ミルキーウェイに架かる白き翼

■リプレイ

●ミルキーウェイに架かる白き翼
　その場所は、山奥の村。人工的な光が届かない、美しい星々が見える場所。
　……そこには、綺麗なミルキーウェイが広がっていた。この先には……湖がある。
　夜間という事で、ハンズフリーのLEDライト等を用意し、リーズレット・ヴィッセンシャフト（噎せ返るほどに世界を嚥下せよ・e02234）と、虹・藍（蒼穹の刃・e14133）は、戦闘をしやすい場所を見つけて、翡翠・風音（森と水を謳う者・e15525）とエアーデ・サザンクロス（自然と南十字の加護を受けし者・e06724）は、念のためにと殺界形成を放って、人が間違って迷い込まない様にした。
　今回、集まったのは星や星座を愛するケルベロス達。それぞれに、色々と思う事がある。だからこそ、このドリームイーターは倒さねばならないのだ。
「山奥だと本当に星が綺麗に見えるな？　なんだかこう……空に浮かぶ川と白鳥に此処の川に白鳥とか居たら、写し鏡のようで何だか神秘的な感じがするな？」
　リーズレットが話を切り出していく。それに藍も頷いた。
「星座は色々な想像力をかきたてるね。神話世界への憧れを星になぞらえて、か。星の川を渡る白い鳥。それだけで絵になりそうね」
　そう言ってから、藍は、もう一つ話、神話のエピソードを添える。
「ギリシャ神話なら、白鳥はゼウスの化身だっけ？　神様なら星の空まで飛べるってね」
「宇宙に星座、人々にとっては太古から存在する身近ですが遠い場所。そこへ連れて行って下さる白鳥とは如何なるものなのか大変興味深いですね」
　それに続けて、蓮水・志苑（六出花・e14436）が、ふわりと答える。
「白鳥座が本物の白鳥になるのかな？　それって素敵じゃない？　きっととても綺麗なのでしょうね」
「天の川に飛び立つ、輝く白鳥……ぜひ見てみたいものです」
　エアーデの言葉に翡翠・風音（森と水を謳う者・e15525）も、同意するように続けた。
　そんなケルベロス達の傍に、淡白い光を纏った大きな白鳥が舞い降りてくる。その姿はドリームイーターでありながら、とても美しかった。
　そして、その白鳥はケルベロス達に問いを投げかけてくる。
「わたくしは、如何なる者だと思われますか？」
　その問いにエアーデは首を傾げて考える仕草を、逆に、ヴィ・セルリアンブルー（青嵐の鎧装騎兵・e02187）は、しっかりと答えた。
「……何者？　んー、鶏かなー？　大きいねぇ」
「鶏ですか？　鶏は飛べないと思うのですが……」
　何故か、突っ込みが返ってきた。
「……まあ、良いでしょう。あなた方とは、感性が異なる様です。わたくしが、飛べる鳥だと証明致しましょう」
　ふわりと体勢を整える白鳥のドリームイーターは舞い、ケルベロス達も戦闘態勢に入った。

