下劣なスカウトマンに引導を

作者:なちゅい

●オークのスカウトマン、摘発!
 ヘリポートに集まるケルベロス達。
 彼らを前に、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)がいつになく真剣な表情でケルベロス達に告げる。
「ケルベロスの皆の作戦提案もあって、各地の地下アイドルを狙うオーク『ギルビエフ・ジューシィ』の討伐作戦が行われることになったよ」
 今回の作戦は、『アイドルケルベロスによる囮作戦』である。
 これまでは、地下アイドルをさらおうとする配下オークとの戦闘中にギルビエフが撤退してしまっていた為、ギルビエフの捕捉は不可能だった。
「ただ、ケルベロス自身が囮になってギルビエフに連れて行かれることで、撤退後のギルビエフと戦うことが出来るはずだよ」
 ギルビエフはすぐに魔空回廊に移動してしまう為、そのまま魔空回廊で戦うことになる。
 魔空回廊ではギルビエフの戦闘力は3倍となり、更に10分間という時間制限もあるが、ギルビエフを撃破する千載一遇のチャンスなのは間違いない。
「地下アイドルとして活動をする女性達も不安がっているよ。だから、ここでギルビエフを仕留めておきたいね」
 ギルビエフの討伐。それは、地下アイドル達の切なる願いでもあるはずだ。
 作戦内容だが、まず、参加する女性ケルベロス達による地下ライブを行う必要がある。ライブ会場はとあるビルのイベントホールだ。
「ギルビエフをおびき出す為には、それなりのレベルのライブが必要となるから、かなりの練習が必要となるだろうね」
 場合によっては、ギルビエフを誘い出しても、彼との直接対決に参加できぬ場合がある。だからこそ、出来る限り練習にも力を入れておきたい。
 行われるライブでは、雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)を始め、他のケルベロス達も観客として潜入予定だ。
「私達の役割は、ギルビエフがアイドルとなるケルベロス達を魔空回廊に連れ去った後、続いて撤退しようとする配下オークを足止めする……それでいいんだな?」
「うん、配下の足止めは重要だよ」
 確認するリュエンに、リーゼリットは頷く。
 配下オークといえども、魔空回廊の中では強敵となってしまう。合流させてしまうと、囮役のアイドルメンバーが敗北の危機に陥るのは必至だ。
「うまく、ギルビエフをおびき出して配下オークの撤退を阻止すれば、あとは、魔空回廊で戦って撃破するだけだよ」
 しかしながら、3倍の戦闘力は伊達では無い。油断せず、確実にギルビエフを撃破したい。
「ギルビエフは触手による締め付けや分泌した溶解液の放出の他、エッジの鋭い名刺を撒き散らしたり、見定めた相手を口説き落としたりすることもあるよ」
 また、ギルビエフとの戦いは魔空回廊内となるが、今回は竜十字島に繋がっているのが分かっている為、魔空回廊を通って敵拠点を突き止める作戦は必要ない。
 配下オークは一般的な個体のようだ。触手による殴打、締め付け、乱舞をメインに攻撃してくる。ただ、回廊内に入れると強敵になってしまう。くれぐれもオークどもを立ち入らせぬよう、配下を相手にするメンバーも全力で討伐を願いたい。
 説明を終えたリーゼリットは一呼吸入れる。
「アイドルとして囮になるメンバーもそうだけれど、観客として盛り上げる皆もギルビエフを誘い出す為には必要だよ。皆で、ギルビエフ打倒の為に力を尽くしてほしい」
 ライブが盛り上がれば、ギルシエフの中でのアイドルメンバーの評価が上がる。
 もちろん、囮となるメンバーは直接的な評価に関わる。戦いも力を抜けない状況ではあるが、アイドルとしてのレッスンにも力を入れて本番に臨みたい。
 リーゼリットは最後に、作戦に参加する全てのメンバーへとこう告げた。
「どうか、この作戦の成功を。ギルビエフ撃破の一報を、ボクは待っているからね……!」


参加者
シィカ・セィカ(ロックに大志を抱け・e00612)
ジューン・プラチナム(サイバーエンジェル送神幻想・e01458)
上里・もも(ケルベロスよ大志を抱け・e08616)
山彦・ほしこ(魂の新曲きいてけろ送神幻想・e13592)
綺羅星・ぽてと(三十路でも大志を抱け・e13821)
茅乃・燈(カムイユカラ送神幻想・e19696)
ロージー・フラッグ(キュートホワイト・e25051)
プラン・クラリス(クールホワイト・e28432)

■リプレイ

●ケルベロスアイドルライブ!
