キラキラ☆ミラクル☆マッソゥ少女!

作者:木乃

●これは流行らない(確信)
 中野区中野にある『そこ』はコスプレショップに分類される――と、思われる。
 ファンシーな店内に並ぶのはフリルのワンピースに、羽やリボンを基調としたステッキ。ミニシルクハットの髪飾りに、付け袖やウィッグも充実している――が。
 マネキンがどれも『男性型』に見えるのは気のせいじゃないですよねぇ……?
「何故だ……魔法少女は流行ったのに、なんでマッソゥ少女は流行らなかったんだ……!」
 ここはマッスル――マッソゥ少女の為のコスプレショップ。
 店長(漢)のビルドアップされた肉体を包むのは、ピンクのエプロンドレスに白い二―ハイソックス。ストラップシューズとツインテールまで付けている。
 あかん、誰が見てもヤバい奴だ!
「ギャップ萌えの塊だというのに、なぜ認められなかったんだ……お、俺は、マッソゥ少女を……好奇の目にさらしただけじゃないか……う、っくぅ……!」
 あふれ出る涙と嗚咽を隠すように、店主(漢)はその場に屈み込む。
 湧き上がるのは愛すべき存在(モノ)を穢してしまった『後悔』の念。
 膨れ上がる感情に惹かれて、彼女はやってきた。
「なんとも度し難い嗜好ですね、そんなものに『後悔』するなんて……人間の精神構造は実に愉快です」
 憐れむように呟いた第十の魔女は、無防備な背に鍵を突き刺す。
 店主の嗚咽が止まった直後、隣に現れたのは
『ソゥ、マッソーゥ!!』
 ――彼の思い描く真のマッソゥ少女だった。
 
「訳が解らないよ?」
「私も理解したくありませんわ」
 永喜多・エイジ(お気楽ガンスリンガー・en0105)が理解に苦しんでいるが、今回ばかりは仕方がない。
「自分の店を持つという夢を叶えたものの、その店が潰れてしまった……とても悲しいことですが、さすがにマッソゥ少女(男)専門のコスプレショップは需要が少ないかと」
 予知したオリヴィア・シャゼル(貞淑なヘリオライダー・en0098)も痛む頭を押さえている。
 そんな店を開いてしまった店主の『後悔』に惹かれ、ドリームイーターが感情を奪ってしまったという。
「『後悔』を奪ったドリームイーターは既に行方をくらましてしまいましたが……面倒なことに、奪われた感情を元にしたドリームイーターが――マッソゥ少女のドリームイーターが生まれてしまいました」
 このドリームイーターを倒さなければ、被害者は深い眠りについたまま。
 大変はた迷惑な話である、なんとしても撃破せねばなるまい!
「敵はツインテールの魔法少女を模したマッチョなオッサ……ゴホンッ、美少女ですわ。武装として魔法のステッキを持っていますが、攻撃は完全に物理。エクスカリバールに似ていますわね」
 魔法(物理)ですね、わかります!
 ドリームイーターがいるのは閉店したはずのマッソゥ少女(男)のショップだが、無理やり営業を再開させているらしいものの客足は全く向いていない。
「店に乗り込んでいきなり戦闘を仕掛けることも可能ですが、客として入店し、サービスを受けて心から楽しんでいると、ドリームイーターも満足して戦闘力を抑えられますわ」
 今回の場合だと――マッソゥ少女になりきり、心の底から楽しめば良いのだろう。
 安心して欲しい、見ているのは仲間だけだから!
「満足させてから倒した場合は、取り戻した被害者の『後悔』も薄れて前向きに頑張れると思いますの……えぇ、一部の殿方には恥を忍んで頂くことになりますが……」
 オリヴィアは終始、申し訳なさそうに視線を泳がせる。
「と、とにかく、華奢な方は肉襦袢で体型を補いマッソゥ少女になりきってドリームイーターを撃破してくださいま……永喜多様もですわよ?」
 抜け出そうとするエイジを、オリヴィアは首根っこを掴んで引き留める。
 観念したエイジはガックリと項垂れ、いそいそと戻るのであった。


