●追撃の冥龍ハーデス
太平洋の孤島、月喰島――それは数十年前にデウスエクスに襲撃され、地図から消えた島の名だ。
しかし、ケルベロス達の調査によってその島が実在し、更に生ける死者のような敵が潜んでいる事が判明した。
その調査隊にも危機が訪れ、救援に駆け付けたケルベロス達は先に島に入っていた調査隊のケルベロス達と合流し、協力して月喰島の怪異を解決する事に成功した。
しかし、事件を解決したケルベロス達を回収し、ヘリオンが飛び立った時――突如、月喰島全体が鳴動した。
崩壊を始める月喰島。その中より出現した巨大な、黒いドラゴン。
そのドラゴンの名は冥龍ハーデス。
冥龍ハーデスは怒りに我を忘れたように、撤退するヘリオンを追って日本へと向かってきている。
このままではヘリオンが日本に辿りつくよりも早く冥龍ハーデスが追い付くことになる。そうなればヘリオンは撃破されることになるだろう。
撤退するヘリオンを救出するため、冥龍ハーデスの迎撃作戦が行われる旨がケルベロス達に伝えられた。
●冥龍、空中戦
月喰島の事件を発端とした現状の説明。そして冥龍ハーデスの迎撃作戦について話すと夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)は集ったケルベロス達へと告げた。
「月喰島から出現した冥龍ハーデスは、ヘリオンを追って日本本土へと向かってきてるんだけど」
戦闘圏外の高空を飛行するドラゴンと戦闘を行う事は難しく、特殊な迎撃作戦になるとイチは続けた。
冥龍ハーデスは怒りに我を忘れてヘリオンを追ってきているという事から、進路の誘導が可能と考えられる。
その状況を加味して、進路上に百を超える熱気球を浮かべ拠点とし、そこで撃激を行う事となったのだ。
「熱気球同士は密集させ、更に太いロープで結び合わせるから、それを足場にして空中戦を挑む事ができると思う。けど、おそらく気球ごとケルベロスさん達を攻撃してくると思うんだよね」
そうなれば戦闘開始後、気球は次々に破壊されていくことになる。
すべての気球が破壊される前に、冥龍ハーデスを撃破する事ができれば作戦は成功だ。
もし、すべての気球が破壊されても冥龍ハーデスの巨体の上に取りつくことができれば、戦闘は継続可能ではあるのだが。
「冥龍ハーデスの上に取りついての戦闘は、大ダメージを与えることもできるよ。けど、振り落されればそのまま、海面まで真っ逆さまー……ってことになって、戦線復帰はできないっていうのは覚えておいて」
けれど、とイチは言葉続ける。
この冥龍ハーデスが振り落としの行動をとった場合、他の攻撃が不可能となるらしい。気球からの攻撃との連携で敵を振り回す事ができれば、戦法の幅は広がるだろう。
「敵はとにもかくにも大きくて強い。強力なブレスと炎による攻撃、それから爪による攻撃を行ってくる」
その中でもブレスと炎による攻撃は、広範囲に及ぶもの。攻撃対象が分散していると、一度の攻撃で多くの気球が破壊される危険があるとイチは言う。
「だから敵の攻撃範囲が広まらないよう、ある程度まとまった人数で行動したほうが良いと思う」
冥龍ハーデスの攻撃は強力だ。しかし攻撃のかわりに、自分の身体に取りついたケルベロスを振り落とすような行動を取ることもある。振り落されると戦線離脱となるが、うまく耐える事ができれば有利に戦えるだろう。
「あとは気球を足場にして移動しながら戦うことになるけど、足を滑らせたり、移動に手間取ったり、何かしようとした場合は攻撃できない事もあるから注意して戦ってほしい」
巨大な龍との空中戦。それは地上での戦いとは異なるもので、いつもよりやりにくい戦いかもしれない。
「冥龍ハーデスは今、怒りに我を忘れていて、だからこそとれる作戦だし、途中で冷静さを取り戻したら撤退していく可能性もある」
もちろん撤退させれば、最低限の目的は達する事ができる。
しかし、可能ならばとイチは続けた。