 始まるステージ。ケルベロス達によるライブの開幕だ。
 最初に壇上に現れる3人。自らの個性を引き立たせるフィルムスーツを着た、ジューン・プラチナム(サイバーエンジェル送神幻想・e01458)が観客へと目線を合わせ、大きく手を振る。
「山彦のメモリーズ、目指せ真のセンター! ジューンだよー! ボクらのライブに来てくれてありがとー!」
 会場から久遠がジューンと叫ぶ。駆けつけた沢山のサポーターがサイリウムなどを使い、ライブを盛り上げる。
「歌って踊って祈っちゃうノマドご当地アイドル『山彦のメモリーズ』のほしこです☆ 今日は最高の仲間と神ライブにすっぺよ!」
 次に、山彦・ほしこ(魂の新曲きいてけろ送神幻想・e13592)が自己紹介する。メンバー唯一の男性だが、彼が今回のライブの広い部分をプロデュースも行っている。
「『山彦のメモリーズ feat.ジューン&燈』で『送神幻想-Iomante』。聞いてください」
 アイヌの歌姫らしい衣装姿の茅乃・燈(カムイユカラ送神幻想・e19696)が曲紹介し、テクノオリエンタルな演奏が始まる。
「応援してくれるみんなー、いつも本当にありがとー! ボクらも全力で行くから、今日は楽しんでいってねー!」
 イントロで手を振るジューンが最初のソロパート。素人っぽさが残るダンスと歌で、精一杯頑張る姿をアピールする。
「ピリカ・ピリカ、タント・シリ・ピリカ、イナン・クル・ピリカ、ヌンケ・クスネ♪」
 次に、燈はファミリアのフレと共に舞うように、アイヌ語のソロパートを歌う。少し不安そうだったが、本職ほしこのサポートも受けて歌いきる。
「♪現世の理こえ 送れカムイ あやに奇しき送神幻想☆」
 そして、ほしこが2人の世界観を紡ぐ。会場内では、ここぞと男性参加者数人がオタ芸で場を盛り上げていた。
 彼女達のステージは裏方も支えてくれていた。例えば、ティナがメンバーに化粧を施していたし、ほしこには悠乃がメイクを買って出ている。
 次に舞台に上がったのは、セクシー系ユニット『U-M2』。
「私達から、目を離せなくしてあげちゃいます♪」
 パフスリーブやスカートを重ねて可愛さを残しつつも、レオタードタイプのボディスーツでボディラインを強調するロージー・フラッグ(キュートホワイト・e25051)、プラン・クラリス(クールホワイト・e28432)の2人だ。
 彼女達が歌うは、ダンスポップナンバー『WHITE』。アイドルを本職とするロージーが、初舞台のプランをリードしながら歌う。
「私のココロ染めるWHITE、あなたの熱い衝動」
「私のカラダ燃やすWHITE、あなたの熱い情熱」
 胸や腰を揺らすロージーとプラン。時に2人は抱き合い、互いの胸を潰しあわすパフォーマンスで観客を魅了する。
 可愛らしい彼女達の歌声と踊りに、会場はさらにヒートアップ。サイリウムを握る観客達の手にも、力が篭ろうというものだ。
 3番手は、ジョイフルジョイフルの3人だ。綺羅星・ぽてと(三十路でも大志を抱け・e13821)が観客へと鈴やタンバリンといった鳴り物を渡していく。観客に紛れる知人に、ぽてとは鳴らすタイミングを教えていたようだ。
「下手でも音痴でもいいから、一緒にライブを楽しもう。リードは任せな」
 現役アイドルの上里・もも(ケルベロスよ大志を抱け・e08616)が呼びかけると、観客は喝采を上げて応える。
「ジョイフルジョイフルのロック担当、シィカ・セィカデース! ノリノリで行くデスよー! イェイ!!」