参加者
大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)
滝・仁志(みそら・e11759)
峰岸・雅也(ご近所ヒーロー・e13147)
リー・ペア(ペインクリニック・e20474)
ソウ・ミライ(お天気娘・e27992)
篠村・鈴音(助く者の焔剣・e28705)
アイシア・ウノ(番犬の往く先を・e31428)
十六夜・刃鉄(一匹竜・e33149)

■リプレイ

●どうして少女になる必要があるんですか(正論)
 店内に入るとロココ調の白いインテリアと可愛らしい衣装達が迎え入れる。
「か、可愛い……!」
 華やかな内装に滝・仁志(みそら・e11759)は感嘆の息を漏らす。
 一見して女の子向けな店舗に、さぞや可愛い女性店長が居るのだろうという想像は脆くも崩れ去る。
『イラッシャイマセー! ドウゾ、ゴ覧クダッサーィ!』
 ここはマッソゥ少女専門の(男性向け)コスプレショップ。
 店主も例外なくマッソゥ少女(というマッチョおじさん)で、そこにいるのはマッソゥな美少女(哲学)型ドリームイーター。
(「なんだろう、この光景」)
 白い歯を見せつける笑顔、ショップの女性店員のような発音と野太い声に仁志も真顔に。
「ちょ……ちょっと、見せてもらうぜ」
 隣の峰岸・雅也(ご近所ヒーロー・e13147)も頬を引き攣らせていた。
「最近の日本はこんなMangaやAnimeも流行ってるのね」
 明らかに間違った認識をしかけているアイシア・ウノ(番犬の往く先を・e31428)は目を輝かせ、値札もめくってみる。
「小物付き衣装一式7万円。高いのか安いのか解らないわ」
 アイシアが観察する傍ら、ソウ・ミライ(お天気娘・e27992)は暴れるボクスドラゴンのダンタツを押さえ込んでいた。
「逃げてもむーだーなの! 今日は魔法少女っぽく飾りつけするの!」
 ダンタツの顔は段ボールで覆われているが、青玉色の鱗がさらに青ざめていることは想像に難くない。
「……少なすぎますね」
 大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)はスーパーヒロイン系の衣装を見つけたものの品数が少ないことに心の声が漏れる。
(「決定的に路線が違いますが幸か不幸か肉体には自信があります」)
 今日は相手の土俵に立とうと魔法少女コーナーから衣装を取り、試着室に入ろうとした秋櫻にリー・ペア(ペインクリニック・e20474)が声をかける。
「この筋肉をテカらせるクリームをお使いください。マッソゥ度も飛躍的に向上するでしょう」
「確かに向上すると思いますが、売り物の衣装を汚してしまうのでは?」
 互いに機械的な口調とあってやりとりは淡々としているが、眼差しに心遣いを感じられる。
「……それもそうですね」
 リーがチューブを懐にしまう間に、隣の試着室に入った篠村・鈴音(助く者の焔剣・e28705)が鼻息も荒く用意した肉襦袢を手に震えていた。
「これは中々……テンション上がってきますね!」
 経緯不明な組み合わせはさておき、一度着てみたかった肉襦袢を合法的に着られるとあって鈴音は興奮しながらナース風魔法少女に変身。
 長い黒髪と清楚な出で立ちを純白のコスチュームがより一層魅力的に引き立てるのだが……細い顔とごっつい体型でヤバイ(語彙は失踪しました)
 鈴音が出ると同時に、秋櫻も試着室から出てきたが格好は来た時と同じジャージ姿。
「あれ、衣装に着替えたんじゃ?」
「変身前後のギャップは必要と判断しました」
 楽しみにして欲しいと秋櫻は言うと、鈴音も喜色満面に表情を輝かせる。
 盛り上がるマッチョ女子2人にドリームイーターもペチコートの下に隠れるゴツイ尻を振ってご満悦。
『オーケーィ! ナァイスマッソーゥ!!』
「ナイスマッソゥ、ユートゥーなのっ」
 ソウが見事な肉体言語(ポーズ抜き)を交わす最中、重苦しい空気を醸す少年が1人。
「マジかよ……」
 十六夜・刃鉄(一匹竜・e33149)はリボンをつまみあげて怪訝な表情で見つめる。
「刃鉄、ファーイト☆」
「てめぇも着るんだよ!?」
 他人事のようにイイ笑顔を浮かべる永喜多・エイジ(お気楽ガンスリンガー・en0105)を刃鉄は怒鳴りつけた。
「こっちのリボンも似合いそう!」
「ピンクも良いけど水色の方が似合うんじゃね?」
 マッソゥ枠から(運よく)外れていた雅也と仁志は、エイジ達の衣装選びに熱が入り、姿見の前で合わせてはあーでもないこーでもないと言いあう。
「お二人は着られないのですか?」
 盛り上がっている仁志達を手持ち無沙汰なリーが覗きこむ。
「いやぁ……どれも(サイズが大き過ぎて)着られないからね、仕方ないよね?」
 仁志の言葉に雅也もプロテインを口に含みながら大きく頷く。
(「細くても太くても、健康な力強さに満ちた筋肉って本当に素敵だと、思うのですが……どうやらここの店長とは意見が相違しているようです」)
 周りを見ればゴリラのようなマネキンが可愛らしいポーズをとり『なにをどうしてこうなった』としか言い様がない。
 健康的でしなやかな筋肉も一種の芸術と捉えるリーとしては非常に惜しい。
 衣装選びを終え、刃鉄達を試着室に押し込んだ雅也達は一歩離れてしみじみ敬礼。
(「すまん、お前達の犠牲は無駄にはしない……!」)
 心の中で涙を流す仁志の足下でテレビウムのカポの画面はなぜかブルースクリーン。
「ダンタツもメイクアップ完了ー♪」
 すっかり魔法少女のマスコットらしくなったダンタツもフリルの付いたリボンや楕円のブローチを段ボールの周りに留めてなんとも愛らしい。
 すでにぐったりしている気もするけど気のせいだよ!

