スーパーせんとう待機!

作者:大丁

 泳げるほど広々としていて、開放された気分を味わえる湯船。
 連休なのに旅行とはいかなかったけれど、せめてゆったりとお風呂に入りたい。
 たぶん、そんな要望をかなえに来たと思しき二、三十代の女性たちが、どこを隠すでもなくくつろいでいる。
 と、立ち上る湯気が、 不可思議な螺旋を描いた。
 空間が歪み、できた裂け目から、丸く太ったものが這い出てくる。
 ブタの頭部に、背中から生えた8本の触手。大きめのオーク 、チャンピオンだった。
「きゃあああ!」
「なにするのよぉ!」
 裂け目のそばにいた女性たちは、逃げるまもなく触手に捕らわれてしまう。さらに、普通のオークが、次々と湯に降りてくるのだ。
「やめて、あぁ、やめなさいよ……」
「ハァ、ハァ……イヤ、離れて……」
 触手の動きに、犠牲者は増えるばかり。隠そうにも隠しようがない。
「ぶひひひ♪!」
 オークチャンピオンは満足げに笑うと、湯船から締め上げた女性客、配下のぶんと合わせて10人を、空間の裂け目に引きずりこんだ。
 黒瀬・ダンテは予知の内容を、事件の場所から伝え始める。
「中部地方の郊外で、いわゆるスーパー銭湯ってヤツっすね。その女湯の湯船が、現場っす」
 ダンテは、イケメンを崩さず説明を続ける。
「湯船の上に魔空回廊が開いて、オークチャンピオンと、配下オークが5体現れるっす。予知では、多くの女性客が触手に捕われたまま、……そのままのかっこうのまんま、魔空回廊から攫われてしまうんす」
 少々、言いよどんで。
「連れ去られる場所は不明っすが、オークに連れ去られた後は、たぶんろくなことにはなりません。この悲劇を防ぐことができるのは、ケルベロスの皆さんだけっす。お願いしまッス!」
 必死めに頭を下げた後、現場の資料を見せた。なるほど、作戦の障害になりそうなポイントがある。
 襲われる女性たちを避難させてしまうと、オークたちは別の場所に出現してしまい、被害を防げなくなる。
 だから、女性の避難はオークたちが出現してから行う必要があるのだが、この施設は広く、 外から駆けつけるのが大変なのだ。
「内湯で、湯船も大きめっす。オーク出現時は、10人の女性客がつかってますが、そこにオークたちが現れても、まだ余裕がある広さっすね。10人のお客さんが減ると魔空回廊は他所に繋がってしまいますが、女性が増えるなら問題ないっす。ケルベロスの皆さんには、湯船で待機してもらいたいっす。お願いしまッス!」。
 また、頭を下げた。
「男性が参加する場合も、がんばってください。一般人にバレないレベルの高度な女装なら、オークは来るっす。皆さんの潜入で、本来その場にいるはずだった女性が居なくならないようにも気をつけてください」
 また、ダンテは敵の能力も伝える。
「オークチャンピオンも配下オークも、触手を使った同じ攻撃をしてくるっす。 狙いはひとり、そばにいるなら縛り、離れているなら刺し。縛られれば攻防が制限され、刺されれば無防備にされるっす。特にチャンピオンの触手は強力っすよ」
 話しながら、元のキラキラした目が戻ってきた。
「皆さんなら、やってくれるって信じてるっす!」


参加者
カナタ・キルシュタイン(此身一迅之刀・e00288)
佐々川・美幸(忍べてない・e00495)
ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)
ジゼリア・アルセリス(天冥の竜杯・e02284)
琴宮・淡雪(サキュバスの淑女・e02774)
エレナ・アンセリオス(シャドウエルフのウィッチドクター・e03570)
ユーフォルビア・レティクルス(シャドウエルフの鎧装騎兵・e04857)
笠屋・狂子郎(ライナーアップ・e14241)

