死せる緋色の咆哮

作者:雷紋寺音弥

●暴虐の風、目覚める
 深夜、釧路湿原の奥地にて。
 生暖かい風が草の頭を撫でる中、獣のフードを被った死神の下僕たる怪魚達が、大柄な熊の獣人の周囲を漂っていた。
「そろそろ、貴女にも働いてもらおうかしら? これから市街地へ向かい、力のままに暴れなさい」
「御意……。全ては、テイネコロカムイ様の思うがままに……」
 感情の起伏を感じさせない虚ろな瞳。抑揚のない口調で返事をする獣人の背は、まるで返り血でも浴びたかの如く赤い色に染まっている。
「うふふ……。期待しているわよ、緋鎧(ひがい)。私のために力を使えて、あなたも嬉しいでしょう?」
 そう言ってテイネコロカムイが浮かべた笑みに、緋鎧と呼ばれた獣人は、無言のまま頷いて市街地へ向け歩み出した。

●赤き背の獣人
「釧路湿原で、死神の勢力に動きが見られた。ここ最近になって確認された、テイネコロカムイという死神の仕業だ。第二次侵略期以前に死亡したデウスエクスをサルベージし、何らかの方法で釧路湿原まで移動させた上で、釧路市街地を襲撃させようとしている」
 召集に馳せ参じたケルベロス達の前で、ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)は自らの垣間見た予知について話を切り出した。
 今回、テイネコロカムイによってサルベージされたのは、背中の毛を赤く染めた熊のウェアライダー。身の丈程もある巨大な刀を用いる他、ウェアライダーとしてのグラビティも使ってくる。
「敵のウェアライダーは、その外観から『緋鎧』と呼ばれているようだ。2m近い身の丈を誇る巨漢だが、意外なことに瞬発力も高い。咆哮や、重たい拳の一撃を食らってしまえば、相手の影を捉えることも難しくなるだろう」
 加えて、敵のウェアライダー、緋鎧の周りには、テイネコロカムイが付き従わせた怪魚型の死神も同行しているらしい。大した戦力ではないが、戦闘になると緋鎧を守るように立ち回る上、ヒールグラビティも使用してくるというのは厄介である。
「敵の侵攻経路は判明している為、市街地と湿原の途中にある平原で迎撃できるのは幸いだな。周囲の被害や一般人への配慮も関係なしに戦えるのは救いだが、肝心のテイネコロカムイは既に姿を消しており、足取りも掴めていない」
 だが、それでも敵の計画を未然に防ぎ続ければ、やがてはテイネコロカムイ自身が動かざるを得なくなるだろう。そのためにも、今は目の前の事件の解決に全力を尽くすのが最善だ。
「敵の思惑がなんであれ、罪もなき人々の住まう市街地への侵攻を許すわけにはいかん。この暴挙を止めるために、お前達の力を貸して欲しい」
 釧路湿原に吹き荒れる暴虐の風。それを鎮めるのもまた、地獄の番犬、ケルベロスの役目。そう結んで、ザイフリート王子は改めて、ケルベロス達に依頼した。


参加者
天導・十六夜(天を導く深紅の妖月・e00609)
レナード・ストラトス(誇りを捨てたスナイパー・e00895)
ブランシュ・ヴァルディアブ(おめんやさん・e08260)
唯・ソルシェール(フィルギャ・e24292)
クオン・ライアート(緋の巨獣・e24469)
霞ヶ浦・みなも(微睡む羊・e28498)
海花櫻・美音(一空・e29511)

