荒唐無稽な夢の住人

作者:雨乃香

「ここは、どこ……?」
 少女は見知らぬ部屋で目を覚ます。
 ベッドが一つ、扉が二つ、天井の照明が一つ。それだけの簡素で真っ白な部屋。
 見覚えのない景色に少女があたりを見回し、部屋の中に特に何もない事がわかると、片方の扉のノブに手をかける。
 それと同時、背後のドアが派手な破砕音と共に砕け散る。
「きゃあっ!?」
 驚く少女の悲鳴、恐る恐る振り返った背後、砕けた扉から覗く真っ赤な斧の刃が再び振るわれ、もはや扉としての用をなさなくなったそこから、赤い頭巾とガスマスクを被る奇妙な人影が顔を出す。
 それは腕に力を込め、扉に付きたった斧を引き抜こうとしている、次は自分の番かもしれない少女がそう思って目の前のドアノブをガチャガチャと必死で回すものの、鍵がかかっているのか扉は開かない。
 焦り、扉に力ない体当たりを繰り返す中、少女は再び悲鳴を上げる。
 斧を引き抜こうとした赤頭巾の腕は、腐っていたのか半ばから引きちぎれ、腐汁を滴らせている。
 そして赤頭巾の腕と千切れた腕、その両方から生え出した触手が絡み合い、結合し、元通りの腕となると共に、斧が扉から引き抜かれる。
 少女は半狂乱となり悲鳴をあげ、ドアノブを意味もなく鳴らし続ける。

「っは!?」
 飛び起きた少女の視界に映るのは薄暗い見慣れた自分の部屋。荒い息を繰り返し、それがようやく収まる頃、少女は小さく呟く。
「夢……だったの?」
 安堵と共にホッと息を吐いた少女の胸に、突如鍵が突き立てられる。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの驚きはとても新鮮で楽しかったわ」
 再びベッドに倒れこむ少女の体。
 その顔を覗き込むガスマスクの怪物は、静かな呼気を響かせながら暫くの間ずっとそうしていた。

「夢、あぁ、眠っている間に見るほうの夢の話ですよ。皆さんは夢、最近みらられていますか? ニアはあまり夢を見るほうではありませんが、たまに見る悪夢にハっと夜中に目が覚めるなんてことはだれしも体験があるんじゃないですかね?」
 サキュバスとしては夢の一つも操ってみたいものですがね? などとニア・シャッテン(サキュバスのヘリオライダー・en0089)は悪戯っぽく笑って見せながら、居並ぶケルベロス達を出迎える。
「そんな悪夢を見た子供達から驚きを奪うドリームイーターが散発的に活動を続けているのは知っていますよね? 今回はそのドリームイーター絡みの事件を皆さんに解決してほしいわけですよ」
 笑顔を崩さぬままニアはまぁ皆さんであればそれ程難しいお仕事でもないと思いますと、言いながら詳しい説明を始める。
「敵の出現場所は被害者となった少女が住むマンション付近の市街地ですね。夜でもそこそこ人通りがあり、ドリームイーターはこの近辺で誰かを驚かせようと徘徊をしているようです。被害者が出るよりはやくこちらから出向いて片付けてしまいたい所です。
 皆さんが向かえばおそらく、あちらからサプライズをお届けに来てくれるんじゃないですかね?」
 あんまり嬉しくないプレゼントだと思いますけど、と付け加えながらニアは目標の特徴をケルベロス達に伝える。
 見た目は赤い頭巾にガスマスクを装着した小柄な少女のようで、手には赤い斧を持ち、それを用いて攻撃してくる、加えて、高い再生能力と、触手を使った奇襲なども行ってくるということだ。
「出会い頭のサプライズに驚かなかった方がいる場合はその人を優先的に狙ってくるという特性をもっているようで、まるで滑ったのを観客のせいにしたい芸人のようであまり関心はしませんね?」
 うまく使えば攻撃を誘導したり、有用な使い方もあるかもしれませんが、とニアは軽く触れながら、ケルベロス達のほうへと向き直る。
「なんにしろ、被害者の少女が目を覚ませるよう、悪夢は早めに退治してしまいましょう。皆さんからの報告、いろいろな意味で期待していますよ? フフっ」


