袋いっぱいの生ゴミ

作者:神無月シュン

「あー、ゴミ出しやらされるなんて、最悪だよなー」
 早朝、飲食店の制服を着た青年が、ゴミ置き場にゴミ袋を置く。袋の中には、今日調理中に出た野菜の皮や魚の骨等のゴミから、客が残した料理、さらには酔った客の吐しゃ物まで混ざっていた。
「あの客、吐くまで飲むんじゃねーよ。ったく……」
 吐いたものを片付けた時の事を思い出しながら、青年は店の方へと歩き出す。
 青年が店への扉を開けようとしたその瞬間、目の前に第六の魔女・ステュムパロスが現れ、青年の胸目掛け、手にした『鍵』を突き刺す。
「あはは、私のモザイクは晴れないけど、あなたの『嫌悪』する気持ちもわからなくはないな」
 次の瞬間、青年は意識を失いその場に崩れ落ちた。その横には、生ゴミとモザイクがぎっしり詰まった、大きなゴミ袋が浮かんでいた。

「苦手なものへの『嫌悪』を奪って、事件を起こすドリームイーターが現れました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が集まったケルベロス達に説明を始める。
「『嫌悪』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているようですが、奪われた『嫌悪』を元にして現実化したゴミ袋ドリームイーターにより、事件を起こそうとしているようです」
 ゴミ袋ドリームイーターによる被害が出る前に、撃破をしてほしいという。
「このドリームイーターを倒す事ができれば、『嫌悪』を奪われてしまった被害者も、目を覚ましてくれるでしょう」
 敵のドリームイーターは1体のみで、配下などは存在しない。
「外見は、大きさは違えど、ゴミ袋そのままです。中には生ゴミとモザイクが詰まっているみたいですが……。攻撃方法は、袋の中の生ゴミを飛ばしてきたり、のしかかってきたりするようです」
 色々なゴミが混じって、臭いも強烈なものになっていることが予想される。
「生ゴミ処理、気持ち悪いとは思いますが、よろしくお願いします」
 そう言いセリカは頭を下げた。


参加者
鈴木・皆人(地球人の鹵獲術士・e03122)
ソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)
ルース・ボルドウィン(クラスファイブ・e03829)
ロア・イクリプス(エンディミオンの鷹・e22851)
細咲・つらら(煌剣の氷柱・e24964)
獺祭・鴻(ゴーストライター・e27911)
パプリミ・ガーネット(ヴァルキュリアの巫術士・e28238)
有嬉・唄兎(白薔薇ステディ・e31900)

■リプレイ

●漂う悪臭
 商店街に到着したケルベロス達が、まず感じたのは周囲に漂う生ゴミの臭いだった。
 早朝で、さらにこの臭いである。好き好んでこんな場所に留まっている物好きはなく、一般人は自主的に避難していた。
 ルース・ボルドウィン(クラスファイブ・e03829)は戦闘の為、商店街にキープアウトテープを貼っていく。様子を見に来た人がいたとしても、戦闘に巻き込まれる事はないだろう。
 徐々に強くなっていく生ゴミの臭いが、マスク越しでも微かに感じケルベロス達は顔をしかめる。
「ふーむ、それにしても魔女さん本人に会えないのは、ちょっぴり歯がゆいですねっ」
 細咲・つらら(煌剣の氷柱・e24964)は、既に姿を消した第六の魔女・ステュムパロスと対峙したかったと残念そうに語る。
「早朝からドリームイーター退治とかきつくね? とほほほ……早く帰って眠りたいんだぜ」
 眠そうにしながら、獺祭・鴻(ゴーストライター・e27911)が呟く。
「飲食店のバイトって大変だな……つかなんつーもん吸収してんだよマジで。嫌悪とか無くてもいんじゃね? なんて逃げるのダメ? ダメだよなー……しゃあねぇ、がんばろ」
 鈴木・皆人(地球人の鹵獲術士・e03122)は今から生ゴミと戦うのを考えると、帰りたい気持ちでいっぱいだった。
 しばらく待っていると、悪臭と共に、路地裏から数センチ浮遊した2m程のゴミ袋ドリームイーターが姿を現した。袋の中はぎっしりと詰まった様々な生ゴミとモザイクが混ざって、うねうねとうごめいていた。
「おー……すげぇやる気でねえ、帰っていいか? ……あれ相手にするの、どう考えても面倒なんだが」
 ゴミ袋ドリームイーターの姿を見て、ロア・イクリプス(エンディミオンの鷹・e22851)は既に戦意喪失気味だ。
「あのモザイクの中は……あまり考えたくないですね。うちのゴミのことを考えると少し気分が下がりますが……今日はきっと戦って疲れると思うので、掃除をするなら明日にしましょう」
 自室の汚れ具合とゴミ袋ドリームイーターの様子を重ねて、部屋の掃除をしなければと思うソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)だったが、この戦闘を言い訳に後回しにすることにした。
「すごい臭い、いや、それより見た目か、名状し難いとはまさにこのことだな」
 パプリミ・ガーネット(ヴァルキュリアの巫術士・e28238)はゴミ袋ドリームイーターに詰まっているものを見つめて、感想をもらす。
「こうまで汚れていると、綺麗にしたくなっちゃうわ」
 有嬉・唄兎(白薔薇ステディ・e31900)は決意を固める。
「魔女さんはお強いと踏んでますが……。さて……魔女さんの残したアナタは、どうでしょう」
 つららは戦闘を開始するべく、武器を構える。
 他のケルベロス達も、なるべくなら汚れたくないと願いながらも、汚れる覚悟を決めて武器を構えた。