■リプレイ

●アフンルパル
 秋にしては妙に生暖かい風が吹き抜ける湿原を、静謐な月の光が寂しげに照らし出していた。
「相変わらず面倒くさい事を……」
 自ら手を下さず死者の魂を利用する死神の手口に、天導・十六夜(天を導く深紅の妖月・e00609)が嫌悪感を露わにして呟く。瞬間、吹き抜ける風が大きく草の頭を揺らしたところで、それは唐突に現れた。
 本物の熊と見紛うような巨体。首元から肩、そして背中にかけては、まるで血のような赤い色に染まっている。その周りには三匹の怪魚が空中を舐めるようにして泳ぎ回っており、遠間からも解る鋭い眼光を携えた瞳には、恐るべき殺気が漂っていた。
「無駄かと思いますが、あなたに命令を下したテイネコロカムイについて、教えていただけませんか?」
 駄目元で問い掛けるリモーネ・アプリコット(銀閃・e14900)だったが、やはりまともな返事は返ってこなかった。その代わりにケルベロス達へと向けられたのは、大地をも揺るがさんばかりの凄まじい方向。死神の手駒と化した大熊のウェアライダー、緋鎧の放つ猛々しい叫び。
「……っ!?」
 空気を通して伝わった衝撃に、クオン・ライアート(緋の巨獣・e24469)の顔が一瞬だけ震えた。一撃の威力だけで見れば、大した攻撃でもないだろう。だが、仲間の分まで纏めて肩代わりするとなると、少々話は違ってくる。
「緋の獣、か。ふむ、私は獣人ではないが……似た様な二つ名を冠していて、な」
 だが、それでも怯むつもりはないと、クオンは自らの意思を力に変えて、衝撃を受け流しつつ踏み止まる。
「その名が叫んでいるんだよ。“紛い物を壊せ”とな!」
 それだけ言って、巨大な無銘の大剣を、間髪入れずに振り下ろす。しかし、渾身の力を込めて放った一撃は、咄嗟に割り込んできた怪魚型の死神によって邪魔をされた。
「まずは、この魚を三枚に卸さねばならないようですね」
「それでは、緋鎧の牽制はお任せくださいませ。……圧倒せしめよ」
 クオンの攻撃を攻撃を正面から受けた怪魚型の死神を、リモーネが研ぎ澄まされた刃の一撃で斬り伏せる。そん間に、唯・ソルシェール(フィルギャ・e24292)は濁流の如き水竜巻で、緋鎧を天頂から屠らんとするが。
「あくまで身代わりにならんとするか。……ならば!」
 緋鎧を庇い、再び怪魚型の死神が攻撃を受けた。それを見て、十六夜もまた雷の霊力を帯びた斬霊刀で、追い打ちを掛けるように同じ死神を狙う。
「神を纏いて鳴り響け、天導流・鳴神」
 どうせ庇われてしまうのであれば、先に斬り捨ててしまった方が後腐れがない。果たして、そんな彼の選択は正しく、早くも斬り伏せられた死神は、忙しなく動き回って体勢を立て直そうとしていた。
 このまま一匹ずつ潰して行けば、一気に押し切ることができるだろうか。一瞬、そんな考えがケルベロス達の脳裏を掠める。が、いかに緋鎧と比べて脆弱な存在とはいえ、怪魚型の死神達もデウスエクスであることに変わりはなく。
「お下がりくださいませ。ここは、私が……」
 自ら盾となるべく前に出たソルシェールの身体に、どす黒い怨念の塊が降り注ぐ。爆散する漆黒の破片の全て。それらの全てを受け止めたことで、彼女の身体が瞬く間に猛毒によって蝕まれて行く。
「治療しますよー、皆さんふぁいとっすー」
 だが、そこは霞ヶ浦・みなも(微睡む羊・e28498)が、させはしない。テレビウムのモモに閃光による援護攻撃を使用させつつ、すかさずケルベロスチェインを展開すると、守護の魔方陣を描いて仲間達を守った。
「街に繰り出そうとする死神の群れ、か。夜にはあまり遭遇したくない輩だ」
 これは、先程の返礼だ。海花櫻・美音(一空・e29511)が螺旋手裏剣を投げ付ければ、それは空中で散開し、驟雨の如く怪魚型の死神達へと降り注ぐ。そのドサクサに紛れて放たれた一筋の閃光が、そのまま一匹の死神の身体を撃ち抜いた。
 湿地に崩れ落ち、死神が溶けるようにして消えて行く。茂みの影、攻撃できる限界の間合いから、身を隠しつつ放ったレナード・ストラトス(誇りを捨てたスナイパー・e00895)の一撃が仕留めたのだ。
「にせもののくまだぁー!! ころせぇー!! 鮭を取るくまは居るけど、鮭と仲の良いくまなんぞいない!!」
 早くも敵の壁の一角を崩し、ブランシュ・ヴァルディアブ(おめんやさん・e08260)が嬉々とした様子で斧を振り回しながら斬り掛かって行く。だが、彼女の斧が死神の鱗を飛散させたところで、緋鎧が右手に携えた刃を構えて雄叫びを上げた。
「ウ……オォォォォッ!!」
 横薙ぎに払われた斬撃が、ケルベロス達の身体を周囲の草諸共に斬り伏せる。流水と呼ぶには、あまりに激しく荒々しい動き。まさしく、激流と呼ぶに相応しい斬撃の前に、みなもの施した鎖の防御が、音を立てて砕け散った。