参加者
エンリ・ヴァージュラ(スカイアイズ・e00571)
スウ・ティー(爆弾魔・e01099)
シヲン・コナー(清月蓮・e02018)
ミレイ・シュバルツ(白銀の風姫・e09359)
リュティス・ベルセリウス(イベリス・e16077)
ティスキィ・イェル(魔女っ子印の劇薬・e17392)
ドルミール・ファーゲル(忘れ去られた唄・e31016)

■リプレイ


 夜でも尚明かりの途絶えることのない都会の市街地。
 秋も深まり、すっかり冷たくなった夜風が緩く吹き、街路樹に残った葉を揺らす。
 月も星も見えない空にかかる雲の流れは緩慢で、普段であればもう少し人の気配を感じる通りに、今日は人影一つ見当たらず、輝く人工の明かりが不気味に闇を照らしていた。
 そんな通りの角から、八人という大所帯な一団がゆっくりと踏み入ってくる。
「気味が悪いくらいに静かですね」
「だな、今にもなにか出てきそうだ」
 ティスキィ・イェル(魔女っ子印の劇薬・e17392)はどこか不安げな表情であたりを見回しているのに対しシヲン・コナー(清月蓮・e02018)のほうは、前方に視線をすえたまま、落ち着いた様子で歩いていく。
「それだけ効果がでているということだ、被害が少ないに越したことはないであろう?」
「ええ、粗方の避難誘導も終わっておりますし」
「殺界も形成済み、誰も踏み入っては来ない」
 陣笠の下、普段であれば鋭い視線を意識的に和らげ、気の抜けたように振舞うガイスト・リントヴルム(宵藍・e00822)の言葉に、リュティス・ベルセリウス(イベリス・e16077)とミレイ・シュバルツ(白銀の風姫・e09359)の二人が小さく頷き、現状を再確認する。
 ドリームイーターの出現するというこの地域一体の人々に声をかけ、避難誘導を促した後、リュティスとミレイの二人がかりによる殺気の放出により、周囲の喧騒はすっかりとなりを潜め、この不気味な夜を演出している。
「あとはあっちのでかた次第って所だね」
 準備の整った戦場でエンリ・ヴァージュラ(スカイアイズ・e00571)は周囲の風景へと目を光らせ、怪しい影がないかを注視している。
「もしかして、あれ、かしら?」
「……おいでなすったようだな」
 通りから続く、光の届かない路地の先に、ドルミール・ファーゲル(忘れ去られた唄・e31016)はいち早くその姿を見つけ、その暗闇を照らすように、スウ・ティー(爆弾魔・e01099)は手にしたランタンの光をそちらへと向ける。
 しかしその揺らめく光は弱々しく、路地に佇む人影の足元までを照らすに留まる。
 暗闇のなかなぜかうっすらと覗き見える赤い衣服だけが鮮烈にケルベロス達の目に焼きつく。
 唐突にその人影はふっと闇の中へと踵を返し消える。
「逃げたってかんじじゃないわな」
 余裕をもってゆっくりと振り向いていた人影の姿、スウの言葉に他のケルベロス達も同様に考えていたのだろう、足を止め、路地の闇を見つめる。
「誘っているんでしょうか?」
「期待が膨らむね」
 リュティスの言葉にエンリは薄く笑みを浮かべながら、一歩踏み出す。
「追うか?」
 シヲンの短い言葉にも小さく頷いて返すと、彼女は先頭に立って路地へと踏み入る。
 ランタンの光に照らされたそこは人一人が歩ける程度の広さしかない狭い路地で、知らず彼等の心に緊張が走る。
 足元に転がった空き缶や、雑誌のページが風に吹かれ音を立てる度に彼等の鋭敏な五感を刺激する。
 曲がりくねりながらも枝分かれすることのない路地をどれくらい歩いたかわからなくなった頃、また一つの曲がり角の先、ようやく出口が見えた。
 予想した襲撃もなく、開けた通りへと戻ったケルベロス達が敵の姿も、迷い込んだ人の姿もないのを確認していると、ふと、何かが滴るような音が路地から聞こえた。
「えっ?」
 そんな声を発したのだれだったのか、振り返る路地にやはり人影はない。
 変わりに何かが落ちてきた、それは熟れ過ぎた果実が地に落ちた時の様な音を立て、あたりに腐汁を撒き散らし、四散する。
 それが人の腕の形であるとケルベロス達が気づいた瞬間、もっと大きな音を立て、赤い頭巾とガスマスクを被った人影が空から落ちてきた。
 衝撃にその下半身は歪み、ひしゃげ、腕と同じ様に砕け、飛び散る。
 目前でそれを見てしまったティスキィの顔は凍りつき、その頬に飛散した肉の一遍が付着する。
「きゃあー!?」
「うおっ!? ま、マジで出たぁああっ!」
 しかし、そんな声を上げたのはティスキィではなく、ドルミールとスウだった。
 ドルミールの驚き方には不自然さこそないものの、その悲鳴はむしろ今の状況を楽しんでいるかのように響き、スウの声には少なからず恐怖の色も見て取れる。
 二人は慌てるように涼しい顔のまま一切動じていない、エンリの後ろへと隠れ、落ちて来たそれへと視線を注ぐ。
 他のケルベロス達も、嘘か真かはさておき、驚き、身構えている。
 しかし、赤頭巾は動かない。
 事切れた死体のように、一切の動きを示さないままただそこにある。
 それがフリなのをケルベロス達はわかっている、だが、わかっていても、この薄暗い静かな夜の街中で、動かない腐乱死体を前に何も感じるなという方が無理といるものだろう。
 膠着をきらったのか、恐れずエンリが一歩踏み出す、その瞬間、あたりに散った肉塊から、突如として触手が鎌首をもたげエンリへと飛び掛った。