「可能なら、ケルベロスさん達の手で今、倒してきてほしい」
厳しい戦いになるけど、信じているから送り出すよとイチはケルベロス達をヘリオンへと誘った。
参加者 | |
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ペトラ・クライシュテルス(血染めのバーベナ・e00334) |
天崎・ケイ(地球人の降魔拳士・e00355) |
天矢・恵(武装花屋・e01330) |
ニケ・セン(六花ノ空・e02547) |
リュートニア・ファーレン(紅氷の一閃・e02550) |
リィ・ディドルディドル(はらぺこディドル・e03674) |
鯖寅・五六七(猫耳搭載型二足歩行兵器・e20270) |
エドワード・エヴァンズ(太陽の笑顔・e26026) |
●現れる冥龍
10ある直径15mの気球を太いロープを使い50m程の距離をもって連ねる。
それが10用意され空に上がり壁になる。そしてそれには、それぞれの段を移動できるようにロープが垂れていた。
その気球の壁へ向かってくる冥龍ハーデスの姿が、遠くに見えた。
海の上の戦場――心火を燃やし怒りの咆哮は怨嗟の滾り。
しかし逆鱗に触れたのは、一体どちらなのか。
その問いかけの答えは今から出るのだ。
ニケ・セン(六花ノ空・e02547)が視線向けた先には、固い絆結んだ男が別働隊でいる。言葉かわす間は無かったが共に戦える事は心強く。和紙で作られた和柄の桐箱のようなミミックもまた蓋鳴らし鼓舞を。
「相手にとって不足なしっす! よーし! レア素材剥ぎ取り目指して頑張るっす!」
ウィングキャットのマネギを頭の上に乗せ、鯖寅・五六七(猫耳搭載型二足歩行兵器・e20270)は挨拶を。
「さすがに大きいですね……ですが……、逆に闘志が湧いてきましたよ、ふふふ」
天崎・ケイ(地球人の降魔拳士・e00355)は言って、ケルベロスチェインを冥龍に向け放った。同時にそれぞれ、遠距離攻撃を仕掛けている。
それは全部隊での一斉攻撃――激しい攻撃に冥龍の姿は一瞬見えなくなるほどの激しさを持っていた。
しかし――それをものともせず、高速で近付いてくる冥龍。
「目障りな、邪魔をするなら容赦はせぬぞ」
声が響き別働隊が炎に包まれ、冥龍の視線がこちらを捕らえた。
「我が怒りの炎を受けるがいい」
声と同時にぬっとあらわれたその顔。
至近距離――口の端に巻き上がる炎を目に、とっさにリィ・ディドルディドル(はらぺこディドル・e03674)と、ボクスドラゴンのイド、そして五六七も皆の前に出た。
「ちっこくても頑丈っすよ!」
吐き出された炎は激しく燃え上がる。それは容赦なく、前衛陣を巻き込んだ。
前衛のサーヴァント達はその炎に呑まれ姿を失っていく。
気球が熱で弾け、二つ失われるのも同時。後衛陣には攻撃が直撃していないが気球は無事といかない。
時間差はあるものの足場が弾けるように消える。
消える間際、イドは無事な所へとリィを突き飛ばした。余計なお世話とリィは零しつつもその身に受けた傷は深い。
だが前衛陣は、全員攻撃を受けつつも一人も落ちることなくこの戦場に留まっていた。
空を蹴って態勢を立て直したり、近場のロープに掴まったり。その背の翼で飛ぶことは出来ないがバランスを取る事くらいはできた。
そしてこの戦場での移動においてダブルジャンプはとても有用なものだった。
「ロードスの旦那を出迎えてみりゃ、なかなかに趣向を凝らした手土産じゃねぇか」
正面で口を開いたなら好機。それよりも早く一撃を、と思っていたが簡単にそうはさせてくれなかったかと天矢・恵(武装花屋・e01330)は零す。その羽根でうまく風を掴み、空を蹴って下の気球へ着地したのだ。
ペトラ・クライシュテルス(血染めのバーベナ・e00334)も落ち着いて態勢整えロープへと飛びついている。
「さっきの攻撃でなんともないなんて」
