香りのする紙を折る女

作者:baron

「あなた達に使命を与えます。この町に和紙職人の中でも、薫り付けや折り紙を得意としている人間が居るようです。その人間と接触し、その仕事内容を確認・可能ならば習得した後、殺害しなさい。グラビティ・チェインは略奪してもしなくても構わないわ」
 とある町の郊外で、奇妙な格好の女が森に潜む誰かに声を掛けた。
「諒解ではないけれども了解はしたわ、ミス・バタフライ。一見、意味の無いこの事件も、いずれ巡り巡って大きな一手になるのでしょうね」
 返事は樹の上からしてきた。
 スタン、と着地音を立てたあと、子猫のような足取りであるく少女からは足音がしない。
 おそらくは挨拶代わりにワザと足音を立てたのだろう。
「判って居ればいいわ。護衛と戦力を兼ねて誰か適当に連れて行きなさい」
「そうさせてもらうわ。レオ、行こうか」
 女の言葉に少女は頷いて、森の奥へ声を掛けた。
 そうすると大男がのしのしとやって来て、少女を担いでどこかに行ってしまうのであった。
 気がつけば……奇妙な恰好をした女も、どこかに消えてしまっていたという。


「ミス・バタフライゆう螺旋忍軍の話は知っておられますか? 直接的には大きな事件や無いのやけど、廻り廻って大きな影響が出るかもしれません」
 ユエ・シャンティエは、バタフライ関連と銘打たれた巻き物を机の上に拡げた。
 そこにはこれまでの事件に関連する事が書かれており、珍しい職業の職人を狙い、長期的な暗躍を狙っているようだと記載されていた。
 バタフライ・エフェクトというか、風が吹けば桶屋が儲かるかのように、ケルベロスに不利な状況が発生してしまう可能性が高いのだという。
「今回は和紙職人の中でも、細やかな気遣いをされる御人がターゲットですえ。敵の作戦効果は別にしても、殺されるのが例え一人でも見逃せませんし、どうかご協力お願いします」
 ユエはそう言うと、付近の地図と1つのパンフレットを机に並べた。
「本物の、という括りなら和紙を漉く方はもう言うほど居られませんのやけど、技術継承を兼ねとるのと、和風ブームで覚えてから色々しようゆう方はむしろ増えていますの。そこに敵さんも入りますし、ケルベロスも紛れこみ易い……と」
 そこに付け入り、何期目かの集団受講の中に紛れ込んでいるらしい。
 大抵の生徒は通り一辺倒であるが、コツを盗み出すつもりの螺旋忍軍ならば、時間を掛かるだけで技術を奪うことはできるだろう。
 そして、習字で良く見る半紙を出した後、折り紙を時間差でテーブルに置く。
「講習会は実技と、オマケゆうか字書く以外の使い道の講習で二部に分かれとります。そこでケルベロスのみなさん達は、先に始まる実地講習からはいって、その後にズラして始まる応用講習で螺旋忍軍と接触するのがええかと」
 つまり螺旋忍軍が事件を起こす3日くらい前から、無理なく対象の一般人に接触する事ができる。
 ここで事情を話すなどしてコツを教えてもらうことができれば、螺旋忍軍に違和感を持たせず、狙いを自分達に変えさせることができるかもしれないとユエは付け加えた。
「敵はそれなりに強力な螺旋忍軍が二人組で、螺旋手裏剣使いの少女と日本刀を使う大男ですわ。サーカスで言えば軽業師と怪力男ゆう定番の組み合わせになりますか」
 ユエは戦闘力を先に示した後で、一つ付け加えた。
「強力ですが、それだけに自信があるようですし、自然な流れで誘い出せば分断するなり、無難に行く場合でも無理でも一方的な先制攻撃が可能です。その辺は話題を思いつけるか次第で、分断するか先制するか決めればええでしょう」
 職人は経験者の五割増し、素人の二倍速と言われるほどに作業の差が在るとか。
 ゆえに能力のあるケルベロスが一般人より手際が良くとも、職人見習いならこのくらいだろうと、思う可能性が高いようだ。
 そこで先輩としてコツを教えるなり、先輩の特権として後輩を使い回すなり適当な理由で分断・先制できるだろうと教えてくれる。
「バタフライ・エフェクトゆうのが優れた予測か、はたまた予知なんかは判りません。しかし、最初の蝶の羽ばたきさえ止めれば、問題は無いですし、イザ戦いになればすることは同じですわ。よろしうお願いしますえ」
 ユエはそういうと、資料を置いて相談を見守るのであった。


