阿修羅クワガタさんの挑戦~真の勇者の挑戦を

作者:長野聖夜

●一騎当千の勇者の呼び掛け
「吾輩の名は、ドズル・マグル。ローカストの戦士であり、一騎当千の勇者である。汝らケルベロスの活躍により、イェフーダーは倒れ、枯渇したグラビティ・チェインを満たす為、やむなくこの町の人間を襲撃しグラビティ・チェインを略奪する所存。この点においては吾輩に弁明の余地はない。最も、吾輩は、戦う術のない人間を襲撃するのは、不本意である」
 威風堂々たる態度でとある町の中央公園で堂々と声を張り上げる、蟷螂型のローカスト。
 周囲から、奇異の目を浴びせられ、恐怖から逃げ出す人々のことなど梅雨知らず、堂々と宣誓を続ける。
「ケルベロスよ。我が同胞たるストリックラー・キラーを殲滅せし、誇り高く強き者達よ。今此処に集いたまえ。さすれば吾輩は、汝らと正々堂々と戦い、勝者たる汝らを撃退し、その戦いの結果として、グラビティ・チェインを強奪しよう」
 胸を張り、堂々と宣誓するドズル・マグルのその様には、嘘をついている様子は見受けられなかった。

●勇者ドズル・マグル
「皆様、広島での戦いと勝利、お疲れ様でした」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)の労いに、ケルベロス達が其々の表情を浮かべる。
「皆さんのお蔭で広島市は一切の被害を受けることなく、更にイェフーダーを初めとした、ストリックラー・キラーのローカストを全滅させることが出来ました。……特殊部隊であったストリックラー・キラーの全滅は、ローカスト軍の動きを完全に封じることに繋がった……と考えて良いでしょう」
 セリカの言葉に、安堵の息をつくケルベロス達。
 ですが……と小さく息をつく、セリカ。
「ローカスト軍の苦境を見て、立ち上がった者達がいます。それは、ダモクレスの移動拠点『グランネロス』を襲撃した、阿修羅クワガタさんと気の良い仲間達です。彼等は、奪ったグラビティ・チェインを困窮するローカスト達に全て施した後、更なるグラビティ・チェイン獲得の活動に入りました」
 けれども、グランネロスの様に、大量のグラビティ・チェインを持つデウスエクスの部隊が簡単に見筈もない。
 そこで、彼等が考えた方法は手段は……。
「……皆さんに対して宣戦布告を出し、迎撃に来た皆さんを正々堂々と撃退した後に、皆様と言う強敵との戦いに勝利した報酬として、一般人からグラビティ・チェインを略奪しよう、という事の様です」
 正直な所、正々堂々とケルベロス達と戦う為の宣戦布告をする意味は皆無である。
「ですが……この正々堂々とした宣戦布告こそが、ローカストの窮状を救いつつ自分達の矜持を守るための苦渋の決断なのかも知れません。……その態度から察するに、阿修羅クワガタさんと気の良い仲間達……皆さんが相手をする方は、ドズル・マグルと名乗っている様ですが……は、その性質から絶対悪ではない、という事でしょう」
 だが、だからと言って困窮するローカストの為に、一般人のグラビティ・チェインを奪うことは許される筈もない。
「……ですので、戦うことそのものは避けられないでしょうけれども、その宣戦布告に答え……正々堂々とした戦いで、ドズル・マグルを撃退して頂きたいと思います」
 セリカの言葉に、其々の表情を浮かべてケルベロス達は返事を返した。

●戦力分析
「今回、ドズル・マグルが選んだ戦場はとある町にある中央公園です。広くて平らで戦いやすい場所となっておりますので、戦うことそのものに苦労はないでしょう」
 静かに告げるセリカ。
「最も、中央公園周辺の一般人は基本的に避難している筈ですが、皆さんを応援する為に危険を顧みずにやってきている観客はいる様です」
 例え、ドズル・マグルやケルベロス達にその気がなくとも、戦いの中でその観客を戦いに巻き込んでしまう恐れはある。
 だからこそ、人払いはしっかりとやっておいた方が気兼ねなく戦うことが出来るだろう。
「尚、ドズル・マグルは、その蟷螂の羽による機敏性に自信があるようです。自らの機動力を生かした咬みつき攻撃や、羽による振動による攻撃を得意としている様です。その機動力をいかに封じていくか……それが、今回の戦いの勝利の鍵となるでしょう」
 セリカの言葉に、ケルベロス達が其々の表情で頷き返した。
「ドズル・マグル達は、窮地に陥ったローカストの剣となり、決して退く事無く、正々堂々と戦ってきます。ですが、皆さんもまた、無力な一般人を守る盾ですから、負けるわけには行きません。どうか、お気をつけて。……皆さんの勝利を信じています」
 セリカの祈りを籠めた言葉に頷き、ケルベロス達は静かにその場を後にした。


