●冷静と苛立ちの間で
岐阜県郡上市にある、とある精密部品加工工場。
製缶から航空機、産業用機械等の精密部品までを広く取り扱う、その工場は、夕方近くにも拘らず、静かな山間部に賑やかな機械音を響かせていた。
……だが、そんな平和な風景は、瞬く間に崩れ去る事になる。
突如として現れた黒服の男達は、無言のまま工場内へと雪崩れ込むと、すぐさま手にした機関銃から小気味良い発射音と共に銃弾をばら撒いていく。
束の間、工場内には銃声と従業員達の悲鳴、そして警報がけたたましく響き渡り……数分後、工場内に静寂が訪れた。
「制圧が完了したら……さっさと必要な物資を搬出して」
そして、静寂を破るかの様にして、黒服達の背後から、可憐な少女の声が構内に響くと、その命令と共に黒服の男、ガンドロイド達は即座に機器を操作し、生み出された精密部品を梱包し始める。
暫しの後、停止した機器の前に集まった6体の配下を前にして、金髪の少女、エクスガンナー・シータがゆっくりと口を開く。
「そろそろ運搬を開始して……でも、きっと、ケルベロスが邪魔しに来る……」
妙に確信めいた口調でそう語ったシータは、そこで言葉を一旦切ってから、最優先の命令を告げる。
「……その時は、排除が優先」
そう言い終えた彼女は、小さく唇を嚙んでから……誰にも聞こえぬ程の声で、己の決意を呟いた。
「シータを邪魔した、ケルベロスだけは……絶対に、許さない……」
……その瞳に、芽生えたばかりの『怒り』という名の輝きを灯しながら。
●魔弾の狙撃手を追撃せよ
「ケルベロスのみなさん、お疲れ様っす」
黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は、ケルベロス達に、いつもと変わらぬ口調で……だが、少しだけ硬い表情を浮かべながら話し始める。
「先日から再び活動を始めたダモクレス、エクスガンナーの一人、エクスガンナー・シータが、岐阜県の山間部にある工場を襲撃する事が判明したっす」
そう語るダンテの表情は何時に無く厳しいものがある。
「どうやらエクスガンナー・シータは、先日の戦いで多くの配下を失いながらも、エクスガンナー計画の再始動に必要な機械部品を集める為、更なる略奪を企んでいるみたいっすね。そこでなんっすけど……今回、ケルベロスのみなさんには、その略奪物資の運搬の阻止と、エクスガンナー・シータの撃破をお願いしたいっす」
――コイツ、大変な任務を、サラッと言ってくれやがる。
ケルベロス達の多くが、そんな気持ちをを抱いた事に気付いたのだろうか。
「も、もちろん、エクスガンナーを撃破出来れば、敵が企んでいるエクスガンナー計画をぶっ潰す事なんて、ケルベロスのみなさんからしたら、余裕な事になるっす……って言っても、エクスガンナー・シータは、すっげー強い相手っすから、無理に撃破を狙わずに、配下のダモクレス達の数を減らす事を優先するのも、作戦としてはアリだと思うっすよ」
ダンテは慌てる様に、腕をぶんぶんと振り回しながら、作戦について話し始めた。
「どうやら今回は、シータを含め、全てのダモクレス達が略奪した物資の運搬に参加してるので、敵の全戦力と戦う事になるっす……それと、エクスガンナー・シータは、前回の戦いで受けた屈辱を晴らしたいと思ってるみたいっすから……まずはケルベロスのみなさんを排除しようとするみたいっすよ」
つまり今回は、エクスガンナー・シータや配下のガンドロイド達との真っ向勝負になる、という事だ。
「その上で、もしもケルベロスのみなさんが10分間、敵の運搬を阻止できた場合、敵は略奪した物資を諦めて撤退するっす」
10分間……その時間は、ケルベロス達にとって、長いものなのか。それとも、短いものなのか。、
そんな思いをケルベロス達が抱く中で、ダンテの説明は淡々と続いていく。
「それで、皆さんが戦うエクスガンナー・シータっすけど……彼女は、数あるエクスガンナー・シリーズの中でも、対ドラゴン戦闘を想定して生み出された特殊なダモクレスっす。その戦闘力はかなり高く……彼女自身の高い射撃性能もっすけど、装備している対竜スナイパーライフル「バルムンク」の驚異的な威力には、絶対に油断しないで欲しいっす」
そう説明を続けるダンテの眼差しは、先の戦いで傷を負った者達の事を思ってか、いつも以上に真剣なものに感じられる。