参加者
ミュラ・ナイン(想念ガール・e03830)
アリエット・カノン(鎧装空挺猟兵・e04501)
西村・正夫(週刊中年凡夫・e05577)
バジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)
シンシア・ミオゾティス(空の弓・e29708)
仁王塚・手毬(竜宮神楽・e30216)
龍造寺・天征(自称天才術士・e32737)

■リプレイ


「申し訳ありません。私ども、こういうものですが」
「ケルベロス? この辺りでは何も無いみたいですけど」
 名刺ならぬケルベロスカードを手に元サラリーマンがやって来た。
 久々の飛び込み営業に、とっくの昔に地獄化した胃へ幻痛が襲って来る。
「これがですね、螺旋忍群……デウスエクスの忍者が襲ってくると予知がありまして。応用講習の間に外で片づけるので御心配ありません。何事も無かったように済ませます」
「その為にコツを教えて欲しいのと……できるだけ知らんぷりして講習してて欲しいんだよ」
 西村・正夫(週刊中年凡夫・e05577)はくたびれたスーツの背中に、ひんやりと汗が伝う。
 ここでミュラ・ナイン(想念ガール・e03830)が相の手を入れ、何を要望しているかを具体的に伝える。
 コツを知ってる先輩レベルなら、相手から見て技術は先生より目指し易いので、囮に成れるという訳だ。
「詳しくはこちらに書類を用意しておきました。あまり目立たない所で詳細を詰めませんか?」
「そうねえ。じゃあ、あがってもらおうかしら。せっかくだし御茶でも御馳走するわ」
 手紙を用意する事で、アリエット・カノン(鎧装空挺猟兵・e04501)は説得にかかる時間を短縮に掛った。
 今は他に人の居ない時間を見計らってはいるが、それでも近くに誰も居ない訳ではない。

 お妙さんが飲物を用意してくれると言うことで、一同は応用講習の部屋に移った。
 紙漉きの実技講習が戦前の工場に近いのに対し、ここは良くある集会場のようだ。
「さっきの話に戻るんだけど、アタシらで囮になるからさ、サクっとコツを教えて欲しいんだ」
 淹れられた御茶を片手に、ミュラが話を再開する。
「相手は特殊な技術を調べに来ると思いますので、それを我々が先輩として注目を浴びておくと言う形ですね」
 仲間がコツを習う間に戦場を調べに向かいながら、アリエットには何故、お妙さん……いや、他の職人たちが狙われるのかが疑問に思われた。
 確かに凄いことは凄いが、日常生活には不可欠でも何でもなく、注目を浴びるほどの大事業と言うほどでもない。
 さりげなく技術を盗むには良いかもしれないが、これが大事件に繋がるとはとうてい思えないのだ。