 愛用のギターをかき鳴らし、シィカ・セィカ(ロックに大志を抱け・e00612)は名乗りを上げる。
「思い切りいくぜ!」
 ももの歌声で始まる曲は、彼女のオリジナルグラビティでもある「大志を抱け(ケルベロスハーツ)」。観客と一帯になり、会場を盛り上げる。
 シィカがノリノリでかき鳴らす、ロックなギターのサウンド。それに、シアはシンセサイザーで演奏サポートを行う。レイ、雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)もギターを使い、演奏のサポートを行い、シィカの演奏を引き立たせてステージを盛り上げる。
「信じて進めば、道は開くわ☆」
 ぽてとは唯一三十路だが、全力でアイドルをやりきり、人々に勇気を与えようと精一杯の笑顔で熱唱する。
 このライブの為、メンバー達はぽてとの旅団で泊り込み、コミュニケーションを深め、歌、楽器、踊りなど、演出を出来る限り特訓してきたのだ。
 アリス、ミルフィがジョイフルジョイフルに見とれながらも、ペンライトを振る。
「最後までカッコつけようぜ」
 ももは親しみやすく、楽しそうに歌う。綺麗な服でステージに上がることを夢見ていた彼女だったが、ケルベロスというだけでスカウトされ、ふて腐れて活動をロクにしていなかった。
 しかしながら、もものサポーターは多い。『桃組』というチームを編成したメンバーが団扇を手にして彼女のステージを盛り立てていた。
(「夢だったんだ。諦めきれなかったんだな」)
 これだけのステージだ。精一杯追いかけていた夢が現実のものとなったことを、彼女は実感する。
「よし、盛り上がっていくぜ、オラーッ!」
 溢れる涙を拭い、ももは心の奥底から観客へと叫んだ。

●エクストラライブ!
 次がラストとステージ上のメンバーが準備を行う中、入り口から拍手が聞こえた。
 パチパチパチパチ……。
「さすがです。我が『ドラゴンハーレム』に是非お越しいただきたい!」
 そのとき、オークを引きつれ、ステージに上がってくる白いスーツのオーク。……ギルビエフだ。
 ギルビエフはにんまりと笑みを浮かべ、全力でライブを行う少女達を絶賛する。
「では、あなた達全員、ご同行願いましょう」
「や、止めてください!」
 計画通りではあるが、魔空回廊に入るまで怪しまれぬようにとロージーは抵抗する。ジューンも恐怖で固まって逃げられないという姿を装う。
「ん……、あなたはご遠慮願いましょうか」
 オークの鼻は敏感だ。男性であるほしこだけは、ギルビエフのスカウトから外されてしまう。ほしこもやはりと分かったかのように頷き、ステージから下がる。
 そうして、壇上の7人をギルビエフはステージ裏に連れて行こうとする。魔空回廊を使って逃げるつもりだろう。
(「お願いしますねっ」)
 客席にアシュレイの姿を見つけた燈は目配せし、この場を任せて姿を消していく。
 アイドルとギルビエフがいなくなった後、それに続こうとしたオーク達。だが、この場に残るほしこが遮る。
「行かせねぇだよ!」
 男性であるほしこは、この場に残ることを織り込み済み。その上で、彼が客席に呼びかけると、サポーターとして駆けつけたユニット達が壇上に上がってくる。『NGT61』のメンバー4人、『もも色仁義Z』、ペア、個人参加のアイドル達だ。
「エクストラライブ、行くべさ!!」
 オークを抑えながらも、この場に残るアイドル達によるエクストラライブが始まる。