「そして配下のガンドロイドは……精鋭レベルのケルベロスのみなさんと同等以上の戦闘力を持っているっすから、こっちも注意してくださいっす」
そこまで説明したダンテは、次の瞬間、少し顔を曇らせながら、攻撃のタイミングについての説明を始める。
「攻撃のタイミングっすけど……もしも先手を取りたいならば、敵が略奪した物資を工場内から搬出し始めた時ががいいと思うっす。逆に、襲撃直前に攻撃を仕掛ける事も可能っすけど……その場合、完全に敵に先手を取られる上に、パニック状態の一般人の対応にに迫られる事になるっすから、それは避けた方がいいと思うっすよ」
自身が予見した虐殺の瞬間を思い出したのか、根が純真なダンテの顔には、苦々しい表情がはっきりと浮かんでいる。
この戦いにおいて、ケルベロスとして、何を優先すべきか。
そんな命題を突き付けられながら、気を引き締めるケルベロス達を見たダンテは、自身も気を引き締め直そうと、その顔を両手でぴしゃりと叩いてから、改めて向き直ると。
「前の戦いで、エクスガンナー・シータは配下の多くを失ったっすから、撃破するチャンスはあると思うっすけど……まだまだ油断は出来ない相手っす。ぶっちゃけ、今まで以上に激しい戦いになると思うっすけど……ケルベロスの皆さん、よろしくお願いするっす!」
と、いつも以上に背筋を正して、頭を下げたのであった。
参加者 | |
---|---|
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550) |
流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984) |
ラハティエル・マッケンゼン(黄金炎の天使・e01199) |
アーティア・フルムーン(風螺旋使いの元守護者・e02895) |
シィ・ブラントネール(そして笑ってもう一度・e03575) |
ハインツ・エクハルト(金色闘気の鐡竜・e12606) |
浦戸・希里笑(黒鉄の鬼械殺し・e13064) |
フィオナ・オブライエン(アガートラーム・e27935) |
●
夕陽が空を赤く空を染める頃、眼前の工場で銃声と警報、そして悲鳴と怒号が響き渡る。
そこで行われていたものは……ダモクレス達による、一方的な略奪行為だ。
「……ごめん。ケルベロスがデウスエクスの襲撃を見逃した、なんて事、本当はあってはいけないんだ」
その状況を遠方から眺めながら、フィオナ・オブライエン(アガートラーム・e27935)は小さな声で、悔しさを口に出す。
「すまねえ……いや、謝って済まされる事じゃねえのは分かってるが……」
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)は己の拳を強く握ると、その鍛え上げられた筋肉がミシミシと微かな音を立てる。
「……その代わり、エクスガンナー計画は断固阻止する。未来の地球を守るためにも……!」
そんな泰地の決意の言葉に促される様に、浦戸・希里笑(黒鉄の鬼械殺し・e13064)とシィ・ブラントネール(そして笑ってもう一度・e03575)も無言のまま頷き返す。
彼女達は、己の弱さと無力さを悔い、そして悲しんでいた。
今回の作戦において、自分達の優位性を保つ為には、どうしても一般人に犠牲が出てしまう。
そんな苦渋の決断を選択した彼女達は、是が非でも今回の作戦を成し遂げようと、固く心に誓う。
そして、同じ思いを抱く者がもう一人いた。
ハインツ・エクハルト(金色闘気の鐡竜・e12606)は先の作戦に参加した親友の任を引き継ぐべく、この地へと赴きながらも、目的の為に眼前の虐殺を見過ごさねばならぬ事に、やや打ちのめされてもいた。
だが……だからこそ、自らが幾ら傷付こうとも、己の矜持を貫き通そう。
そんな苛烈なまでの意志を胸に、彼が工場を睨みつけていると。
「銃声が止んだ……そろそろみたいね」
不意に響いたアーティア・フルムーン(風螺旋使いの元守護者・e02895)の声に、ケルベロス達は再び工場へと意識を向ける。
工場内ではいまだ、警報と機械音が鳴り響いている……が、既に銃声や悲鳴は聞こえてこない。
そして工場内から現れたのは……6体のガンドロイドを率いた、エクスガンナー・シータの姿だった。