「商売上の秘密があるかもしれないが頼めぬか?」
「どうせ講習で教えることだし、構わないけどねぇ。でも、大した事なんてしてないんだよ」
 自信満々に龍造寺・天征(自称天才術士・e32737)が続けると、お妙さんは手近にある紙を二種から一枚ずつ取り、紙の箱を二つ折り始めた。
「コツと言えるのは二つだね。一つ目は、届ける相手の事をちゃんと考えること」
 お妙さんは折り込んだ紙の箱の片方にクッキー、もう他方にカリントウを載せた。
 そして紅茶を好む者にクッキーの箱を、御茶を好むものにカリントウを、最後にコーヒーを好む者の為に新しく別の紙で紙箱を折る。
「ふーん……檸檬じゃなくてレモングラス? 確かに良い香りね。紙の作り方は何となくわかるけど、香り付けってどうやるのかしら」
 バジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)がクッキーの紙箱を取りあげると、微かに柑橘系の良い匂いがする。
 今は多人数の入れる大部屋であることを考慮すれば淡いくらいだが、私室でなら十分にリラックスできると思われた。
「おお、こちらからは若草の香りがするっ。なるほど、相手に合わせるのか。流石は師匠!」
 天征はしきりと感心して、持ちあげているのか本心か知らないが、師匠と呼び始めた。
「なるほど、プレゼンの重要性なら良く判ります。相手の好みや説明の順序は大事ですからね」
 正夫はコーヒーに合わせたブラックチョコレート入りの紙箱から、カカオの香りをコーヒーの香りを邪魔しないレベルで感じながら、用意周到さを感じた。
 教材ゆえに最も効果の大きい組み合わせ言えるが、初見と言うものはかなり重要だ。
 仮に、贈られた相手が最も好む薫り出ないとしても、自分の為に色々考えてある贈り物であれば好ましいと思うだろう。
「それで、それで二つ目はなんであろうか師匠!」
「受け取る時に合わせたやり方になるわ。パーティ料理を作る人や薬を調合する人の方が実感あるかもねえ」
 それは……。

 お妙さんの説明を聞いたケルベロス達は、何度か講習をしたことのある生徒として、後輩に同じことを教え始めた。
「良い? 薬が相手の体格で分量が異なるように、届ける時間や場所によって、予め付けておく匂いの強さを変えるものなの」
『そういえば、ワンコに人と同じ物を飲ませちゃいけないって言うもんね』
 バジルは手持ちの薬を出し、大人用は四錠、子供用は二錠、ワンちゃん用には半分こ。
 面倒見の良い彼女は、キャットと名乗る螺旋忍群に、わざわざ自分の薬で判り易い例を示した。
「同じ様にさ、二・三人分の料理を作る時に、水や香辛料の量も変わるでしょ? だから、相手に贈る時に合わせた匂いの付け方に成るってわけ」
『ふーん。ということは、和紙の材料自体に匂いのする素材を付けるんじゃないんだ』
 シンシア・ミオゾティス(空の弓・e29708)が聞きかじった知識で知ったかぶりすると、当然ながら質問が帰って来る。
 残念ながらバジルの様に自分の知識を関連付けて覚えてないので、耳年増な彼女は目を泳がせながら、こう切り返した。
「それはやね、二つの講習を何度か繰り返した御人が思えるんよ。一から和紙……和紙……なんだかすごく難しそうでしょぉ……」
 脂汗が流れる。
 もしかしてバレては居ないだろうか?
 シンシアはヒヤヒヤしながら、ジト目を受け流した。
 ヘールプ! 誰か早くヘルプ!
「まずは足元から固めると良かろ。誰ぞ年季の行った常連に聞くとして、折り紙で良ければ教えれるが?」
『すごーい、これ貴女が折ったの? お花とか贈ったら、みんなに受けそうだよね』
 仁王塚・手毬(竜宮神楽・e30216)は自分の名前でもある、毬の折り紙を転がした後…。
 もっと判り易い、花の形をした折り紙を見せてやった。
 菊や竜胆と言った花の折り紙は、華々しく、そして手にとれば紙から花の香りがするのだ。
「(反応見ると可愛い子だけど、螺旋忍群って聞くとどうも……。初めての相手だけど暗躍とか得意そうだよね。『紙の材料のある所見にいこ』とか言って森に誘き寄せようか)」
「(そうだね。ぞろぞろ行ってもバレちゃいそうだし、何人かは、先に誘導する先で待機かな?)」
 小声でプラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)が話すと、シンシアも頷いた。
 相手は潜入探査に特化した螺旋忍群である、用心するにこしたことはないだろう。
「ここの匂い付け自体は、昔からある焚き締める方法だの。こうやって用途に応じた匂いと併用するのじゃ」
『そうなの? 昔からある方法なのに人気あるって事は、使い方がよっぽど上手いんだね』
 手毬は強烈に菊の香りのする紙で、菊の折り紙を折っていく。
 匂いの強い部分を内側に畳むと、少しずつキツさは和らぎ、内側へと保存され易くなる。
 その様子をキャットは顔だけは笑顔で、目だけは獲物を追う狩人の様であった。
「(うーん。さっきから露骨に態度が違うわね。コツを聞いて居る私たち、その中でも身についた人……。変な事されない内にやっつけよ)」
 プランは子猫のような仕草に見せて、内実は油断できない獣の臭いを感じとる。
 隣で色々言い訳してるシンシアと比べながら、表情も内面も話し易い彼女と、螺旋忍群との差を今更ながらに理解した。