参加者
ルヴァリア・エンロード(雷破の銀騎・e00735)
佐竹・勇華(は勇者になりたい・e00771)
ミラン・アレイ(蒼竜・e01993)
五代・士(帝國陸軍兵士の末裔・e04333)
河内原・実里(誰かの為のサムズアップ・e06685)
山蘭・辛夷(裸に兵器を持つ女・e23513)
雁・藍奈(空裂姫ガンランナー・e31002)

■リプレイ


「求めるなら戦士としてあなたと相対するよー! 互いに悔い無き戦いを!」
 ドズル・マグルの泰然とした姿を認め、念のため、彼と数十人の野次馬達の間に割って入りながら、元気よく手を振ったのは、ミラン・アレイ(蒼竜・e01993)。
「まだ人が残っているみたいだね。先ずは人払いをしないと」
「交渉は任せたぞ、山蘭」
「任されたよぉ」
 河内原・実里(誰かの為のサムズアップ・e06685)に頷いたクリスティ・ローエンシュタイン(行雲流水・e05091)が山蘭・辛夷(裸に兵器を持つ女・e23513)を促すと、辛夷が頷きドズル・マグルに近付く。
「よくぞ来たケルベロス達よ。吾輩の呼び掛けに応じて正面より馳せ参じた心意気、流石であるな」
 称賛を惜しまぬドズル・マグルに、辛夷が自分の両手を重ねた。
「ちょっとお願いがあるんだよねぇ。聞いて貰える?」
 怪訝そうに頭を傾ける、ドズル・マグル。
「吾輩にお願いとは、如何なることであろうか」
「私達、戦闘に巻き込まれてほしくないから、今、民間人を避難させたいんだよ。正直、民間人を守りながらじゃ本気で戦えないから、あの人達が公園から避難を終えるまで、待って欲しいんだよねぇ」
 辛夷がそう告げると、彼は両手の鎌を叩き合わせた。
「吾輩の呼び掛けに応じた真の強者だけはある。良かろう。吾輩としても、汝らを倒す前に戦う術を持たぬ人々を戦いに巻き込むのは不本意だ。暫し、この場で待つとしよう」
「話の分かる相手で助かるよ。みんな、あんたらみたいに誠実ならいいんだけどねぇ」
 鷹揚に首肯する彼に礼を述べながら、辛夷が五代・士(帝國陸軍兵士の末裔・e04333)達へと合図を送る。
「此処はもうじき戦闘が始まるっ! みんな早く逃げろ!」
「敵がいるから危険だよ、逃げろーっ!」
 士が周囲に呼び掛け、佐竹・勇華(は勇者になりたい・e00771)が、不意打ちを警戒してドズル・マグルを見つつパニックテレパス。
「空を斬り裂く戦姫の翼! 空烈姫ガンランナ―、見っ参!」
 避難を開始した民間人達の上空を光の翼を煌かせて飛び、華麗に地面に着地して姿を現した雁・藍奈(空裂姫ガンランナー・e31002)が、ビシッ! とドズル・マグルに向けて決め台詞と共にポーズを取る。
 ドズル・マグルが呆気に取られた様に羽音を立てるのに、あれっ? と藍奈が首を傾げた。
「私……空気読めてない?」
「まあ……避難が終わってからやる方が様になっただろうな」
 クリスティの溜息。
 其の間に一般人の避難を終え、士がキープアウトテープを張る。
「アンタ、同じ戦士としてとても尊敬できるわね。辛夷の話を聞いて、避難が終わるまで待つなんて。お願い自体が罠とは思わなかったの?」
「汝らが、その様な卑劣な者達には思えなかった。ただ、それだけのこと」
 避難の手伝いを終えたルヴァリア・エンロード(雷破の銀騎・e00735)の問いに答える。
 ルヴァリアが好意を籠めて首を傾げた。
「グラビティのことが無ければ、お互い良き強敵同士にもなれたのかしらね?」
「さて、どうであろうな。何れにせよ、汝らの準備は終わったのであろう」
「ああ、そうだな」
 相手の潔さに笑みを零しながら、構えるクリスティ。
「太陽の騎士団が一振り、笑顔を守る者。河内里・実里、参ります!」
「吾輩はドズル・マグル。汝らを倒し、我らが同胞達の生きる術を得させてもらう!」
 実里の突撃に応じる様にドズル・マグルが両腕の鎌を振り上げて飛び掛かった。