魔力を籠め足りなかったかしら、と先ほどの一斉攻撃に使った媒体の宝石にペトラは触れ、取り付いたほうが良さそうねと零す。
どうやら別働隊も冥龍の体に飛びつき始めているようだ。
(「考えることはいろいろあるけど、今は戦うことに集中しないと駄目だから……」)
傍らのボクスドラゴン、クゥへとリュートニア・ファーレン(紅氷の一閃・e02550)はがんばろうと声をかけ、星辰を宿した長剣を構える。その守護は先ほど攻撃を受けた仲間達へ。
その間にニケは後衛陣の戦う準備を続ける。
「汝、朱き者。その力を示せ」
ニケが詠唱するのは失われし古代語の詠唱唄。朱き鎖の影が仲間の影へと伸び力を付与する。
前衛陣はその間にも態勢立て直しつつ、ペトラ、恵、五六七はその場から冥龍の体へと飛びついた。
「小賢しい、矮小なる者どもが」
リィはまだ回復に行動を置くべく飛びつく事はあとに。
攻撃と回復と。さらに取り付きを行う。
冥龍に飛びついた仲間達は他にもいる様子。しかし合流などをしている暇はないようだ。
「煩わしい奴らだ、一網打尽に振り落としてくれる」
冥龍は激しくその身を動かし身の上から一掃しようとする。
その勢いにペトラが降り飛ばされた。
「っ!」
しかし視界の中に見えたロープ。そこへ向け空蹴り、手を伸ばして掴みとった。
冥龍の気を引くように、エドワード・エヴァンズ(太陽の笑顔・e26026)はふたつのドラゴニックハンマーを砲撃形態に変じ、バズーカのように構えて竜砲弾を放つ。
その間にも別働隊の一人に向けられた爪の一撃。その一撃は強力なもので戦う力を奪っていた。
「うろちょろ動き回るな、動かずに死ね」
そして冥龍は炎を吐く。気球が破壊され、巻き込まれぬように別働隊が移動する姿が見えた。
体の上に取りついたままの二人はその場で攻撃を仕掛け、気球からも攻撃を。
先ほど振り落とされたペトラは冥龍の頭上を取るべく、一番高い場所までに登り切り、そして跳躍した。
●爪撃
一番高い連なりから、冥龍の胴体向けての跳躍。
「そうはさせぬぞ」
しかしその跳躍を回避され、逆に爪の一撃で邪魔された。叩き落とすような攻撃はダメージが深い。そして周囲に捕まる物も無く向かう先は海面。
だがやられっぱなしではいられない。空を一瞬蹴り上げ、冥龍へと向き直った。そして魔力籠めた宝石を手に、紡ぐ。
「黄泉がえりしは奈落の住民。泉より這い出した裏切りの亡者よ、生前より背負いし業に従い、同胞を引きずり落とせ――っ!」
死霊魔法で呼び出す亡者達は冥龍にしがみ付き攻撃を加えた。
「アナタが改造した島の人たちと同じところに送ってあげるわぁ」
それを仲間達がやってくれると信じ、ペトラは落ちる。
「あとはよろしくねぇ」
落ちざま、視線があったニケへと声向ける。ニケは頷きミミックに前列へと促した。
冥龍は続く攻撃に身を震わせている。
「落ちろ、落ちろ、落ちろ」
その勢いに五六七の身が投げ出される。
「捕まってくださいッ!」
咄嗟にケイが伸ばしたケルベロスチェインの助けを借りて再び冥龍の上へ。
「ぐぅぉぉぉぉ、ケルベロス風情が、この冥龍に……!」
攻撃の煩わしさに怒りが爆発したのだろう。目についたものに振るわれた爪撃がまた一人、落とす。
「リィもさすがにその口には飛び込めないわ。丸焼きは勘弁よ」
先程の炎の燻りはもうないが消耗はある。炎吐かなければ、口から飛び込んで腸から食い破ってやるのにとリィは零しながら攻撃かけた。
リュートニアも今なら、と魔力を籠めた弾丸を生み出していく。
「……目標補足。これより撃破」
それに合わせてクゥも攻撃を。
冥龍の上にいる恵と五六七も同時に仕掛ける。そこでの攻撃は確実にダメージを与えている手応えがあった。
「お前さ、光雷竜のバルバレルより弱いよ」
直接対峙したからこそわかることだ。ドラゴンへの思い入れは強い。
ニケは今までの戦いを冷静沈着に見て、その言葉紡ぎ、鎖を伸ばしその首を締め上げた。
「鬼神の一撃……その身で受けてみますか?」