「現れたか……ならば、奪った命を贖ってもらうとしようか、フッ……」
ラハティエル・マッケンゼン(黄金炎の天使・e01199)は気障な口調のまま微笑むと、自身の地獄化した翼を大きく広げ、宣言した。
「竜殺しの狙撃手よ、我が黄金炎の輝きを見よ。そして……絶望せよ!」
●
ラハティエルが目が眩む程に輝く紅蓮の翼より、灼熱と劫火をガンドロイドへと解き放った事を皮切りに、ケルベロス達の集中攻撃が始まった。
「皆、いくぞっ!」
秦地が気合の一声と共に、光り輝く「聖なる左手」でガンドロイドを引き寄せるや、漆黒纏いし「闇の左手」で敵を打ち据えると、続く様にアーティアより放たれた影の弾丸を放ち、ハインツが稲妻を帯びた超高速の一撃をお見舞いすると、流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)も竜の力を噴射させながら、巨大なハンマーの重い一撃をガンドロイドへ叩き込む。
更にはシィの放った生命の「進化可能性」を奪う凍結の一撃がガンドロイドの体勢を崩すと、炎を纏ったライドキャリバーを駆りながら、希里笑が構えたアームドフォートを一斉に発射する。
「神をも討ったこの刃、受けてただで済むとは思わない事……だね!」
そして、フィオナの右腕から噴き出した純白の炎が剣の形に展開すると、伝説の神殺しの剣の姿を再現し、勢いに任せてガンドロイドへと襲い掛かっていく。
そんなケルベロス達の猛攻を受けたガンドロイドは、その一部を他のガンドロイドが肩代わりされながらも、大きく体勢を崩す。
が、それでも倒れる事無く、再びケルベロス達へと機関銃を構え直す。
「……全員、敵前衛の撃破役へ、攻撃を集中して」
エクスガンナー・シータが己の発した言葉と共に、ガンドロイド達も一斉に、を秦地へと銃口を向ける。
「くっ……敵も考える事は同じか!」
「守ってみせます……っ!」
飛来する爆炎の魔力を込めた大量の弾丸から秦地を護ろうと、咄嗟にハインツと希里笑、そしてチビ助が射線上へと踊り出る。
が、次の瞬間、シータの構えた対竜スナイパーライフル『バルムンク』が泰地を捉え、続いて敵のグラビティを中和する光弾が放たれる。
「ぐはっ……!」
返された猛攻を同じく仲間達に護られながらも、続け様に撃ち込まれた光弾に貫かれた秦地は、思わずその場に膝をつく。
そして、挨拶代わりと言うには余りにも激し過ぎる攻撃を交わした両者は、互いに武器を構え直し、相容れぬ敵へと対峙した。
仲間達が続けて攻撃を仕掛ける中、深手を負った秦地の前に、希里笑が具現化した光の盾が現れ、続いてフィオナの描いた魔方陣から癒しの力が流れ込む。
しかし、彼の傷は深く、完治と言うには程遠いものだ。
「仕方ねぇ、ちょっと早いが……」
その身を炎に焦がされながらも、泰地は何とか立ち上がると。
「リ……リミッター解除! 食らえ、連続怒涛蹴りィィーーーッ!!」
叫び声と共に、泰地は自身の身体能力の限界を大幅に引き上げるや、動きの鈍ったガンドロイドへと突撃する。
次の瞬間、怒涛の連続蹴りを叩き込まれたガンドロイドの身体は有り得ない角度へと捻じ曲がり、ガシャリと鈍い音を立てながら地へと転がった。
「ざまぁ……みやがれッ!」
そして、荒い息を吐きながらも、仲間達の士気を高めようと、にやりと笑って見せる。
……その直後だった。
再びガンドロイド達は泰地へと、銃弾の雨を降らせたのだ。
「チビ助! 頼んだよ!」
急ぎ、ハインツのサーヴァントであるオルトロス、チビ助を秦地のカバーに走らせるも、無数の銃弾が泰地とチビ助へと叩き込まれていく。
「キャイン!」
そして甲高い鳴き声と共にチビ助が倒れ、その姿が徐々に薄れゆく中、かろうじて立ち上がる泰地の姿があった。
……だが、そんな泰地の視線の先に見たものは。
真っ直ぐに秦地を狙い、バルムンクを舞えるシータの姿だった。
「来る! ドラゴンバスターだ!」
「間に合わ……ないっ!」
フィオナの警告を聞き、ハインツが射線上へと飛び込んでいくも、満身創痍となった泰地の姿は眩い光の中で見えなくなった。
「よくも……」
苦しい表情を浮かべ、シータを睨みつける清和。
対してシータは、そんな清和を歯牙にも掛けず、ガンドロイド達へ新たな標的を指し示す。
「標的、排除……次は、敵狙撃手を狙って」
●
