●百鬼夜行に手を伸ばす
深い闇が巡った真夜中、丑三つ時。
列を成した妖怪やアヤカシたちが練り歩き、何処かへ向かう様を百鬼夜行と呼ぶ。
片田舎の寂れた神社から山に続く道には昔からよく妖怪を見たという噂話があった。それは戯言や作り話に過ぎない。皆が本気では信じない噂ではあるが、たったひとりだけその話を信じている少女が居た。
「いつか、百鬼夜行を連れた烏天狗さんに会いたいな……」
彼女は妖怪という存在を好み、それらに逢ってみたいと憧れていた。百鬼夜行を見られますようにと願い、ときおり密かに家を抜け出しては夜の神社付近に通っていた。
暗い夜道は不気味だったが、今日こそは、と期待を抱く少女に恐怖はない。
だが、その夜に彼女の前に現れたのは別のモノだった。
「だ、だれ……? アヤカシさん?」
突如として出現した影におそるおそる問う少女だが、答えの代わりに大きな鍵が胸に突き刺される。そして、その影――魔女・アウゲイアスは呟いた。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
それだけを告げて踵を返した魔女は何処かへ去って行く。
意識を失った少女は其処に倒れ込み、その傍らには新たなドリームイーターが現れ始めた。夢喰いの姿は次第に少女が思い描いた烏天狗の形となり、周囲には妖怪めいた靄のような気体が渦巻く。
「うむ。往くとするか」
やがて烏天狗は纏った靄を連れて歩き出した。
その狙いはただひとつ。人を襲い、更なる力を得るということ――。
●烏天狗とアヤカシ達
或る少女の『興味』が奪われ、怪物と化してしまった。
巷で多発している事件の概要を語り、雨森・リルリカ(花雫のヘリオライダー・en0030)は仲間達に協力を願った。
「現場は片田舎の古い神社の近くでございます。興味を奪ったドリームイーターはもう居なくなっていますが、代わりに烏天狗の妖怪がうろついていますです」
少女の思い描く姿となった新たな夢喰いは付近を彷徨っている。
現時点では何処にいるのか掴めていないが、敵は『自分を信じていたり、噂をしている者』を察知して近付いて来るらしい。
「敵さんは妖怪のお話をしていれば皆様の所に来ます。あとはいつも通りに戦ってやっつけちゃってください!」
敵は一体のみだが、攻撃の際には纏った靄を他の妖怪の姿に変えて攻撃してくるという。どの力も油断できない程に強いので気を付けなければいけない。
また、少女は敵を倒すまでは決して目を覚ますことはないが、無事に解決さえすれば無傷のまま救出できる。事後に様子を見に行くかどうかは皆に任せると話し、リルリカは説明を締め括った。
「女の子が憧れる素敵な妖怪さんや百鬼夜行なんて本当はいないのかもしれません。ですが、その憧れの気持ち自体は大事なものです!」
その興味を奪って人を襲う存在にするなんて許せない。そうして、リルリカはケルベロス達に信頼の眼差しを向け、戦場に赴くその背を見送った。
参加者 | |
---|---|
鵺咬・シズク(黒鵺・e00464) |
道玄・春次(花曇り・e01044) |
四十九院・スケキヨ(パンプキンヘッズ・e01109) |
マール・モア(ダダ・e14040) |
篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558) |
ティユ・キューブ(虹星・e21021) |
神居・雪(はぐれ狼・e22011) |
月井・未明(彼誰時・e30287) |
●闇に語る
古びた神社の境内に揺らぐ蝋燭の火。
丑三つ時、人が近寄らぬ仄暗い場所で摩訶不思議な噂話が囁かれてゆく。
――この辺に百鬼夜行が現れるのを知っとる?