「サプライズっていうから期待してたけど……
 こんなものじゃ、誰も驚かないよ。キミのセンス疑っちゃうな」
 エンリへと伸びる無数の触手は彼女の目の前に展開された光輪の盾にことごとく防がれそれ以上ケルベロス達に近づくことを許されない。
「みんな優しいよね」
 呟きつつ、背後に隠れるスウとドルミールに軽く笑いかけ、エンリが無数の触手を押し返すように、展開する盾に力を込める。
 押し返された触手はそのまま巻き戻るように一箇所へと寄り集まり、再び小柄な赤い頭巾とマスクを身につけた少女の体を形作る。それはどこか不満げな雰囲気を見せつつ、その中の覗けぬマスクの目元をエンリへと向けている。
「こいつが件の目標か、この身体構造には流石に驚きを隠せないな」
「でも、驚いてる場合じゃ、ないですよね……?」
 本当に驚いているのかいないのか、冷静な呟きをするシヲンとは対照的に、息を呑み、意を決したようにいうティスキィはやや表情を曇らせながらも赤頭巾へと飛び掛る。
 エンリからふっと視線を外した赤頭巾はふっと自分へと向かってくるティスキィの方に視線を向けつつもだらんとした姿勢のまま、動くこともなく、彼女の放った蹴りをその身に受ける。
 得体の知れない柔らかい何かを踏み潰すような怖気がティスキィの足先から伝わり、その右半身がぼとりと地に落ちる。
 衝撃にぐらつくその顔に向けリュティスはその煌くナイフの刀身を向けるものの、視線がそちらに向くことはなく、どさりと仰向けに赤頭巾の体が倒れた。
 そこに容赦なくガイストは突きを繰り出す。
 そうしてようやく、赤頭巾はケルベロス達に対して反応らしい反応を返す。
 突如機敏な動きで再生した半身の腕からずるりと吐き出されるように赤い斧が現れ、それを握り締めた赤頭巾は片手一つでガイストに向かいそれを振りかざす。
 不自然な体勢からのその一撃にはしかし、勢いが足りない。一瞬で見切ったガイストはその一撃を避け、一歩後ろへ。その隙に赤頭巾はゆらりと立ち上がり、両の腕をだらりと下げた力ない構えをとった。
「再生能力、やっかい……」
 ミレイが言う様に一連の攻防を終えても、相手にはあまりダメージの通っていないようには見えない。
「任せて、ルミィがなんとかしてみるよ!」
 不気味な敵を前に、恐れずただ真剣に相対するもの達とも違うそのドルミールの反応は、お化け屋敷を楽しむ子供のそれに近い。これからどんなことが起こるのかと、期待するようなまなざしを向けつつ、彼女は取り出したウィルスカプセルをあらん限りの力で放り投げる。
 赤頭巾は迫るそれにたいし、顔をあげそちらへと視線を向けて、迎撃の構えを見せる。その体から経だした触手がカプセルをめがけ、一斉に伸びる。
 それらの先端がカプセルに届こうかとしたその瞬間。半ばから突如一文字に切り裂かれた触手の群れが地に落ち、腐汁を撒き散らす。
「狩れ、紅椿」
 敵の視線が上空へと向いたその瞬間、駆け出していたミレイが死角から鋼糸を走らせ、触手の群れを両断していたのだ。
 咄嗟に両の腕を掲げ防御するものの、カプセルから漏れ出した対デウスエクス用のウイルスがそれで防げるはずもない、すぐに再生を始めない触手に、困惑するかのように、視線を振る赤頭巾に、対し、ティスキィの形作った炎の竜が襲い掛かかり、その全身を一瞬で炎で包み込む。


