激甘カレーに挑戦!!

作者:ともしびともる


 埼玉県某所のとある裏通り。その一角に『カレー屋甘口1番!』という看板が立っていた。しかしその店のシャッターは下ろされ、閉店を知らせる張り紙が張られている。
 甘党である店主によって営業されたこのカレー屋は、『辛さ』ではなく『甘さ』を10段階から選べるという、少し珍しい甘口カレーの専門店だった。甘さを極めたカレーで、一般客には『激甘カレー』という新鮮な驚きを、そして名だたる甘党の方々には『至高のカレー』を提供したいと言うのが店のコンセプトだった。
 だが店主の激甘カレーはやり過ぎた。最初は物珍しさから足を運ぶ客もそれなりにいたが、あまりの甘さに頭痛を訴え、半分も食べられない客が続出。自称甘味大王が9甘カレーを実食中に倒れたのを皮切りに、カレーを食べた客からの健康被害のクレームが相次いだ。自慢のカレーも『糖尿病カレー』『メタボカレー』果には『殺人カレー』とまで揶揄され、あっという間に閉店まで追い込まれた。
 店内の厨房で、悲痛な表情の店主が一皿のカレーを盛り付けていた。ライスの隣に厳選した具と人口甘味料を三日三晩煮込んだ自慢の激甘ルーを流し込み、さらにはちみつ、カラメルソース、メープルシロップをマーブルした特製シロップを、ルーをコーティングするようにたっぷりとかける。皮肉なほど艶やかな光沢を放つカレー、これこそが、店の究極の一品『10甘カレー』だった。
 「甘いのは分かってた。ただ皆に甘口のカレーを楽しんでほしかっただけだったんだ。そしてこの10甘カレーを、いつか、誰かに……」
 後悔と絶望に打ちひしがた店主は、背後に立った女の影にも、自らの胸を巨大な鍵が貫いたことにも気が付かなかった。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『後悔』を奪わせてもらいましょう」
 うずくまるように厨房の床に倒れた店主。 鍵を引き抜いた第十の魔女・ゲリュオンは速やかに姿を消し、厨房には店主と同じ割烹着を着たドリームイーターが生み出されていた。
「オイシイ甘口カレーダヨ。オススメハ、10甘ダヨ」


「私もカレーは食べたことがあるが、地球の食事は本当に美味いな。だがこの甘口カレー屋は、どうやら失敗だったようだ」
 ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)が、今回の事件について説明を始めた。
 『後悔』を奪うドリームイーターの魔女によって甘口カレー屋の店主が襲われ、新たなドリームイーターが生み出されてしまった。店主を襲った魔女はすでに姿を消しているが、残されたドリームイーターは店主のふりをして店を再開し、迷い込んだ客に激甘カレーを無理やり食べさせるなどして殺害するつもりのようだ。
 「幸い、忌み嫌われたこの店に近づく人間はおらず、人払いの必要はなさそうだ。 諸君らには今のうちに現場へ急行してもらい、これの店内撃破を願いたい」
 入店したケルベロス達に、ドリームイーターはカレーの提供を持ちかけるだろう。この種のドリームイーターには、ケルベロスがサービスを受け、そのサービスに良い反応をしてやれると、満足感から戦闘力が減少するという特徴がある。そして今回のドリームイーターを確実に満足させる方法は、『誰か一人でも10甘カレーを完食すること』だ。
「9甘カレーを食べて病院送りになった者もいるらしいが……こう言ってはなんだが、ケルベロスである諸君らは、例え例のカレーを一気飲みしたとしても、死ぬことはあるまい」
 ただし死ぬほど甘い。生半可な覚悟では、味覚を破壊するかのような甘味の『殺人カレー』を完食することは出来ないだろう。もし誰も完食できなかったとしても、より多くの人が激甘カレーを『楽しんでくれた』とドリームイーターが感じれば、戦闘力を落とさせることが可能だ。
 戦闘になると敵は激甘ルーにグラビティを込め、武器として使用してくるようになる。敵を撃破すれば、厨房で倒れている店主も目を覚ますだろう。
「もちろんいきなり戦闘を仕掛けることも可能ではあるが……良ければ、究極の激甘カレーとやらの感想を聞いてみたいものだ。では、諸君らの検討を祈る」