 男の矜持と任務遂行の狭間に揺れる刃鉄達を待つこと5分後。
『ヘェイ! カモンガァーイズ!』
「ガールズじゃないのかよ」
 ドリームイーターも試着室に籠城する2人に呼びかけ、何とも言えぬ表情の雅也のカメラに向けて『きゃぴるん☆』とぶりっこポーズ。ワーカワイイナー(棒)
 店内を見回って満足そうなアイシアも撮影しようと愛用のカメラを手に待ち構えている。
「ほら、早く出てらっしゃい」
 優しく呼びかけるアイシアの表情は、このあと目にするであろう未知なる新世界への期待に満ちていた。
 2つのカーテンのうち、先に動いたのはエイジのほう。
 出てきた姿は大型アイドルユニットを彷彿とさせる制服風コスチューム。
 二の腕や大胸筋はぱっつぱつ、逞しい太腿の絶対領域を隠そうと裾を押さえる仕草は女子っぽい。
「ワォ! イッツァストロングガール!」
 アイシアが開幕一番に写真を撮り収め、そのときソウは電流が走ったようにハッとして
「これは――AEG48なの!?」
 と口走り、堪えきれずに仕掛け人の雅也も噴き出す。
「これ出オチだよね?」
「そ、そんなことねぇ……く、ふっ!」
 まさかエイジの女装姿を面白がるためだけに参加したとは、口が裂けても言えない。
 顔を赤くして羞恥を堪えるエイジを引っ張り出すと鈴音が隣の試着室をノックする。
「刃鉄さんも出られそうですか?」
「今が好機と思われます」
 リーも一緒に呼ぶと天岩戸さながら固く閉ざしていたカーテンが開く。
 仏頂面の刃鉄のボサボサ頭には水色のリボン付カチューシャ。
 まだ成熟しきっていない精悍な肉体を包むのは同色のフリルワンピース、真っ白いニーソックスと色黒の肌のコントラストが眩しいね!
「おお、なんだか不思議の国に居そうです」
「発育途中の肉体と相まって魅力的ですね」
(「どう見ても変態じゃねーか!?」)
 リー達の真っすぐすぎる誉め言葉に刃鉄も心の中で全力ツッコミ。
「揃ったところで記念撮影なの! みんなで変身するの!」
 すっかり楽しんでいるソウは持ってきたカメラを手に息巻く。
 『時は来た!』とばかりに秋櫻はキリリと眉を吊り上げ――。
「体内人工血液血輸量コントロール――人工筋肉負荷87%確認」
 キレッキレのバーピージャンプを決めた秋櫻は勢いよくジャージを脱ぎ捨て
「膨張確認、パンプアップ!」
 両手を後頭部に回し、見事なシックスパックと逞しく長い脚をアピール。
 腹部を露出したフリル付きセクシーハイレグ衣装にマント姿がまたサマになっている。
「スーパージャスt……ではなく、魔法少女あぶどみなる☆コスモス、推参!」
 マントをたくしあげるアルティメットな雰囲気の秋櫻に倣い、鈴音も動き出す。
「只の思い込みですけどなんかこう、一捻り出来そうな気がしてきました!」
 掴んだ片腕と同じ方の胸を持ち上げるように力を込めると、肉襦袢が盛り上がりコスチュームの皺が伸ばされる。
「ウィッチナースすずね、ただいま参上ですっ」
「ユニーク……じゃなかった。カワイイわよ、皆!」
 きゅぴーんと眼鏡を光らせる鈴音も意外とノリノリでポーズを決め、アイシアのカメラもフル稼働。
「腹直筋や外腹斜筋、上腕二頭筋等のオーソドックスな箇所もいいですが、個人的には僧帽筋のラインが好きです。背面を映した写真もお願いします、ついでに焼き増しして後ほど送ってください」
 早口で語りだすリーの要望にも秋櫻達は応えて、背筋を誇張させるポーズでアピール。
(「もうこの二人だけでいいんじゃ――」)
「刃鉄も早く変身するの!」
 忘れられていたと思いきや、ソウの一声で刃鉄にもレンズが向けられる。
 もはや逃げられないか――諦めの境地が限界点を超える。
(「こうなりゃヤケだ!」)
 スカートを翻し、背中の凹凸を披露してから両の拳を突き合わせて大胸筋を力強くアピール……引き攣った笑顔は小さい女の子が見たら泣いちゃうかもしれない。
「ワンダーココア☆テツコ、見参!!」
 ヤケクソ気味にポーズを決める刃鉄の肩にダンタツを乗せ、シャッターチャンスとばかりにソウも連写し始める。
「似合うよ、テツコ……!」
 横で仁志が涙を堪えながら拍手を送るが、カポは相変わらずブルスク状態。
 最後に両腕に力こぶを作ったエイジも加わり記念撮影。
 コスチュームとは確かに着る者が楽しむものかもしれない……しかし、その『楽しみ』が周囲の人と分かち合えることがどれほど素晴らしいことか!
 本物の店主がこの光景を見たら感動の涙を流していただろう。
『アメイズィン……グッッ!!』
 ドリームイーターも肩を震わせ、ボロボロと大粒の涙を流していた。
 その屈強な肢体が僅かに透けてきているのは『後悔』の念がソウ達の機転で大いに慰められたからだ。
「なるほど、感情が薄らぐとはよくいったものだ」
 支援に来ていた柚月は店外から様子をメモしている。
「しかしこれは……なかなかにカオスだな」
 経過記録は濁しておこうか、本気で悩むところだ。

