魂送りのヘペライ

作者:柚烏

 地平線を見渡す広大な湿原に佇んで、獣の毛皮を纏った娘が口の端をつり上げた。それは頭上に浮かぶ月を思わせるほどに、冴え冴えとして尚艶めいている。
「……そろそろ頃合ね、あなたに働いてもらうわ」
 つぅ、とまるで海の中を泳ぐように、深海魚を思わせる死神たちが宙を舞う中で――獣の娘に跪くのは、虚ろな瞳をしたヴァルキュリアの乙女だった。
「お言葉通りに、テイネコロカムイ様」
 ――その青ざめた肌は、死者のもの。雪を思わせる髪を夜風に舞わせ、戦装束に身を包んだ乙女は、草花があしらわれた弓矢を手に光翼を広げる。
「存分に街で暴れてきなさい、ヘペライ。……あなたが送るのはカムイなどではない、人間よ」
 死神怪魚を伴って、死神の尖兵となった死者は夜に羽ばたいた。看取りを司るものが、死をもたらすものに転じる――その皮肉さえ、感じる心を持たぬまま。

 ――場所は釧路湿原の近く。其処で死神にサルベージされた、第二次侵略期以前に死亡したデウスエクスが暴れ出す事件が起きるのだと、沈痛な面持ちでエリオット・ワーズワース(白翠のヘリオライダー・en0051)は告げる。
「このサルベージされたデウスエクスは、釧路湿原で死亡したものでは無いようなんだ。恐らくなんらかの意図で、釧路湿原に運ばれたのかも知れないね」
 サルベージされたのは、雪を思わせるヴァルキュリアの乙女だ。儚げな相貌をした彼女は、死神によって変異強化されており――更に周囲には、数体の深海魚型の死神を引き連れているようだと言う。
「彼女らの目的は、市街地の襲撃のようなんだ。幸い予知によって侵攻経路が判明しているから、湿原の入り口あたりで迎撃する事が可能になるよ」
 周囲に一般人のいない状態で戦闘が可能なので、戦闘に集中する事が出来るだろうとエリオットは言った。尚、サルベージされたヴァルキュリアに関しては、意識が希薄で交渉などはほぼ行えないだろうと言うことも。
「ヴァルキュリアはヘペライ、って呼ばれていてね。草花の意匠を凝らした妖精弓で、確実に標的を仕留めていくみたいだよ」
 彼女は怪魚型死神を2体伴い、その後方から狙いを定めてくるだろうとエリオットは眉根を寄せた。怪魚たちは噛み付いたりなどして襲ってくるだろうが、厄介なのは盾としての役割だろうか。
「死したデウスエクスを復活させ、更なる悪事を働かせようとする死神の策略……それを許せないのは勿論だけど」
 でも、と視線を彷徨わせたエリオットは、やがて思い切って皆に願いを託した。死者の魂に寄り添うヴァルキュリアが、死の運び手として使役される悲劇を終わらせて欲しいのだと。
「……どうか、お願いするね。花の矢がこれ以上、無辜の命を貫くことの無い様に」


参加者
卯京・若雪(花雪・e01967)
リコリス・セレスティア(凍月花・e03248)
白鵺・社(愛結・e12251)
リディア・アマレット(蒼月彩雲・e13468)
九十九折・かだん(ヨトゥンヘイム・e18614)
アーシィ・クリアベル(久遠より響く音色・e24827)
天羽生・詩乃(夜明けに捧ぐ唄・e26722)
真神・小鞠(ウェアライダーの鹵獲術士・e26887)