 薄暗い通りの中肉の燃えるにおいを充満させながら、赤頭巾の体が燃え上がっている。
 畳み掛けるように、エンリの相棒であるボクスドラゴン、クルルが炎をいぶきを吹きかけ、更にその火勢がまし、もがくように赤頭巾は炎の中崩れ落ち、そして動かなくなる。
「シーリー」
 敵の状態を確認すべく、リュティスはウィングキャットのシーリーの名を短く呼ぶ。主人のその意図をすぐに察したシーリーは、燃え続ける赤頭巾の体へとそっと近づき、尾からリングを飛ばす。
 瞬間、赤頭巾の体が跳ね上がり、エンリに対して飛び掛る。
 それまでのどこかゆったりとした動作とは違う機敏な動き、油断せず敵を見つめていたエンリはその動きに反応は出来ているものの、体の動きがそれに間に合わない。
 強烈な踏み込みから、袈裟に叩きつけるような斧の一撃が、エンリの体を服ごと深く切り裂く。
 咄嗟にエンリの放った迎撃の蹴りを赤頭巾は飛び退り回避し、いまだ燃え続ける体の炎を払うかのように、体をかるく叩くようにして、余裕すら見て取れる。
 シヲンの操るオウガメタルの周囲に散らした粒子の力でエンリの傷が多少治療されるものの、全快にはまだ足りない。流れ出る血が通りの地面に血の痕を残す。
「少しはお役に立てるでしょうか?」
 リュティスの起こす、心地よい風がエンリの体に働きかけ、傷口を癒す手助けを進める。しかし、敵の方はそれを長々と待ってはくれないらしい。
 斧を引き摺りながら赤頭巾はケルベロス達をめがけ距離を詰める。
「さぁて、ビビりながら悪巧みと行きますかね」
 いつの間にか気配を殺していたスウが舌なめずりをしつつ、目深に被った帽子の下、ニッと笑みを浮かべながら、敵の背後に躍り出る。
 闇の中的の動きを観察しつつ、自らの感覚を増幅し、このタイミングに備えていた彼の攻撃から、敵は逃れる術をもたない。
「驚かせ屋はお前さんだけじゃないさ」
 スウの軽く腕を広げるような動作とともに、周囲に何か、がばら撒かれる。
 それらは赤頭巾の周りを取り囲むように緩やかに周囲を漂っているものの、目で捉えることはできない。
 構わず一歩を踏み出そうとした赤頭巾の体がソ何かに触れ、爆発と共に吹き飛ばされる。
 周囲を爆炎が包み込み、飛び散った水晶のかけらが赤頭巾の体を引き裂き、炎に炙られ、炭化し、再生能力をウイルスにより削られた体のところどころがボロボロとかけて、地面へと落ちていく。
 見えない機雷に囲まれ動きを封じられた赤頭巾を、ケルベロス達は一斉に攻撃する。
「わたしにできるのはただ破壊する事だけ……裂け、彼岸花」
 螺旋の力を込められたミレイの操る鋼糸が赤頭巾のまだ再生能力を残した体の基部、腹や首元を捕らえ、締め上げる。ねじ切られてもおかしくないその首元は耐えず再生を続け、逆に彼女自身の動きを制限している。
「残念だけど、もう夢の時間は終わりみたいね」
 手にしたタクト状の杖を二羽の金の鳥の使い魔の姿に変え、ドルミールは魔力を込めて使い魔を使役し、何とか拘束を抜け出そうとあがく赤頭巾の残っていた右腕を落とす。
「其方は何故人の心を惑わす?」
 片手を傘に、片手を鞘に当て、ガイストが問うも、曇ったガスマスクのレンズの向こうに表情はみえない。答える言葉もなく、赤頭巾はただ、そこにあるだけだ。
「晴れる心もないのであればその無為な夢はここで晴らさせてもらおう」
 音もなく抜かれた刀の一閃は、風を纏い、闇の中、龍のような煌きを見せ、その首元に喰らいつく。
 切り落とされた首が地へと落ちるよりはやく、一瞬の幻視は掻き消え、ガイストの体は既に赤頭巾の背を抜け、刀を抜く前と寸分違わぬ姿でそこにある。
 首が落ち、ガスマスクが硬質な音を立てると、赤頭巾の体を維持していた何かは力を失い腐臭を撒き散らしながらその場に溶け落ちるようにして、原型を失った。