■リプレイ


 ラウンジにはゆったりと座れるソファがあって、連れ合いのいる客が、待ち合わせていたり、談笑したりしていた。当然、男女両方の客がいて、その先で両者を隔てるために二枚の大きなのれんが並んでいる。
 ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)は、その女湯と書かれた文字を見上げてため息をつく。
 ここまできたら進むしかない。装備は万端だ。メイド服で女装している。もともと細見で童顔なものだから、素質はある。
 と、女装では先輩の、笠屋・狂子郎(ライナーアップ・e14241)が、見かけは学校制服型のアイドル風衣装をたよりに、堂々と垂れる布のむこう、女性用脱衣所に入る。ラインハルトも続いた。
 中では、先に入った6人の仲間たちが、準備の真っ最中であった。
 エレナ・アンセリオス(シャドウエルフのウィッチドクター・e03570)と目が合い、彼女の口から出そうになった悲鳴が、押し込まれたのがわかった。狂子郎たちが男とこの場でわかってしまえば、作戦は失敗である。
 よく、こらえたな、といったシリアスな顔で、狂子郎は頷いた。そう、これは作戦なのである。決して、女湯に入る大義名分ができただなどと思ってるわけではない。
(「思ってるわけではないぞ? うむ」)
 よくよく見れば、エレナも別に裸ではない。こっそり水着を身に着けている。日本の習慣にまだ馴染んでいない彼女にとって、そもそも大勢で風呂に入ること事態に抵抗があった。
 ぎゅっと、手を握りこむ。シャドウエルフは、湯船まで潜入するつもりだ。
 ラインハルトは、脱衣所のすみっこに行ってしまった。メイド服を脱ぐわけにもいかず、事態が起こるまで、ジッとしているしかない。もちろん、女性たちの姿はあまり見ないようにするのだが。
 カナタ・キルシュタイン(此身一迅之刀・e00288)と、ジゼリア・アルセリス(天冥の竜杯・e02284)も水着を用意している。
 ただし、タオルや手に隠して持ち込むつもりで、今は着ていない。ジゼリアはちっちゃい体で風呂椅子も抱えていて、角度的にラインハルトの視界からはセーフだった。
 バスタオルを巻いてるふたり、ユーフォルビア・レティクルス(シャドウエルフの鎧装騎兵・e04857)と、佐々川・美幸(忍べてない・e00495)も、セーフ。
 風呂桶を片手に、ユーフォルビアが美幸に耳打ちする。
「武器を隠して持ち込みってちょっとドキドキしますね。ばれなきゃいいですけど」
「ふぇ?! う、うん……」
 美幸は、ロッカーにさらしを置いて、不安げな声で返事した。バスタオルのむすびを今一度、確認する。
(「ふふ~ん。美幸は大きなものをお持ちのようですわね。触りたいわぁ……♪」)
 琴宮・淡雪(サキュバスの淑女・e02774)は、仲間や客の胸を見過ぎである。視線の遠慮なさは、狂子郎より上だ。ラインハルトが、早く浴室に移動してくれと、淡雪に目配せするのだが、その彼女の恰好こそ、アウトっぽい。
 一応、タオルを纏っているものの、キョロキョロするたび、まくれそうである。ただし、要所はなぜか、うまいぐあいに影になっているのだった。
(「オークは倒さないといけないけど、この状況は精神的にキツイ……」)
(「いやー役得役得♪」)
 ラインハルトの苦行と狂子郎の愉悦は、6人の女性ケルベロスが出た後も続いた。
 つまり、大浴場の湯船でくつろぐ10人は予知されていても、洗い場やサウナや打たせ湯などの設備には、結構な数の女性客が出入りしていたのである。