■リプレイ

●薫死の湿原
 夜の湿原は静寂に包まれ、獣たちはおろか草木さえも微睡んでいるようだった。頭上に輝く月を頼りに辺りを見渡せば、ざわざわと波の音を立てて草花が風にそよいでいる。
「広い場所だねー。どこまでも続いてそう!」
 雄大な自然を目の当たりにしたアーシィ・クリアベル(久遠より響く音色・e24827)は、両手を広げて景色を瞳に焼きつけるが――その心には微かな惑いがあった。
(「なんだろ、このモヤモヤした感じ……」)
 それはきっと、これから戦う相手が自分と同じ――死者の魂を導くヴァルキュリアだから。何の疑問も抱くこと無く、アーシィは永い時を使命に捧げてきたけれど。死した後も使役される同族を送らねばならないとなると、その胸は葦のようにざわめくのだ。
「あ、はは……。こんなんじゃダメだよね。よっし、私がちゃーんと送り出してあげるよ!」
 けれどアーシィはかぶりを振り、努めて明るい声を出して迷いを振り切った。そんな彼女の様子を穏やかなまなざしで見守る白鵺・社(愛結・e12251)も、月夜に煌めく純白の髪を揺らして、ゆったりとした口調で言葉を続ける。
「雪のような魂の寄り添い手、か。眠った子を起こすなんて、無粋な事するねぇほんと」
「うん、小鞠はそうやって死神に操られたことないから分かんないけどさ……嫌だよね。きっと」
 社と同じく光源を用いて明かりを確保し、湿地でも滑りにくい靴を用意してきたのは、真神・小鞠(ウェアライダーの鹵獲術士・e26887)。子犬のようだが、れっきとした狼の耳を震わせて彼女が拾った風の音は、これから此処で流される血を思い、静かに啜り泣いているようにも感じられた。
「酷い事するよな、死神も。死を看取るものを叩き起こして、殺させるだなんてさあ」
 ――その上、急に知らないところに連れてこられてと。何処か達観した表情で彼方を見つめる、九十九折・かだん(ヨトゥンヘイム・e18614)の呟きが夜空に吸い込まれ――其処で、敵の気配を警戒して待ち伏せをしていた卯京・若雪(花雪・e01967)の、若草を思わせる瞳が微かに細められる。
「神は神でも、彼らほど忌まわしきものはない」
 月を背に夜を往くのは、異形のもの達。変わり果てた死者となった乙女の名はヘペライと言い、光の翼をはばたかせた彼女の側には、下級の死神怪魚が付き従っていた。
「一刻も早くその操り糸を解く為に、尽くしましょう」
 敵影を捉えた若雪は、仲間たちに素早く伝達し速やかに迎撃態勢に移り――天羽生・詩乃(夜明けに捧ぐ唄・e26722)が銃の引き金に手を掛ける中で、リコリス・セレスティア(凍月花・e03248)は、喪われたものを悼むように左薬指の指輪を撫でる。
(「生前は自らの意思で戦場に立ったのか、それとも……」)
 凍てついた月の如き、厳かな雰囲気を湛えた彼女の横顔――その瞳に宿る悲哀は、何に対してのものなのだろう。それでも、もう一度眠らせてあげようと、リコリスは此方に向かって降りて来る乙女たちを捉えて、静かに囁いた。
「どちらにせよ、今此処に在るのは彼女の本意ではないでしょうから」
 ええ、とおっとりとした仕草でリディア・アマレット(蒼月彩雲・e13468)はリコリスに頷いて、直ぐにその端正な相貌をきり、と引き締める。
「……寝た子を叩き起こす事が、死神の仕事なら。私達の仕事は、寝ぼけ眼の子を元の褥に送り届ける事と、いった所でしょうか」
 両肩の機甲楯――アームドガーダーを展開したリディアは、懸架された武器をいつでも取り外せるように身構えていて。うたうように告げた彼女と共に一歩を踏み出した若雪は、剣舞を奉じるかの如く優雅に銀の刀を抜いた。
 ――今宵送るは、無情の死の神。牙を鳴らして迫る怪魚、そして虚ろな瞳のまま弓を構える戦乙女を、自分たちは此処で止める。
「生者の命も、死者の魂も、これ以上踏み躙られぬように」

