術のため、きちんとした拳法を学んでみたい」
 そしてアンクとソルも続く。
「私自身、クリスティ流神拳術だけでなく他の武術を学ぶ事の必要性を感じておりました。何卒、稽古を付けて頂けないでしょうか」
「自身は撃ち合い主体の戦い方なのだが、接近されての戦いに関しては不得手だ。そこで武術を学ぼうと考え、太極拳なら相手の虚をつけるのではと考えた。師父の教えを守り、技術を習得できるよう精一杯取り組む。どうか3日の教えを授けては頂けないだろうか」
 そこまで大人しく聞いていた老師が、う~んむと声を発する。
「息を吸い、吐くことも修行。生きること全てが修行じゃよ。お主等は、戦いの中に身を置いていても、茹でる前の乾麺じゃな」
 ん? と視線を投げるケルベロスに、老師は笑う。
「ワシはまだ若いからの、まだまだ生きて楽しいことを経験したい。お主等はワシよりチョピットだけ若いからの、もっと生きたいじゃろう。生きる術を学ぼうとすれば、おのず太極を学べる。柔らかく、この3日を受け流してみるがよい」
 5名の修行が許可された。

●陽が沈む前
 老師は観光用に用意された横浜マップを教室内から数枚持ってくると、5名のケルベロス達に手渡す。
「ほい。行き交う観光客を避けながら、音を立てずに大股でゆっくり歩き、19基の牌楼門を通っておいで。16時までには戻ってこないと、夕飯が食べられなくなるぞ」
 ケルベロス達が言われるまま大股で歩き始めると、背後から老師が叫んだ。
「もっとゆっくり! 足が大股なんじゃから、手も大きくふれぃ! 身体全体を使って歩いてこい!」
(「なんてーか、元気なじーさまだなあ……」)
 エリシエルが思った瞬間、何かを察した老師に叫ばれ、慌てて大股で逃げ出した。
 当然だが、メチャクチャ目立つ。徐々に時間帯が観光時間に近づいてくると、行き交う人々の視線が痛々しくなってきた……。
 まいったな……と思っていると、よそ見をして歩いていた観光客にぶつかってしまう。
 観光客がずんずん迫ってくるのは分かっているが、避けている余裕がない。
 ごめんなさい、申し訳ない、ひたすら誤り通しで、1つめの牌楼門を通った。
 頼む、みなさん避けてくれ、と大ぶりアクションで進むが、観光客は楽しく風景を見て歩き、ドンドン体当たりをかましてくるのであった。
 そうこうしているうち、16時。
 汗だく、足腰グラグラ、体中から悲鳴を上げた5名が教室前にたどり着くと、老師が窓から出迎えた。
「よしよし、ちゃんと修行しておったようじゃな」
 スローモーションの動作は負荷が激しい。修行を誤魔化して適当にやっていれば、一発でバレてしまったのだろう。
「じゃあ、晩飯にするかの」
 ヤッター、ご飯だ! と喜んだのもつかの間、到着したケルベロス達に待っていたのは、高級飯店でのバイトだった。
 エリシエルは元々トレーニングが嫌いなタチではなかったが、お腹が減って苦笑い。渡された制服に隙間ができそうだ。
「牌楼門のほうは相手の流れを読む力、ウェイトレスのほうは体幹と体のバランスを鍛えてるのかなー?」
 カフェで仕事をしているアンクであったが、運べと指示された大皿の量を見て絶句してしまう。
 ちょっと待ってくれと言う前に、重ねられた大量の蒸籠を押しつけられる。
 皆がアワアワしながら揺れる皿を運んでいると、ツヤテカの大きなテーブル席に座った老師と、蒼天翼・真琴(秘めたる思いを持つ小さき騎士・e01526)、詠沫・雫(メロウ・e27940)、宝島・チェイン(ウルトラソニック・e13795)が食卓を囲んでいるのが目に入った。
「な、何してんねん!」
 思わずナギが口を開くと、チェインが意地悪くニカッと笑った。
「頑固ジジィの特訓に付き合うなんて御苦労だよな~」
 言うや、老師の足が彼の座っていた椅子を器用に180度回転させる。その勢いでチェインの組んでいた両足がナギの腹部に当たると、持っていた大皿が崩れて床にたたきつけられた。
「ウワーッ!!!」
「料理や皿を台無しにすると、バイト代からどんどん減っていくぞー」
 八つ当たりをした老師が質の良い鉄観音をすすり、しれっと言い放つ。
 八極拳を身につけている忍は、身体の重心の扱いは中々筋が良かったが、いかんせん動きが硬い。
 カチカチカチカチカカチと小刻みに皿を鳴らせて運んでいたが、老師が彼の制服を椅子の端に引っかけたのを皮切りに、他のメンバーを巻き込んでテーブルをひっくり倒した。
「う、うぐ……武芸の道に果ては無し。内家の拳、会得してみせるでござる」
 頭にキクラゲをのせたソルが自問自答している。
「しかしこの行動に何の意味が……。暮らしの中にこそ修業有り。……何気ない動きにこそ太極拳の真髄があるってことか……?」
 真琴が黙々と中華を食べている横で、笑っているチェインに雫が言った。
「笑ったら可哀想ですよ。当日は、彼らにかかっているのですから」
「あー大丈夫だって。当日はちゃんとやるっつの。こうゆうのは長引くのが一番面倒だからな」
 目をつむれば陰陽太極図がぐるぐると回転するが如く過ぎた3日間。
 静と動に振り回され続けた修行の成果は如何に。