●白鳥型ドリームイーター
　光を放つ白鳥のドリームイーターは、舞い踊り、その翼を広げて白き羽根を風音へと狙って放ってくる。
「そう簡単にはいかせません」
　天壌院・カノン（オントロギア・e00009）が、風音を庇う。それに風音な感謝を伝えた。
「ありがとうございます。私も全力でサポートを努めさせて頂きます」
「はい、宜しくお願いします」
　カノンが頷くと、続いて元気な声が響いた。
「よし、頑張るよー！　響もよろしくね！」
　リーズレットは纏っているオウガメタルを使って、強力な拳を放つ。そして、彼女の相棒のボクスドラゴンの響は、先程狙われた風音に属性インストールを行って加護の力を高めた。
　藍は素早いドリームイーターの事を考慮に入れて、戦場でも有利な場所へと移動して、攻撃の確実性を高める。続けて、ヴィの鉄塊剣による重い一撃がドリームイーターへと加わった。
「よし、当たった！」
　これでドリームイーターの攻撃がヴィへと向かってくれれば、狙い通りだ。
「皆さん、命中率を上げますよ」
「頑張ってください」
　志苑と風音は、纏っているオウガメタルから粒子を放出、カノン達、志苑へと放って命中率を上げていく。
「シャティレも宜しくお願いしますよ」
　風音のボクスドラゴンは、主人の言葉に頷くと、現時点、一番狙われる可能性の高いヴィへと属性インストールを行って、加護の力を高めた。
「美しい星座を汚すような行動は止めてほしいわ」
「雷の障壁よ、仲間を守る盾となれ！」
　カシス・フィオライト（龍の息吹・e21716）は、エアーデの放つ古代魔法は、ドリームイーターを捕えて石の足枷を嵌めていき、カシスは雷に依る壁を創り上げ、藍達に護りの力を与えた。
「藍さん、固めていくから、強力な一撃よろしくな！」
「分かったわ。任せて」
　リーズレットがドリームイーターへと石化魔法を放った所に、藍のドラゴニックハンマーが変形して砲弾を撃ち放つ。そして、響は、サポートを重視している志苑へと属性インストールによる加護の力を送った。
　ドリームイーターは、本物の白鳥が踊る舞いを繰り広げる。目を引くそれは藍を狙うが、ヴィがそれを庇ってカバーした。
「ヴィくん、ありがとう。助かったわ」
「俺は仲間の盾になりたいから、心配しなくていいよ」
　感謝する藍に、ヴィは笑顔で答えた。
「では、私は、あなた方の浄化を行いましょう」
　カノンの美しく神秘的なベールはカシス達を包んでいく。それに依って、汚れが浄化されていった。
「黄金の光を皆様へ」
「私は強き力を」
　志苑は輝く光を、風音は鼓舞し強き力をエアーデ達に与えていく。そして、シャティレがブレスを放った。
「ありがとう。助かるわ」
　二人からの力を得たエアーデは御業を放って縛り上げる。
「これでも食らって、痺れてしまいなさい！」
　続けて、カシスの雷による一撃がドリームイーターを狙った。トントンッ、とドリームイーターは翼を使って逃げようとしたが、無事に捕える。
「ドリームイーターを大体捕えられている、って考えても大丈夫そうだね」
　カシスの言葉に、仲間のケルベロス達は頷いた。この調子なら、ほぼ当たると考えても良いだろう。
　白きドリームイーターは、その翼で舞い上がる。そして、高速でヴィへと向かって突撃してきた。ヴィの思惑通りの行動である。
「よーし、行くよー！　藍さん、宜しくね」
「ええ、当てていくよ」
　リーズレットの攻撃の輝きを放つ重い蹴りがドリームイーターへ放った。続けて、藍はリボルバー銃を構えると高速の弾丸で撃ち貫く。一方、響はヴィの所へ飛んでいくと、属性インストールを行って護りの力を高めていった。
「ヴィさん、回復します」
　カノンはオーラを高めていき、それを放ってヴィを回復させていく。
「捕えますよ」
　志苑の放つ蔓草はドリームイーターを捕えた。
「数多なる生命よ、どうか我らに力を……」
　風音の澄んだ、そしてしっとりした歌声が響く。その歌声は自然に語りかけて、癒しと再生の力を与えていった。シャティレは回復の主たる主人へと属性インストールを行って護りを与える。
「そろそろ元の世界にお帰りなさい。天の川を渡りたい人が待ってるわ」
　エアーデは２本のファミリアロッドを構えると、ドリームイーターへと２体のファミリアを融合させて幻影合成獣へと変化させて撃ち放った。
「さぁ、断罪の時間だよ。無数の刃の嵐を受けよ！」
　カシスは罪を浄化する為の光の剣を無数に創造してドリームイーターへと放ち、傷口を広げていく。
　ドリームイーターは白き翼を再びはためかせる。羽ばたく翼は強い風を起こすと、その羽を、攻撃力が上がり確実に当てに狙ってくるリーズレットに向かって放つ。それをヴィが庇った。
「大丈夫か？　俺、ちょっと攻撃に回るのは厳しそうだから、頼んだよ」
「うん、ありがとう！　頑張るからな！」
　ヴィにお礼を言うと、リーズレットはドラゴニックハンマーを変形させて白鳥のドリームイーターに狙いを定めると、撃ち落とすように放つ。響も続いてタックルを叩き込んだ。
「ダメージの高い星虹を使いたい所だけど……ちょっとこれはリスクが高いかも。ここまで来たんだから、確実性を重視しないとね」
　強力な一撃を与えて撃破を狙いたい所だけれど、リスクは避けたい。藍はドラゴニックハンマーを変形させ、リーズレットが狙った場所に確実に撃ち放ってドリームイーターの動きが見るからに遅くなってきた。
「美しき災いよ、どうかお眠りなさい」
　カノンは凍結の弾丸をドリームイーターへと撃ち放つ。続けて志苑はゲシュタルトグレイブを高速回転させて斬撃を加えた。
「力を底上げしますね」
　風音はエアーデに力を与え、シャティレはドリームイーターへとタックルを喰らわせる。
「カシス、同時にいくわ」
「分かりました、エアーデさん」
　エアーデとカシスの二人は、共にドリームイーターへと構えると向かっていく。
　カシスが御業を放って白鳥のドリームイーターを捕えた。そこに、エアーデが飛び込む。
「白銀の十字よ。その聖なる光に基づき、審判を下せ」
　エアーデは彼女を守護する南十字の力を輝く光へ変えて放った。
　白鳥座は『北十字』の別名を持っている。その反対の彼女の力を受けて白き鳥のドリームイーターは星の光の様に輝いて、夜空へと消えていったのだった。