 サポーターの中にはギルビエフを追おうした者もいるが、遮られた20体のオークに対して渾身の力をぶつけていた。
「俺達が彼女達から貰った熱い思い、その身で味わえやァ! やっちまえ野郎共!」
 叫ぶ芳尾が仲間の盾となって扇動する。『百鬼夜行』のメンバーがオークと交戦する。シルクは歌声を響かせて仲間に活力を与え、力を得た綿菓子が虚空に作り出した蒼い短刀を振り回し、オークの腹を掻っ捌く。
「ちょいとお待ち下サい。アンタ方はここで、お縄でスよ?」
 アイドルの動きを意識しつつ、雉華は射撃した弾丸を床に跳ね返らせ、オークを後頭部から撃ち抜いた。
「悪党共は絶対に赦せん! 行くぞヒメにゃんッ!」
 ギルメアはウイングキャットに仲間の護衛を任せ、自らは竜の尻尾をオークどもへと叩きつけて行く。ノルンもテレビウムのディアに一般人を守らせ、彼女は天井に出現させた黒太陽でオークを照らす。
 ももの応援にと駆けつけた桃組。その一員である物九郎は黒服姿で凄みつつ、横合いから殴りこむ。
「神出鬼没アターック!」
 猫の神出鬼没性を最大限に駆使し、彼は実体と非実体の狭間を行き来しながらオークへと襲い掛かり、首筋にオウガメタルを纏った一撃を叩き込む。
「オークの阻止と言われたが……」
 ロージーから依頼を受け、リュエンもオークの撃破を考えていたが、力の有り余るサポーターの力に苦笑すらしながら雷の壁を張って行く。
 実際、数に勝るケルベロスに、オークに負ける要素など見当たらない。
「♪うつせ湖面に、いろどれ山に、さみしがりがり紅葉狩り。心のカルデラ、つたえてトーノシケヌプリ☆」
 ほしこが最後の1体へと歌う。彼女の歌に応じ、青・黄・赤のコントラストが素晴らしい無数の流体オーラがオークの周囲に軌跡を描いて追尾する。それが命中すると、洞爺湖中島の火山トーノシケヌプリのように、湖の中央に山が聳える形に見えた。
 オークの全滅に、会場は沸き立つ。後は魔空回廊に突入した仲間を信じるのみ。
「ギルビエフ、アイドルの本気は誰にも奪えねえだ!」
 ほしこは信じる仲間達に、スカウトマンの打倒を託す。

●魔空回廊での決戦
 魔空回廊内で、ようやく収穫があったとギルビエフは満足気に頷く。
 しかしながら、自分の後に続くはずのオークがついてこない。
「これは……」
 彼が振り向くと、そこには武装したケルベロス達の姿があった。
「騙されたね、ボクらは実はケルベロスだったんだよ。あらかじめすり替わっておいたのさ!」
 ジューンはここぞとどや顔をしてみせる。
「さあ、年貢の納め時だ。ギルビエフ!」
「ほう、魔空回廊での戦いを望むとは……」
 ギルビエフは狂気の笑みを浮かべ、ケルベロス達へと後方から触手を突きつける。
「思い上がりにも、程がありますね!」
 魔空回廊で限られた戦闘時間は、10分。その間にこいつを始末せねばならない。
 シィカはその触手に注意を払いつつ、エアシューズに摩擦で火を点して敵へと蹴りかかる。自身の抱くケルベロスとしての使命感と誇り。シィカはそれらを全て、この下劣なオークへと叩き付けた。
「鎧装天使エーデルワイス、オンステージ!」
 武装を展開したジューンが決めポーズをとる。
「全力全開で決めてやる、覚悟しろー!」
 彼女は敵の側面から近寄り、零距離射撃をバスターライフルで撃ちこむ。
「捕らえる前に、じっくりと味わわせていただきましょう……」
 ギルビエフとてオーク。戦いとなればその本性を露わにし、触手をメンバー達へと伸ばして体を捕らえようとする。