 戦いの惨状は、いつも以上に酷いものだった。
 あたりに際限なく飛び散った腐肉とその汁、炎と爆発で煤けた周囲の景色、狙いをそれたり、あるいは敵を貫通したケルベロス達の攻撃もあいまって、周囲の修復作業にはいつも以上に手間がかかっていた。
 特に酷いのは臭いであった。
 景色は多少の幻想を含みつつもほぼもとの通りに戻ったものの、形のない腐臭にケルベロス達は四苦八苦しているようだった。
「綺麗な風で吹き飛ばせばいいんでしょうか……?」
「名案だと思いますティスキィ様、早速試してみましょう」
 ティスキィのそんな発想に、リュティスとシーリーも手を貸し、グラビティによって起こした風で周辺の臭いについても、それから程なくして解決を見せ、ケルベロス達の服に付いてしまった臭いや、エンリの派手に破けてしまった服も、全てが元通りになる。
「ポラリスは大丈夫だよね? 念のため帰ったらお風呂に入ろう」
 帰路につきながら、心配そうに自らのボクスドラゴンの臭いを確認するシヲンの様子に、他のケルベロス達も、やや心配そうに自分達の服の臭いを再度、確認してしまう。
「こっちのほうがよっぽど悪夢かもしれないな」
「笑い事じゃないねまったく。僕の服はついでに血だらけだし」
 軽く笑い声をあげるスウに対し、エンリはやや疲れたように自らの服に目を落とし、軽く溜息を一つ。
「もうこんなゾッとするような夢はこりごりですね」
 そういって同意するティスキィも苦笑こししているものの、ケルベロス達の顔はどこか一仕事終えたという満足げな感情が見て取れた。
 悪夢にうなされた後、それが夢だったのだと気づき安堵した時のような、ホッとした顔。
 もう数時間もしないうちにきっと、彼らが追い払った悪夢から一人の少女が目覚め、また同じ様な表情を浮かべるのだろう。

作者:雨乃香 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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