●モシリシンナイサム
 月明かりの下、獰猛なる緋色の背を持つ者と、地獄の番犬との死闘は続いていた。
 生前の時でさえ、恐るべき膂力を持っていたと思しき大熊のウェアライダー。それに加え、肉壁としての打たれ強さを持つ怪魚型の死神がいるとあっては、なかなか思うように攻撃が通らない。
 草むらを掻き分けるようにして飛来する冷凍光線。レナードの放ったものだ。怪魚型の死神の身体は一瞬にして氷に閉ざされるが、それでも未だ倒れない辺り、壁としてはそれなりに優秀らしい。
「あぁっ! モモがやられたっす!」
 全身が黒く染まり、怪魚型の死神に何度も齧られて消えて行く相棒の姿を見て、みなもが思わず手を伸ばした。
 死神達の攻撃を一手に引き受けることで、他の者への被害を防ぐ。確かに、それは良いのだが、今回に限っては前衛に立つ者が多過ぎた。結果、怨霊弾から庇う対象も必然的に増えてしまい、瞬く間に全身を猛毒に蝕まれてしまったのだ。
 だが、それでも悔やんでいる暇などない。前衛の人数が一人分だけ減った今、彼女の操る鎖の防御は、初めて最大限に効果を発揮するのだから。
「厄介な相手っすね。でも、まだまだ諦めないっすよ!」
 再び広がり、魔方陣を描く鎖。もっとも、その防御とて、緋鎧の前には鉄壁ではない。みなもが交互に回復技を使うのに合わせ、緋鎧もまた刃による薙ぎ払いを仕掛けてくる。それに少しでも触れてしまったが最後、彼女の施した防御の策は、成す術もなく崩されてしまう。
「光源も要らない程の月と星降る夜に純戦とはな。風情があって、面白い」
 多少の皮肉を込めながら、美音が猛毒を仕込んだ手裏剣を緋鎧目掛けて投げつけた。
 今度は命中。肩に突き刺さった刃を払い除ける緋鎧だったが、牽制としては上々だ。
「……あなたのお面は要らない」
 巨大なショクダイオオコンニャクの花で死神の顔面を覆い付くし、至近距離から凄まじい光を叩き込むブランシュ。一瞬、夜中から昼へと逆戻りしたような閃光が辺りを包み、それに飲み込まれるようにして、二匹目の死神もまた溶けて消えた。
 これで、敵の壁は一体のみ。しかし、それでも緋鎧は未だ余裕のある態度を崩してはおらず、その剛腕を肥大化させて行き。
「……っ!? 左から来るよ!」
 離脱する間際にブランシュが叫ぶのと、緋鎧の左腕が勢い良く繰り出されたのが同時だった。
「ぐっ……! さすがに、重いな……」
 衝撃で吹き飛びそうになる身体を鉄塊剣で支え、クオンが苦虫を噛み潰したような表情で脇腹を押さえる。
 紛い物の緋色としか思っていなかったが、それでも威力だけは決して侮れないものがある。正直、今の一撃だけで、肋骨にひびが入ったかもしれない。防御に特化した立ち位置にいなければ、もしくは敵が攻撃に特化した立ち位置にいたのであれば、確実に骨を砕かれていた。
 後手に回って守りに逃げれば、そのまま強引に蹂躙されることは明白だ。ならば、少しでもスタンドアローンで敵を引き付けねばと、クオンは地獄の炎弾で緋鎧を狙う。
「それにしても……『緋鎧』なんて大層な名前に刀を使うなんてまるで武者の様ですね」
 あるいは、冥府の瘴気に当てられて、悪鬼と化した羅刹と言った方が正しいか。どちらにせよ、この世の理に反して現れた世界の歪には違いあるまいと、リモーネは改めて刃を構える。
 モシリシンナイサム。北の地の伝承にある、異世界からの来訪者の名がリモーネの頭の中を過って消えた。深淵より現れし異形の存在という意味では、デウスエクスも似たようなものなのかもしれない。怪魚型の死神を斬り伏せながら、そのようなことを考えもする。
「もう少しで、取り巻きもいなくなりそうですわね。それまで、なんとか持ち堪えねば……」
 リモーネの一撃で死神が瀕死になっているのを悟り、ソルシェールが緋鎧に仕掛ける。もっとも、轟音と共に放たれた彼女の攻撃は、しかし緋鎧に易々と避けられてしまう。
 牽制とはいえ、同じ属性の攻撃を繰り返してしまえば、おのずと動きを見切られてしまうというもの。ましてや、敵の緋鎧は巨体に反し、瞬発力も凄まじい。
 やはりここは、少しでも早く壁としての死神を排除して、一気に畳み掛けねば勝機はないだろう。
「さぁ、綺麗な華を咲かせてくれ」
 二振りの刃を同時に引き抜き、十六夜の連撃が死神の鱗を削って行く。抜いては納め、また抜くことの繰り返し。刹那の瞬間に幾度となく斬撃を刻むことで、それはやがて血飛沫で創った華弁を咲かせ。
「貴様の業を数えろ……天導流神殺し、血刃蓮華」
 最後の一振りが抜かれた瞬間、死神の身体は全身から夥しい量の体液を噴き出して四散した。
「さて、此処から本番といこうか……」
 刃を納め、十六夜は改めて緋鎧を見据える。しかし、壁を失ったにも関わらず、敵の全身から放たれる殺気は留まるところを知らず。飢えたる獣さながらの気魄は、ますます滾りを増していた。