 スーパーたる由縁。浴室の広さは、天井の高さにも現れている。そこに響くのは、水音や桶、椅子を使う音だけ。
 女湯大浴場の客は静かだった。複数人で来ている者も、大きな声で喋ったりなどしない。
 淡雪たちケルベロスたちも密かに意識しながら、互いに他人のような顔をして、それぞれ湯船につかっている。
 エレナは、水着姿での潜入に成功し、カナタもお湯の中で水着に足を通した。ふたりは避難誘導役なので、対角に位置して広く対応できるようにする。
 美幸は、宙を見張っていた。
(「魔空回廊って一体どこにつながってるんだろう……」)
 などと考えていたら、さっそく湯気が螺旋を描き始めた。空間が歪んでいるのである。 そこから飛び出してきた緑の巨漢は、そのままドボンと湯船に降りた。
「オークが出たよ。みんな気をつけて!」
 天井にこだます叫びとともに、美幸は立ち上がった。湯を吸って重くなったバスタオルが僅かに遅れる感じがする。
 ジゼリアもすぐに反応し、湯から体を出せば、バトルオーラがまるで湯気のようにまとわりついていた。
 握った水着というか、ヒモのようなそれをポイっと投げ捨てると、持ち込んだ風呂椅子、実は封印箱からボクスドラゴンのゼクティが飛び出す。
 オーク・チャンピオンと、回廊から次々と出てくるオークたちの欲望丸出しな姿が客らにもわかり、何も持たない彼女たちは、ただただ脅えている。
「こんな魅力的な美少女を放っておいて他へ行く気?」
 堂々と、オークの触手の前に姿をさらし、ジゼリアは標的を自分に引き付ける。
「杯に注ぐは冥。私という器から溢れ出なさい。魂を縛り上げる呪いよ。冥竜縛鎖!」
 触手の縛りを、さらに縛る鎖が、実体化する。
 それでも、触手の何本かが這い出るように、隙間から抜けてきた。
「こんな場所にも来るのか!」
 ユーフォルビアが、風呂桶からケルベロスチェインを引き出す。
「予知はされていたがな。石にでもなるんだね!」
 短い古代語の詠唱で、触手は女性客たちに届く前に、うねうね感が下がる。巻いたバスタオルも魔法への集中で、知らず下がりぎみ。
「ここは止めるよ! カナタ、速く避難を!」
「ええ! 皆さん、脱衣所に逃げて!」
 カナタは水着から斬霊刀を抜き放ちながら叫ぶ。
 勇ましい、そのお姿に、ラブフェロモンの効果が手伝って、女性たちはザブザブと湯の中をふちに動き出してくれる。エレナがむかえた。
「慌てる必要は無いぞ! ここには複数人のケルベロスがいる。私もその一人だ。ここは我々に任せてくれ」
 なぜカナタとエレナが水着姿かはこの際、問題にはならない。むしろ、いい目印になって客たちは指示に従ってくれるようだ。
 だが、脱衣所出入り口前の混雑は、いかんともしがたい。湯船以外の客までが一斉にきて、体を拭いて服を着なくちゃならないのだから。
「ラインハルトさん、狂子郎さん、出番よ!」
 カナタが呼びかけるが、返事はない。誘導に手間取るさまが想像できた。彼らなりにピンチのはずだ。
 床は濡れて滑りやすいタイル張りで、転びそうな人は多い。手助けし、支えながらエレナは、脱衣所と湯船を交互に見比べる。
「お客の無事も大事だが、皆の無事も大事だ。……一人も欠けさせはしないぞ!」
 