 皆、ステージ衣装のまま。露出も多い彼女達の柔肌を、ギルビエフの汚らしい触手が這っていく。その狙いは的確で、前に出るメンバー全員を捕らえ、個別に敏感な体を攻め立てる。
 前に出るのはアイドルとなるメンバーだけでない。彼女達に付き添うサーヴァント達も盾となってくれている。
 オルトロスのスサノオは触手に絡まれながらも、口にくわえた刃でギルビエフへと切りかかっていたし、同じくオルトロスのレタルも、ロージーの盾になって触手を受け止めてくれていた。
 触手に絡まれる仲間には、ももが光り輝く黄金の果実で仲間に進化を促す。
「スカウトと言うのは才能を見出し、その才能を咲かせる場所へと導くものよ」
 ぽてとは中衛から敵の前に飛び出て、拳へとオウガメタルを纏わせる。
「単に力づくで攫うやつがスカウトマン気取りなど、笑止千万!」
 彼女は力いっぱい殴りかかる。この場に来ることができなかった会場のケルベロス達、そして、地下アイドル達の恨みも込めて。
「これ以上アイドルさん達を狙わせません。ここで決着をつけてあげます」
 後方からは、燈がギルビエフを狙う。彼女の放つオーラの弾丸は敵の足へと食らい付いて離そうとはしない。
「私はあなたたちの為だけのモノじゃありませんから!」
 アイドルとしての本心を、ロージーはバスターライフルから撃ち放つ凍結光線と共にぶつけていく。そこで、スタイリッシュに変身したプランが飛びあがり、流星の蹴りでギルビエフへと襲い掛かった。
 それでも、ギルビエフは口元に笑いを浮かべ、余裕すら見せていたのである……。

●今度こそ制裁を……!
 刻一刻と過ぎ行く時間。
 この場でギルビエフを仕留めようと、アイドルに扮する女性ケルベロス達は死力を尽くす。
「スカウトマンではない、ただのブタ野郎に相応しいステージへとスカウトしてあげるわ……」
 握り締めたエクスカリバールを、ぽてとはその首筋へと振り下ろす。
「クソ安い冷凍豚肉としてのデビューのね!!」
 グラビティの力で殴打した箇所に、氷が張っていく。
 そこにロージーがチェーンソー剣でジグザグに斬りかかることで、氷の張る表面積を広げていった。
 燈がギルビエフへと小動物を飛ばして牽制する間に、プランが召喚した暴走ロボットのエネルギー体が、敵の傷口を斬り広げていた。
「今日のステージは貴女のためのもの……。だから、聞いてほしいデス! ボクの歌を! 届けてみせるデス!!」
 ももが光る盾を張った直後、シィカは全身全霊、全力全開で歌う。その歌声が戦う仲間を癒していく。
 だが、さすがに魔空回廊での戦いとなれば、ギルビエフは驚異的な力を発揮する。彼が乱舞する名刺に貫かれたスサノオが姿を消してしまう。
 そして、ギルビエフの飛ばす溶解液。それが、ヴァルキュリアブラストの一撃より人型に戻ったロージーにも浴びせかけられる。ロージーは非常に強力なその液体に耐え切れず、意識を失ってしまう。
「この一撃を受けてみろ!」
 大仰にバスターライフルを構えたジューンは、敵の真正面から魔法光線を発射する。
 しかし、逃げようともせずそれを食らってみせたギルビエフは一撃に耐え切り、ジューンへとぼそぼそと言葉をかけ、彼女の意識を遮断させて昏倒させてしまった。
「殺しはしませんよ。あなた達を連れ帰る必要がありますからね……」
 シィカは力を暴走させることも考えたが、少なくとも今この時ではなさそうだ。
 だが、膠着するかのようにも思えた時間は、瞬く間に過ぎてゆく。
 もう時間がない。そう判断したぽてとが仕掛ける。