●まき散らされる生ゴミ
 ルースがまずは機動力を奪うべく、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを放つ。蹴りはゴミ袋ドリームイーターの体を捉え、めり込む。何とも言えない感触が足から伝わってくる。
「お前の相手はこっちな」
 周囲の建物に意識を向けさせない様にと、皆人はドラゴニックミラージュを放ち、ゴミ袋ドリームイーターの表面を焼く。
 ロアは絶対近づくのは嫌だと、離れてフォートレスキャノンを放つ。
 ソラネは前衛へと霊力を帯びた紙兵を大量散布する。
 前のめりになって、ゴミ袋ドリームイーターがつららへとのしかかってくる。そこへ唄兎のテレビウム、パニイが割り込みゴミ袋ドリームイーターの攻撃を受け止める。
 態勢を戻す隙を与えず、つららはゴミ袋ドリームイーターへと接近し、稲妻突きを放つ。
 鴻は己に強烈な自己暗示を掛け、自らの肉体を硬化させ、守りを固める。
 唄兎はメタリックバーストを活性化。前衛の超感覚を覚醒させる。
「ゴミは、燃やせばいいか?」
 炎弾を放つパプリミ。攻撃を受けたゴミ袋ドリームイーターの一部が燃え始めた。
 ルースが『VIXI-I』を放ち、皆人が『RATATOSC』を放つ。2人のホーミング効果のある攻撃がゴミ袋ドリームイーターを捉える。
 ロアがサイコフォースを放ち、ゴミ袋ドリームイーターの側で爆発が起きる。
 ソラネが周囲に被害が出ない様に、集中しナパームミサイルを放った。ミサイルが命中し、よろめいた所に鴻がグラインドファイアを浴びせる。2人の攻撃でゴミ袋ドリームイーターを更に炎が包んでいく。
 ゴミ袋ドリームイーターの一部が焼けて、生焼けになった生ゴミが更に異臭を発し始める。
「ゴミくせええええ」
 前衛で1人、マスクを着けていなかった鴻が、これはたまらないと鼻をつまみながら叫ぶ。
 ゴミ袋ドリームイーターが生ゴミを飛ばす。ベチャリ。飛来した生ゴミがパプリミの肩へと命中する。ホッケの皮に刺身の切れ端、それに一緒に飛ばされたモザイクがへばりつく。更にモザイクはうねうねと肩の上を這いずり回る。物理的なダメージは大したことはないが、精神的なダメージは、計り知れない。
 唄兎が地面に守護星座を描き、前衛のケルベロス達を包む。
 つららがゴミ袋ドリームイーターへと接近し、パプリミが鎌を回転させながら投げつける。2人の斬撃がゴミ袋ドリームイーターを斬る。
「パイロープ、頼む」
 うごめきに耐えられず、パプリミは自身のボクスドラゴン、パイロープへと指示をだす。パイロープはキューとひと鳴きして、パプリミのうごめきをキュアした。
 ルースと鴻のスターゲイザーにゴミ袋ドリームイーターがよろめき、その隙に皆人が距離を詰め、鎌での斬撃を放つ。そこにロアのフォートレスキャノン、ソラネのロックオンレーザーが撃ち込まれる。
 ゴミ袋ドリームイーターが袋の口を開け――周囲に生ごみをばら撒き始めた。前衛のメンバーが生ゴミをかぶる。
 ゴミ袋ドリームイーターの攻撃が終わると同時、つららが稲妻を帯びた超高速の突きを繰り出す。鴻と唄兎のテレビウム、ノジコちゃんとパニイも攻撃を加えていく。
 唄兎はオーロラのような光で前衛のうごめきを治していく。
 パプリミが熾炎業炎砲でゴミ袋ドリームイーターを更に燃やす。