道玄・春次(花曇り・e01044)の言葉から広がる噂語りの輪。
「その百鬼夜行は烏天狗が引き連れとるみたいやで」
額の面を軽く被り直した春次は妖怪ならば少し見て見たいと話した。狐の妖怪も居るやろか、とボクスドラゴンの雷蔵に問いかけた春次は続けて語られる仲間の話に耳を傾ける。
そのとき、四十九院・スケキヨ(パンプキンヘッズ・e01109)はふと思い立った。
「百鬼夜行と言えばあの剽軽な見た目の河童もいるのだろうか」
そうして、スケキヨが話したのは河童が人の尻子玉を抜いて腑抜けにしてしまうという言い伝え。元から腑抜けのような自分が抜かれたらどうなるのか、と興味を抱いたスケキヨは何処か可笑しそうに肩を揺らした。
マール・モア(ダダ・e14040)は葛葉模様の和紙硝子を嵌め込んだ古真鍮の手提灯籠で辺りを照らし、敵の襲来に備える。
されど、未だ辺りは静かなまま。狐火の様に妖しく游ぐ灯の中、まだ少しばかり心戦ぐ御話が聞けるだろう。
「日本の化生には詳しくないの、皆さんのお話を聞かせて頂戴」
マールが話に聞いた雪女や絡新婦の切ない逸話を思い返すと、篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558)が静かに双眸を細めて語り出す。
「知ってる? 放置された人の死は妖になるんだ」
人の顔に曲がった嘴、蛇体に剣爪の巨大怪鳥。骸骨や怨念が集まり彷徨う話。佐久弥が語るものは実におどろおどろしかった。
ティユ・キューブ(虹星・e21021)は佐久弥の語り口に興味を示し、何度か頷いて聴き入っていく。そして、ティユはふと仲間達に問いかけた。
「皆は好きな妖怪とかいるかい?」
「妖怪ねぇ。まぁ色々といるよな。鬼とか天狗とか色々とさ。あれ、そういや……鬼と天狗ってどう違うんだ?」
神居・雪(はぐれ狼・e22011)は様々な妖怪を思い浮かべながら、自分がそれほど詳しくはないことに気付く。首を傾げた雪に月井・未明(彼誰時・e30287)が違いを説明してやり、束の間の和やかな時間が流れた。
「おれも妖怪には興味がある。医や薬に関する古い文献は、眉唾と真実のごった煮みたいなものでな。その中には、あやかしの仕業としか思えない話も多くある」
未明によって烏天狗が薬の製法を教えてくれた逸話が語られ、ティユとスケキヨがそういえば、と自分が知っている話と照らし合わせる。
彼の妖怪とは可能なら隣人として在りたい。されど、今夜はそうはいかない。
鵺咬・シズク(黒鵺・e00464)は仲間の話を聞きながら夢の主となった少女を思い出す。怖いもの見たさか、それとも純粋な憧れか。その気持ち自体は人として大切なもの。だが、その思いは今、ドリームイーターに利用されているのだ。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」
シズクが顔をあげると、境内の向こう側から何かの気配が感じられた。それに逸早く気付いたのはティユのボクスドラゴン、ペルルだった。雪のライドキャリバー、イペタムも一拍遅れてではあるが敵の気配に気付いて駆動音を響かせる。
仲間達が境内の入り口を見遣れば、烏天狗の姿をした夢喰いが姿を現した。
「佳い御客人だな。さて、百鬼夜行の幕開けだ」
「来たな、行くで雷蔵」
春次は敵を見据え、相棒に呼び掛ける。それと同時にマールと未明が身構え、手にした提灯を地面に置いた。風に揺らいだ火は妖しくゆらりゆらりと踊る。
刹那――烏天狗が地を蹴った下駄の音と共に、戦いは始まりを迎えた。
●夜に往く
烏天狗が腕を掲げ、幻影の妖怪達を繰り出す。
「草木も眠る丑三つ時か。バケモノの登場にはおあつらえ向きだな」