 淡雪は女性客の胸部を、オークがまだよく見ないうちに去ってしまうのを目でつまみ食いし、加えてそれらふくらみが囚われぬよう、あえて黄色い声を出してボスに寄っていた。
「オーク様、素敵~~!」
 広げた両手から、タオルがペロンと落ちて、湯に浮いた。
「ぶひひひ♪!」
 チャンピオンの背から伸びた8本の触手がすべて、淡雪の手足のあいだに入り込む。
 ノリノリの芝居で敵の気をひく、つもりだったのだが、今や捕縛されて見られる側に転じると、痛みではない何かが沸き上がってくる。
「あーれー!! 触ってるぅ、触ってますわ!」
 配下たちのうち3体の触手は、直線的な動きをし、美幸とユーフォルビアのバスタオルを刺し貫くと、彼女らごと宙に持ち上げた。
「大丈夫大丈夫、きっと鉄壁のバスタオル君がいろいろと守ってくれるはずなんだもん」
 美幸の祈りに似たつぶやきに、ユーフォルビアも同調する。
「大丈夫なはず! ……多分」
 少し動けば、バスタオルだけ触手に残されて、丸ごとカラダが転がり出てしまう。
「く、殺せっ」
 歯ぎしりする中から吐き捨てた、と思われたユーフォルビアの口元がすぐに笑みに変わる。
「……てセリフが似合いそうってだれか言った? 逆にくっころ言わせてやる」
 バスタオルより高く、さらに躍り上がった。美幸がビックリし、赤面しながら見れば、要所にブラックスライムが装備されていて、大丈夫になっていた。
「猟犬縛鎖ァ!!」
 チェインが、配下オークの首に巻き付いて、逆に釣り上げる。ギリ裸じゃないユーフォルビアが、ざぶんと湯船に着地したときには、オークは仰向けに倒れた。
「オークは死すべし、慈悲はない」
 精神力の高さが締め付けをますます強くし、こときれた獲物がぷかりと浮かんできた。
 もぬけのからになったバスタオルを見て、美幸も覚悟を決める。
「動き辛くってしょうがないよ~。えい!」
 バスタオルが増えた。いや、分身の術で、美幸の姿が数体に増え、一体に戻ったときには触手の戒めから脱出していた。
「胸は邪魔だし……もっと小さければよかったのに」
 言いつつ、大事に結びなおした布地に収める。
 2体のオークは脱衣所を目指して上陸を企てていて、ジゼリアと、サーヴァントのゼクシィが水ぎわ防衛に努めていた。
 ボクスドラゴンの属性インストールをしてもらい、ヒールドローンを飛ばして、かつ湯気に配慮させる。ジゼリアは、それらに耐えさせて自身では隠さず、湯船のへりの少し高くなったところを、右に左にと横っ跳びである。
「こういう戦いも裸の付き合いっていうのかしらね?」
 スッカリ、バトルオーラが剥がれ、絶え間なく伸びてくる触手に防戦一方であっても、口は減らない。しかしやがて、無防備なからだに直接触れられると、声に艶やかさを帯びる。
「あ、ん……♪」
 奮戦むなしく、意図しないものを、溢れさせてしまうのだった。憎き40本の触手を湯船からである。