●陰が寄る
 当日、老師は命を狙われているというに、それも大きな輪の中の1部でしかないといった表情で、日課をこなしている。
 朝からチェインは大忙しだ。
 高級飯店『福月季紅』の支配人と掛け合い、店を貸し切りに。
 敵を誘き寄せる大ホールのセッティングも完璧。テーブルやイスを取り払い、足場作りをしたので蹴躓くこともないだろう。
 店の中にいた従業員にも避難を命じ、自らは店のレジ裏に隠れ、雫は店の外で待機する。
 14時になると、老師はケルベロス5名のバイト先である高級飯店『福月季紅』に向かう。
 真琴が老師と共に来店し、扉が閉められた。
 一方。最後の修行を行っていたソルに、獲物が食いついていた。
 よそ見をして歩いていた二人の観光客が、寸前で避けたソルの身のこなしを見て話しかけてきたのだ。怪しさ満天、螺旋忍軍であろう。
 玄人っぽいことをチラつかせると、相手は簡単に乗ってきた。
 修行するのは構わないが、一人ずつでないと自分は未熟だから対応できないと伝えたが、すんなり受け入れられ、かえって拍子抜けしてしまう程だ。
 ソルが二人を連れて福月季紅に入ると、店の外に待機していた雫が素早くキープアウトテープを扉に張る。
 エントランスまで来ると忍がいたので、体格の良い方をクラウンと見立てて案内を頼む。
 華奢な方をロープとし、ソルと共にエントランスで待つこととなった。
 途中、忍が大ホールに向かおうとしているのを見たナギが駆け寄ってきた。
(「クラウンはエントランスじゃねぇの!?」)
 すると、すぐ後に内心慌てた様子のアンクがやってくる。
(「自分がどちらで戦闘するか、伝えていませんでした……!」)
 エリシエルも、よくよく考えれば、囮を買って出ても、どうしたいのか考えておらず、店内でウロウロしてしまう。
 一方、エントランスでロープと待つソルの様子を見ているチェイン。
(「ん……? ロープとここで戦闘していいのか?」)
 外から戻ってきた雫がこの状況を見てマズイと息を呑んだ。
 店内に誘き寄せる。そして分断は成功したものの、ここにきてお互いの意思がちぐはぐとなり、対応できなくなってしまっていた。
 そうこうしているうち、敵が罠だと勘づいた。
「ケルベロスか! おのれ、たばかりおって!」
 ソルが舌打ちし、アイズフォンからメンバーの携帯に緊急事態を発信する。
 老師の護衛についていた真琴がかけつけようとした時だ、開けた扉の向こうにクラウンが構えているのを目に入れ、咄嗟に戦闘態勢に入る。
 瞬間、間合いに滑り込まれ、強烈な螺旋掌を胸に食らうと、真琴は背後の壁に叩きつけられた。
 クッ、と痛みに堪え、老師を背後に敵の進路を遮る。
 仲間は全員店内にいる。少し遅れて真琴の元に集まると、老師を後ろに庇った陣形をとった。