「ここは私のステージ……舞台に立った偶像は無敵よ☆」
 ぽてとは自身を中心として、煌く舞台を具現化する。アイドルと自己暗示をかけた彼女は極限の集中力を発揮して、エクスカリバールで殴りかかった。
 今が畳み掛けるとき。燈は白狼「レタル・ホロケゥ」が突撃するのに合わせ、ファミリアロッドをシマフクロウ「フレ・クンネ」に変化させる。
「我、空になりて邪悪を断つ。人を超え、獣を超え、カムイとならん。大自然のお仕置き、やってやります!」
 燈自らも熊の姿をとった。狼の爪、燈の怪力、フレの嘴。三位一体となって、彼女は連携攻撃を行う。
「ぐっ……」
 ギルビエフがその対処を行う間に、シィカが頭上からドラゴニックハンマーでギルビエフの頭を叩きつける。超重の一撃は敵の脳天を凍らせていく。
 敵の懐には、プランが潜り込んでいた。
「オークってよく触手で女の子襲うけど、性感帯なのかな? きもちいいの?」
 触手の1つを手に取ったプラン。その尖端を指でクリクリと弄る。
「く、くく……」
 感じているのか判断がつきづらいが、効果的ではある様子。プランは逆の手で触手を掴み、上下に扱くようにして擦る。
「そんなに気持ちよくなりたいなら、気持ちよくシテあげる。イッちゃえ」
 そのまま快楽の記憶を追体験させ、プランはギルビエフを瞬時に幾度も果てさせる。
「終わりだ、ギルビエフ!!」
 脱力するギルビエフの背後から、光の剣を具現化させたももが深々とその心臓を貫く。
「私の目に……グハァッ……狂いは、なかったようですね……!」
 ケルベロス達の連続攻撃に、ギルビエフは血反吐を吐いて後退する。そして、彼は目から光を失い、白いスーツを赤く染めて仰向きに倒れていったのだった。

●歓喜に沸いて
 重傷者はいたものの、魔空回廊から戻ってきたメンバー達。
 ライブ会場にいたケルベロス達からはギルビエフの討伐の知らせに、歓喜の声が沸き立つ。
「ヘリオライトで大合唱をしようよ!」
「アンコールライブをするのもいいかもね」
 傷を押してジューンがケルベロス達へと告げると、プランが同意する。
 ジューン、ロージーと重傷者もいた為か、激しく動くとは行かなかったが。元々、ライブで4曲目に歌う予定だった『ヘリオライト』を、ステージに仲間全員で上がって歌う。
「観客はお客様じゃねぇ、友達だ。友達と一緒に歌ったり演奏すんのに、遠慮も許可もいらないよ」
 ももがそう訴えかけ、観客にも歌うよう促す。声を出してくれるサポーターの姿に、燈も微笑んでいたようだ。
「「巻き戻すことは もう出来ないけど、創造する世界は きっと運命を変えるんだ……!!」」
 サビ前。ほしこはぽてとと一緒になり、魂から歌詞を紡ぐ。
 そして、サビ。この場にいる者達全てが絶唱する。
「「「「ヘリオライトが僕を照らすように、君の未来へ届くように……!!!!」」」」
 一体となる会場。皆、この一時を存分に、燃え尽きるまで楽しむ。
「「「「ちぎれそうな空の隙間に、虹をかけるよ……!!!!」」」」

作者:なちゅい 重傷:ジューン・プラチナム(エーデルワイス・e01458) ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 19/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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