参加者
藤・小梢丸(カレーの人・e02656)
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)
スミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975)
カーリー・カレーナ(華麗なるカレー戦士・e11898)
死屍・骸(空想的フィロソフィ・e24040)
シェーラ・エクリプス(暴走銀拳・e30827)
地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)

■リプレイ


「激甘カレーか……全国各地回っていろんなカレーを食べてきたけど……」
 藤・小梢丸(カレーの人・e02656)が『カレー屋甘口1番!』の看板を眺めつつ呟く。
「激辛カレーのお店は数あれど、激甘カレーのお店は珍しいね!どんなカレーか楽しみだなぁ」
「全く同意見。激甘カレーは初めてだし、逆に楽しみだ!」
 両手を合わせ目を輝かせるカーリー・カレーナ(華麗なるカレー戦士・e11898)に、小梢丸が力強く同意した。
「わたし、甘いものもカレーも大好き!本当に楽しみ!!」
 死屍・骸(空想的フィロソフィ・e24040)の弾んだ声に、ローレン・ローヴェンドランテ(灰夢・e14818)がうんうんと笑顔で頷く。
「任務で甘いものがいっぱい食べられるなんて、最高だねぇ」
 あっけらかんと言うローレン。激甘歓迎ムードに地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)は少し驚く。
「皆さん凄いんですね……。僕は、激甘カレーは少し怖いです……」
 遠慮がちに言った夏雪の肩を、シェーラ・エクリプス(暴走銀拳・e30827)がぽんと叩く。
「大丈夫、それが普通だ。まあ経営が失敗したとはいえ、皆に美味しい物を食べて楽しんで貰いたいっていう職人としての心意気は大したものだと思うな」
 夏雪を軽くフォローしたシェーラだが、食通の彼女も、今回の激甘カレーを内心非常に楽しみにしていた。
 そこに、近くの薬局で買い物をしてきた彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)が合流する。
「ギムネマ入りのお茶と、食物繊維顆粒を購入してきました。ギムネマ酸には、舌の甘味受容体を麻痺させる効果があるんですよ。今はネット通販で簡単に購入できますしね」
 今回は現場に急行せよとの指示だったので、近くの薬局で似たものを購入したのだ。食物繊維摂取は糖による頭痛の予防が目的だ。
「それと、今日で甘いもの禁止は終了です、メンドーサさん」
 笑顔で言う悠乃。呼ばれたスミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975)は、飢えた獣のように目をギラつかせている。
「あまいものぉ……あまいものぉ……」
 スミコは悠乃から、ここ五日間の甘味摂取を禁じられていた。飲食管理の一環だったのだが、とんでもない甘党である彼女にとってこれが地獄の日々であったことは、目の下の隈からも明らかだ。
「幸せいっぱいになるついでに……あ違う。大事なのはこっちだ。うん、店主さん助けるよ!!」
 ローレンが店のドアを開けると、割烹着を着た偽店主のドリームイーターがすぐに彼女らを迎え入れる。
「イラッシャイ。オススメハ10甘ダヨ」
 笑った口の中に不気味なモザイクを覗かせる偽店主。
 席についたケルベロス達は夏雪以外の全員が10甘カレーを頼んだ。夏雪も、もしもの時は10甘を食べる気でいる。偽店主は一瞬きょとんとしたが、心底嬉しそうに笑い、
「少々オ待チヲ!」
 と、意気揚々と厨房へと向かい、程なくして真っ黄色のルーに半透明のマーブルシロップが乗ったカレーが用意された。
 なお、この作戦に「おいしくなあれ」を用意したものはいなかった。激甘カレーとの真っ向勝負が始まったのである。