ドラゴンバスターの威力を目の当たりにし、ケルベロス達の間に動揺が走る……が、彼らは攻撃の手を止める事は無かった。
「万物を停滞させし戦乙女の凍てつく檻……憑依装着、神衣《氷結乙女》!」
アーティアは透き通った青き氷鎧を身に纏うと、その背から伸びた氷の翼でガンドロイド達へと斬撃を放つ。
そこに続けとばかり、ラハティエルが生命力を貪る地獄の炎弾を放ち、シィも地を滑りながら炎を纏った激しい蹴りをお見舞いする。
その隙に、ハインツ、希里笑、フィオナの3名が仲間の回復に当たる。
対するガンドロイド達はラハティエル、そして彼を庇った者達へと炎の弾丸を連射し、次いでシータの正確無比な一撃がラハディエルを襲う。
「通常射撃でこの威力とは、な……フッ、意外と冷静じゃないか、スナイパー」
かろうじて頭部への命中を避けたラハティエルは、撃ち抜かれた右肩を押さえながら立ち上がると、その身を地獄の炎で包みつつ、金髪の狙撃手へ向けて不敵に笑ってみせた。
「大丈夫かい!?」
フィオナとハインツが光の盾を具現化させ、地獄の炎で己の身を癒すラハティエルへと護りの力を与えるも、やはり完治には至らない。
流石に自分達と同等以上のガンドロイ達だけでなく、エクスガンナーの攻撃を受けたのだ。それは仕方のない事だ。
そして、それは敵の強靭さに関しても同様の事実であった。
「なかなか簡単には倒れてくれないか……」
そんな状況に、ハインツが呟きを零した時だった。
「おっちゃんの本気、見せてやんよ……全パーツ射出っ 超合金合体!」
叫び声と共に、何処からともなく飛来した巨大ロボットのパーツと合体した清和が、ローラーダッシュ音を響かせながらガンドロイドへ走り込むや、手にした巨大剣でガンドロイドへと振り下ろす。
その一撃をガンドロイドはかろうじて直撃を回避するも、その凄まじき一撃を受け、既に立っているのがやっとの状態だ。
だが、敵は仲間の負傷も、己の負傷すらも顧みる事無く、ラハティエルを含めた後衛に、嵐の様に弾丸を撃ち込んでいく。
とっさにハインツと希里笑がラハティエルを庇うも、ラハティエルは少なくない傷を負ってしまう。
「ドラゴンバスターは……止めてみせる!」
さらなる攻撃の予兆を掴んだ希里笑は、自身のライドキャリバー、ハリー・エスケープを駆り、射線上へと飛び込む。
次の瞬間、ボディに大穴を開けられたハリー・エスケープが、火花を散らしながら地へと転がる。
「くっ……」
再び放たれた凄まじき攻撃に、ケルベロス達は暫し声を失うも、すぐさま戦闘態勢を整え直し、再び攻勢へと移る。
「ビビってんじゃねえ! 根性だせ! 気合入れろ! オレ!!」
ハインツが、自身を鼓舞する様に、オーラが宿った拳で己の頬を殴り飛ばす。
さらに回復力を高めんと、アーティアがドローンを群れを操って、仲間を警護させる。
その様子を横目で見ていた希里笑が、攻撃の隙を見つけたとばかりに、瑞天の主砲を一斉発射し、ガンドロイドを撃破しようとする。
それに続けと、清和が渾身の力で振り下ろしたハンマーと、ラハティエルの振るった地獄の炎を纏ったカタナとが、揃ってガンドロイへとに叩き込まれる。
そこに、無数に連なる別時空から自分自身を召還したシィが。
「さあ、ワタシ”達”が相手をしてあげるわ!」
続く瞬間、シィ達は完璧なまでの連携攻撃を叩き込み、二体目のガンドロイドを完膚無きまでに粉砕した。
しかし、その奮戦を覆さんかとする様に、ガンドロイド達が後衛へと無数の銃弾をばら撒く中、シータがラハティエルへとバルムンクの銃口を向ける。
だが、その光弾は、咄嗟に飛び出た希里笑が盾となり、かろうじて受け止められた。
●
先制を取り、二体のガンドロイドを撃破したものの、ケルベロス達は苦境の中に立っていた。
それでも彼らは怯む事無く、傷付いた者達を護りつつも、攻撃の手を緩めはしない。
そして、続くガンドロイドの猛攻と耐え切った時、これまで幾度も仲間達を護ってきたハインツが叫び声を上げながら、シータとラハディエルの間に立ち塞がった。
「はっ、馬鹿の一つ覚えみたいに必殺もどきか! 来いよ、受け切ってやるぜ!」
それは誰であろう、シータへ向けて放った挑発の言葉。
だが、対するシータは微かに口元を歪めると。
「……邪魔しないで」
その言葉と共に、必殺の一撃は過たずハインツの身体を貫き、その意識を一瞬で闇の中へと叩き落とした。