●ウェンカムイ
 壁を失った緋色の獣。だが、そこから先を追い詰めることは、なかなかどうして難しかった。
 巨漢でありながら俊敏な動き。それを捉えるための策が、決定的に不足している。極稀に敵の動きを鈍らせることはできるが、それとて常時期待できる程のものでもなく。
「このくまって両利きなんだね! 意外と器用!?」
 ソルシェールの掌底を左腕で、リモーネの斬激を右手に握る刃で無効化した緋鎧の姿に、ブランシュが仮面の奥で目を丸くしながら叫んでいた。
 動物としての熊は左利きが多いとされるが、このウェアライダーに限っては、そのセオリーは当てはまらない。拳と刀を器用に使い分けることで、完全に死角を断っている。
「正真正銘のウェンカムイ……といったところでしょうか」
 反撃を警戒して距離を取るリモーネの口から、思わず北の大地に住まう悪神の名が零れた。死神の儀式によって異形の蘇生を施された緋鎧は、正に山々に巣食う暴君そのものだ。
「紅の華を咲き散らせ……天導流・絶紅華」
 肩口に残る傷跡を目掛け、腰溜めに刃を構えて駆ける十六夜。擦れ違い様に抜刀して斬り付けたところで、凄まじい炸裂音が緋鎧の頭を直撃した。
「レナードさんがやってくれたっすか? よし、あたしも応援頑張るっすよ」
 敵が怯んだ隙を狙い、みなもがスマホでネットに心温まるエピソードを投稿している。どう考えても場違い極まりない行動にしか見えないが、それで仲間の傷を癒してしまえるのは、さすがというか何というか。
「独り、苛まれり」
 未だ反響する音から立ち直れない緋鎧目掛け、美音が猛毒の入った小瓶を投げつけた。溢れ出る毒に染められて、敵の頭部も背中と同様の赤い色に染まって行く。
「守りは二の次!! ぶっ飛ばすよ!!」
 攻性植物を絡み付かせ、ブランシュが緋鎧の動きを止める。それでも敵は最後の力を振り絞り、渾身の力を込めた拳を繰り出すが。
「失礼。ここを通すわけには参りません」
 その身で拳を受け止めつつ、ソルシェールは緋鎧へと改めて問うた。
 一度沈んだ命。再び浮上し光を得たとしても、傀儡として生きるのは如何なものか。死してなお、デウスエクスに弄ばれる存在でよいのかと。
 もっとも、これは彼女自身にも返ってくる言葉。限りある命を得るまでは、それに等しい者だったと知っていたから。
「グ……グ……」
 突然、攻撃を終えた緋鎧が苦悶の表情を顔に浮かべて膝を突いた。見れば、肩口の傷は壊死したかの如き黒色に染まっており、その頭部もまた酷く焼かれていた。
「ようやく効いてきたか……」
 まるで、この結果を知っていたかのように、美音が落ち着いた口調で呟いた。
 いかに素早い相手であろうと、一度でも猛毒をその身に受ければ、後は肉体を徐々に蝕まれるのみ。回復の術を持たない緋鎧にとって、それはまさしく泣き所の一つ。
「さあ見るがいい! これがッ……これが貴様を蹂躙せし……」
 もう、出し惜しみする必要はないと、クオンが自らの身体を緋色のオーラで包み。
「緋の巨獣の姿だ!!」
 その名の通り、手にした大剣を力に任せ、思うがままに振るい続ける。圧倒的な暴力による蹂躙。怒涛の猛攻を前にしては、さすがの緋鎧も成す術なし。
「ふむ、貴様に緋の名は重かったようだ、な」
 崩れ落ちる緋鎧に背を向けたまま、クオンが刃を地に突き刺した。湿原には再び静寂が訪れ、倒れた緋鎧の身体もまた、闇に溶けるようにして消えて行った。