「なんだか見た目がとっても怖いよ! シロップでルーがツヤツヤに!!」
 カレー屋とは思えぬスイーツな香りの中、ローレンが率直な感想を言った。
「すごい綺麗な色・・・光を浴びたシロップが虹色に輝いて美味しそう。うぅん、まるでこの色彩からして甘さが伝わってくるみたい」
 骸は宝石箱でも覗き込むかのようにカレーを見る。小梢丸も興味深そうにカレーを眺めた。
「青いカレー、赤いカレーはあれど、ここまで黄色いカレーはお目にかかったことないな。カレーといえば黄色なのに」
 悠乃は水筒に入れたギムネマ入り茶を飲み、飴紙に包んで偽装した頭痛予防の顆粒を口に入れる。その隣で、スミコは湧き立つシロップの香りに誘われ、引ったくるようにスプーンを手に取った。
「もう限界……いただきます!!」
 皆がほぼ一斉にカレーを口に運んだ。期待感たっぷりのシェーラとローレンだったが、口に入れた瞬間に目を見開き、苦しげにうつむき出した。
「こ……このワザとらし過ぎる甘味!! 甘く見ていたか!? ……んや、甘く見ていなかったのか……!?」
 笑顔を保ちつつも黙ったまま青ざめるローレンと、謎のモノローグを入れるシェーラ。そのルーは例えるなら、砂糖まみれの輸入菓子をスパイスと共に煮込んだのような味だった。これを食べた者は、脳みそを貫く異常な甘さに意図せず全身が鳥肌に震え、冷や汗が吹き出す。
「はは……おいしい……この口の中をまとわりつくようなドロッとし……あとはまかせ……た 」
 ローレンが3口目を食べたところで、カレーを両手で押し出すようにし、そのまま机に倒れ伏してしまった。
「おいしい……!!」
 一方、スミコは5日ぶりの甘味との再会に目を潤ませていた。
「脳細胞に、お砂糖の力が浸透していく。ああ、これだ、この甘さ・・・この甘さこそ、ボクのエネルギー、そう・・・スイートスイート、レボリューション」
 感極まるスミコだが、何を言っているのかはわからない。スミコは失った5日間を取り戻すかのようにガツガツとカレーを食べ始めた。
「ローレンさん……! スミコさん……?」
 倒れたローレンと食べまくるスミコを見比べ、夏雪が困惑に青ざめる。
「ううん、本当に甘い! けど、この甘味の中でもスパイスがの風味がちゃんと効いてるんだ。この特性マーブルシロップが味を変化させるから、飽きが来ない美味しさだね!」
 甘い甘いと言いながらも、実に美味しそうにカレーを頬張るカーリー。カレーを愛する彼女にとっては、激甘も激辛もカレーを引き立てる大切な要素の一つなのだ。
「確かに甘い。でも、ただ甘いだけじゃないみたい。いろんな甘みが絡み合ってて……。特性シロップと合わせてコロコロと彩り豊かに移り変わって飽きを来させないようになってる。ライスのシンプルな味も甘いルーを補い合ってる。 うんうん、美味しい」
 美味しさを分析しつつ、幸せそうに食べ進める骸。体内で糖分を分解して上がる熱気が、心なしかカレーの黄金色に見える気がする。
「うん、僕にはわかる。脳にガツんとくる甘さの中に隠れるスパイシー。決してがむしゃらに甘くしてるんじゃない、ここの店主はカレーを分かってる人だ」
 舌鼓を打ちつつも、小梢丸の表情は真剣そのもの。攻略困難なカレーに向き合った今、カレーに生きる者の眼差しがここに確かに宿っていた。
 激甘カレーに対し、やたらポジティブな意見が集まっていることに夏雪が再び困惑する。何かの間違いで美味しいんじゃないかと、ローレンのカレーをこっそり一口貰ったが、
「……っ!!!」
 口に入れた瞬間にスプーンを取り落とし、涙目でうずくまった。
「甘いけれど……おいしいですね」
 悠乃も笑顔でそう言ったが、彼女のこれは演技だった。ギムネマ酸で甘味が抑制されたカレーに美味しさはなかったが、それでも10甘カレーをそのまま食べるよりは遥かに完食の望みがあった。
(私は手段を選ばない。店主さんを助けてあげるために……)
 決意を胸に、笑顔のポーカーフェイスを固持したままカレーを食べ進める。
「生き返ったー! ごちそうさま!」
「ごちそうさま。すっごく甘くて、すっごく美味しかったよ」
「ごちそうさまでした。舌が痺れるほどの甘さから押し寄せる強烈なインパクト。大変美味しゅうございました」
 食べ始めて10分弱でスミコが、続いて小梢丸、カーリーが10甘カレー完食の偉業を成し遂げた。夏雪が心底ホッとしながら、偽店主に1甘カレーを注文する。
「あ、僕に10甘カレーもう一杯」
 小梢丸の人外な提案に、スミコとカーリーが迷わず便乗した。偽店主は大喜びで厨房へ向かった。
「甘くて食べ易い……それに凄く美味しいです……」
 夏雪はカレーを口に含み、とろけそうな笑みを浮かべる。夏雪がカレーを堪能し始めた頃に、骸と悠乃が完食を達成した。
 最も苦しんでいるのはシェーラだった。これまでなんとか食べ進めていた彼女も8割を食べたところでついに手が止まり、冷や汗だらけの頭を抱える。それでも完食を諦めることは彼女の矜持が許さなかった。
「食事は真剣勝負なんだ、引くわけには、いかない……!」
 スプーンを口へと持っていくものの、匂いを感じただけで反射的にスプーンを捨てたくなる。この狂った甘さに、もはや肉体がカレーの摂取を拒否しているかのようだった。
「こんな馬鹿みたいに甘いカレー……作ったやつも馬鹿に違いないな。……こんな状況を楽しんでる、私もたいがい馬鹿だけど!」
 深呼吸し、意を決した彼女は残りのカレーを根性で掻き込んで、その皿を見事に平らげた。
 計9皿の10甘カレーが空となり、偽店主は喜びのあまり小躍りを始めていた。
「モット食ベテ!死ヌマデ食ベテ!!」
 しかし本性はやはりドリームイーター。ケルベロスたちはすっと席を立ち、戦闘体勢に入る。
「ローレンさん、起きてください……」
 未だ机に突っ伏したしたままだったローレンを夏雪が軽く揺すぶる。
「……ん、んむ? あ、戦闘だね、了解」
 ローレンと夏雪がゆっくりと立ち上がり、戦闘準備は万全に整った。