シズクが身構えると、靄めいた一反木綿が空を舞い、蛇女が纏わりつくようにして迫っていく。だが、即座に飛び出したティユが妖怪の一閃を代わりに受け止めた。悪いなと告げたシズクとティユの間で視線が交差する。
其処ですかさず未明がバイオガスで戦場を覆っていった。その中でスケキヨはハットを外しながら踏み出し、一礼する。
「やあ、烏天狗君お目に掛かれて光栄だ」
魔力を紡いだスケキヨは怪人紳士めいた南瓜頭の奥から敵を見据えた。次の瞬間、幻竜の炎が戦場を照らしながら迸っていく。
攻撃の機を得たマールもナノナノを伴い、気を練りあげた。
「存分に愉しみましょう」
放たれた攻撃に対抗するように、蛇の様に絡み付く気咬弾が烏天狗を貫いた。マールに続いてナノナノが翼を懸命にはためかせ、なのちっくんで追撃に入る。
彼女達が連携攻撃を仕掛けたことに続き、雪とイペタムも攻勢に移っていった。
「妖怪退治ってのは流石に初めてだな。イペタム、やるぞ」
地面を蹴り上げた雪は一瞬で敵の弱点を見抜き、鋭い衝撃を与える。反撃される前に雪が身を翻せば、其処へ炎を纏ったイペタムが突撃していく。
未明も敵の横手に回り込み、一気に跳躍した。
「夢を奪われて目を覚ませないなんて、理不尽にも程があるからな」
重力を纏い、流星めいた蹴りを放つ未明の耳が夜風にはためく。凛と敵だけを映す橙の瞳はまるで月のような色合いにも見えた。
更に佐久弥が敵を見据え、敵に問いかける。
「俺は棄てられたモノ達の王。君は俺の名前を知ってるかい」
烏天狗が訝しげな眼差しを向けるのにも構わず佐久弥は剣を振りあげた。放った一閃の風圧が夜の空気を切り裂き、衝撃を生み出す。
春次も仲間の負傷具合を確かめながら竜語魔法を紡ぎあげてゆく。与えられた炎に重なる形で春次の竜焔が敵に激しい熱を齎した。
「っと、もう一撃来るようやな」
春次は敵からの攻撃を察し、気を付けてと皆に呼び掛ける。
その声に反応したティユとペルルが敵の前に陣取った。仲間の盾となる為に身を張った匣竜が化け猫の攻撃を受け、少し体勢を崩す。
大丈夫か、というティユの呼び掛けにペルルは気丈に立ち上がって応えた。小さな安堵を抱いたティユは改めて敵を見つめる。
「像や面でも見るけれど動いている姿を見れるとはね。……望んでいた本人が見れないというのが儘ならないが、危険なよりはいいか」
少女が思い描いた姿をしている烏天狗は何処か凛とした佇まいだ。
反して、先程の妖怪達は攻撃を終えた途端に姿を消している。現れては消える靄のアヤカシに驚きはしたが、春次の瞳には僅かな楽しさが映っていた。
だが、春次は首を振って仲間達へ癒しを施す準備を整える。更にシズクが斬り込みに駆け、風のように疾い斬霊斬を見舞った。
「どんな姿になろうと実体はひとつ、惑わされず正面から切り込むぜ!」
ただ一直線に烏天狗だけを瞳に映したシズク。その一閃は敵の力を大きく削る。
確か烏天狗というと牛若丸に剣術を教えたのだったか。シズクはそんな物語を思い返しつつ夜の闇ごと敵を葬り去ろうと決意する。
されど、敵の攻撃は強力だった。
庇い合うことで衝撃を分散させてはいるが、一撃ごとに仲間達の体力が削られて癒しが必要になってくる。スケキヨは烏天狗の手強さをその身で以て感じ取りながら、しっかりと体勢を立て直した。
「本物では無いにしろ妖怪に会えてその力まで体感できるとは驚きだな」
少しおどけて見せながら爆破スイッチを押せば、スケキヨが戦いの中で仕掛けた不可視の爆弾が爆発していく。
未明が縛霊の一撃を加え、雪も星の蹴撃で敵を穿った。
唐傘お化けと一つ目小僧の形をした靄がこちらを襲いに迫ったが、マールは慌てずにその攻撃を受け止めてしかと耐える。