●イオマンテ
「お疲れ様だ……」
 刃を納めつつ、仲間達へと告げる十六夜。しかし、その言葉とは裏腹に、彼の静謐なる殺意は高まるばかり。
 そんな中、ブランシュは何故か般若の面をレナードに渡していたが、本人によって、あっさり流されるように断られてしまった。
「般若の面? それは、おっさんより似合う奴が居るだろ? つか、渡せって言ったの誰だよ?」
 とりあえず、自分は土産も手に入ったので満足だと、したり顔のままレナードは去って行く。
「うぅっ……それにしても北海道、超寒いっすね……。そろそろ時期は冬ですかね」
 湿原を吹き抜ける風に晒されて、みなもが軽く身を震わせる。戦いが終わってみると、改めて空気の冷たさが身に染みる。
「できれば、上空から少しでも調査したかったのですが……」
 最後に、ソルシェールが一抹の不安を覚えて提案したが、それは仲間達によって止められた。敵の親玉がどこに潜んでいるか判らない以上、迂闊に単身で行動するのは自殺行為だ。
「しかし……穏やかな眠りについている者を無理やり起こして利用する……死神のやり口には反吐が出ますね」
 それでも、いつかは大元を断ってやろうという気持ちに変わりはないと、リモーネは天を仰いで月を眺めた。
 願わくは、今宵の戦いで再び散った大熊の獣人に、永久の安らぎがあらんことを。北の地の狩猟者達が狩った獲物の魂を神々の世界へ送り返す、イオマンテの儀となれば幸いだと。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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