 目を覚ましたローレンは相変わらずの笑顔だったが、その笑顔に明らかに怒りがこもっていた。
「さっきはご馳走様、これはほんのお返し。……バールでも食べてろおおおおおお !!」
 力任せに投げられたバールのようなものは高速回転しながらもその先端が偽店主の額に突き刺さった、仰け反る偽店主、しかしすぐに体制を立て直し、
「カレー、タクサン、召シ上ガレ!」
 骸に向けてカレーを飛ばす。咄嗟に夏雪が斜線に割り込み、クロスした両腕で攻撃を受け止めた。両腕に焼け付くような痛みを感じつつも、
「威力、低いです……!」
 夏雪が宣言する。弱体化は成功し、敵は想定よりも格段に攻撃力が低い。偽店主は喜びのあまり戦いに集中できていないのだ。悠乃は右手を軸に机を飛び越しながら、敵のニヤケ面にスターゲイザーの回し蹴りを叩き込み、敵の体勢を崩す。
「上々ですね、このまま油断せず、確実に打ち取りましょう」
 悠乃がそう言いながら華麗に着地した。小梢丸が前衛に甘口仕立てのカレー・ジャスティスを放つ。勿論無茶な甘口ではなく、誰もが楽しめる小梢丸特製ブレンドだ。  
 敵の攻撃威力が落ちたことにより、ケルベロスたちは攻撃行動を存分に取ることが出来た。順調に敵へのダメージとエフェクトが蓄積されていく。
「せーいっ!!」
 骸が可愛い掛け声をかけつつ、槍による超高速の稲妻突きを繰り出す。身を貫いた雷槍に、敵の体がビクンと跳ねる。
「開く傷口、重なる痛み、あなたから、癒しの時を奪います」
 すかさず悠乃が的に逆癒をかけ、偽店主の傷がビキビキと広がっていく。その傷口に、夏雪が音もなく展開した孤泣雪が触れ、冷たい痛みが敵の傷を抉った。偽店主はたまらずカレーを食べて回復しようとしたが、蓄積した体のしびれが発動し、食べる前にスプーンを落とした。
「好機だ! スミコ、行け!!」
 シェーラが叫び、スミコにエレキブーストを掛ける。強化を受けたスミコはペイルウイングを展開し、店内の壁、天井を三角飛びして敵へと突っ込んだ。
「そりゃああ!!」
 勢いのまま槌を叩きつけ、床ごと敵を凍らせるのと同時に反動を利用して一気に距離を取る。
「カレーに後悔の文字はないんだ。カーリー!」
「うん! 行くよ、小梢丸くん!」
 カーリーがその拳に巨獣の力と重みの全てを込める。手にカレーのようなブラックスライムをまとわせた小梢丸がタイミングを合わせ、カレーが繋いだ絆のダブルパンチが偽店主の胴体に炸裂した。吹き飛び、壁に叩きつけられる偽店主の体。そこに幾筋もの白い曲刀が飛来し、敵の体を壁に縫い止めるように貫いた。ローレンのが自らの影から作り出した、黒闇の白影の刀だ。
「それじゃ、店仕舞いってことで」
 タルワール状の最後の白影が敵の口腔のモザイクを貫き、ドリームイーターは音もなく霧散していった。