「守るもんがお互いあるから大変だねぇ」
 同情しながらドズル・マグルの目前に紙兵達を散布する、辛夷。
 ミラン達を攪乱する様に飛び回りながら発する異様な羽音の前に紙兵達が立ちはだかり、次から次へと打ちのめされて倒れていく。
「大和男子と生まれなば、散兵戦の花と散れってな……。行くぞっ!!!」
 紙兵の盾に守られながら、士がボルトアクション式の小銃を真正面に構えて走りながら、銃口より光線を発射。
 ドズル・マグルは体を旋回させて被害を最小限に抑える。
「あなた達が生き残るのか、それともわたしたちが生き残るのか、そういう戦いだよねっ! これって!」
 音波による催眠を紙兵達に打ち消して貰いながら、ミランが接近してスターメイカーに紫電を帯びさせた神速の突きを繰り出す。
 ドズル・マグルはその攻撃をギリギリまで引き付け右手の鎌の装甲で受け止めた。
「その通りだ、勇者達よ」
「敵であるというのは少し残念ではあるが……」
 クリスティが自らに破壊のルーンを刻み込みながら、目を細めて相手の動きを具に観察。
 羽による敏捷性を生かして、雨あられと降り注ぐ攻撃を躱すドズル・マグルに、実里が正面から騎士王の剣を模した円形状の柄から発した光の刃を放つ。
「その動き、封じさせてもらうよ」
 羽に向けて放たれた刃を宙返りで回避するドズル・マグル。
 ただ、完全に避けきれず片足が凍てつく。
「いっくよ~!」
 彼の宙返りに合わせてローラーダッシュで接近、流星の如き線を引いた蹴りを羽に向けて放つ藍奈。
 氷による重量の変化をものともせずに回避するドズル・マグルだったが、藍奈の蹴りは確かに羽の先端を掠め傷つけていた。
「行くよドズル・マグル! そちらがローカストの勇者として同胞の為に退けない様に、こちらも地球を守る勇者として退くわけにはいかない!」
 勇華が声を張り上げながら周囲にミラン達を守るドローンを展開。
 ドルーンに彼の起こした風を受け流して貰いながらルヴァリアが気咬弾。
(「何処かで、一合でもいいから1:1の状態でお互いの技を競いたいわね……」)
 そんな想いを籠めたルヴァリアの気弾が広場中を飛び回るドズル・マグルを追う。
「振りきれぬようだな」
 冷静に呟き反転、その攻撃を左の鎌で受け止める。
 僅かに動きを止めた隙を見逃さなかったのは、クリスティ。
「そこだ」
 彗星の如に空中を舞い、流水の如き蹴りを放つ。
 上空からの思わぬ奇襲に、右羽に強かな一撃を受けるドズル・マグル。
「……機動性を奪うべく我が急所を捕えるとは、流石であるな、勇者達よ」
 白翼で離脱するクリスティと入れ替わりに飛び出した士が、両手で構えたMG-42<<anti.deus suas>>から、炎を帯びた弾丸を連射する。
「オオオッ!」
 数百の弾丸の僅かな合間を掻い潜って接近し、鎌を彼に向けて振り下した。
「気概だけでは、吾輩は倒せぬぞ!」
 鎌による強烈な一撃からドローンが士を守り、彼自身も両手を交差させて受け止めた。
「そこだよ!」
 勇華が士の横合いから飛び出し四本指による貫手を羽に向けて放って装甲を削り、藍奈が爆炎の魔力を籠めた弾丸を連射。
 ドズル・マグルが攻撃を受け止めているのに頷き、ミランが一気に肉薄する。
「その動き、封じさせてもらうよ!」
 下段から、スターメイカーを撥ね上げてドズル・マグルの羽を傷つけ、ルヴァリアが走る。
「この突撃、耐えられるかしら!」
 魔力補助をこめたカードをゲート状に展開して潜り抜けて全身に魔力を満たし、圧倒的な速さと共に、ドズル・マグルの腕を拳で貫く。
「もっと封じさせてもらうよ」
 実里が大上段から、ア・ドライグ・ゴッホを振り下ろす。
 ドズル・マグルがその攻撃を左鎌で受け止めるが、同時に鎌が凍り付いていく。
 辛夷が羽音に備えて、藍奈たち後衛に紙兵を散布した。
 ドズル・マグルが敬意を表する様に両鎌を鳴らし、その身を硬質化させていく。
「汝らの底力が何処までのものか……しかとこの目で見届けてさせてもらうとしよう」
 余裕を見せる彼の姿に、藍奈達の背にヒヤリとした汗が滴り落ちた。