お願い、と視線でナノナノを呼んだマールは癒しの力をその身に受けた。
「その分厚い化けの皮、削り取ってあげましょう」
そしてマールは剣の駆動音を響かせて無慈悲な斬撃を放つ。敵が寡黙に攻撃に耐えている間に、春次とティユ達が回復に回ってゆく。
「やっぱり侮れんな。こっちがやられて妖怪の仲間入り、なんて笑えんよ」
「芸達者なことだ。変化もコンビネーションな所がニクい」
春次が脳髄の賦活を行い、雷蔵とペルルが自らの属性を癒しに変える。その傍らでティユは肩を軽く竦めた。そうして、ティユは星の輝きで天の川を描く。
優しい癒しが広がっていく中で、佐久弥は次なる攻撃に出た。彼がその身に纏う付喪神達へ呼び掛ければ、思念体が周囲に浮かび上がっていく。
そして、佐久弥は先程の問いかけの答えを言い放った。
「――塵塚怪王。君と同じ、百鬼夜行の主だよ」
付喪神による夜行を先導するかのように佐久弥の指先が敵を静かに示す。
次の瞬間、操霊達が列を成すが如く迸り、烏天狗を貫いた。
●悪い夢の終わり
それから、戦いは激しさを増す。
放たれる妖怪は容赦なくケルベロス達を襲っていった。だが、盾として立ち塞がる者達が果敢に耐えており、戦線は保たれたままだ。
雪に佐久弥、マールをはじめとした守り手、そしてサーヴァント達が受けた傷は春次達が即座に癒すことで補っている。未明は手にした竜槌を強く握り、戦場を駆けた。
妖怪と戦う機会などそう何度もないだろう。だが、戦いを早々に終わらせることが今の自分の役割だ。
「おまえはゆめでも、そう信じられたなら本物だよ」
虚も実も些末事。そう信じた物が実なんだ、と口にした未明は得物を大きく振りあげ、氷結の一閃を放った。冷たい氷が烏天狗に纏わりつく中、、未明は仲間に視線を送る。
その合図を受けたシズクが踏み込み、両手の斬霊刀を連続で振り上げ、剣衝を飛ばした。その刃の残光が揺らいだと思った刹那、波動が敵を揺らがせる。
しかし、烏天狗も黙ってはいなかった。
「……参る」
敵は再び化け猫と首無し犬の妖怪を放ち、スケキヨを狙い打った。
だが、駆け出した雪が猫達の爪を縛霊手で弾き返す。されど殺しきれぬ衝撃が雪を襲い、思わず倒れそうになった。
「一応、これでも神さんに仕える身なんでな。妖怪程度に舐められて堪るかよっ!」
雪はぐっと堪え、魂で肉体を凌駕する。そしてすぐに片手を大きく掲げ、大地に宿るカムイの力を発動させた。大地に宿る女神の力が広がり、雪の身を癒す。
仲間が倒れなかった事に安堵を抱き、春次は雷蔵と共に更なる回復にまわった。
「――途を灯す火よ。……おいで」
その言葉に呼応するかのように狐火を尾に纏う朱鞠狐が現れ出でる。赤毛の子狐が戦場をふわふわと駆け回れば、首元の鞠鈴が小さく鳴った。
其処に合わせて尻尾を左右に振った雷蔵が自らの力を仲間に分け与える。
ティユは其処に微笑ましさを感じると同時に頼もしさを覚えた。きっと戦いの終わりはもうすぐだと感じ、ティユは攻撃に移る。
「個人的には豆腐小僧なんて会ってみたいね。烏天狗も良いけど」
こちらはこうして会えるしね、と敵を見遣ったティユは破鎧の衝撃を与えた。ペルルも竜の吐息を吐き、敵の力を削っていく。
「そろそろ終わりかな」
佐久弥も鋼の鬼を纏い、弱り始めた烏天狗に拳を向けた。自らが抱く業、そして念を込める勢いで放たれた一閃は見事に敵を穿つ。
ナノナノがばりあを張り、最期の癒しへと変える最中でマールも身構えた。
さあ、甘くとも優しくはないひと滴を。
「貴方が棲むべき幻想の国を想い出させてあげるから」
召し上がれ、と放たれた一撃。其処に続いてシズクが研ぎ澄ました剣気を黒い鵺の形に変えていく。