『せんぷぁ~い。先輩たちが『通し作業』やるって聞いたんですけど……混ぜて貰えないかなって」
「あー。実は君達が来る前に和紙を1から作る技術指導はもうやっちゃったんだよねぇ」
 えーっとスネて見せるキャットに、ミュラは顔面パンチを入れたくなった。
 今時の魔法少女は妹分を拳で可愛がるもの……じゃなくて、騙され利用されて嬉しいはずもない。
 とはいえそれでは囮に成れないので、我慢してこう続ける。
「なんなら教えてあげるけど、興味ある?」
「失敗と疑問も重要なので、段階を経てない人に教えるのはどうかと思いますが……。あなた達は熱心そうだから原材料の採取から見せてあげます。特別ですよ」
 あれがいわゆるワビサビ……ビワサビ……? とにかくビバサビだ!
 とノリノリでウインクして見せるミュラを補足して、正夫は溜息つきながら申請書を書き始めた。
「(上手くいきそうじゃな。……ケルベロスの責務も勿論じゃが……個人的にも、お妙殿のような人には傷ついて欲しくない)」
「(そうだね。あとは倒すだけっ)」
 手毬は故郷の保護者たちを思い出し、お妙に少しだけ重ねる。
 しんみりした彼女と違い、シンシアは肩の荷が下りてホっとした。
 何しろリハーサル時点で『む、向こうに珍しいものがあるんやけどなぁ~』とキョドっていたので、ッ周囲から止められたくらいである。

 いずれにせよ、舞台は整った。
 あとは予めアリエットが調べておいた戦場で、逃がさぬように闘うだけである。
「こちらが原材料の楮になります。他にも三椏、雁皮等と言った植物が和紙の素になりますね。一から香りを組みこむ場合は、材料を叩く段階から混ぜて行くことになります」
 アリエットが樹を示すと、キャットを始めとして伐採からの作業を見てない物が関心を示した。
『どうですか御姉さま? ホントにこの材料が和紙になるんですか~』
「確かに和紙と同じ香りがするでしょ……。こっちの草、この香りが紙につくのね。お手数だけど、レオちゃんに伐採した枝を持ってもらえる?」
 どうやらバジルを当面の目標にしたようだ。
 キャットは素直に頷くと、レオと名乗った寡黙なレプリカントの肩から降りて、大男に指示を出す。
 自身は女性陣と一緒に、混ぜ込む香草や花を積み始めた。
『聴いてた? みんなが伐採してる樹をまとめて、作業所まで持って行ってね』
『ワカッタ。俺、樹ヲ持ッテイク』
 キャットが伐採中の仲間たちを指差すと、レオは巨体に見合わぬす素早さで、落とした枝や剥がした皮を紐でくくる。
 良く考えれば彼も螺旋忍群であり、頭脳労働が苦手なだけなのだろう。

 さっさと終わらせようと両手にいっぱい抱え込んだ処で、ケルベロス達は行動を開始する!
「じゃあ『貴方と私繋がるね』ちょっとだけお手伝い」
 一足先にプランがこっそり呟きサポート開始。
 数人分の感覚が飛び込んでパニックを起こしかけるが、少しずつ整理してオペレートしていく。
「貰った!! ふふふ、師匠の身を守るため、貴様らの好きにはさせんぞ!」
 今だあ必殺うう! 天征は大男が動けぬ時を狙って、豪快に飛び蹴りを繰り出した。
 空中で反転しながら、ケルベロスコートを脱ぎ捨てる!
『どういうことよ!』
「残念ながらあなた達のサーカスはここで終演とさせていただきます」
 花を捨てながら迎撃態勢を取ろうとするキャットに、アリエットは髪の毛を巻きつかせた。
 いや、違う。『Feu de la salve!』と唱えると、髪の毛は途中で螺旋を描き、ドリルの様になって貫く!
 こうしてケルベロスと螺旋忍群との叩きが、幕を開けたのである。