 ドズル・マグルの機動性は想像以上で、容易く攻撃を当てさせてくれない。
 一進一退……否、一進二退位の苦戦が続く。
 状況が変化したのは、戦いが始まってからそれなりに時間が経った時だった。
「強き者達よ。吾輩の一撃を受けるがよい……!」
 羽音と共に、積極的に羽を狙って来る藍奈達に向けて、凄まじい音波を放つ勇者。
「させないよ!」
「こういう時の為の、前衛だろ!」
 その名に恥じぬ勇ましい掛け声とともに勇華が辛夷を庇い、士が藍奈を庇うが羽音の衝撃に全身を痺れさせる。
「くっ……」
 クリスティが眩暈を起こして倒れかけながらも踏み止まり、一枚の護符を取り出し天へと掲げた。
 羽音による攪乱を終え離脱しようとしたドズル・マグルの周囲一帯に、氷の花が咲く。
「なんだと……?!」
「負けるわけには行かないからな」
 口元に微笑を浮かべたクリスティの手の中で護符が弾ける。
 同時にドズル・マグルの周囲を囲う花達が千々に乱れ雪月花の様に美しく舞い、彼の全身を切り裂いていく。
「ぐ……グォォォォッ……!」
 足止めのバッドステータスを重ねられたドズル・マグルは攻撃を避けきれず、苦しげに呻き声を上げる。
「今だね! いくよっ、星天創生!」
 その隙を見逃さず、ミランがスターメイカーに秘められた創生の魔力を解放し、剣先に巨大な光弾を生み出す。
「創生の力……少しだけわたしに使わせて……!」
 祈るように叫び、白色の魔力光を無数に解き放つミラン。
 光弾が弾け、剣を象った白き光の刃が次々にドズル・マグルを貫く。
「ここだな……行くぜ!」
 先程の消耗を無理矢理振り払って士が一気に肉薄しながら、自身の右腕にエネルギーを収束。
「さぁて……お手伝いの時間だよ」
 辛夷の呟きと共に、螺旋力が士達前衛の体に宿り、ブン、と幻影を生み出す。
「受けろ……! 世界の果てまで響く衝撃を!!」
 分身と共に士が大和魂を力に変え、赤いオーラを纏った右腕部を振り抜いた。
 その一撃がドズル・マグルの腹部を打ちのめし、口から大量の緑色の体液を吐き出す。
「ゴファッ……!」
「今だね!」
 風でミニスカートを煽られながら、勇華が拳を強く握りしめて思いっきりぶん殴る。
 それは、ドズル・マグルの横っ面を叩き顔の一部を凍り付かせた。
「行くよ、これが僕の全力全開!」
 実里がア・ドライグ・ゴッホを大きく振りかぶった。
 加速されたハンマーによる強打は、ドズル・マグルの右鎌を鈍い音と共に叩き潰し。
「いっくよ~!」
 藍奈がガトリングを乱射して彼の身を射抜いた。
「全力で、倒させてもらうよ」
 ルヴァリアが呟き、簒奪者の鎌に『虚』の力を纏わせ、その首筋目掛けて薙ぎ払う。
 後ろに飛ぶことで急所への直撃を避けながらも胸を斬り裂かれ体液をその身に浴びて自らの負傷を癒すルヴァリア。
「そうだ……この試練を乗り越えてこそ、吾輩がグラビティ・チェインを得る権利があるというもの……!」
 自らの負傷を癒すドズル・マグルに、クリスティが接近、ジグザグスラッシュ。
 その一撃が硬質化させた装甲を剥ぎ取り、羽に負った傷を抉る。
「これでまともに動けないだろう」
 クリスティの指摘に、ドズル・マグルが凄絶な笑みを浮かべた。