●満天の空の下で
　荒れてしまった湖をヒールしてから、祐樹の倒れている場所に行く。
　カノンやカシス、志苑そして風音達を中心にして祐樹の治療に当たり、そして、祐樹が意識を取り戻してくれた。
「……そうですか。残念です……」
　志苑に大体の経緯を聞いた祐樹は、残念な顔をしている。
「確かに残念ですが……遮る物や灯りの無い、この星空はとても素敵ですよ」
　そう言って志苑は、祐樹へとそう言って夜空を仰ぐ。
「本当に行けたらあの先には何があるのでしょうね」
「……はい、そうですね」
　彼女の言葉に祐樹は頷いた。それだけで、彼の夢はまた満たされていくように見える。
「あの大きく輝く星は何なのだろうか？　流れ星とか、出てこないかな？」
　カシスは夜空を眺めながら星空を見る。天体観測に興味があるから、色々と星を眺めるのが楽しい。
（「この白鳥は美しく無かったな、やはり自然に生きる白鳥の方が美しい」）
　先程までのドリームイーターとの戦いを思い出して、そんな事を思いながら。
　エアーデも夜空を見上げる。煌めく星に目を奪われてしまうのだ。
「星が降ってきそうね……」
「（本当に綺麗な星空……盟友が見たなら青年の様に、きっと心が宇宙の旅に出かけちゃうだろうな）」
　そんな事を思った。
　風音は過去が原因で寒さが苦手で、以降、寒い時に星空を見ることが出来ないけれど、シャティレはもふもふしたボクスドラゴンなので抱きしめて、こっそり暖を取って自然の中の綺麗な星空を眺めるのは嬉しかった。
　リーズレットは頭の上にボクスドラゴンの響、ファミリアの薄い青と紫の双子のハムスターがリズの肩に乗せて楽しそうに星空を見ている。
「ねえ、誰か星に詳しい人とか居るかな？　居たら教えて欲しいな！」
　星空を見ながら言うリーズレットは、仲間達に話しかける。その中で、カノンが小さく手を挙げた。
「星座となった動物のお話なら……」
　カノンは動物知識を生かして、それに関する話し始める。リーズレットは興味津々の顔でカノンの話に耳を傾けていた。
「あそこは、北極星を見つける為に有名な大熊座に……あちらは小熊座で……」
「うんうん、成程……」
　カノンの話を聞きながら、リーズレットは頷いている。
「わー、きれいだなぁ！」
　ヴィは星空を見ながら感動する。だけど。
「あれが白鳥座。あの星がデネブで、それから少し先のアルビレオは二連星。……一緒に見たかったかなぁ」
　そんな言葉が零れた。
　ヴィ自身、元は量産型戦闘実行体だ。多分、宇宙のどこかでつくられたのだろう。光る星は無数で……見当もつかないけれど。
　……そして、かつては『敵』として戦い、今は仲間達とこの星を護っている。
　……不思議な感じだ。
「星を見ると、何かセンチメンタルになっちゃうね。らしくないかな？」
「（本当は、星まで飛んでいけるなら、こんな風にグラビティチェインの取り合いじゃなく、お互い交流で行き来するような、そんな未来だったら良かった）」
　藍はそんな事を思いながら発した言葉に、慌てて仲間達に笑ってごまかした。
　でも、この美しい夜空は、そんな事に思いを馳せてしまう。星の美しい夜の世界だった――。

作者：白鳥美鳥	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年10月18日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 5／キャラが大事にされていた 1
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