●そういえば任務だった
「なぁ、これってチャンスじゃないか?」
 雅也が男泣きするドリームイーターを一瞥し、撮影に夢中なアイシアに耳打ちする。
「ノリもいいし、なんだか可哀想だけど」
「私達が冷やかし客なら殺していたはずです、予想以上に効果的だったというだけです」
 予知を受けて先手を打ったからこそ事なきを得たのだと、隙を見て秋櫻はSJ7・DRAGON-CANNONを起動させる。
「買わせるまでが販売だろ? そこまでサービス受けんのは御免だぜ!?」
 ストラップシューズの踵を踏み鳴らして刃鉄も構える。
「良い物を見られましたので私ももう満足です」
 リーが避雷針に手を伸ばすとテレビウムのスーもぴょこぴょこ跳ねて準備万端な様子。
「それじゃあ、行くぞ!」
 雅也が鋼鉄の拳を固く握り締め、号泣する美少女(概念)ドリームイーターを殴りつけた。
 魔法少女を模した可愛らしい衣装が音を立てて破れ、隙間から分厚い胸板を露出させる。
『イャアアアアアンッ!?』
「うわキツ!!」
 自身の体を抱くように隠すドリームイーターに仁志も青ざめながら跳び蹴りを喰らわせ、カポも応援動画を流して主人を励ますものの頑張る方が辛い時もあるんだぜ……!
「ふふーん、可愛さならソウだって負けてないの!」
 ダンタツを突撃させると、ソウも後から飛び込んで踵を叩き落す。
 追い払おうと大慌てで魔法のステッキを振り回すドリームイーターに秋櫻が照準を合わせる。
「砲撃を開始します、射線上より離脱してください」
 砲門を一斉開放した後、身動きがとれなくなったところを秋櫻は容赦なく腹部に膝を突き込み
「決着をつける時が来たか……」
 続けてドリームイーターの破けた襟元を掴みかかった鈴音がまきしまむな重い腹パンを加える。
 顔つきがいちご風味の劇画っぽいのはグラビティのせいじゃないかな?
「人の嗜好が何であれ、それを奪うとは愚の骨頂。うぬの企み、ここで押し潰してくれよう!」
 媚びないし引かないし省みる気もない連撃から、圧倒的な眼鏡力が放たれる!
「想定以上に弱っていますね……スー、支援は任せます」
 リーは動きの鈍いドリームイーターを一気に畳みかけようと、迸る雷の球を振り放つ。
 エイジの跳弾射撃と柚月のレイス・アリディラによる援護を受けながらアイシアもハンチング帽をかぶり直すと
「せめて苦しまずに逝きなさい!」
 半月の軌道を描いたアイシアの一刀がドリームイーターの腱を切断し、刃鉄もスカートをなびかせて回し蹴りを見舞うと思いっきりパンモロするが気にしてる場合じゃない!
 きらめく魔法のステッキで軌道を無理やり逸らされると
「マッソゥは不屈なんだよ!」
 地につけた脚を勢いよく擦り上げて、炎を噴き上げながら背を向けたまま後ろに蹴りこむ。
『ノンッ! ノンッ! ノォォォオオンッ!?』
「ぷりぷりしたってダメなものはダメです!」
 くねくねと身をよじる美少女(地球外に限る)に鈴音が肉体言語(物理)で叱りつけ、その後も勢いに乗って総攻撃していくうちに弱っていたドリームイーターは跡形もなく消失した――。