「っしゃ、終わりだな! 後は店主を起こしに行くだけか」
 シェーラはそう言いつつ、店内をざっとヒールする。
「とんでもないカレーだったよ。ザイフリード王子ににもぜひ味わってもらいたいね。あ、汚れた人は来て、服を綺麗にするよ」
 厨房では、本物の店主が体を起こして頭を振っているところだった。ケルベロスたちは事情を説明し、この店のこれからについて話し合った。
「1甘は良くできていておいしい……でしたら極端な味を提供できるのはこの店の強みであって、店主さんが悪いとは思わない。でも商業上の判断としては不十分だったと思います。求められる商品を、適切な形で販売しなくては。甘みの強いカレーは少量でも提供できるようにする、とか」
 悠乃は店が失敗してしまった原因を客観的に分析し、考察を伝える。
「普通の甘さのカレーを食べたいです……程良い甘さを皆で楽しく味わいたいです……」
 夏雪の意見はもっともで、おそらく客層の大多数の意見をを代弁したものだろう。店主はため息をつく。
「やっぱり、俺の経営が間違っていたんだな。でも、あんた達が10甘カレーを平らげてくれたし、これで店を畳んでも未練は……」
「そんな、もったいないよ! 店主さんには是非、激甘カレーを極めてもらって、他では食べられないカレーをまた食べさせてもらいたいよ!!」
 身を乗り出して訴えるカーリー。驚く店主に、骸、小梢丸が続ける。
「そうだよ、もったいない! わたし、あんなに甘くて綺麗でおいしいカレー、食べたことないよ!」
「カロリーを超絶急速チャージできる点も素晴らしいと思います。なにより、美味しかった」
「うん、やっぱりコーヒーはこの甘さがちょうどいいよね。……え? 違う? ご、ごめん?」
 店内の椅子でブラックコーヒーを飲んでいたローレンが不意にそんなことを言い、説得組からジロっと見られる。隣で1甘カレーを食べてたシェーラが、まあまあ、と会話に参加する。
「甘すぎるって意見はもっともだ。食い物は作る方、食べる方の勝負だ。どちらかが独りよがりになっちゃいけない。美味しく楽しくいこう。この1甘カレー、すごく美味いよ」
「この甘さは食事というより、スイーツの範疇……小さなナンに少量のカレーをかけて出すとか……その方が食べやすかったのでは?」
「甘い物だけじゃなく、辛い物や中間も作ってみて幅をもたせてみればどう?」
 悠乃と骸からの具体的なアドバイス。彼らの励ましと説得を受け、店主は将来の店の再開を決意したようだった。
「そうこなくちゃ!」
 と、指を鳴らすスミコ。
「楽しみだなぁ! 絶対、約束だよ?」
 カーリーが店主の手を取り、嬉しそうに言った。

作者:ともしびともる 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 3
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