 オーク・チャンピオンは、配下のひとりを失えど、淡雪だけでなく、美幸とユーフォルビアまでその触手に縛り付けて、頭上に掲げていた。今また、ジゼリアとゼクシィも捕え、湯船から片足をあげる。
「ブヒ、ブヒヒヒヒ♪」
 4体のオークに、さらに女性たちを捕えよと命令し、戯れに4人のケルベロスを吟味しようと無理に体を開かせようとした。
「オーク様ぁ……」
「バスタオル君、やっぱりだめだよう」
「ブラックスライムが、もたなかったか……」
「あふう、あん♪」
 敗北の証にいたるその刹那、謎の光が拘束されたケルベロスの要所に投げかけられ、露呈を阻んだ。
「えちぃのはイけないと思います!」
 謎の光の正体は、狂子郎の『謎の光(リンリケッカイ)』であった。脱衣所から姿を現したところだ。
「お前らのせいで恥ずかしい思いをしたんだぞ、死ね!」
 ラインハルトが、収めたままの斬霊刀に手をかける。
 アイドルとメイドは、顔の赤みにニュアンスの違いをたたえて、着衣のまま浴場に突撃する。
「カナタ推参、いざ!」
 抜き身の斬霊刀で、続くカナタ。握る手に隠していたマインドリングを指にはめなおし、敵を見据えるエレナ。
「オークは苦手だ。だってぬるぬるするし、変な匂いもするし、さっさと倒す……!」
 水着のふたりは、滑るタイル張りをものともせず、むしろ戦場に滑りこんで来た。
 4体の配下オークは、脱衣所から戻ってきた獲物にむしゃぶりつこうと真っすぐ向かってきて、なのにラインハルトは奴らのあいだをするりと抜けて、行き違った。
 キュッと音を立てて、シューズが床を踏む。メイドの白いタイツに似合う、エナメルの黒。片手には、いつの間にか抜き放たれていた刀がある。
「次元斬・葬(ジゲンザンソウ)……!」
 オークどもの手足に、斬撃のあとが染み出して、鮮血が噴き出す。床を流れる湯に混じった。
「ブヒャアァッ!!」
 まだ湯上りの蒸気をたたえたまま、オークはよろよろとぎこちなく、出血した部位を押さえて数歩でる。
「熱いのがお好きなら焼き尽くしてやるわ!」
 カナタの差し出した刀身が、炎につつまれる。秘められた力がそうさせているのだ。『獄刀・紅煉葬焔刃(ゴクトウ・グレンソウエンジン)』は、ほんのひと振りされるだけ。
 4体ともが、業火につつまれた。
 炭のようになっても燃え続け、配下どもはくずおれたのだが、なかに根性の座っているのがいて、背の触手だけが生き生きと動き、カナタの水着、そのヒモに結びついた。
「何すんのよ、この変態豚野郎!」
 動揺した声をあげても、構えはくずさず、踏みとどまった。踏みとどまったので、水着が負けてズルリといった。
「……!!」
 エレナのほうこそ、自分の水着が脱がされたかのように身をよじり、死にぞこないオークに向かってマインドスラッシャーを飛ばした。
 最後の配下は、光の戦輪にパンツを真っ二つにされて倒れ、カナタが水着を取り返すまで、触手はビクンビクンと痙攣していた。
「いやー眼福眼福、っておいこら謎の光仕事しすぎだ! 肝心なとこが見えねぇじゃねぇか!」
 狂子郎は、チャンピオンの触手に刺されながらも、囚われた仲間の救出に忙しい。いっぺんに回復できるわけではないから、損害状況をよく見極めねばならない。ならないのだ。
 ラインハルトも斬りかかる。とにかく、倒してしまえば、いい。もう、これ以上は裸を見るわけにはいかない。
「ブヒヒヒ♪」
 配下が全滅したにも関わらず、チャンピオンは機嫌がよかった。淡雪を好きにしている。
 いや、淡雪に好きにさせられているのだ。彼女も触手の動きに良さげな反応をしながら『蠱惑的な微笑み(テンプテーションスマイル)』を投げかけ、その裏で欲望のエネルギーを吸い取っている。
 チャンピオンの足がおぼつかなくなり、ふらりと後ろに傾くと、湯船の中にに尻もちをついた。
 大きくあがる湯のしぶきを割って、カナタは、刃を躍らせた。
「銭湯マナーとか、レディの扱いとか、色々あの世で勉強しなおしてきなさい、このブタ野郎!」。
 着ている暇がなかったので、水着は放ってある。大きくふりかぶった上段構えから、オークの妄想たくましい脳天にむかって絶空斬を振り下ろす。
 ゴリっと湯の底で、剣先の当たる感触がして、勝利を悟った。両断されたチャンピオンが左右で倒れる。
 しかし、カナタの勢い余った前傾姿勢を後ろから見たエレナは、なんとも言えないうろたえた表情をつくっていた。
「ああ、私の触手様が~~」
 しなびていくそれをいとおし気になでる淡雪と、少し残念そうにたたずむジゼリアをよそに、美幸はバスタオルをひっつかんで脱衣所に急ぎ、ユーフォルビアは後をたのむと手を振って歩き去った。ラインハルトはとっくにいなくなっている。
 ひとり満足げに、ナニかを反芻しているかのような狂子郎に、エレナは頼んだ。
「ヒールと掃除を手伝ってくれないか」
「いいよー」
 動き出したとたんに、狂子郎のスカートが落ちた。
 遠慮ない悲鳴が、脱衣所まで聞こえた。

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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