●陰と陽
 不利な状況に陥り、ケルベロス達の内心に焦りが見える。
 すると背後から老師が大きく活を入れた。
「たわけが!! 呼吸を忘れるでない! 足の裏をしっかり大地につけよ! 太極の神髄は、攻撃を仕掛けられてからにある。気に逆らわず、流れに従い、しなやかに受け入れ、力に依存せず、我が身から放つのじゃ!」
 ケルベロス達はグッと身体に力が戻るのを感じた。
 ロープのシュリケンスコールが前列に降り注ぐと、傷つきながらも極力それを受け流し、隙の中に反撃をねじ込んでいく。
 エリシエルのスターゲイザーが柳のようにロープにめり込むと、それを皮切りに戦闘が始まった。
「クリスティ流神拳術、参ります……!」
 ターゲットはロープだ。
 アンクが腕の手袋と袖を燃やしつつ地獄を解放し、左腕のオーラも展開すると、破鎧衝で強烈な一撃を食らわす。
「イヤーッ!」
 先に放たれた手裏剣の中、枯れ葉を避けるように滑り込むと、忍が気合いと共に打ち込んだ旋刃脚が傷を広げた。
 敵の悲鳴を耳にしながら、真琴がスターサンクチュアリで仲間の保護を。
 敵の動きがスローに見え、ナギが鋭く目を見開く。
「電光一閃捻じ伏せる! ガルド流真療術、晴龍透衝!」
 たたき込んだ晴龍透衝のキレがよくなり、身体に巡る電流が気の流れを自然に追っているのが自らにも分かった。
「いつもより動きやすいな、これが修行の成果か!」
 攻撃をくらった敵に隙が生じている間に、雫が黄金の果実、メルが属性インストールで傷ついた真琴を癒やすと、チェインも気力溜めと続いた。
 再び敵の攻撃。クラウンが流水斬で前列をなぎ払う。と、ロープが避ける隙を作らせぬよう、毒手裏剣で1体を狙ってきた。
 敵のコンビネーションは厄介なものであったが、こちらはメディックが二枚。
 何とかバッドステータスを解除し、真琴の回復を追いつかせている状態。4枚クラッシャーの火力で押している分、ロープさえ沈められれば立場は変わる。
 幾度かターンが回った頃、すでにメルは倒れていた。真琴は息を切らし、一人でダメージを背負い続けている。
 力に依存せず、受け流す。老師の言葉を思いだし、気を巡らせると蒼い闘気を身体にまとった。
「響け、壮麗の調べ。生命の息吹、来たれっ!」
 響癒功がみるみる体力を戻し、真琴は再真び足の裏を大地につける。
 再度クラウンが流水斬で前列をなぎ払い、ロープが毒手裏剣で1体を狙うコンビネーションを仕掛けてきた時だ、ナギがその刃を受け止めた。
「水の一滴、ここや!」
 エリシエルがテーブルの後ろに逃げ込み、毒手裏剣を回避したのを確かめた後、アンクが歩の運びを意識しながら間合いに飛び込んだ。
「イー……アル……サン!!」
 ロープが手裏剣を投げた手を取り、そのまま腕のラインをなぞり抜け、肘打ちから両手での掌底に繋いだ後、最後に七寸靠で吹き飛ばしてから静かに動きを収めた。
 水に押し流されたようにロープは後ろに弾かれ、幾度か痙攣すると、動かなくなる。
 すぐ横にクラウンがおり、アンクが危険だと悟ると、続いて忍が間合いに飛び込んだ。
 重ねられた大皿が滑り落ちるのを捌くようにクラウンの手を払いのけ、腕を外側に巻き込んでから急所を突く様は、吸い付いて離れない恐怖を敵に与えた。
 相手の力を応用し、それを逆手にとって爆発させる。
 両腕を揃えて敵の胸に掌を当てると、内蔵ブースターで加速を付けられた螺旋の力と加速の衝撃力は、一気に敵の内部へと力を圧縮させた。
「七孔噴血……撒き死ねッ!!」
 急所全てにエネルギーが渡り、クラウンは口から煙を吐くと、そのまま静かに沈んで、二度と起きることはなかった。

 店のヒールも終わり、老師の前に一同が並んでいる。
「師父のおかげで成功しました。感謝致します」
 アンクが礼を言うと、修行を受けたメンバー達も続く。
「三日間お世話になり申した、オタッシャデ……」
 忍が一礼すると、老師は活を入れた。
「訪れるも去るも、太極の流れ。しんみりするでない。腹ごしらえでもしようではないか。ワシのおごりじゃ!」
 ヤッター! と飛び上がった数名。
 まあ、5名分のバイト代は、もらっていないのであるが。
 修行代として老師のポケットマネーとなり、ケルベロスの腹の中に収まるのであれば、それはもお、太極の流れでございましょう。

作者:荒雲ニンザ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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