●魂送りの儀
「悪いね、お嬢さん。まあちょっと付き合ってよ」
 市街地を背に、一行は湿原の入り口で死神たちを迎え撃った。そうして、芝居がかった仕草で行く手を阻む社たちを仕留めようと、怪魚に護られたヘペライは、草花があしらわれた弓を手に精密な射撃を見舞って来る。
「死神を確実に仕留めていきたい所ですが、まずは牽制と行きましょうか」
 花の矢に射抜かれたアーシィを庇えなかったことに歯噛みしつつ――気持ちを切り替えたリディアは、携行するアームドフォートの主砲を、ヘペライ目掛けて一斉発射した。高らかに開戦を告げるかのように、砲撃は夜を斬り裂いていって、其処でかだんの繰り出す地獄が楓吹雪となって敵陣に降り注ぐ。
(「罪を赦されなかった子を憐れもう。次はどうか罪が許されますように」)
 ――舞い散る焔は、標的の目を奪い冷静さを焼こうとはらはら揺れた。まるで神の遣いである鹿を殺し、罰を受けた子の伝承をなぞらえるように――ヘラジカの大角を持つかだんは両手を広げ、自分の元へおいでとばかりに牙を剥いて嗤う。
「さあ、堕ちて来い。お前が私を殺すことを赦してやろう」
 殺せるものならば、と暗に含んだその言葉に、挑むようにして怪魚は母泉路を泳いだ。鹿に紅葉の言葉遊びを愉しもうと言うのか、死神の牙がかだんの肌を食い破り――溢れる血肉を目にして尚、彼女は飢餓を耐えるように喉の奥で微かな唸り声を上げるのみ。
(「今の内に、最適な位置取りを……!」)
 前衛で盾となる仲間へそっと感謝をしつつ、詩乃は有利な地形へと移動し戦闘態勢を整えて。更に若雪が黒鎖を地面に展開、守護の魔法陣を描いて守りを固めていった。
「死角も助け合い、陣に隙を作らぬよう――」
「一気に蹴散らしちゃおう、だね!」
 死神怪魚の一体に狙いを定めて、勇ましく斬り込んでいくのはアーシィ。雷の霊力を纏った刀身からは、紫電の如き速さで刺突が繰り出され――標的を合わせたリコリスが時空凍結の弾丸を撃ち出した所へ、狙い澄ました小鞠の飛び蹴りが炸裂した。
「デウスエクスは人間にとって、良くないこともたくさんするけどさ。だからってこんな風に扱っちゃだめだよ」
 流星の煌めきを宿しながら、小柄な小鞠の身体は軽々と宙を舞う。しかし、尚も行く手を阻む魚たちにまなじりを吊り上げたリディアは、アームドフォートに接続した集束翼を展開――集束圧縮したグラビティ・チェインを電撃に変換し、落雷を発生させて敵群を薙ぎ払った。
「邪魔立てするなら……斬り捨ててでも、道を開きます!」
 リディアの頬に施された、深紅の戦化粧が鮮やかに浮かび上がり、敵の動きが封じられた隙を突いて社が動く。その手が放つ神殺しの病毒が、死神を追い詰めていく中で――彼の瞳が捉えたのは夜目にも鮮やかな、雪を思わせるヘペライの長い髪だった。
 ――雪、と聞いて彼が思い出すのは、自分の帰る場所とも言える大切な人の顔。
(「彼女にも、きっと大切な人がいただろう。大切に想ってくれる人がいただろう」)
 ヘペライの凍える手刀が一閃し、その身が傷つき氷に閉ざされようと、社の胸に燻ぶる憤りは消えない。苛々と舌を打ったのは、この場にいない黒幕に向けてだ。
「ねぇキミ、どこの部隊に居たの? 弓なんて使ってるし、まさか一人じゃないよね?」
 死神と切り結びつつも、アーシィはヘペライに声を掛けずにはいられなかった。こうなっては無理だと分かっていても、胸のモヤモヤに踏ん切りをつけたくて――しかし死神の尖兵と化した彼女は、何も答えずに無言で矢を放つ。
「何を言っても届かないなんて、これじゃ死んでるのと変わらないよ!」
「……ッ!」
 ――ああ、これが『死ぬ』と言うことなのだと。アーシィが現実を知ったその時、盾をすり抜け狙われたのは、集中してヘペライの力を削いでいた詩乃だった。
 大槌から竜砲弾を撃ち、足を縫い止めると交互に、神速の弾丸は草花の弓を砕こうと迫る――狙いを定め確実に牽制を行う詩乃の存在は、彼女にとって非常に厄介なものだったのだろう。
「みんなが死神を倒し終えるまで、邪魔はさせないっ!」
 矢を受けつつも詩乃は己の決意を曲げず、其処で素早くリコリスが御業を鎧へと変え、彼女に守護を与えると共にその傷を癒していった。皆を護る回復手として、全員が敵から集中攻撃を受けても倒れぬ程の体力を維持出来るように――そう意識していたのだが、狙撃手たるヘペライの矢は、当たり所が悪いと致命的な一撃になりかねない。
「私だけでは回復が行き届かないですね……援護をお願い致します」
 その声には若雪が直ぐに応じ、彼は怒りを焚きつけ攻撃を引き受けるかだんの負担を減らそうと、守護陣を張り巡らせて更に守りを固めた。
「射線確認、システム完動……フォートレス、行きます!」
 皆によって装甲を砕かれた怪魚目掛け、リディアの構える砲台が轟音と共に火を噴いて。直撃を受けた死神が四散していく中――残る一体もまた、盾となり負った傷を挽回出来ずに、一行から確実に追い詰められていく。
「小鞠必殺!」
 ――そして空を泳ぐ死神怪魚は、気合が入った小鞠の肉球パンチを喰らい、冥府の海へと還っていった。