●生ゴミ処理
 ゴミ袋ドリームイーターが攻撃するたびに、周囲には生ゴミがまき散らされ、商店街の壁や地面にへばりついていく。それを見てケルベロス達は後処理が大変だなと、考えながら戦闘を続ける。
 ルースが流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを炸裂させ、続くように鴻が炎を纏った激しい蹴りを放つ。
 ロアのサイコフォース、ソラネのロックオンレーザー。2人による遠距離攻撃が、ゴミ袋ドリームイーターへと命中する。
 ゴミ袋ドリームイーターが生ゴミを飛ばすが、鴻が射線へと飛び出し、思い切り生ゴミを浴びる。
「ディフェンダーの辛いところだぜ」
 仲間を庇って生ゴミまみれになり、悲しそうに鴻は呟いた。
 唄兎が後衛へとメタリックバーストを活性化。
 皆人、つらら、パプリミ、3人の鎌での斬撃に、ゴミ袋ドリームイーターの袋が裂け、切り口からボタボタと生ゴミが溢れ出す。どこを見ても生ゴミだらけで、もはや地獄絵図だ。
 ルースが両手に惨殺ナイフと『FTC-002 Spectacular』をそれぞれ持ち、舞うような動作で敵を切り裂く。
 皆人が掌からドラゴンの幻影を放ち、ロアがアームドフォートを構え一斉に発射する。
 ソラネの胸部が変形展開し、出現した発射口からエネルギー光線を放つ。
 ゴミ袋ドリームイーターが袋の口を開け、生ゴミをまき散らす。
「少しばかり、遊んでくださいな」
 つららが『氷鬼』を活性化させると、どこからともなく現れた1本の氷剣がゴミ袋ドリームイーターへと襲い掛かる。
「あっという間に終わるんだな、これが」
 鴻が『試作曲01番』を活性化。15秒ほどの短い曲が終わり、魔力の込められた旋律がノジコちゃんの傷を癒す。
 唄兎がオラトリオヴェールで前衛の傷を癒す。その間にパプリミが炎弾を放ち、ゴミ袋ドリームイーターを攻撃する。
「命の行動原理はふたつ。『愛』と『恐怖』だ」
 ルースの『VIXI-I』がゴミ袋ドリームイーターに炸裂する。
「つむじ風と共に、来たれユグドラシルより何か超すばやいやつー!」
 皆人が詠唱を終えると、小動物のような黒い影が現れ、風と共にゴミ袋ドリームイーターへと襲い掛かる。
 ゴミ袋ドリームイーターが生ゴミを飛ばすが、ロアは当たりたくない一心で必死に飛んできた生ゴミを躱し、サイコフォースで反撃した。
「チャージ完了、全門開放! 撃ちます!」
 ソラネの『ダイノアームズ【強襲戦特化型AF・TTー9】』による一斉射撃。
 鴻が高速で体を回転させながら敵へと突撃する。唄兎が時空凍結弾を放ち、パプリミが鎌を回転させブーメランの様に投げつける。
 つららが鎌に死の力を纏わせ振り下ろす。ゴミ袋ドリームイーターは真っ二つに切り裂かれ、中身の生ゴミが周囲へと降り注ぐ。ケルベロス達が必死に生ゴミを躱す。やがて生ゴミの雨が止み、ゴミ袋ドリームイーターは消滅し、商店街には大量の生ゴミだけが残された。

●お掃除します
「……どこからかたづけようかしら? なやんでしまうほどの汚れだわね」
 どこを見ても、生ゴミ、生ゴミ、生ゴミの山である。唄兎はため息をつき――。
「てきぱきとりあえずやりましょう」
 やらないと終わらない。と無理やりにでも気合いを入れる。
 気絶してるフリをして掃除をサボろうとする鴻。
「あっ! あっ!! ノジコちゃんっごめんっ!! ちゃんと掃除しますっ」
 それに気がついたノジコちゃんが容赦なく鴻を蹴る。
「とほほほ、僕様のサーヴァントはドリームイーターより怖いんだぜ……」
 渋々と掃除を始める鴻。
「つららちゃんもお片づけ、手伝いますよーっ」
 つららは掃除は苦手だが、ちょこまかと出来ることを手伝っていく。
 皆人は用意していた火ばさみで、生ゴミを拾ってはゴミ袋へと詰めていく。細かい汚れはホースで水をまき、デッキブラシで落としていく。
 掃除をしながら自分の部屋も、こうやって掃除すればいいのになとソラネは考えるが、実行しないのはいつものこと。
「あー……早く帰って酒飲みてぇな、吐くまでは絶対に飲まないけどよ」
 やる気なさげに掃除をしていくロア。
 パプリミはゴミを集めて臭いが出ない様にしっかりと袋を閉じて、ゴミ捨て場へと運んでいく。
 長時間の清掃で、生ゴミを処理しきった時には、もう太陽は頭上にきていた。
「帰ったら、風呂へ直行だな」
 ルースは掃除用にと着ていた服と長靴を脱ぎ捨て、いつもの靴を履く。
 皆人とソラネがケルベロス達の服と体をクリーニングしていく。
「助かった、ありがとう」
 キレイになった服を見てパプリミはお礼を言う。
 体中から生ゴミの臭いを漂わせ、早くお風呂に入りたいと帰還するケルベロス達だった。

作者:神無月シュン 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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