「せめて、次のドラゴンバスターに耐えられるまでには……浄命機関起動・言霊認証―――祝命の光、無限の選路。西方極楽より来たりて、末法濁世を照らさむ。浄化命光・阿弥陀如来―――」
そんな言葉と共に、希里笑は自身のコアより精製した荷電粒子を変換し、自身の傷を癒していく。
そんな彼女の決意を知ってだろうか、アーティアはガンドロイドへと氷結の螺旋を放ち、巨大ロボに変形した清和の斬撃と、シィの超重の一撃とがガンドロイドへと叩き込まれる。
そんなケルベロス達の猛攻の前に、更なる一体のガンドロイドの装甲に大きな亀裂が走る。
だが、それを嘲笑うかの様に、ガンドロイドが爆炎の弾丸を大量に放ち、シータのバルムンクから正確無比な光弾が発射する。
その非情な攻撃は、遂にラハティエルを捉え、彼の身体が崩れ落ちていく。
「……此処まで、か。まあ、後は任せるとしよう、フッ……」
その微笑は、信頼の証か、それとも自嘲めいたものか。
それは……誰にも分からなかった。
「配下を盾に安全な場所からの射撃なんて、随分と臆病なお嬢様なのね……そんな子じゃ、私すら倒せないんじゃないかしら?」
続く激戦の中、ガンドロイド達を氷の翼で斬り裂いたアーティアは……一か八かの賭けに出た。、
その狙いは……シータを挑発し、ドラゴンバスターの標的を自分に向けさせ、更にはその絶対的な自信を奪う事。
その言葉を聞いたシータは、アーティアを見やり……微かに口元を歪める。
だが、その理由は……決して、怒りからくるものではなかった。
「……じゃあ、仕留めてあげる。だって……一番、脆そうだし」
「!?」
予期せぬ言葉に、アーティアも驚きをみせる。
……つまりシータは、冷静さをもって、彼女自身に護りの力が施されていない事を見抜いたのだ。
その確信を得た瞬間。
シータがバルムンクの銃口をアーティアに向ける。と同時に、ガンドロイド達の機関銃が火を噴いた。
「残念ね……仲良くしたい、と思ってたのに……」
無数の炎弾に晒されながら、彼女は確信した。
シータに芽生えた怒りは、強制された怒りの残滓に過ぎなかったのだ、と。
「……せめて、その自信だけは……」
続く瞬間、眩い光弾がアーティアの身体を撃ち貫く……刹那、彼女はオウガメタルを変形させ、己の体を支えようとするも、意識を失った彼女の身体は、融解するオウガメタルと共に、地へと倒れ伏していった……。
「なんとか、あと一体を倒すまでは……」
フィオナの作り出した桃色の霧の中、そう自分に言い聞かせた希里笑は、自身から作り出した光子で自身の傷を癒していく。
「これでどうかしら?!」
シィが空中から現れとたシィ、完璧な意思疎通の元、連携を取れた攻撃をガンドロイドへ行う。
「これで終わりだ! 必殺、フォートレススラーッシュ!」
再び現れる清和の巨大ロボ。その斬撃は遂にガンドロイドを捉え、一刀両断する。
これで敵の攻め手であった配下は全て撃破した……が、ガンドロイド達は攻撃の手を緩める事は無い。
執拗に清和を狙い、構えた機関銃から無煤の銃弾を撃ち込み続け……そして、シータもバルムンクを清和へと向けると、竜殺しの光弾を放った
だが、その瞬間。
「もう、これ以上、倒させない!」
射線上へと飛び込んできた希里笑が、我が身を盾にして光弾を受け止める。
そして、彼女はそのまま気を失い……地へと倒れ込んだ。
「これ以上の損耗は、危険……一旦、撤退して」
シータが宣言すると、残ったガンドロイド達は彼女と共に、速やかにその場を去っていく。
「任務は成功した……の?」
「……みたいだね」
そう、確かに、彼らは敵の戦力を減らしただけでなく、物資運搬の阻止にも成功した。
そして、ケルベロス達は確信する。
来たるべき戦いは、まもなく訪れるのだ、と……。
作者:伊吹武流 |
重傷:相馬・泰地(マッスル拳士・e00550) ラハティエル・マッケンゼン(マドンナリリーの花婿・e01199) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年10月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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