●花に眩う
 怪魚を失ったヘペライは直接攻撃に晒されることになったが、それすら躊躇しないと言うように、彼女はひたすらに此方を倒そうと向かって来る。
「きっと不利で、撤退なんて意思すらないんだろうね。哀れなもんだ」
 ヘペライの持つ植物の弓は綺麗で、既に死んでいたとしてもあんまり身体に傷は付けたくないなぁと社は思うが――無型之技である神速の一閃を躱されるとなれば、そうも言ってられないだろう。
(「蘇った身体でも痛みはあるのかな。せめてなるべく、苦しまないように逝かせてあげたいね」)
 ――念の為に逃亡を阻止しようと、リコリスの合図で一行が徐々に包囲を固めていく中。ヘペライは邪魔する者を払いのけるように、冥府深層の刃を振るって氷の檻へと誘っていく。
「……花を凍えさせる訳には、いきません」
 此方の体力を奪う氷を溶かそうと、リコリスの祈りは極光の紗幕を生み、前線に立つ仲間たちを優しく包み込んだ。そうして、吐息をひとつ零したアーシィはゆっくりと頷き、金の瞳を揺らして精一杯の笑顔を浮かべる。
「ね、私達のお仕事は区切りをつけてあげる事……だったよね? キミと戦うのは嫌だけど、でも」
 キミへのこの役目を誰かに任せるわけにはいかないのだと、きっぱりと意志を告げるアーシィの全身は光の粒子へと変わり――光翼を暴走させた彼女はヘペライ目掛けて突撃していった。
(「生前には洗脳され、死して尚殺しを行わされる魂――」)
 傷つきつつも立ちはだかる、かだんの瞳に宿るのは憐憫の情か。最早、言葉は要らなかった。死神への静かで確かな怒り、そしてヘペライへの慈悲――彼女はそれを振るう拳と脚に込め、命を殺すべく鋼の鬼と化して戦乙女の肉体を破壊していく。
「ア、アアァ……!」
 獣のような声を上げながら、血に塗れた手で尚ヘペライは抗った。花と雪の乙女――その可憐な姿が、今は一層傷ましくてならないと若雪はきつく刀を握りしめる。
(「その矢は、心無き殺戮の為に使うものではない筈」)
 ――彼の脳裏に過ぎるのは、嘗て殺戮の令に血の涙を溢していた乙女たちの姿で。妖精の加護を宿した花矢をリディアが庇う中、猟を行うように忍び寄った小鞠は、ヘペライの急所を的確に斬り裂こうと刃を閃かせる。
「小鞠にしてあげられること、一つだけあるよ。その何とかコロネって死神の支配から、きっと助けてあげるからね」
「……どんなにあなたが強くたって、負けるわけにはいかないよ。この両腕は、力を持たないたくさんの人たちを守るためにある」
 続く詩乃も、乙女を追い詰めようと湿原を駆けて――叩き込まれた蹴りが纏う炎は、夜明けを呼ぶようにあかあかと闇を照らしていた。
「死神の策略なんて、はねのけてみせる!」
 ――ねえ、聞こえてないかな。炎に呑み込まれていくヘペライに向けて、そっと問いかけるのは社。
「なら丁度良いや、今のこれは悪い夢だ。何も知らずに終われば良いよ」
 しなやかな彼の脚が、旋刃と化して叩きつけられた後――呪われた生から解放しようと、ふわりと漂う優しい花香を引き連れて、若雪の刃が流れるような舞を踊る。
「貴方の役目は既に終わり――在るべき場所も、此処ではありません」
 もう苦しむ事のないように、今一度お休みと。花眩の舞を送られたヘペライは幾多の刃を受け、その痕から絡み咲く幻の花に包まれながら――雪のように儚く溶けて消えていく。
「よくお眠り、ヘペライ。命のやり取りは、生者の特権で、仕事なんだ」
 其々が、安らかな眠りを願ってヴァルキュリアの乙女を見送る中で、かだんの瞳を捉えたのは雪を思わせる白銀の髪。しかしそれも、仄かな燐光を放ちながら――瞬きの後に見えなくなった。
 ――ああ、けど。彼女が思い出したのは、身を切るような寒さをもたらす、遠い雪山の景色だったのだろうか。
「お前を見てると、雪が恋しくなるな」