目の前の、攻撃届く場所へ向け、ケイは体内で練り上げた氣を掌に乗せ、閃光と共に炸裂させる技を繰り出した。
「冥龍……この空の海があなたの墓場となるでしょう」
さらにエドワードも冥龍の上で爆発を引き起こす。
けれどまだ、冥龍に衰えは見えない。
●振り落とし
続く攻撃を受け長い息を吐く。
「ふぅぅぅ。良かろう、あれらを追うのは、貴様達を全て滅ぼしてからとする。まずは、そこからだ」
冥龍は少し落ち着いた様子。多くを巻き込むように攻撃を仕掛けていく。
時間差で爆発する気球。その範囲から仲間達が脱出する様が見えた。
そして再び冥龍は身の上にいるものを振り落とそうと動く。
「くそぅ、何故、落ちぬ! ならば……」
何度目かの振り落としに対処に慣れてきて余裕もある。
「もうこのくらいじゃ落ちないっす! 余裕っす!」
五六七は余裕があると手にあるドラゴニックハンマーを振り上げた。
しかし、振り落しを耐えた所に続けて、先ほどよりも激しい動きで翻弄してくる。
「どうだ、恐れ慄け」
「わっ、わっ!?」
必死に耐えていたが五六七の体が浮いて振り落とされた。恵も手を伸ばすがそれは間に合わない。
「おらおらー! 格上ぶち転がすにはまずは命中率っす!」
なら最後に一撃と五六七は対デウスエクス用に化学合成した『すごいトリモチ弾』を、電子制御マシマシのターゲッティングシステムを搭載したランチャーから割とパない速度でぶっ放し、落ちてゆく。
「逃がすものか。死ね」
その一方で別働隊からまた一人、冥龍から容赦ない攻撃を受けて落ちていく。
「やられてばかりじゃいられないわね」
リィも行ってくるわと気球を蹴る。正面から目とか抉ってやろうかしらと狙っての飛びつきだった。
しかし冥龍の視界に入っている。首を動かしリィの取り付きから逃れた。
「貴様達の動きは読めているぞ」
落ちる、そこへ振り下ろされる爪の一撃。それは今まで何人か仲間を沈めており、守りに徹してもそれを打ち破る程の破壊力。
強力な一撃を受け、リィは限界以上のダメージを追う。
「魂、喰らって……」
冥龍名乗るのも良いと思っていたけど、とリィが最後まで言葉紡ぐ事無く意識失い落ちていく。
ふふんと勝ち誇るかのような冥龍は次に、別働隊へと視線向けた。
「貴様達の足場、崩してやろう」
吐き出される炎。だが攻撃からの脱出にも対応が追い付いている様子。
それならこちらは攻撃を続けるのみだ。
エドワードは地獄化した髪を靡かせ、近付いている冥龍の身へと電光石火の蹴りを繰り出した。
その脚に炎纏わせたケイも冥龍の身に激しい蹴りを続けて。
クゥは少しでも不安が紛れればとリュートニアの傍で攻撃を。
リュートニアはうんと頷いて、バスターライフルから凍結光線を放つ。
「へぇ、臆病なんだ、お前」
ニケは、冥龍に冷静さを取り戻させない様に言葉での挑発も織り交ぜている。
狙い定めて紡いだ竜語魔法。ニケの掌から飛ぶドラゴンの幻影が身の上を這い攻撃する。
その身の上で恵もまた攻撃を仕掛けていた。
「いつまで、我が体にいるつもりだ?」
冥龍が振り落とそうと動く。だが今までこの振り落としを何度も耐えた恵も対処が上手くなっているのだ。
足場が無いなら、掴みやすそうな場所に。攻撃仕掛けながら見つけたその場所で振り落とされぬようしっかり捕まり、攻撃時に召喚した一振りの刀をその身へ突き立てた。
「これでも、振り落とせぬのか!」
さらに、きりもみ回転を掛けて振り落そうがするが恵はそれをも耐えきった。
「この先の日本には護るべき人が居る。ここで落ちるわけにはいかねぇ」
呟いて、恵はガトリングガンを足元へ向ける。至近距離で放った一撃は冥龍に確実にダメージを追わせていた。
「お前の旅はここで終わりだ。冥府に帰れ」
ここで倒すと、恵の声は強く響いた。
●終わり
身の上、そして気球からの攻撃が冥龍へ向かう。
「千千に引き裂いてくれるわ」