 戦いは、一進二退から、二進一退へ。
 一気に攻めに回ったケルベロス達の連続攻撃にさしものローカストの勇者も劣勢に追い込まれていく。
「吾輩もまた、勇者。……此処で倒れるわけには行かないのだ!」
「あなたの誇り高きその魂、わたしの心に刻み付けるよ。だからそろそろさよならにしよ」
 全身から体液を零しながらも尚倒れぬドズル・マグルにミランが語り掛け、スターメイカーの剣先に籠めた光弾を撃ち出す。
 それが無数の刃となってドズル・マグルを斬り裂くが、彼は止まることなく体当たり。
「倒させないんだから!」
 長期戦で傷だらけの勇華が高く跳躍し、全体重を乗せた渾身の拳を放つ。
 お互いの意地を掛けた全力の一撃……敗れたのは勇華だった。
「見事だ。ケルベロスの勇者よ」
「……勇者の拳に……貫けぬ物などなし……!」
 胸に風穴をあけながらも立っているドズル・マグルの称賛にそう返し、バタリとその場に倒れ伏す勇華。
 勇華を守る様に前に出たルヴァリアが、深呼吸を一つし、静かな眼差しで彼を見つめた。
「このアタシの一撃……あなたに届くか……いざ尋常に!」
 ゲート状のカードを潜り抜け、タイマンに持ち込み突撃するルヴァリア。
「良かろう……いざ、参る!」
 ルヴァリアの気概に応じて再び体当たりを敢行する、ドズル・マグル。
 一瞬の交差。
 風がやんだその時……膝をつきつつも立っていたのは、ローカストの勇者だった。
「アタシの想いに答えてくれて、ありがとうね……」
 ルヴァリアが何処か満足そうな表情を浮かべて、バタリ、と倒れる。
 だが、彼の限界も既に近い。
「今しかないか……突撃だ!」
 士が倒れた勇華達の間を走り抜け、彼の首を討ち取らんと、38式歩兵銃2型に豊富なグラビティ・チェインを載せてドズル・マグルの身を貫く。
「あなたが守ろうとしたもの、私達が守ってみせるからね」
 銃剣でその身を縫い止められた彼に声を掛けながら、藍奈が流星の如き一線を叩き込み。
「私は、君に敬意を払う。見事だった」
 クリスティが辺り一面に咲かせた氷の花びらで全身を斬り裂き。
「どっちが正しいとかそういうのじゃないよね。正義の味方だなんて思ってないよ」
 ミランが、雷刃突でその身を貫き。
「あんたは、戦士として立派な奴だった。でも、これでお終いだねぇ」
 辛夷が接近し、X字型に、ドズル・マグルを斬り裂いた。
「まだ……まだ吾輩は……倒れておらぬぞ……!」
「そうだね。でも、これで終わりだ」
 吼える彼に、実里がイミテーション・カリバーを青眼に構えた。
 眩い程の輝きを誇るそれに目を細めるドズル・マグル。
「貴様……その光は……?」
「僕のこの武器は偽物だよ。けど、君の思いも僕の思いも本物だ。だから……」
 実里の言葉に何処か光に魅入られた様な表情を見せるドズル・マグル。
「ぶつけ合うべきは思いの力、皆の笑顔を照らす光と成れ!」
 叫びと同時に、実里が大上段から光の刃を振り下ろす。
 その一撃が、ドズル・マグルの体を真っ二つに斬り裂いた。
(「……見事だ……勇者達よ……」)
 声にならぬ声を上げながら、ドズル・マグルの意識が急速に遠のく。
「君達の心意気には僕も感銘を受けたよ」
 最期に耳にしたものは、実里の言葉。
 目にしたものは、満面の笑みとサムズアップされた親指だった。


「完勝……とは、行かなかったな」
 広場に存在していた時計塔をブレイクルーンで修復し、安らかに眠れるように、と祈りを籠めた神楽を静々と舞いながらクリスティが小さく呟く。
「それだけ戦士として強かったってことだねぇ」
 勇華とルヴァリアの傷に処置を施した後、寂しそうに煙草を咥える辛夷。
 煙がまるで魂の様にゆらりと空へと上がっていくのを眺めながら、ミランが竜の祈りを捧げる。
「勇者の旅先に幸多からん事を」
 その死を悼む様に実里が別れの言葉を優しく告げた。

作者:長野聖夜 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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