「ってことで、店ん中荒らしちまって悪いな」
「いえ、こちらこそご迷惑おかけしました……」
 雅也が店の奥で甘ロリ姿の中年親父(店主)を見つけ顛末を説明すると、申し訳なさそうに頭を下げる。
 もう動揺しない辺りだいぶ場慣れしてしまったらしい。
「いっそトレーニングも出来るお店にしたらどうかしら? キャラになりきるために肉体改造したい人もいるわ」
 アイシアも店主の熱意をどうにか活かせないかと今後の提案をしている中、店内に残る面々は散らばる衣装に破損はないか確かめていた。
「しかし何と言うか……人に見られたら穴に埋まりたくなりますね……」
「俺、妹に知られたら死ぬ自信あるぜ……!」
 既に着替えていた鈴音と刃鉄は悟りを開いたように、虚ろな目で宙を見つめ意識は因果地平に向かいかけてる。戻っておいで!
 仁志も衣装をハンガーにかけていると、ふと姿見が目につく。
(「女装か……エイジ達も意外と似合ってたし、俺もアリかもしれないんじゃ――」)
「はっ、いやいや何を考えてんだ!」
 一人慌てふためきながら仁志はハンガーラックに掛ける。
「もう終わったのか? 店主のオッサンは少し休めば元気になりそうだぜ」
「おーメンタルもマッソゥなの!」
 雅也達が奥から出る頃には修復も完了し、うとうとするダンタツを抱えてソウも帰り支度を済ませると店を後にした。
 一部のケルベロスには黒歴史となってしまったかもしれないが、画像が流出しなければバレないだろう。
 みんな、画像は厳重に保管しておこうな!

作者:木乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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