『へーそうなんだ。騙し騙されるのはこの世の常よね。レオ、やっちゃいなさい!』
『俺、キャットの敵倒ス。お、お雄オオオオ!!』
 流石に身内ですら争う螺旋忍群、躊躇なく牙を向いて来た。
 その意識の切り替えはいっそ見事なほどで、ナヨナヨと騙したのね……などと口にはしない。
 だが、敵は戦闘できるように装備を整えただけ。すかさず仲間たちは奇襲攻撃を掛け続ける。
『控えよ。この身は竜に捧ぐ巫女である』
 手毬が一差し舞うと、大男はビリビリとした衝撃を己の内側から感じ始めた。
 そう、同じ体を奔る気脈でも、優れた者は竜脈に匹敵するという。
 手毬の舞はその竜脈こそに影響を与えるのだ。
「いっけー!」
「おー! えす、燃えちゃうんだよ!」
 肩の荷を下ろしたシンシアがハンマーを射撃形態に変えてぶっ放し、月光の領域を広げて行くと、ミュラは月の光を照り返しながら銀に彩られた炎を解き放つ。
『ガガガ! ガオーン!』
「ちょっと静かにしてもらえせんか?」
 正夫は振り抜いた拳から、嵌めた指輪の方に意識を移す。
 それに刃が宿ると同時に、飛び込んで来る仲間に場所を明け渡しつつ精神力の剣を振り抜いた。
「はーい、シンシアってば潜入工作よりも、実はこっちの方が得意なのよね」
 ぴょんこと飛び出したシンシアは、胸を反らしながら自慢できないことでドヤ顔を決めた。
 敵の斬檄を完全には防ぎきれず、きゃいんと可愛らしく啼くところまで御約束である。
「反撃も始まったようですが、こうなると体勢は知れましたね。逃がさないように気を付けましょう」
「まあ相手は無理に戦闘する必要が無いものね。……毒の香り、味わってみる?」
 アリエットがナイフを握って死角に回り出すのを見ながら、治療役のバジルは攻撃を始めた。
 いつもなら攻撃はトドメの時くらいで、今回は奇襲している分だけ待機する必要が無い。
 仲間達が自分で治療したり殴りかかっている間に、相手の影へ毒を広げ始める。
 いずれは影から、足、足から体へと毒が浸食するに違いない。
『よくもレオを!』
「ふっ。因果応報とはこのこと。行きたいのならば、師匠の直弟子(自称)である我を倒していくが良い!」
 再び掌底で大男にトドメを刺した天征は、鷹が荒ぶるようなポーズで飛膝蹴りの態勢に入った。
 投げつけられる手裏剣もなんのその。
「やらせぬ。それなりに連携する様じゃが、儂らには及ばぬようだの」
 ここまで早く大男を倒せたのは、キャットに向かう攻撃を全てカバーしていたからかもしれない。
 手毬はその様子や潜入時の笑顔を思い出しながら、人生とはままならぬのう……と溜息漏らして、扇子で手裏剣を弾いた。
 そしてトドメを狙っていた拳を開いて、攻撃から自身の治療に振りかえる。
「道が違えば、友達とかお姉ちゃんとかになれたかもしれないけど、……ごめんね」
 プランは白い蝙蝠を飛ばしてトドメを狙いながら、一緒に遊んだり妹分にして色んな意味で可愛がったりする光景を思い浮かべて見た。
 だが、敵は敵。
 人々を襲う螺旋忍群は放置できまいと、仲間達と共に打ち倒したのである。
「終わったー。残った時間は自由に使っていいんだよね? 色んな香りを研究したいな~そしたら彼にプレゼントとか」
「も、もしかして、えっちな気分に成れるやつですか? 興味あります」
「貴女達は何を言ってるのですか」
 そして一同は、サキュバス三人娘の三者三様の姿に、微笑みながら帰還して行ったということである。

作者:baron 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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