ロープごと切り裂く攻撃により上から三段目の気球の三つが流されていく。続けてロープを切ろうと動いた冥龍だが、あえて攻撃を受けロープを守る姿があった。
「何故だ、何故引き裂けぬ」
その様子にニケがロープは守った方が良さそうだなと零し、ミミックに視線むけた。
その意味を理解しているというようにかぱっと蓋開けて返事がある。
ロープを切る事を邪魔された冥龍は、攻撃受けながらまた怒りを募らせていた。
「我が炎よ、全てを燃やしつくせっ!」
ぐわ、と開いた口から吐き出される炎がこちらへ向いた。
恵もまた仲間達が攻撃される様にはっとする。
咄嗟にミミックが飛び出るが全員を守りきれる勢いではない。
皆が乗っていた気球が破壊され、落ちる前に移動を余儀なくされた。
その炎で、誰もが深手を負う事を覚悟した。
しかしその炎の威力は――今までの苛烈さがなかった。確実に衰えており力には陰りが感じられたのだ。
「冥土へ行くのは貴様だッ! 冥龍ッ!」
追い込んでいる――そう思ったケイは己の身が培った秘技を見舞った。
その声に頷き、合わせて攻撃畳み掛ける。
すると、冥龍は逃げ出すそぶりを見せた。
「逃げる気だよ!」
エドワードは声を上げる。ここで冥龍を逃すわけにはいかない。
「逃げますか? 随分な失態のようですが、他のドラゴンに顔向けできますか?」
ケイが声向けるが届かぬほど、冥龍は逃げ腰のようだ。逃げるほど追いつめられている今は、倒す好機でもある。
逃がさないと、ここで倒すのだと冥龍に取りついている者達は攻撃をかけた。
「これで終わりだ」
一刀のもとに斬り捨てる、恵の神速の一刀が冥龍の身を切り裂く。
その間に、気球の上にいた仲間達もまた動いた。
「潰れちゃえ!!」
逃がすならと跳躍したエドワードはドラゴニックハンマーを振り上げ、竜砲弾放ちながら振り下ろした。
更に、この機を逃してはと気球から飛び降りて攻撃が続く。
ケイは氣を以てその身を穿ち、ニケは鎖を伸ばし冥龍を絡め取る。
リュートニアは気球の上から、再び魔力籠めた弾丸を連射した。
この戦いの場に残ったケルベロス達の一斉攻撃――それを耐えきる力は冥龍には無く、その瞳から光が失われていく。
「馬鹿な、冥龍ハーデスが、このような場所で……。ありえるはずが……」
信じられないというような声と共に冥龍は海へと落下を始めた。
リュートニアは気球から下を向き、飛びついた仲間を呼ぶが脱出は難しそうだ。
すでに気球から距離があり、ダブルジャンプや気球にいる仲間の助けを借りても戻れそうにない。
「これはもう、仕方ないかな」
ニケは一つ息をついて、落ちようと空を見上げた。小さくなっていく気球。今まであそこで戦っていたのだと改めて感じる。
「記念に首でも持ち帰る……のは、難しいか」
さすがにこの巨体が海に落ちれば、と恵は思う。
そして冥龍と共に落ちながら、ケイは呟く。
「冥土に帰って詫びてください。あなたが弄んだ生命に……」
その頃――海上にいたペトラ、五六七は徐々に大きくなる黒い影を見つけた。
落ちてくるそれが何かはわかる。
「その名の通り冥府に落ちて島の人達に詫なさぁい……って、ここにいたら巻き込まれるんじゃない?」
「……そうっすね」
ここに居たら巻き込まれると五六七は頷き、先に落ちていたリィを連れてその場からできるだけ離れた。
戦い終わった仲間達が海へ次々と落ちてくる。翼を持った者達は海上50mほどで飛翔でき、落ちる事がなかったものもいるが。
海面に叩きつけられた痛みがある――しかしそれは、生きているからこそ。
作者:志羽 |
重傷:リィ・ディドルディドル(悪の嚢・e03674) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年10月21日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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