●巡る命
 こうして死神の計画は阻止されて、釧路湿原は平穏を取り戻した。しかし、同族を葬ることとなったアーシィは己の手に残る感触に涙を滲ませ――それでも泣くわけにはいかないとかぶりを振る。
(「泣いちゃったら、やっと解放されたヘペライに失礼だもん! ……よし。なら、最期は」)
 笑顔で彼女を送り出そう。ヴァルキュリアに涙は似合わないから――そう決心したアーシィは、寂寞の調べを明るい声で紡いでいった。そうして荒れた戦場を、若雪たちは手分けしてヒールで修復していき、どうか安らかにと黙祷を捧げる。
(「この辺り一面に花が咲けば、彼女の心も少しは慰められるでしょうか」)
 ヘペライの使っていた弓矢を思い出したリコリスは、彼女は花が好きだったのかもしれないと思って――彼女に相応しい花は何かと思いを馳せた。白い花なら秋桜やマーガレット、自身の髪を飾る彼岸花もそうだろうか。
「どうか今度こそは、永劫なる安らかな眠りを……」
 死者への祈りを捧げるリディアが手向けたのは、小さな一輪の白菊の花。そんな中でアイズフォンを用いて調べものをしていた詩乃は、ヘペライと言う名は花の矢を意味すると共に『川上へ』と言う意味もあることを知る。
 ――それは生死の流れに逆らったことへの、皮肉なのかもしれないけれど。
「それでも私はそれに祈りを込めて、同じ名を呼ぶよ。上へ、上へと……あの空の御許へと、あなたの魂が正しく還れるように」
 今度こそ穏やかに上に上がれますようにと、社や小鞠も共に祈り――かだんは北の大地に間もなく訪れる、冬の気配を感じ取っていた。
 ――季節が巡るように、命も巡る。極彩色の自然はやがて、白い雪の下で目覚めのときを待ち続けるのだろう。

作者:柚烏 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年10月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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