「真打ち登場だ。伝説級のアヤカシだぜ! 百鬼夜行丸ごと喰らい尽くせ!」
斬撃と共に放たれた黒鵺は電気を吸収しながら増幅し、雷獣の如く敵に襲い掛かっていった。それにより烏天狗が苦しげに呻く。
スケキヨは南瓜頭の下の口許を小さく緩め、トランプを宙に投げた。
「西洋には死神と言う恐ろしき存在が居てね。それは万物の命を刈り取る」
普段はお道化たピエロの彼も今は残虐な死刑執行人。鋭い刃を持つ大鎌が具現化し、容赦の欠片もない斬撃を放とうと動く。
「さて……君の魂はそれを避けられるかな。これにて宵の物語は幕引きだ」
――闇へ還りたまえ。
スケキヨが指を鳴らした刹那、刃が振り下ろされた。
嗚呼、次で最期になる。そう感じた未明は丸い硝子瓶の蓋を開き、夢の化身を瞳に映し込んだ。烟る彼我を揺らめかせ、未明は告げる。
「忘れないで語ってやる。だから、今日はここまでだ」
霞がかった大気の向こう。気付いたときには、もう遅い。
夜行が終われば朝が来る。わるいゆめは――ほら、もうすぐさめていく。
●夢に來る
倒れた烏天狗と共に妖怪の幻は消え、夜の闇に静寂が満ちた。
シズクは剣を仕舞い夢を奪われていた少女の元へ急ぐ。丁度目を覚ましたらしい少女は起き上がり、不思議そうに辺りを見渡した。
未明はそっと彼女の傍に膝をつき、簡単な事情を説明してやる。
「もう大丈夫。安心して」
「そっか……ごめんなさい。ありがとう、ケルベロスさん」
しゅんとして俯く少女にシズクと雪が近付き、それぞれに注意の言葉を掛けていった。
「夜の一人歩きは危険だぜ」
「ま、興味を持つってのは悪くはねぇが、こんな時間に出歩かねぇようにな」
二人の言葉にマールも頷き、これからは気を付けるようにと告げていく。
「心配される方もいらっしゃる筈、素敵な好奇心も好い加減にね」
「はい……」
少女は反省したようだが随分と気落ちしてしまったようだ。その様子を見たティユはペルルと顔を見合わせ、望みは叶わずとも話のタネくらいはあげたいと考えた。
そのとき、ティユは仲間のとある動きに気付く。
「見てご覧、ほら」
少女の手を引いたティユは神社の隅から現れた仄青い光を指さした。それは陰から春次が発動させた癒しの力、朱鞠狐の精霊だ。春次が連れるそれらは神社を修復しながらふわりと躍っていた。しかも、その後ろには南瓜を被ったスケキヨまでついている。
(「……アヤカシには見えるやろうか」)
仲間の競演に口許を薄く緩めながら、春次は少女を見遣った。
「わあ、アヤカシだ! 南瓜さんも妖怪なの?」
「私は妖怪では無いよ……怪人さ」
すっかり元気を取り戻し、スケキヨに話しかける少女は笑顔を浮かべている。
シズクとマールは安堵を抱き、優しいアヤカシも居たものだと感心した。佐久弥は先を越されたと感じていたが、自分が持つ攻撃の力を行使するのは危なかっただろうと考え、そっと肩を竦めて歩き出す。
「さあ、君を家まで送って行こう」
佐久弥が示した先には日常に戻る為の道が続いていた。
春次は少女と仲間を手招き、癒しの青光を振り撒いて歩いてゆく。
百鬼夜行には少ないが、途を灯す火と共に帰ろう。現実には在りえない夢が叶わなくても大丈夫。彼女はきっと、これからもちいさな憧れと共に生きていけるはずだから。
作者:犬塚ひなこ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年10月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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